幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ときたま更新遅延のことはお許しください。
 この章は三人称で統一したいと思います。
 では本編どうぞ。


共通・第十四章 修羅場
一話 『事の始まり』


『今日で一週間目ね……侠、ティアーの言う【力】を手に入れてくればいいけど……』

 

 幻想郷の博麗神社の巫女、博麗霊夢。彼女は境内を箒ではいて掃除しながら呟いていた。

 

 遡る事約一週間前、初代龍神であるティアー・ドラゴニル・アウセレーゼの必要な【力】を集めるために、龍神の先祖返りである辰上侠(というより諸事情で一心同体なわけだが)はティアーの言う通り今回の目的地である【守矢神社】へと向かった。

 

「(……まぁ、侠は約束を破らないし。のんびり待っていれば神社に戻ってくるでしょ)」

 

 侠を信頼し、再び掃き掃除を始めたところで……集めていた落ち葉が何時かのように散った。その人物は赤い小さな頭巾のようなものを被っており、烏の羽。手には新聞らしき紙を持っている。

 

 そして──その人物が誰かわかった霊夢はドスの聞いた声で牽制し始めた。

 

「文ァ……私の落ち葉を集めた苦労をどうしてくれるのかしらァ……?」

 

「あやややっ!? それはすみません! 今日は博麗神社に有益な新聞の記事を書いてきたんですよ! どうかそれで!」

 

 その人物は烏天狗の射命丸文だった。彼女は霊夢の様子に察し謝罪。文の言葉に霊夢は耳を傾ける。

 

「……どうせ誰かのパパラッチネタじゃないの?」

 

「今回は違いますよ! 王道ですが、侠さんについての記事です!」

 

「……侠の?」

 

 霊夢は興味を持った。諸事情で今はいない居候だ。それで今回は侠についての記事だと文は言う。

 

 文は言葉を繋げ、霊夢に話しかけ続ける。

 

「はい、そうです。ちなみに今侠さんはいますか?」

 

「今(博麗神社に)はいないわよ。まぁ、今の時間帯だと寺子屋に行っていると思うけど」

 

「ですよねー。さっき(守矢神社から)出て行ったばかりのようですし、侠さんが自らした行動を話すとは思えませんし……それで記事にして持ってきたわけです!」

 

「わざわざ侠の記事にしたのは……ティアーの先祖返りだから、幻想郷の最高神の初代龍神だから、そのおかげで購読者が増えると思っているんでしょ? あんたの場合」

 

「う……鋭いですね……さすが博麗の巫女の勘でしょうか……?」

 

「いや、多分大体の奴がわかると思うわよ?」

 

 人里でもう侠の事を知らない人物はほぼいないだろう。それに加え、初代龍神の先祖返りなのだから多くの関心が寄せられる。パパラッチネタでも、龍神関係の記事は多分読まれると霊夢は推測した。

 

「で? 侠のどんな記事を書いたのよ?」

 

「まぁまぁ、まずは見出しからどうぞ」

 

 そう言い、文は【文々。】新聞を霊夢に手渡した。

 

 ──しかし、この記事でとある人物達の弾幕ごっこに起きる事態になるとは誰も思っていてなかっただろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所が変わって魔法の森。ある一軒家に二人の少女がいた。その片方の人物は悩んでいるような表情をしており、もう一人は人形から紅茶を受け取っている。

 

 人形から紅茶の入ったティーカップを受け取った──アリス・マーガトロイドが目の前に座っている──人間の魔法使い、霧雨魔理沙。しかし魔理沙は浮かない表情をしている。

 

 普段彼女は元気にあふれている。今朝尋ねてきた彼女は覇気がなかった事に人形遣いの魔法使いは疑問に思った。普段の様子を違うと察したアリスは自分の家に入れ、事情を詳しく聞く事に。

 

「……あなたに覇気が無いだなんて珍しいわね? 聞いたところによるとよく静雅と戦って、まだ勝ててないようだけど……それが原因?」

 

「……それもあるかもしれないが、三日前の光景が頭から離れないんだぜ……」

 

「三日前の光景? 一体何を見たのよ?」

 

「……なぁ、アリス──」

 

 一拍置いて、魔理沙はアリスにある事を問いかけた。

 

 

 

 

 

「──静雅って鈴仙と付き合っていたりするのか……?」

 

