幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ようやく、一先ずは事が収まる。
 三人称。
 では本編どうぞ。


七話 『誤解の解けた後』

「──原因不明の突然変異については割り切るしかないが……【ロキ】を具現化したような神だったとはな……」

 

「幻想郷だから仕方ないと割り切るしかないのかな……?」

 

「ま、オレの素性がわかってくれたのなら何よりだ」

 

「本堂さんが私とは違う現人神なのにびっくりです……」

 

「静雅も結局ご先祖様みたいな神様みたいなものでしょ? 一応自分の種族は人間のカテゴリーだけど」

 

「ま、収まって良かったぜ」

 

「本当よ。弾幕ごっこがある意味戦争に見えたもの……」

 

 守矢神社内の中に入り、お互いの誤解を解いた。道中できちんと説明した厄神の雛のように素性を話すと、不吉な気配がなくなったという。

 

 そして、途中で話していた本題を侠に話す静雅。

 

「さっき話した通り、霊夢が勘違いして侠を奪還しろということだがら準備ができ次第、博麗神社に帰るぞ、侠。微妙なタイミングで遅れるとか避けたいからな」

 

「わかった。それじゃあ荷物をまとめてくるね」

 

 そういうと侠は居間から去って行った。その姿を見て諏訪子が悲しそうに言う。

 

「あ〜あ……せっかくいろいろと問題が解決してたのに、博麗神社に戻っちゃうなんて……」

 

「諏訪子、元々侠は博麗神社に居候していたんだからしょうがないだろ? 本来なら私達の家事を受ける必要がなかったが、侠の善意で早苗の風邪が完治してくれるまでいてくれたんだ。別に一生会えなくなるわけではないだろう?」

 

「あーうー……」

 

 神奈子の言葉に納得しない表情だったが、静雅は鈴仙に体の向きを変え、話しかけた。

 

「オレと魔理沙は必然的に博麗神社に行くことになるが……うどん、能力で永遠亭に送ってやろうか? さすがに道中で疲れただろ?」

 

「……そうね。お願いしても良いかしら?」

 

「あぁ。いいとも」

 

 そうやり取りをし、静雅は右手の照準を鈴仙に合わしているとき、鈴仙は思い出したかのように言う。

 

「あ、そうそう。静雅──」

 

「お? 何だ?」

 

 

 

 

 

「──た、たまにで良いから、永遠亭に来てね……?」

 

 

 

 

 

 少し上目遣いで、静雅を頬を染めて見ながら鈴仙は言う。

 

「……了解した」

 

 静雅の返事に少しだけ笑みを浮かべた後、鈴仙はブレて消えた。彼の能力で永遠亭に今頃着いていることだろう。

 

 しかし……そのやり取りを見て、少し機嫌を悪くしている人物がおり静雅に話しかける。

 

「……何か静雅は鈴仙に対して優しくないか?」

 

「そんなつもりはないんだけどな。特に今の会話ではふざけるポイントがなかったからかもしれない」

 

「いや、常にふざけようとするなよ……?」

 

 呆れたような声で魔理沙は静雅と会話していたが、その光景を早苗は見て驚いているような表情で二人に話しかける。

 

「……こうして見ると、魔理沙さんがすごい大物に見えますね……」

 

「は? 何でだぜ?」

 

「本堂さんは外界では有名モデルとして活動していましたから、楽に本堂さんと話せる人はそうそういなかったと思うんですよ」

 

「話せる奴がいない……? それってどういう事なんだぜ?」

 

 魔理沙はよく彼と弾幕ごっこした時や他愛のない雑談をする。しかし、早苗のいう話せる人がいないという言葉の意味がわからないでいた。

 

 その彼女に、静雅は早苗の説明の補足をする。

 

「魔理沙、オレは外界ではそれなりに知名度があってな? こうして異性と話しているだけで文にパパラッチネタとして撮られるぐらいなんだよ」

 

「そうなのか? でも、それなりに私達と話しているよな?」

 

「それは外界の記者とかがこの世界にはいないからな。四六時中監視やネタ待ちを狙ってくる悪徳記者やマスコミとか、迂闊に異性といるとでっち上げの文章が記事に書かれる。まぁ、オレの場合そういう問題にならないように隠れて行動していたし。さらにオレは外界の同性に高い割合で嫌われているから同性の友人は侠しかいないし、異性に関しても問題が発生するから陽花ぐらいしかいないしな。本当、人のプライベート情報で楽に金を得ようっていうんだから質が悪い」

 

「随分と生々しいな、おい。しかも【ようか】って誰だよ?」

 

「侠の義妹(いもうと)だ。関係は友人以上親友ニアリー」

 

「とりあえずは仲は良いって事は分かったぜ……」

 

 魔理沙は新しい一面の静雅を知っていたとき、居間に侠が戻ってくる。しっかりと自分の荷物を肩にかけて、静雅に報告。

 

「静雅ー? 準備出来たよー?」

 

「お、終わったか。じゃ魔理沙も一緒に帰るぞ」

 

「わかったぜ。霊夢が来る前にさっさと行くべきだからな」

 

 侠と魔理沙は静雅の近寄り、彼の能力で博麗神社に帰還しようとしているところを早苗は名残惜しそうに侠に話しかけた。

 

「あ、あの、侠君……また、来てくださいね……?」

 

「……時間に余裕があれば、また」

 

 その言葉を最後に、侠達は消えた……。

 

