引き続き鈴仙視点。
では本編どうぞ。
「――姫様、少しお時間を貰ってもよろしいでしょうか?」
組んではいけないようなてゐと静雅を連れて、永遠亭の主である姫様の部屋につき、返事を待つ。
『? イナバ? どうかしたの?』
「本日永遠亭に来た外来人の本堂静雅を師匠が紹介するようにと言われたので連れてきました。今大丈夫ですか?」
『別にいいわよ~。入れちゃって』
「……姫様なのに随分軽い返事だな……」
姫様の言葉遣いに静雅はそう言う。静雅の言葉にてゐが反応を返した。
「姫だからといって上品に過ごしていることは間違いウサ。そっちの主だって子供みたいな反応がする時がある事と同じウサ」
「まぁ、レミリア嬢は一定の感情がたまるとカリスマブレイクして『うー☆』って言っているからなぁ……それと同じか」
「姫様と吸血鬼と一緒にしないでよ……明らかに全然違うし」
静雅にツッコミを入れながら姫様の部屋の襖を開ける。そこにいた人物は私達に振り返り、反応を示した。
『イナバにてゐもいて……そちらが噂の外来人? へぇ……中々整っている顔しているじゃない。新聞通りね』
もちろん、そこにいたのは永遠亭の主である蓬莱山輝夜様。ピンク色の上着を着て、赤色のロングスカート。姫様は興味深そうに静雅を観察している。
姫様の言葉に感心しながら静雅は言葉を繋げた。
「こりゃ光栄だ。姫様に新聞で外見を覚えられているだなんて」
「新聞に書いてあった通り、【幻想日食異変】を起こした張本人でしょ? あの異変は若干私たちが起こした異変に似ていたから共感していたのよ。イナバの言う通りだとあなたが本堂静雅ね。私は蓬莱山輝夜よ。適当に呼びやすい言い方で呼んで頂戴」
「じゃあ
「……ぷっ! 初対面なのに冗談を遠慮なく簡単に言えるなんて今まで違う男ね」
「おっと、中々のもので。簡単に見抜かれてはしょうがない、では
姫様と遠慮なく談笑しているところで静雅は急に悩み始めた。
そして――何かを思い出したように発言する。
「……そうかっ! ようやく思い出した! 竹に月、お前さんの名前の輝夜、そして姫!【竹取のかぐや姫】か!」
「! その頃の私を知っているの!?」
静雅の言葉に姫様も驚き、当然私もてゐも驚いている。
……どうして外界からやって来たはずなのに地上でいろいろあった時期について知っているの!? 私でさえ言葉で説明されたぐらいなのに!
驚いている私達に気付いてか、我に戻って話を続ける静雅。
「悪い悪い。実は外界の古典の教科書で【竹取物語】という小説みたいなものがあるんだ。そこの最後には確か地上に【蓬莱の薬】を残して、かぐや姫は月からの使者に月に帰るんだよな? いやぁ、納得納得……うん? この話は千年ほど前の物語なのにどうしてまったく同じような感じなんだ? 輝夜はこの【かぐや姫】の親戚か何かか? それにしては同じ名前のようだが……?」
「……外界に私達についての本みたいなものがあるのね……それは驚いたわ。でも前半はともかく、後半は間違っているわ」
「そうウサね。後半は明らかにでっちあげウサ」
「? どう違うんだ?」
姫様の言葉にてゐは同調し、静雅は姫様達の言葉に疑問を覚えているけど、それをに構わず姫様に私は問いかける。
「姫様……良いんですか? それは姫様達の事情を教えることになりますけど……?」
「別に今更じゃない。静雅は特定の人物しか知らないはずの情報を半分持ってる。それだったら正しい情報を教えてあげた方が良いでしょ♪」
「そんな軽々しく……」
「鈴仙。別にいいんじゃないかウサ? そもそもししょーは姫様に静雅を紹介するためにここに来たんだウサ。それに静雅についての詳細も聞くためでもあるんだからちょうどいいウサ」
「てゐの言う通りだな。じゃあオレも輝夜の話を聞くとともに、オレの詳しい情報でよければ話そう」
てゐは姫様に同調し、静雅は彼自身の話を交えて姫様と話をし始めた……。
少年達お話し中……
「――まぁ、ざっとこんなものね。それにしても神々を滅ぼす神って……幻想郷にはない神様ね……」