 

 

 

 

「…………え? ごめんなさい。どうしてそういう考えに至ったのかしら? それにその名前って永遠亭の月から来た兎妖怪の名前よね? 一体何がどうなってそんな風に?」

 

「……実は三日ほど前──」

 

 アリスが詳細を求め、魔理沙はその事について話す事に。

 

 

 

 

 

 少女説明中……

 

 

 

 

 

「──と、いうことがあったんだぜ……」

 

「……なるほど、理解したわ。いつもと雰囲気が違う静雅と兎妖怪が何かの口論をしていて……兎妖怪の鈴仙は静雅の胸を借りて泣いていた。弾幕ごっこでも申し込もうと思ったけど、二人の間に割って入るのは気が引けてその光景を見ることしかできなかったと」

 

「大体はその通りだぜ。その、何ていうか……まるで、こ、恋人通しにも見えなくはなかったんだぜ。それを見て以来、紅魔館で静雅に会いにくいんだぜ……」

 

「恋人、通しね……」

 

 アリスは静雅と会話したある部分を思い出す……。

 

 

 

 

 

『ちなみに現在彼女募集中の静雅さんである』

 

『余計なことを言わない! 急に変なことを言い始めるからでしょ!?』

 

『いやぁ、言っておくべきだと? ちなみにアリスは彼氏はいるのか?』

 

『い、いないけど──って何言わせるのよぉっ!?』

 

『アリスルートが選択可能になった! やったねオレ!』

 

 

 

 

 

 静雅との会話を思い出すと彼女は現在いないはず。それに静雅はアリスの事を弄っている。メモ書きには【良い嫁さんになれるな】というからかいの言葉もあった。

 

「(……何でか、イライラしてきたわね……他の女性にもそう言いまわっているのかしら……)」

 

 思い出すのと同時に、魔理沙からの情報で頭が熱くなっていたが、すぐに冷静に戻った。そして考え直す。

 

 鈴仙は極力人物と関わりを持つことを避けている。とはいっても、薬売りを人里で行っているわけだが、鈴仙自身はしょうがないとして割り切っている。アリスはたまに人形劇を人里で行うことがあるのだが、偶々みかけた鈴仙の薬売りは業務的だ。しかし、その鈴仙が静雅と関係を持つのは考えにくいとアリスは考察する。

 

 そして、アリスの出した結論はいたってシンプル。

 

「だったら本人に聞けばいいんじゃない?」

 

 そう。本人に聞く。静雅なり、鈴仙なり直接問いかければいい。しかしこの場合、確実に距離で考えるとしたら紅魔館だ。アリスは紅魔館に行って真相を確かめたらよいのではないかと考え発言した。

 

 その事を言われた魔理沙はというと、焦りの表情が窺える。

 

「えっ!? マジか!?」

 

「マジも何も、気になるんでしょう? だったらさっさと聞く。これで終わりじゃない」

 

「……けどなぁ……」

 

 どこか渋っている様子の魔理沙。何時になっても決断しない彼女を見かねてアリスはため息をした後、折衷案を出した。

 

「……はぁ。だったら私も行ってあげるわよ。一応私は静雅の作った天牌人形があるからね。会う目的は作ってあげるから」

 

「……悪いな、アリス」

 

「……お礼を言われるのが何か違和感しか感じないわ……」

 

「おまっ!? 人が感謝しているのにその言いぐさはあんまりだぜ!?」

 

 お礼を言ったことに納得がいかない魔理沙だが、そんな彼女をおいてアリスは天牌人形を持ってこようとしながら、考える。

 

「(静雅に限ってそんな関係になっていないと思うけど……って何で私も気になり始めているのよ!? もう……! さっさと聞いてこのモヤモヤをなくそう!)」

 

『オデカケワッショーイ』

 

 アリスの行動を理解した天牌は着いていき、アリスと魔理沙は紅魔館へ向かうことにした……。

 

 

 

 

 

 

 

 紅魔館へ移動している道中。魔理沙は天牌を見ながらアリスに話しかける。

 

「なぁ……その天牌人形だっけか? どうして口が悪い時があるんだぜ?」

 

「元々は静雅曰く、『私の負担を減らすため』らしいわよ。この間の紅魔館での話し合いの後、ツッコミが私しかいなかったし……本当にあの時は疲れたわ……」

 

