幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 もう一話続きそうです。
 表主人公視点。
 では本編どうぞ。


三話 『妖怪の山』①

 再び進んでいくと……川のせせらぎだろうか? そういう音が聞こえてきた。

 

 その音を頼りに少し歩いて目の前に広がったのは……河があり、水も綺麗なように透き通っている。魚も元気に泳いでいて健康そうだ。

 

「……自然が綺麗」

 

 外界だとこんな場所見つけるのに苦労しそうだなと思っているところに──

 

『ひゅいっ!? 人間っ!?』

 

「……ん?」

 

 近くで誰かが驚いた声が聞こえ、辺りを見渡してみると……誰もいないように見える。

 

 空耳かなって思いかけたけど、ご先祖様は自分に話し掛けてきた。

 

『「(あるじ)。北西の方向から気配がする。おそらく近くに河童がいるはずだの」』

 

「河童? 河童ってあの全体が緑で頭に皿があるっていう?」

 

『「残念ながらそういう外見ではない。案外人に近い外見だの。今の声の(ぬし)は見えないように見えるが……凝らして見れば主なら違和感を見つけられるはずだの」』

 

 ご先祖様の言う通り、北西の方向に向いてみる。その景色を凝らして見ると……何かが空間にいる。河の水面と空気が触れている一部分が何かがあるような違和感を見つけた。

 

 ……見つけたは見つけたでいいんですけど、どうすればいいんですか?

 

『「敵意をないことを示せばよい。河童は人間は盟友と昔から言っておるくらいだからの。話しかけてみるとよい」』

 

 ……一先ずはご先祖様の言うことに従い、その方向に話しかけてみる。

 

「そこに誰かいるんだよねー! 争うつもりは全然ないからお互いの事をよく話そう!」

 

『えっ!? 私の姿が見えているの!?』

 

 見た目誰もいないところから声が聞こえてきた。本当に誰かいたんだ……。

 

 姿ははっきり見えないけれど、話を続ける自分。

 

「完全には見えてないけど、そこに誰かいるのは確認できるんだよー! とりあえず姿を現して話し合おう!」

 

『(う、うーん……霊夢や魔理沙と違って敵意はないみたいだし……いいかな?)』

 

 自分は問いかけ続けていると……違和感のある空間から女の子が急に現れた。

 

 見た目はスカート部分にたくさんのポケットがついている水色のスカート、上着も水色で胸には何やら鍵みたいなアクセサリーがある。そして頭には緑の帽子。背中には服と青色の大きなリュックサック。

 

 え……? これが河童? どこに河童要素が……? もしかして帽子の中に皿があるとか……?

 

 その女の子は陸に上がると、こちらに近づいてきて話しかけてくる。

 

「……改良した光学迷彩が見破られるとは思ってなかったよ……」

 

「凄い!? 外界にそんなものはないよ!?」

 

 幻想郷って科学に疎かったはず。なのに光学迷彩とかなんで持っているの!?

 

 自分の言葉に疑問を覚えたのか、その女の子は話しかけてくる。

 

「あれ? 外界? ということは……もしかして外来人?」

 

「一応そうなるけど……」

 

「おぉーっ! 外界の盟友が目の前に! ねぇ、盟友! 外界の機械か何か持ってない!?」

 

 いつの間にか盟友扱いにされて、キラキラした目で何か尋ねられた!?

 

『「目の前にいるのは河童の河城にとりみたいだの。自己紹介はちゃんとすることにして……河童という種族は外界で言うエンジニアなのだ。そのため、機械には大きな関心を持っておる。さっき言っていた光学迷彩も自作であろう。それに外界では機械が発展しておるからのう……一応、【携帯電話】を渡してみてはどうかの? そうすれば話はスムーズに進むはず」』

 

 ご先祖様の解説とともに、ポケットに入っている携帯電話を取り出す。それを見た河城はテンションが上がり始めた。

 

「おっ!? はたてさんや外界の巫女が持っている携帯電話だ! 少し盟友に相談があるんだけど……それ、貸してくれない? 知り合いにも持っている人はいるんだけど貸してくれなくて……ちゃんと必ず返すから! ねっ!」

