幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 子供が親に伝えたりしたらこうなると思う。
 表主人公視点。
 では本編どうぞ。


三話 『蓬莱人、人里にて』

 寺子屋の授業が終わり。チルノ達に遊ぼうと言われたけど先約があるってことで断り、フランドールは静雅に迎えに来てもらって帰って行った。

 

 ……ご先祖様が助けたという生徒にすごい話しかけられたけど。

 

 誰もいない教室の中、慧音さんに頼まれた瓦版作りをしながらある人物を待つ。

 

 そして──扉が開き、その人物は自分に話しかけてきた。

 

『侠……ちゃんといてくれたな』

 

「ん。約束通り待っていたよ、妹紅」

 

 昨日寺子屋で話したいことがあるという事で待っていた──藤原妹紅。その瞳は少し迷いがあったような気がするけど……目つきが凛々しく変わった。

 

「妹紅、とりあえず腰を下ろしたら?」

 

「あ、あぁ……そうするよ」

 

 とりあえず話し合いがしやすいようにする。普段チルノが座っている席に自分が移動し、妹紅は自分のいた席に座る……席といっても座布団なんだけどね。

 

 そこで妹紅は話を切り出し始めた。

 

「侠……今話すことは私を軽蔑するものかもしれない。でも、初代龍神が話をする前に私から話をしたい。いいか?」

 

 軽蔑する内容……? ご先祖様、どんな内容か心あたりはありますか?

 

『「……話を聞けば分かるの。まぁ、主にとっては大したことでもないかもしれぬが」』

 

 ……どうやらご先祖様は話してくれないらしい。

 

 そして──妹紅は発言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「実は私は──老いることもない、死ぬこともない。致命傷を負っても時間が経てば回復する化け物──不老不死の蓬莱人なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………………………………………………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──おいっ!? それだけ!?」

 

 自分が相槌を打ったその後の沈黙が続くと……我を取り戻した妹紅は驚愕の声を掛けてきた。

 

「どうもこうも……幻想郷にはいろいろな人がいるから。不老不死もいるんじゃないかと思ってたよ。それが妹紅だった。それだけでしょ?」

 

「いやいやいや……もっと何かあるだろ? 気味が悪いとか近寄りがたいとか……」

 

「……妹紅──」

 

 何故か否定的な妹紅に……自分はこう告げる。

 

 

 

 

「──不老不死だからって嫌う理由にならないよ。それで自分は妹紅の事を差別したりしないから」

 

 

 

 

 

 そう告げると……妹紅がため息をつきながらも話を繋げてきた。

 

「……はぁ。逆にそんな簡単に受け入れてもらうと何だかなぁ……?」

 

「逆に嫌って欲しかったの?」

 

「いや、まぁ、いいんだけど……幻想郷に来てから肝っ玉が強くなってないか?」

 

「そりゃあ自分の心に初代龍神様が住み着いているぐらいだし」

 

「何か馬鹿らしくなってきたな……まぁ、ありがとう。お前を信じて話してすっきりしたよ──」

 

 そう言いながら立ち上がろうとしたけど――妹紅の足元が急にふらついてこちらに倒れこんでくる──あれ? もしかして立ちくらみ? 何かデジャヴ──

 

「──痛っ」

 

 あの時と同じように、自分は押し倒されたようになる。妹紅は手を出して止まったが、距離が数十センチになる。

 

「「あっ……」」

 

 うん……お互いの顔を赤く染め上げて距離が近い中、慧音さんと被った。もしかしてこの後──

 

「わ、悪い! 今すぐどく──」

 

 

 

 

 

『おーい、妹紅、侠。話は終わったか――』

 

 

 

 

 

 あの時と一致した。だけど、妹紅と慧音さんの立場が逆だけど。

 

 ギギッと妹紅は首を動かして扉を開いて固まっている慧音さんに視線を向ける。

 

 そして、いつの日かと同じように──

 

 

 

 

 

 

「──すまなかった。後でくる」

 

 

 

 

 

 

 慧音さんは扉をそっと閉めて退却してしまった……。

 

「──け、慧音ぇええええっ!? お前絶対わざとだろ!? わざと悪乗りしただろうぅうううっ!?」

 

 妹紅はすぐに扉に向かって慧音さんを追いかけ始めけど……案外、慧音さんは近くにいたらしく、仕返しと言わんばかりに妹紅を弄っていた。

 

 …………はぁ。

 

 

 

 

 

 

 

『侠。そろそろ渡したい物がある。受け取るといい』

 