『イツカソノドリョクハムクワレルヨー』

 

「……だといいけど」

 

 アリスを労わるような天牌の言葉。

 

「なんかアリスには肯定的だよな、天牌は。私に掛ける言葉はあったりするのか?」

 

『トクニナイヨー』

 

「……悪口じゃないだけまだマシなのか?」

 

「だと思うわよ……天牌は私と上海や蓬莱と普通に会話するみたいだけど、ほかの人物だと罵倒や──」

 

 

 

 

 

『お──調──』

 

『あ──咲──』

 

 

 

 

 

 二人と人形の会話を続けていると、湖付近から男女の声が魔理沙達の耳に聞こえてきた。

 

 そして二人は聞き覚えのある声に魔理沙がまず反応する。

 

「……この声は咲夜と……静雅か? どうして紅魔館じゃなくてこんな湖の近くで……?」

 

「……まぁ、本人がいるならちょうどいいわね。聞こえてきた方向に向かいましょう」

 

 二人はそう判断し、音源のある場所まで近づいていき……会話がどんどん大きくなり、鮮明に聞こえてくる。

 

 

 

 

 

『──はい。これ今日の分』

 

『本当に通い妻になって来たな……ども』

 

『通い妻って……私達そんな関係じゃないわよ?』

 

『いっそなる予定は? オレは大歓迎だぞ?』

 

『さぁ? そういうのはよくわからないわ』

 

『ここで否定しないとは咲夜の優しさを感じる……』

 

『だってしょうがないじゃない。そういう経験ないんだもの。現状だと男の中では静雅とのふれあいが多いわけだし。人生、何があるかわからないしね』

 

『まぁ、案外くっつくとは思わなかった二人組がくっつく世代だからな……しかし、そう対処されるとオレも会話が膨らまないんだが?』

 

『実は人里で買い出しに行った時に、よくあなたの御友人に会うのよ。侠も買い出しに人里に来るしね。それで静雅の扱いを少々教えてもらっただけよ』

 

『あの野郎っ!? オレの情報を売りやがったなっ!?』

 

『静雅の行動のストッパーは侠だけだし、当然なことだと思うわよ? 侠の代わりにあなたの暴走を止める人が他にいないんですもの』

 

『だからここ最近、咲夜を弄っても反応が薄かったのかっ……!』

 

 

 

 

 

 二人の独特な会話を聞いた魔法使い二人はというと。

 

「……何か変じゃないか? 普通なら静雅は逆の立場だと思うんだが……?」

 

「……むしろ咲夜が話の主導権が握られているわね……これは本当に珍しいことだと思うわ……」

 

『ブッチャケジョウホウローエーハドッチモオタガイサマー』

 

 二人は会話を聞いて驚きを感じた。静雅は口がよく回り、主導権を握って人を弄ることがあるのだが……逆に握られるのは珍しいことに感じたのだ。

 

 そうこう話している内に、近くに人物の存在を感じたのは……咲夜は警戒しながら静雅に注意を促す。

 

『……静雅。周りに気配を感じるわ……』

 

『え? マジ? 妖怪とかそんなの?』

 

『敵意はないように思うけど……どうする?』

 

『そういうのが無いなら放っておいてもいいと思うんだが……』

 

「おいアリス。咲夜にバレているが……どうするつもりだぜ?」

 

「……素直に出てきましょう。お互いに敵意はないし、知り合いだし問題はないでしょ」

 

 アリスの判断に魔理沙は同意した。草の茂みから出てきて、魔法使い二人の目に映った風景に湖が入るようになる。

 

 その風景の中に、メイド服を着て顔の両サイドに三つ編みをして、ショートカットに見える髪型にカチューシャをしたメイドの十六夜咲夜。

 

 そしてもう一方の人物は……いつもとは違い、黒い半袖のTシャツを着ている。ズボンとヘアピンに関してはいつも通りだが、首にタオルを掛けており、手には何かが入ってそうなバスケット。外来人兼荒人神という神様でもある本堂静雅がいた。

 

 見慣れない静雅の格好に二人は疑問を持ち、彼に声をかける。

 

「……静雅? 何だ? その格好は……?」

 

「おまけに汗もかいているようだし……何しているわけ?」

 

「……どうしてこう見つかっちゃうんだろうな? 咲夜といい、お前さん達といい」

 