 

 ……うーん。まぁ、幻想郷では電波が入らないから使えないし、充電も切れてるし……いいか。

 

「いいよ。充電切れているけど」

 

「本当ーっ!? ありがとう盟友! この恩は忘れないよ! 充電ぐらいは私にかかればお茶の子さいさいだから気にしないで大丈夫!」

 

 携帯電話を受け取ると笑顔で喜び始めた。自分の渡した携帯電話をカバンの中に入れると話しかけてくる。

 

「おっと、まだ自己紹介がまだだったね盟友。私は河城にとり。ごらんのとおりエンジニアだよ」

 

「自分は辰上侠。一応人間」

 

「……いやいや、一応人間ってどういうこと……? あ、それよりも盟友──いや、侠。どういう目的で山に入ってきたのかは知らないけど、引き返した方が良いよ」

 

 一通り自己紹介を終えると、河城は口調を重くして山を引き返すことを勧めてきた。一応、その理由はわかっているけど……。

 

「ここが人間立ち入り禁止だからって事だよね?」

 

「そうそう、人間は立ち入り禁止──って、それを承知で入ってきたの!?」

 

「そうじゃないと目的地に行けないし」

 

「これはこれは……何という……勇気は認めるけど、時には引くことも肝心だよ? 私の友人の天狗はともかく、ほかの天狗に見つかると──」

 

 

 

 

 

『──そこを動くな侵入者!』

 

 

 

 

 

 河城の話を聞いていると……そばに剣と盾を持って、赤い頭巾のようなものをかぶり……犬耳? みたいなものが生えている。尻尾もあるみたいだけど。

 

 その犬っぽい妖怪はこちらを警戒しているようだけど、とりあえずは話すことが大事。詳しく聞いてみた。

 

「君は誰? 何かの犬の妖怪?」

 

「犬ではなく白浪天狗! 人間、ここは誰の領地か知っているのか!?」

 

 威嚇しているような声で話しかけてくるけど……で、ご先祖様、誰の領地なんですか?

 

『「元々は我の領地だろう」』

 

 ですよねー。

 

 ……おふざけはそれぐらいにして……現在、誰の領地なんですか?

 

『「雛からの情報であれば一坊だの。つまりは天狗が妖怪の山を仕切っておるのだ。我が下界と触れ合っていたときは鬼が仕切っていたはずなのだがな……山には鬼はいないようだの」』

 

 ……元々は伊吹達の領地だったのか。

 

 喋ることを考えていたとき、河城から声をかけられる。

 

「言わんこっちゃない。椛だから良かったけど……ほかの天狗だったら容赦なく攻撃されてたよ? 悪いことは言わない。今すぐ引き返した方が良いって」

 

「残念だけど引き返すという選択肢はないんだよねぇ……」

 

「ひゅいっ!? 何で!?」

 

「その答えは私達に対する挑戦状と受け取った! あの世で後悔するといい!」

 

 河城の申し出を断ると、白浪天狗という天狗の何かが剣で斬りかかろうとする。

 

 ……正直言って剣の扱いは魂魄の方がうまいなぁと思いつつ──

 

「それっ(ぱしっ)」

 

「──!? 離せ人間!」

 

「……え?」

 

 斬りかかれる前に剣を持っている腕を素早く掴み、無効化する。天狗は抵抗するも振りほどけなく、それを見てる河城も呆然としている。

 

 自分はそれだけじゃなく──剣をはがして地面に伏せさせて、天狗の背中に乗っかる形で掴んでいた腕に関節技を決めにかかる。

 

「いーち、にー、さーん──」

 

「痛い痛い痛い痛い痛いっ!? 腕が!? 外れるっ!?」

 

「……天狗に関節技をする盟友なんて初めて見た……」

 

 呆然と自分達を眺める河城だったけど、白狼天狗の子が河城に助けを求め始めた。

 

「に、にとり! 見てないで助けて! この人間を攻撃して!」

 

「う……さっきその盟友から携帯電話を貸してもらったばっかりなんだ……そんな盟友を攻撃することなんて……私にはできない……」

 

「私より【けいたいでんわ】というものを取るの!?」

 