「……スケールの大きさはそっちの方が大きいだろ? 月から来た使者を先生さんが殺して、地上に隠れ住んでいたとは……【かぐや姫】半端ないな……」
姫様と静雅は情報を交換し合った。姫様は物語の真実を。静雅は自分の事についてを。
それでも会話は終わらないようで、姫様は静雅に話題を振った。
「それで紅魔館の主の妹の従者ねぇ……あなたは生活が楽しそうね」
「今を楽しんで生きているつもりだ。逆に蓬莱人っていう……不老不死というのか? 暇すぎないか? 老いも死ぬこともない人生って」
「そうよね~……この頃異変もないから退屈だし……」
「せめてもっとアグレッシブに行動したりしないのか? 幻想郷を見て回るとか」
「不老不死といえど、疲れは体にくるのよ? それにそこまで遠出するつもりはないわ」
「せっかく永久な時間が手に入ったんだからもっと有効活用しようぜ?」
「とりあえず暇な時間があったら【殺し合い】とかしているわ。ちょうど私や永琳と同じ蓬莱人がいるし」
「命は投げ捨てるものではないんだが……綺麗な顔をしているのに【殺し合い】とか個人的にはしてもらいたくないな」
「あら、ありがとう♪ そういうあなたも綺麗な顔をしているわよ?」
「こりゃ参った。物語でも絶世の美女と言われた【かぐや姫】から褒められるとは。本気になっちゃうぞ?」
「その時は私の難題をこなしたら考えてあげる♪」
「遠回しな断りじゃないですか嫌だー!」
「まぁ、それはあなたの行動次第ね。私を楽しませてくれたら考えてあげてもいいわ」
「気長に考えていきますか、輝夜が楽しめそうなこと」
「え~? そこは求婚とかしてくる場面じゃないの~?」
「さすがに無謀なことはしない。まずはお互いの事を知ろうぜ?」
「確かにそれが一番よね。どういう関係かは置いておいて」
「だろう?」
……すごい会話が弾んでいる。姫様はご機嫌そうに話しているし、静雅も楽しそうに話している。こんな姫様見たことがない……。
てゐもそう思ったのか、小声で耳打ちしてくる。
「(中々姫様に好評価じゃないかウサ?)」
「(そんな気がしてきたわ。初対面で普通こんなに話す?)」
「(話さないウサね。まぁ、そこは静雅の性格に関係するんじゃないかウサ?)」
性格、ね……聞いている感じ、今まで話してきたことと合わせると前向きよね。冗談も交えたりして、相手の距離を埋めようとしている。
……正直、その性格が羨ましい。私には……そんな資格はないもの……。
話し終えたのか、満足そうな表情を見せながら姫様は言う。
「ここまで会話で盛り上がったのは初めてだわ♪ やっぱり求婚してきた男達と違ってあなたは別格よ」
「恐れ多いな。そこまで褒められると」
「いっそ、ここで働かない? あなたがいると退屈しなさそう♪」
「えっ!?」
急に言った姫様の発言に私は声を上げてしまった。当然注目が集まっちゃうなか、姫様が私に話しかけてくる。
「? どうしたのよイナバ? 静雅がここで働くのは反対?」
「い、いえっ。そうではないんですが……急な発言で驚いてしまっただけです」
「そうかもね。でも、退屈しなさそうってのは本当よ。てゐはどう思う?」
「いてくれた方がイタズラが捗るウサ」
話を振られたてゐは同意する。あんたは要求に素直すぎよ……しかも被害を受けるの私じゃない。
当本人の静雅というと、首を横に振って断りながら姫様に返事をする。
「申し出はありがたいが、今の紅魔館での生活に満足しているんでね。それは無理そうだ」
「あら、そうなの?」
「まぁ、何かの不祥事で紅魔館から追い出されたときはよろしく頼む」
「不祥事の内容にもよるけどね。その時はよろしく♪」
『うどんげー? 薬ができたから静雅を呼んできてくれるー?』
静雅が話し終え、姫様も話し終えたとき、ちょうど師匠が薬ができたと呼びかけている。確か図書館の魔女の喘息の薬だったわね。
「ほら、行くわよ」
「了解した。じゃ、またの機会に」
「えぇ。またの機会に」
「てゐはどうするの?」
「ししょーの所に行ってもあまりやることがないウサ。私は自室に戻っているウサ」
私達は姫様とてゐと別れて、師匠の所へと向かった……。
次話でこの章は終わりです。
ではまた。