「まぁ、それはともかく……魔法使いのあなた達は何しにここまで?」

 

 咲夜は彼の事情を知っている。彼の事を思い、話題を変えようとしたのだが……それでも、魔法使い二人組は気になるようだ。

 

「いや、それについては私達の方が聞きたいんだぜ? こんなところで密会みたいな事をしてよ?」

 

「それについては私も同感よ……咲夜は全然動いてなさそうで静雅は汗をかいている。これは──」

 

 

 

 

 

『オーカタシュギョーチューダッタトオモウヨー』

 

 

 

 

 

 片言の言葉。その発言をしたのはアリスが所有している──天牌人形。その事にまず反応したのは製作者である静雅。彼の言葉には少しの呆れが含んでいるような言葉を天牌に問いかけた。

 

「わぁ、天牌さらっと事実を言っちまったよ。制作者のために隠そうという努力はないのか?」

 

『ハンニンハムイシキー』

 

「「……は(え)?」」

 

 天牌の言葉に静雅が肯定したとき、魔法使いの二人は天牌の言葉が信じられなかったのだ。

 

「(はっ!? 霊夢や侠に勝てる能力があるのにも関わらず修行!? 静雅って霊夢達と同じような天才じゃないのか!?)」

 

「(むしろだらけているイメージがあるのに、汗を流してまで……?)」

 

「静雅? 宴会の時も見たけど、侠に似たその人形は……?」

 

「あぁ。大体の奴には説明していなかったな。この人形は天牌。オレの努力と能力で作られた意思を持つ人形だ。余計なことを喋ったが、話をスムーズにしてくれる人形。それをアリスにな」

 

『ボクハテンパイー』

 

 そんな魔法使い二人に関わらず従者組は天牌を交えて会話していたが。

 

 ……数十秒後、我を取り戻した魔理沙は今の天牌の発言について静雅に問いかける。

 

「静雅、修行ってどういうことだ……? お前は能力で楽に勝つことが出来るんだろ? それで私にも勝っているのにも関わらず?」

 

「そんなの能力無しで侠に勝ちたいからに決まってんじゃねぇか」

 

「……侠に、か?」

 

 どこか、決意があるような静雅の答え。魔理沙は彼の言葉を真剣に聞き始めた。

 

「オレは偶々能力に恵まれていただけだならなー。能力で楽に勝てるようになるが、それって本当の実力ではないだろ? 結局、能力がなかったらオレは勝てるのか勝てないのかわからないけどな。侠みたいな天才に勝つには日々の努力が必要なわけさ。まぁ、オレは影ながら努力していたが結局見つかるしなぁ……オレのイメージ丸つぶれ──」

 

 

 

 

 

「そんなことないぜっ!!」

 

 

 

 

 

 静雅が自虐的に言っている最中に魔理沙の大きな声が響き渡り、その場にいた人物達は魔理沙に目線の焦点を合わせる。それでも、魔理沙は言葉を続けた。

 

「私はむしろ静雅のことを羨ましかったんだぜ! 能力にも恵まれて、頭も良いから口が回って、弾幕の扱いもうまい方だし、一種の天才かと思っていたんだぜ! でも、天才でもなお、努力をして何が悪いんだぜ!? そこは誇れるところだろ!『侠に勝つという目標』があるんだ! 全然イメージ丸つぶれじゃねぇぜ! むしろ見直したっ!」

 

「「「…………」」」

 

『クーキヲヨンデオクチチャックー』

 

 天牌の言葉はともかく、周りに静寂が走る。その空気にようやく自覚した魔理沙は顔を赤くし始め、腕を組んでそっぽを向きながらも訂正も含め言葉を続ける。

 

「と、とりあえずそこまで自虐的にならなくても良いってことだからな! 勘違いするなよっ!」

 

「……あのさ、魔理沙……過大評価しているみたいだが……オレは天才じゃないぞ? いたって普通の才能があるかどうか人間――いや、今は神か……ともかく、魔理沙……お前さんが思っているような強い人物じゃない。むしろ対等な条件だとお前さんが強いかもしれないぞ?」

 

 意味深な彼の言葉。それはそうだろう。静雅と魔理沙との弾幕ごっこは今のところ静雅の全勝中だ。その勝ち続けている彼が魔理沙の方が強いと言っているのだ。当然彼女は疑問に思い、確かめるように話しかけた。

