幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 人生、そう簡単に上手くいかないもの。
 早苗視点。
 では本編どうぞ。


五話 『作戦決行……』

 五日目の夜。お二人が考えてくださった計画(九割諏訪子様)を決行することにしました。恥ずかしいこともあるでしょうが……頑張ります!

 

 私は柱の陰でお風呂上がりの辰上さんが借りている部屋に入っていくのを見守り、耳を澄まして……辰上さんが借りている部屋に神奈子様と諏訪子様がいて、辰上さんの振った話を聞き取ります。

 

『……? どうしたんですか八坂さんに洩矢さん? 襖の奥から荷物を取り出していますが?』

 

『あぁ。済まないね侠。この部屋に置かれているだろう荷物をちょっと徹夜で探すことにしたんだ』

 

『昼も探したんだけど、後は探していないこの部屋だけなんだよ……もうすぐ寝るのにゴメンね?』

 

『……構いませんよ。この部屋を借りている身ですからね。じゃあ布団は居間に移動させ──』

 

『侠には悪いんだが、今夜は早苗の部屋で寝てくれないか?』

 

『…………ゑ?』

 

 神奈子様の頼み事で辰上さんは珍しく間の抜けた声を。その事に諏訪子様はフォローするかのように話を続けます。

 

『居間も荷物を探そうとしていてかなりグッチャグチャになっているから、片付けようにしてもかなりの時間が掛かるよ? さすがに私達も探し終えたらバタンキューしたいし、軽く体洗ったらすぐ寝ちゃうから。そうなると必然的に早苗の部屋しかないんだよ』

 

『ちょっと待ってくださいよ!? 東風谷の意思はどうなるんですか!? 同世代の異性と同じ部屋で寝るのは──』

 

 ……神奈子様と諏訪子様の協力で、そ、その……私の部屋で一夜を過ごす作戦をさせてくださいました。そうすれば辰上さんは部屋で二人きりの私の事を意識するだろうという狙いです。もちろん、探し物はありません。

 

 私はタイミングを見計らって襖を開けて部屋に入り、言葉を繋げます。

 

「わ、私……辰上さんなら、い、一緒に……寝ても大丈夫です!」

 

「……東風谷……明らかに無理しているよね? 風邪はもう治りかけているけど、無理して同じ部屋で寝るのは──」

 

「侠。早苗が良いと言っているんだ。お前が【良い奴】は私たちが知っている。それも見込んで早苗は良いと言っているんだ。遠慮することはない」

 

「まぁ~手を出したら責任を取ってもらうからね~。その時は腹をくくりなよ」

 

 お二方の了承の言葉。それでも辰上さんは不満というよりは妥協案なのでしょうか……。その妥協案を私に提案してきますが──

 

「いや、手を出しませんから……東風谷。いっそ自分は廊下で寝ても構わないんだけど──」

 

「ダメですよそんなことっ! 辰上さんはお客さんなんですからそんなことはさせません!」

 

「……………………はぁ。わかったよ」

 

 やりました! 辰上さんの了承です! 辰上さんの後ろにいるお二人はハイタッチしていますが……。

 

 辰上さんは部屋の隅に置かれている布団を背負うと、私に近づいてきます。

 

「じゃあ悪いけど東風谷の部屋に行かせてもらうから。迷惑はかけない」

 

「いえいえお構いなく! 逆にこちらが迷惑をかけてすみません!」

 

「まぁ……しょうがないのかな?」

 

 少し他愛のない会話をしながら私の部屋に向かいました……。

 

 ……ここからが本番です!

 

 

 

 

 

『……案外早く腹をくくったな、侠……』

 

『多分話が平行線になるって悟ったんだね。あとは早苗が……寝かせないようにするだけ♪』

 

『(……何故だか失敗に終わるのは気のせいか……?)』

 

『風祝と龍神の子孫か~♪ 楽しみだね~♪』

 

 

 

 

 

「……案外、狭いね……」

 

「す、すみません……少し散らかってて……」

 

「女子の部屋は小物とかいろいろ多いからね。陽花もそうだった」

 

 辰上さんの布団を敷き終えると……私の布団との距離が五センチあるかどうかでした。本来ならまだ広げられるんですが……家具や小物でスペースが埋められています。

 

 ……私は布団を伸ばしている辰上さんにとある事を話しかけます。

 

「辰上さん……もしよかったら名前で呼ばせてもらってもいいでしょうか? 同世代の男の子ということで苗字でよばさせてもらっていましたが……良いですか?」

 

「変な呼び方じゃない限り何でもいい」

 

「! じゃ、じゃあ──きょ、【侠君】って呼んでもいいですかっ」

 

「……別に構わないけど、呼びづらかったら苗字で良いよ?」

 

「そんなことないです! 辰か──侠君!」

 

「……まぁ、いいけど」

 

 一先ずは侠君の呼び方をしても良いと言われました! 後は……。

 

「そ、それでですね……もしよかったら私の事を──」

 

「もう夜は遅いし、電気消していい? 完治しかけだけど、東風谷の風邪の事も考えてもう寝よう」

 

「は、はい……そうですね……」

 

