白黒魔法使い視点。
ではどうぞ。
『──おいっ! 静雅っ! 今日こそは絶対勝――ってあれ? いないぜ……?』
私は再び紅魔館の門番を強行突破し、図書館に基本的にいる外来人、本堂静雅に弾幕ごっこを申し込もうとしたが……どうしてかいなかった。
私に気付いて、パチュリーとその使い魔である小悪魔が近づいて話しかけて来たぜ。
「静雅なら妹様を連れてさっき出ていったわよ。寺子屋に行っているわ」
「はい。なんでも寺子屋で教える授業で、永遠亭の人の助手みたいなのをやるそうなんです」
「何だ? 過去に侠が白玉楼で拉致られたときはそうだったが……静雅が行く必要ないんじゃないか? 寺子屋には侠がいるんだし、行く理由がわからないぜ?」
「……まぁ、本人曰く『面白そうだから』って言っていたけどね」
らしいな。静雅だとそういう感じだ。あいつは場を引っ掻き回すことが好きだからな。
「そっか……じゃあ昼ごろには終わるだろ。ちょっとその時間帯に合わせて人里に向かうとするぜ」
そう言って箒にまたがり、私は図書館から出て行った……。
「……なんか最近、魔理沙は静雅を追いかけてばっかりねぇ……」
「その分、図書館の被害はなくていいですけど……どうして静雅さんにこだわるんでしょうね?」
「大方、最初で負けたことを根に持っているんでしょ……」
時間が来るまで、キノコの採集などをして……人里に向かって飛んでいると……上空で誰かが戦っている。確認できたが、外見や服装などで判断すると一人は静雅だ。
だけどもう一方は……朱色のコートを着て、髪の毛が長くて白髪……? あんな奴いたか?
バレないように少し接近して、耳を澄ませてみると――
『あの時の初代龍神スペルの進化版か! 炎の弾幕で相殺に掛かるとは……!』
『それでも何発かかすったけどね……本当に厄介なスペルを使うね、静雅は……』
……言い方と、初代龍神――そうなると侠なのかっ!? 何でこの間はチルノっぽかったのに、何となく……不老不死の藤原妹紅っぽいぜっ!?
そして、明らかにわかる事――また侠が強くなっている!?
私は茫然としたまま静雅は私の知らないスペルを宣言して、侠に攻撃を加えようとしたが……明らかに躱しにくい攻撃を簡単に躱し、侠もまた新しいスペルを宣言して、炎の玉が静雅に降り注ぐ。そして侠が攻め――決着が着いた。
静雅と異変時に戦った時より多分、早く決着が着いている! 私でも難しいそうな弾幕を躱して、隙があれば攻撃をする。どうして侠は普段は戦いたくないと言いながら……こんなに強いんだぜ!?
「……やっぱり、才能、なのか……?」
霊夢も才能。侠も才能。静雅も多分才能。
「……どうして世の中は……こんな理不尽なんだぜ……?」
私はその光景を見ることしかできなかった……。
我を取り戻した私は、静雅に話しかけようとしたが……永遠亭の月からやって来たという鈴仙なんたらと一緒に竹林を歩いていた。さすがに気付かれるわけにはいかないのでできるだけ距離を取りながら。
話の内容はわからないが……途中、鈴仙が何かを静雅に訴えていた。それに対しても静雅も感情的に鈴仙へと言葉を返している。
話に割り込むことができなかった。どうしてか、重要な話、大切な話だと思ったから。
そして――微かだが、ようやく静雅の言葉を聞き取れた。
『……鈴仙。泣きたければ泣け。誰にも言わない秘密にしておいてやる。ここで──今まで溜め込んだもの、全て出せ。オレが受け止めてやる』
『──あぁあああああああああっ!!』
静雅がそう言った時……鈴仙は静雅の胸元で、大声で泣き始めた……。
その光景を見て……どうしてか私の胸の中が傷んだ。
――見たくない。静雅がほかの奴を受け入れているのを。
その後、私の知っている静雅の通りに戻って、泣き止んだ鈴仙は静雅の言葉に過剰に反応していたが、その光景はとても……楽しそうに見えたんだぜ。割り込んでいけないような雰囲気をしてて。
私は、ただ、その、光景を、遠目で、見ることしか、できなかった……。
次話で共通章に移ります。
―P,S―
サブ作品完結しました。紅魔郷までの物語ですが……よろしかったらどうぞ。
ではまた。