 慧音さんが妹紅を弄り終わった後、何かが入った封筒が渡された。ちらっと中身を見てみたら……お金だった。

 

「……これって給料みたいなものですか?」

 

「あぁ。侠が来てからスムーズに作業が終わるようになったからな。そのお礼だ」

 

「それは嬉しいんですけど……一週間近く働けなかった分は引いたんですよね?」

 

「大丈夫だ。本来は静雅にも渡そうとしたんだが『オレの働いた分は侠の給料に加算しておいてくれ』ということだからその分もある。良い友人を持っていて何よりだ」

 

 ……まぁ、学校生活とか日常生活しているとき、主に自分が静雅の補助をしていたから、少しでもお返しということかもしれない。とりあえず静雅の厚意を受け取り、鞄の中に入れる。

 

「後で静雅にでも会ったらお礼を言っておきます」

 

「その方が良いだろうな」

 

「……慧音、ところでさ──」

 

 話の区切りを見てか、妹紅は慧音さんに話しかけ始める。

 

「ん? 何だ?」

 

「……私が慧音を追って外に出たとき──あの人だかりは何だ?」

 

「あ、あぁ……やっぱり、あの授業のことが広がったんだろう……初代龍神が存在するということを」

 

「ゑ? 慧音さん、それはどういうことですか?」

 

 ご先祖様の話題で自分も興味を持ち、会話に加わってみる。

 

 ……それで慧音さんは気遣うように言葉を返した。

 

「……外に出たら少し疲れることを受け止めるんだ。それしか言いようがない」

 

「? わかりました……」

 

『「ほぉ……大体察しが付いたの」』

 

 何そのフラグ怖い。

 

 慧音さんの言っていることは少し怖かったけど……試しに寺子屋の外に出てみた。

 

 すると──

 

 

 

 

 

『おおっ!? この子が龍神様の血族の子かっ!? まだ若いのに……!?』

 

『ありがたやありがたや! この目で龍神様の子孫と出会えるとは!』

 

『少年よ。出来れば龍神様に代わってくれないかのう? 直に龍神様のお言葉を聞きたいのじゃ!』

 

 

 

 

 

「何事っ!?」

 

 目の前に広がっていた光景……人里の住民達(七割ほど老人)が自分を出迎えていた!? どうして!?

 

『「おそらくそれは我が特別授業をやり、童が親や親戚などに教えたのだろうな。それが口コミで伝わり、幻想郷を創ったと言われる我と子孫の主を見るために集まったんだろう。実際は会えないものだからの。今では平等に見るために本来龍神は下界に関わってはいけないという規則があるのだ。今はおそらく三代目か四代目だが……我は初代龍神であり、今は幻想郷を統次していないからの。今統治していないのだから、こうして幻想郷住民と触れ合うことが出来るのだ。それと主……我が直々に挨拶をする。体を少し借りるぞい」』

 

 あ、うん……わかりました。

 

 自分は体をご先祖様に貸した。そして他の人から見れば髪の毛と目の色が代わるのに気がつくはずだ。

 

 そして色が変わったことに人里の人達は驚き──ご先祖様は言葉を発した。

 

「──皆の衆! 我と会うために、これだけの住民が集まってくれたことを感謝する! 疑っている者もいるかもしれないが、これが我が龍神である証拠なり! 我の近くにいる者は少々離れよ!」

 

 ご先祖様の言う通り近くにいる人達は離れる。離れたことをご先祖様は確認し──翼を広げ、両手を龍化させて、赤と白の縞模様の二本角を出現させた。

 

 ……ご先祖様、こんな場所で龍化しても良いんですか?

 

『「構わぬ」』

 

 うわ、即答。自分のことを考えての発言なんだろうか……?

 

 人里の人達は龍化しているご先祖様を見て歓声をあげていた。龍化を見たことを確認したご先祖様は龍化を解いて、再び話を始める。

 

「我は現在、博麗神社に住み込みでいる我が主、辰上侠の体を借りておる! 本来なら我が表に出てくることはないのだが、主の寛大な心で体を貸してくれているのだ! お主らの行動は主を通して見守っている! 困ったことがあるのなら微力ながら助太刀いたそう! 我はもう今の幻想郷を統次する者ではないが、この初代龍神の我がいる限り! ティアー・ドラゴニル・アウセレーゼと我が主である辰上侠が幻想郷の【悪】からお主らを守ってやろう!」

 

『おぉおおおっ!』

 

 さらっと自分を巻き込んだ!? 周りの人は初代龍神のお言葉であるためか盛り上がっているし……!