 うぅ……遮られてしまいました。名前で呼んでもらおうと思っていましたのに……何て間が悪いんでしょう。

 

「(……今遮っておかなかったら慧音さん達みたくなっていた気がする……)」

 

 何か悩んでいるような表情をしながら侠君は電気を消しました。もう光は薄暗い月明かりだけで、うっすら顔を確認できるぐらいの明るさです。

 

「じゃ、おやすみ」

 

「は、はい……」

 

 侠君は布団に入ると、顔をそむけて寝始めようとしています。

 

 ……ここからが正念場。諏訪子様に言われた通り恥ずかしいですが……侠君に話しかけます。

 

「あ、あの侠君……何だか修学旅行の夜みたいじゃないですか?」

 

「…………」

 

「何かこう……新鮮ですよね。い、異性と同じ部屋で寝るというのは。相手が侠君、だからでしょうか……?」

 

「…………」

 

「そ、それで……慣れないことなのか……体が火照ってドキドキしまっていて……ど、どうにかできませんか……?」

 

 うぅ……よくよく考えてみればこれって大胆な告白なような……本当に体が火照っているような……。

 

 でも……何故か侠君は何も反応が無い。

 

「…………」

 

「……? 侠君?」

 

 何かおかしいです。まだ布団に入ったばかりはずですのに、返事が返ってきません。また、話しかけてみます。

 

「あの、侠君……?」

 

 

 

 

 

「──Zzz……」

 

 

 

 

 

 …………えぇーっ!? もう寝ているんですかっ!? まだ布団に入って数秒で!?

 

「きょ、侠君っ!? もう寝てしまっているんですかっ!?」

 

「Zzz……」

 

 ほ……本当に寝ているんですかっ!? もう安らかな寝息が繰り返して聞こえます!? 声をかけても起きる様子はしないですし、いくらなんでも常識はずれ過ぎやしませんか!?

 

 そ、それに……隣で異性がいるんですよ!? 距離が近いにも関わらず、意識すらしてもらっていないっ!?

 

 うぅ……どうしましょう……? 逆にこっちが眠れません……。

 

 

 

 

 

 

 〜side out〜

 

『……おかしいよ。神奈子』

 

 居間で早苗と侠の【とある事】を期待していた諏訪子だが……その気配が無い事に不満があるように神奈子に確認をする。彼女は少し呆れながらも、諏訪子に返事をした。

 

「……一応、どうおかしいか聞いておこうか。どこがおかしいんだ?」

 

「だってそろそろ喘ぎ声が聞こえてきてもおかしくないのにそれすら聞こえてこない! 私が早苗に仕込んだ【男を堕とす悩殺ワード】が男を揺さぶるはずなのに!」

 

「…………失敗したとしか多分、言いようがないんだが…………」

 

「何!? 侠って○○なのっ!? ○○なのっ!?」

 

 他者がいては発言出来ないような発言をして侠に疑問を抱く諏訪子。彼女の言った発言に神奈子は抗議の言葉を。

 

「おいっ!? さすがにそれは侠に失礼だろうっ!?」

 

「だって同世代の女の子が一緒の部屋だよ!? お互い薄着だよ!? そして布団だよ!? 早苗のスタイルも良いんだよ!? もうヤるには十分条件がそろっているのに、侠がその行動を移さないという事は○○方面に興味があるんでしょっ!? 薄い本になって!」

 

「…………お前は一体、侠をどんな風に見ているんだ…………?」

 

「例え紳士でも誘われたらヤるのが紳士でしょっ!?」

 

「(駄目だこいつ……早く何とか──いや、無理か……)」

 

「──神奈子様~……諏訪子様~……」

 

 発言がずれている諏訪子に神奈子は呆れている時に……居間の襖が開いて、そこには守矢神社の巫女である東風谷早苗がいた。ちょうど会話に挙がっていた人物の一人だったので神奈子は彼女に彼のことを問いかける。

 

「早苗……ちょうど良い。侠は今何しているんだ?」

 

「そ、それが……諏訪子様の言う通りの言葉を言う前に……侠君、すでに寝ていたんですよ……」

 

「…………えっ? 隣に早苗がいたにも関わらず?」

 

「はい……声を呼びかけても反応してくれませんし……何故かもう熟睡したのかと……」

 

「(……ある意味すぐ寝て正解だったぞ、侠……)」

 

 早苗からの報告に目を丸くする諏訪子。それに対して神奈子はどこからか安堵した表情を浮かべているが。

 

 少なくとも自分の想像違いだった諏訪子は安堵して呟くように言う。

 

「それは予想外すぎるねぇ……○○じゃなくて良かったよ」

 

「○○っ!? 侠君は絶対ノーマルですっ!」

 

「まぁ、それはともかく……新しい作戦を練るよ!」

 

「……それとはっ!?」

 

「(……侠が来てから随分良い意味で騒がしくなったな……)」

 

 少し遅い時間なのだが、早苗に色々な事を教えている諏訪子を神奈子は見ながら……どこか微笑ましく思う神奈子だった……。

 

 




 彼は環境が整っていればどこでもすぐに寝ることが出来るという……。

 次話はフラグ回です。

 ではまた。

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