 

「対等な条件って……私は結局能力を使っているようなものだし、それで静雅は普通に能力を使って私の方が強い? 冗談は──」

 

 

 

 

 

「オレと結構弾幕ごっこしているだろ? 実は最近極力は能力の使用を抑えているんだ。そこから考えると魔理沙の方が強い可能性がある」

 

 

 

 

 

「!? 能力を制限しているっていうことかっ!? だったらなおさらじゃないかっ! 能力を制限している静雅に私は負けているという事は──」

 

 魔理沙は言葉を繋げようとしたが……静雅が言葉を遮った。

 

 

 

 

 

「──落ち着けって。一番最近した弾幕ごっこだと、オレの方がスペル一枚多く使っているんだぞ? その時は魔理沙はスペル一枚だけだっただろ?」

 

 

 

 

 

「──は? 静雅の枚数が……多い?」

 

「……気づいていなかったのか? それとも忘れていたのか……能力を抑えた結果、魔理沙は一枚のスペルカードだけだったのにも関わらず、オレは二枚使用したんだぞ? そう考えても魔理沙の方が不利になるに決まっているじゃないか。まぁ、二枚目に移動させる前に倒したかったという考えもあるが。だからさ──」

 

 少し笑いながら静雅は魔理沙を目の前に言う。

 

 

 

 

 

「──魔理沙。お前さんは強いぞ」

 

 

 

 

 

「…………」

 

 その言葉を聞いた魔理沙は……安堵した気持ちになった。最近、悩んでいた事。努力家は天才に敵わないじゃないかという疑念が浮かびつつあった。目の前にいる人物は天才ではなく、自分と同じような努力家という事を改めて知ったから。

 

「(静雅は私と同じ……努力でここまで来たのか? もしかして弾幕の扱いもうまくなっていたのも、ここでずっと努力をしていたからか……侠に勝つために。この間の人里での弾幕ごっこに負けても、努力を続けていたのか……。今まで静雅を誤解していたぜ……霊夢や侠みたいな何もしない天才だと思っていたのに、実は努力家で──真っ直ぐだったんだな。それで、私は強い、か……)」

 

 魔理沙は自分の事を【強い】と言ってくれた事を嬉しく思った。ここ最近、静雅との弾幕ごっこは負けていたばかりだったが……彼の事情を知ると、負ける理由も納得し始めた。

 

 

 

 

 

 そして──過去に静雅が侠と戦った正々堂々の弾幕ごっこをしていてくれたことを嬉しく思った。

 

 

 

 

 

「……そっか。じゃあ静雅。今度の弾幕ごっこは完全に能力無しでやってくれよな」

 

「それはちょっと厳しいな。相手は弾幕ごっこ熟練者というのに……オレに負けろというのか?」

 

「たまには侠以外の奴に負けろ。そして勝たせろ」

 

「ま、気が向いたら完全に抑えてみるか……素の実力で魔理沙にも勝ちたいからな。最近紅魔館に来ていないようだから少し心配したんだぞ? ここ最近魔理沙と弾幕ごっこが日課となっていたのに……ここ数日は魔法の研究でもしていたのか?」

 

 そう静雅に問いかけられたとき、アリスは思い出したかのように魔理沙に小声で促すように話しかける。

 

「(ほら、話を振ってきたんだから聞きなさいよ。あの事)」

 

「(う……聞かなくちゃダメなのか? さすがにその話題は振りにくい──)」

 

 アリスとどうするか考えていたとき……上空から誰かの気配。その場にいた全員はその方向に振り向いてみると──紅白の巫女服を着た、博麗霊夢が近づき、着地して静雅を見て言う。

 

「…………見つけたわ、静雅…………!」

 

 

 

 ──ただし、何時かの黒いオーラを纏いながら。

 

 

 

 露骨に機嫌が悪そうな霊夢を見て全員はおびえる。しかし、話しかけられた静雅は答えるしかない。

 

「お、おう……皆のヒーローの本堂静雅だが……どうかしたのか、霊夢──」

 

 そう確認をとろうとしたところで……命令するかのように、彼にある事を告げる。

 

 

 

 

 

「──今すぐ守矢神社に行って侠を取り返しに行きなさいっ!!」

 

 

 

 

 

 




 二つのフラグ回の結果がこれである。

 ではまた。

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