 

 というよりご先祖様!? 自分はいつか外界に帰らなきゃいけないんですよ!?

 

『「ちゃんと主の事を考えて宣言したぞい。【この初代龍神の我がいる限り】とな。我がいなくなるときは主も一緒だの。問題は無い」』

 

 ……まぁ、ちゃんと考えていたのなら良いんですけど……。

 

 少し納得がいかないものの、人里の人からある質問がとんでくる。

 

『つまり博麗神社の神様というのは龍神様なのですか!?』

 

「そういうわけではないのだが、現状の我の住処は博麗神社であるからそうなるの。まぁ、博麗神社への道は危険だからの。我に会うときは人里に来る主を通して言葉を聞かせるが良い。主を伝って我の言葉を返そう」

 

 ご先祖様がそう言うと──お菓子売りの人や、小物を売っている人が次々とご先祖様の手に野菜や小物を持たせ始めた!?

 

『龍神様が幻想郷に存在するおかげで我々は助かっています! これはそのお礼ということで受け取ってください!』

 

『龍神様の子が人里に来てくれるとはありがたい! しかも少年は異変を解決したこともある! 幻想郷はしばらく安泰ですな!』

 

 何だか貢ぎ物をもらっているんだけど……ご先祖様のカリスマ的なものなのだろうか……?

 

 その中……見覚えのある生徒──ご先祖様が助けたという女の子の生徒だ。傍にはお母さんであろう人が前に出てご先祖様に話しかける。

 

『龍神様! この度は娘を助けていただきありがとうございます! 龍神様が駆けつけてくれなかったら娘は……』

 

「気にすることはないの。我は当然の行動を取ったのみ。それと我ではなく、主である辰上侠に感謝するべきだの。主がいなかったらお主の娘は助けられなかったかもしれぬ。我は主の辰上侠と運命共同体。主が助けたようなものだ」

 

 あ、今は実体化できないことを利用して、その場にいたのは自分で、体を借りて意識交換をしたご先祖様ということになっている。

 

 そんなことを知らない女生徒のお母さんは手に持っている野菜をご先祖様に持たせた。

 

『そうですか……! 娘から聞いていますが、龍神様の子は真面目で娘がわからない問題があるときは丁寧に教えてくれる優しい先生と聞いております。娘も彼のことばかり話すのですよ』

 

『お、お母さん……!? 恥ずかしいよぉ……』

 

 その女生徒は恥ずかしそうにしている。まぁ、話している内容をばらされたら恥ずかしいだろうね……。

 

 女生徒のお母さんは娘の頭を撫でながら話を続ける。

 

『私達は家業で野菜を作り売っていますが……龍神様もしくは侠先生が買われるときは安く売りましょう! 一人娘の恩人なのですから!』

 

 ……嬉しいことを言ってくれているけど、さすがにそれは迷惑が掛かるような気がする。自分だけ安くなるのは不公平だと思うし。

 

 そんなことを思っているとご先祖様は口を開き、話を始める。

 

「……主はこう思っておる。『自分だけ安くなるのは不公平だから、そんなことを気にせず接して欲しい』と。気持ちは嬉しいが、お主の店に行くときは一人の客として扱って欲しいみたいだの」

 

 ちょっ!? 思ったことを少し改変して伝えないでくださいよ!?

 

 自分の思ったことはその人に伝わることはなく、感激したような声で喋り始めた。

 

『まぁ……何ということでしょう!? まだ歳は若いというのにその謙虚さ……感服します、先生!』

 

『龍神様の子は心が寛大ですな!』

 

 自分言葉を少し改変したご先祖様の言葉にまた騒ぎ始める……それだけのことなのにどうして……?

 

「我かもしくは主を見かけたとき、気楽に声をかけると良い! 元【龍神】ということで遠慮はいらぬ! ちゃんと言葉を返してやろう!」

 

『おぉおおおっ!』

 

 ご先祖様の言葉でまた盛り上がる。さっきまでいなかった人もいるけど、どんどん人に囲まれてしまった。

 

 ……ご先祖様が代わってくれているけど、自分だけだったらものすごく疲れていただろうね……。

 

 

 

 

 

 

 

『──な、何なんですかこの信仰は……!? 誰がこんなに信仰を受けているのですか……!?』

 

 

 

 

 

 




 最後の言葉はあの人。フラグ回に登場するかもしれません。

 ではまた。

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