 

 

 

 

 

『……侠君……』

 

『早苗……やっぱり、離れたくなかったか? ようやく探していた人物が侠で、見つけたと思ったら博麗神社に帰っていって……』

 

『はい……』

 

『それなら早苗、明日私達も着いていくから──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、静雅の能力により侠達は帰還した。それと同時に神社の中から……怒りの表情を浮かべていた霊夢が出てきて、侠に話しかける。

 

「……とりあえずはちょうど結界の修復作業が終わった時に奪還出来たみたいね……それで侠? 言うことはある?」

 

「結構ある。まず成り立ちから聞いてくれない? 嘘はつかないから」

 

「話の内容によるけど……言ってみなさい」

 

 

 

 

 

 巫女傍聴中……

 

 

 

 

 

「──成る程ね。早苗が風邪を引いて倒れていたのを侠が届けて、守矢神社の家事が停滞するところを善意で一週間することになった。その途中、ならず者が早苗を攫って、それを助けたのは今回の記事になったワケ……。それで守矢神社に住み着くのは嘘っぱちって事ね?」

 

「それは射命丸の個人的な意見であって、自分はそのような発言は一度もしていないし、東風谷の風邪が治ったら博麗神社に帰る予定だったしね。そもそも博麗の意見無しでそんなことは決めないし」

 

「……はぁ。結局文に踊らされた事ね……」

 

「まぁ……反省しているようだし、過ぎ去ったことは気にしてもしょうがないんじゃない?」

 

「……そうね。ちゃんと侠は帰ってきたんだし」

 

 おさまりついたのを確認し、魔理沙は問いかけたい事を改めて侠に問いかけた。

 

「ところで侠……外見が緑っぽくなっていたのは何だったんだぜ? 心なしか早苗にも似ていたような……?」

 

「……それね。それは今回守矢神社での目的の成果みたいなものだよ。ご先祖様が言う最低限必要な【力】の内の一つ、【風】に特化した適合スペルの姿」

 

「そうか……確か早苗は風祝という奴だったな──ん? それっておかしくないか? 早苗は風邪引いてて弾幕ごっこは出来なかった状態なんだよな? 過去に侠──じゃなくて初代龍神か。その龍神の能力の条件は弾幕ごっこで勝つことだろ? 風邪が治った時にでもやったのか?」

 

「…………ご先祖様曰く、もう一つの方法で入手出来る方法で偶然ね。その方法は教えてもらってないけど」

 

「もう一つ? それってどんなのか聞けなかったのか?」

 

「ご先祖様曰く『主は知らない方が良い』ってことで教えてくれなかったよ」

 

「(……何で初代龍神は隠す必要があるんだぜ?)」

 

 どうも魔理沙は初代龍神が能力の詳細を隠す事に疑問しか思わない。彼女と一通り話し終えると、静雅が興味があるように侠に尋ねる。

 

「結局、最低限必要な【力】って後どれくらいあるんだ? それによってはまた守矢神社みたいにどこかに行く必要があるんだろう?」

 

「そうだけど……後最低限必要な【力】は【雷】と【土】だね。今持っているのが氷は水としても捉えることが出来るから【水】と【火】と【風】を持っていることになる。今回はすんなり手に入ったから、しばらくは出かけずに神社でゆっくり出来そう──」

 

「侠それ本当なの!?」

 

 彼の言った言葉に霊夢が勢いよく食いついた。それを見た侠が控えめに答える。

 

「あぁ、うん。そうだけど……どうしたの博麗?」

 

「何だかんだ居候といいながら侠は神社にいないときが多かったじゃない! 特に静雅の異変を解決した後! 白玉楼に拉致られるわ、ティアーの言葉通りに守矢神社に出かけるとか、あんたは落ち着きがなさ過ぎなのよ!」

 

「いや、そうは言われても……大体は自分の意思じゃないし……」

 

「とりあえず侠はしばらく神社にいること! わかった!?」

 

「う、うん……わかった……」

 

「なら良し! じゃあまた人里の買い出し付き合ってもらうからね!」

 

 言いたいことを終え、望んだ返答を得られたのか……部屋に戻っていく霊夢は心なしか機嫌が良いように見えた。

 

 それを見た魔理沙は珍しそうに言う。

 

「……侠を奪還したらしたですごい機嫌が良くなったな……? あんな霊夢初めて見たぜ……」

 

「そこまで機嫌が良いの?」

 

「私と霊夢はそれなりに付き合いがあるからな。大体の表情変化の違いぐらいはわかるぜ」

 

 侠の疑問に答えた後、静雅は背伸びしながら後ろの振り返りながら別れの挨拶を言った。

 

「んじゃ、オレは帰ってゆっくりするわ。いろいろと疲れたし。じゃな」

 

 そう言い終わると静雅はブレて消えた。能力により紅魔館へと帰ったのだろう。

 

 それを見てか魔理沙も箒にまたがり、侠に挨拶を。

 

「私も帰るとするぜ。侠、またな。霊夢にも言っておいてくれ」

 

「うん。また」

 

 魔理沙が飛びだったのと同時に神社の方角から扉が開き、霊夢は侠の行動を促す。

 

「じゃ、人里に行くわよ、侠。ちゃんと働きなさいよ!」

 

「はいはい……」

 

 一先ずはだが、事は済んでいった……。

 

 

 

 




 この章はまだ話は続きます。

 ではまた。

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