 河城が悩み、涙目で訴えている天狗。そこに──

 

『あやややっ! 後輩が侠さんに関節技をされているのは非常に珍しい! ある意味スクープものですね!』

 

 ──風の如く現れた新聞記者の烏天狗、射命丸文。急に現れては自分たちの写真を撮り始めている。一先ずこれ以上撮られるのは不快なので止めた。自分は立ち上がり、射命丸に話しかける……関節技を決められた天狗は河城に慰めてもらっているけど。

 

「射命丸。この天狗は何?」

 

「ひどい言い方ですね……天狗なのに。彼女は私の後輩のようなもので犬走椛といいます。現在、侠さん以外に侵入者が数名いるという情報があるんですよ。一応聞きますが……あなたは一人で来ましたか?」

 

「一人だけで来たよ(ご先祖様を除く)」

 

「そうですか──なら、今すぐ山を下りなさい。私と椛だからよかったものの、殺されても文句はないわよ?」

 

 喋っている途中で突然口調が変わった。まるで自分みたいに。

 

「口調が違くなったけどどうかしたの?」

 

「私は新聞記者である射命丸文と、妖怪の山の天狗である射命丸文でもあるの。今まで会ったのは新聞記者の方。今の私は天狗としての方。ただでさえ妖怪の山は人間の立ち入り禁止なのに、ほかにも数名侵入者がいて天狗たちはピリピリしているの。だから今すぐ山から下りなさい。私の目の黒いうちは見逃してあげるから」

 

「……【人間】の立ち入り禁止、ねぇ……」

 

「文先輩! その人間は私、つまり天狗に危害を加えてきたのですよ! 見逃すとは言わずに、大天狗様に差し出すべきです!」

 

「あわわわわ……」

 

 射命丸の言葉に犬走が異議を申し立てるが、それについて河城は慌て始める。

 

『「……やれやれ。手間が掛かる天狗共め。主、我と代わるぞ」』

 

 ……わかりました。

 

 自分はまたご先祖様に体を貸して──髪の色が変わり、目の色も変わる。その場にいた人物たちは当然驚き始め、射命丸が話しかけ始める。

 

「!? それは一体……!?」

 

「射命丸文。これからの我の姿をカメラに収めよ」

 

 ご先祖様はそういった瞬間──赤い鱗の龍の翼を広げ、両腕も鱗に包まれて爪が伸び、頭には後ろに沿っている二本の赤と白の縞模様の角。その姿は龍を人間化した【竜人】といってもいいだろう。

 

 急な変化を見せた目の前の人物に三人は驚愕している。

 

「に、人間の外来人のはずよね、あなた!?」

 

「盟友が……妖怪化した……!?」

 

「まさか……人間を装っていた妖怪!?」

 

「体は人間だの。それで文……我の姿を収めて、お主らで言う天魔にこう伝えるといい」

 

 言葉を区切って、ご先祖様は言う。

 

「【一坊よ、大きく成長して何よりだの。この呼び方をしたからには我が誰だかわかるはず。わからなければ我がつぎ込んだ時間を返せ。お主は心まで幼稚ではないはず。我は諸事情で我の子孫に憑りつき、このような外見をしておるが……我は一応生きておる。今はまだやらなければならぬ事があって顔を合わせられないが、時間を見つけたら自ら会いに行こう。その際に、これからは我の子孫である辰上侠を妖怪の山に入山許可を出すのだ。良いな?】と」

 

「……あなた、何様のつもりなのかしら? 大天狗様に伝えてもいいけど……どうなっても知らないわよ?」

 

「悪い結果になったらなったで天坊は心が幼稚だった。そういうことだの」

 

「貴様! 大天狗様に多くの侮辱! 首が飛ぶ覚悟はできているんだろうな!」

 

「その際は──天狗どもを再教育してやろう」

 

「(何で急に態度が変わったと思ったら喧嘩を売り始めているの!? それでこの盟友は何者なの!?)」

 

 射命丸は一応今のご先祖様の姿を写真に収め、どこかに飛んでいった……。

 

 

 

 




 ……何だろう……結果が予想出来るような……?

 ではまた。

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