あやや視点。
ではどうぞ。
『──さて……侠さんは本当にアクションをよく起こしてくれますね~♪ 単純なことでもネタになりそうです♪』
守矢神社に辰上侠さんが住み込んでいるという情報を手に入れ、張り込みをしていたら……二人は人里に行き、そして早苗さんは知らなかったのか、ならず者につかまった。そこにヒーローのように助け出す侠さん。お姫様抱っこして、距離が近くて。早苗さんを救出しました。
さすがに侠さんは心にティアーさん──初代龍神様がいるのでゴシップネタは書けませんが……こういう事なら良いですよねっ。
「【龍神の先祖返り、辰上侠。暴漢から守矢の巫女を救う!】で購読者が増えますね! さらには人里では侠さんは信仰対象でもある。それはすなわち、侠さん関係の記事は人里の住民が購読するという事! いやぁ~……本当においしいネタですねっ!」
特ダネを手に入れたのを実感し、写真に撮ったデータを確認する。何故か暴漢のアジトと思われるところから屋根を突き破り、気のせいか早苗さんの外見に似た髪の毛をしていましたが……それもちゃんと撮ればよかったですね。でも……元の髪の毛に戻った侠さんと、首に手を回して抱き着いている早苗さんの写真が撮れましたからね! これだけでも何とかなることができます!
そして妖怪の山に戻って、どういう文面を書こうか悩んでいたとき……目の前から紫のリボンで結えられたツインテールにした髪の毛、服に黒いネクタイをして、外界でいう【けいたいでんわ】を持っている烏天狗が私に飛んで近づいてきた。
『文じゃない。何かご機嫌そうな顔をしてどうしたの?』
「これは珍しいわね。普段引きこもっている烏天狗が表に出るなんて」
「引きこもりじゃないしっ!? ただあまり外に出ないだけだしっ!」
「それを引きこもりって言うのよ……おぉ、引きこもり引きこもり」
「うざっ!? 何なのせっかく私から話しかけて来たのに!? これだから最低の記事を書く記者は!」
「ふふふ……最低の記事、ねぇ……」
「な、何なのよ~……その不敵な笑みは?」
目の前にいる引きこもりの烏天狗──姫海棠はたて。
自分の能力で念写している妄想新聞記者が言ってくれるわね。確かにこれまで私は大きく誇張したことがあったわ。それで濡れ衣だとか言って訂正を求められたり……でも、今回は【最低】と絶対呼ばれない内容のネタなのよっ!
でも……特ダネを言う前に少し質問しておきましょうか。引きこもっていて世間知らずな同僚のために。
「一応聞くけど……今、天狗の中で新しい規則が生まれたことを聞いているわよね? 引きこもりじゃないならば」
「は? 規則? そんなのできたの?」
あ、やっぱり普段あまり外に出ないで引きこもっているせいか情報が伝わっていない。全天狗に伝えられた新しい規則【龍神の子孫である辰上侠に危害を加えてはならない】。それを知らない天狗は、はたてだけみたいね……。
……誰か伝え忘れましたね。絶対。
「おやおやぁ? 引きこもりじゃないんわよねぇ? 全天狗が知っておかなければならない規則だというのに……やっぱり引きこもりで情報が伝わっていないのかしらぁ?」
「ちょ、ちょっと待ってなさいっ! 今思い出すから! 思い出す! えっと──あれよ!【人間が山に来たとき問答無用で追い出す!】山の山頂の神社は許してもらったけど、ほかの人間は必ず追い出す的なっ!」
「はたて。あなたが侠さんにそうした時点で首が飛んでいたわよ? 天魔様によって」
「えっ!? 首が飛ぶ内容っ!? しかも間違ってたわけっ!? それに誰よその【きょう】ってっ!?」
「はたて……これから毎日外に出ましょうね?」
「妙な敬語になるんじゃないわよっ!? 確か【きょう】って──あぁっ! 思い出したわ! 日食の異変を解決させた人間よね! そうよその人間よ!」
「……情報が相変わらず古いわね……ではその人間が何で手を出していけない理由は何だと思う?」
「…………はっ? どうしてその人間が特別扱いされているのよ?」
「……あなたが引きこもりって事は再確認できたわ……」
「だから引きこもりじゃないしっ!」
はぁ……仕方ないわね……丁寧に、引きこもりの同僚のために教えてあげるとしますか……。
記者説明中……
「──と、いうことなの。きちんと頭に入れておきなさいよ。引きこもり」
「……訳が分からないわよ……外来人が幻想郷を創ったといわれている先祖返りで……その初代龍神がその【きょう】に憑りついている? すごい特ダネものじゃないっ!?」
「残念だけど、これはもう周知の事実よ。だけど……私は今話題になっているその子孫の特ダネを手に入れましたからね!」
「マジ!? どんなのよ!?」
「それはあなたが言う【最低】の新聞で記事を書くことにするわ。あなたも特ダネを手に入れない限り妄想新聞なんて読んでもらえないわよ~? 何せ私は事実を書くんだから!」
「う……だったらそれを超えるネタをつかんでやるんだからーっ!」
そう言って私は飛翔した。下からはたての悔しそうな声が聞こえた。
……この機に、外に出回りして実際に確認すればいいんだけど……。
次章で何かが起こる(確信) 彼女の新聞は誇張もあったりしますからねぇ……。
ではまた。