幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 この回でこの章は終わり。
 裏主人公視点。注意。
 では本編どうぞ。


八話 『騒動を終えて』

 侠と霊夢が意識を失ってからどれくらい時間が経っただろうか? 二人はまだ目覚める気配がない。

 

 多分表情に出ていたのだろう。咲夜が心配そうに話しかけてくる。

 

「……霊夢と侠はきっと大丈夫よ、静雅」

 

「むしろオレはそれしか信じない。ちゃんと侠達が帰ってくる……そう信じている」

 

 オレの言葉に妖夢は自信がついたような安心した表情になった。

 

 白玉楼組である八雲紫達、レミリア嬢、先生さん達はまだ何かを話している。

 

「未だに信じられないわね……たまたま興味を持った侠が龍神の先祖返りだったなんて……」

 

「私も思ったわよ。彼は元々幻想郷寄りの人物だったのね……」

 

「……本当に人間辞めていっているわね。【まだ】自称人間は」

 

「いや、侠は先祖返りなのだからほぼ人間だろう? たまたま初代龍神の血を濃く受け継いだ……それだけだ」

 

「侠さん……」

 

「慧音……侠は……大丈夫か?」

 

「今は信じるしかないんだ妹紅。信じるんだ」

 

 いろいろな反応を見ていたら……魔理沙が急に声を荒げ始める。

 

「! おい! 霊夢が目を覚ましたぜ!」

 

 彼女の言葉でこの場にいる全員は霊夢に視線を向ける。見てみると霊夢は侠とつないでいた手を離してゆっくりと立ち上がり、背中についている土をはらっていた。

 

 魔理沙は起き上がった霊夢に、少し焦りを感じながら話しかける。

 

「霊夢……侠は大丈夫なのか!?」

 

「……えぇ。大丈夫よ。ちゃんと初代龍神をしばいたわ」

 

「良かったです……本当に良かったです……!」

 

 霊夢の勝利宣言に妖夢は目頭に涙をためながら喜んだ。

 

 ……そうか……そいつは良かった!

 

 オレ達が喜んでいたとき、遅れて侠も上半身を起こした。オレはもちろん、労りながら侠の体を起こすために手を差し出す。

 

「侠……心配したぞ……」

 

「静雅……うん。ただいま」

 

「あぁ。お帰り」

 

 オレの手を借りてゆっくりと立ち上がろうとするが──途中で何か違和感を覚えた。

 

 何だ……体に力がみなぎるような?

 

 オレの不思議そうな顔に気付いたのか、小声で話しかけてくる。

 

「(そうだった、静雅。体に何か違和感を覚えているようだけどそれって自分の能力らしいんだ)」

 

「(侠の能力……?)」

 

「(そ。【力を発展させる程度の能力】が自分の本当の能力みたい。手を繋いでいる間静雅の【事象を操る程度の能力】を発展させたんだと思う。それと、身体能力の底上げもするみたいで。ちょっとこのことは秘密にしておいてね? あまり言いふらすものじゃないと思うんだ)」

 

「(お、おう……わかった)」

 

 ……なんていうことだ。オレの能力がさらにチートになるのか? ある意味恐ろしい能力だ……。

 

 侠は皆のいるところまで歩いていき……礼をして謝罪した。

 

「……うちのご先祖様が迷惑かけてすいませんでした」

 

「別にあなたが悪いわけじゃないのよ? むしろ驚いたのは私たちの方なんだし」

 

「紫の言うとおり。侠が気にすることじゃないわ」

 

「本当に侠さんが戻ってきてくれてよかったです……!」

 

「魂魄……そこまで涙目にならなくても……?」

 

 八雲紫と西行寺幽々子は気にすることは無いと言うが魂魄の状態に少し戸惑う侠。その事に八雲紫の式神たちが補足する。

 

「なんだかんだ一番妖夢が侠のことを心配していたんだ。無理はない」

 

「妖夢さんは侠さんたちが目が覚めるまで右往左往みたいな感じでしたから」

 

「ら、藍さん、橙ちゃん!? 言わないで下さいよ!?」

 

 自分の行動をばらされたせいか、妖夢は顔を少し赤く染め上げる。それを聞いた侠は妖夢に優しく話しかける。

 

「心配かけたね魂魄。自分はもう大丈夫だから」

 

「はい……良かったです……」

 

 ……うん、また恋愛A○フィールドを展開しているが……侠の後ろで霊夢がすごい視線を送っているぞ?

 

 さすがに気付いたのか、侠は霊夢の方へ向き直り問いかける。

 

「? どうしたの博麗?」

 

「……別に、何でもないわよ……」

 

 またもやツンデ霊夢。そこは素直に『構って欲しい』とか言った方が良いと思うんだけどな……。

 

 会話のタイミングを計ってか、今度はレミリア嬢と咲夜が侠に話しかける。

 

「……まぁ、無事に体を守れてよかったじゃないと言っておきましょうか。自称人間」

 

「お疲れ様。それにしてもあなたどんどん人間辞めていっているわね……」

 

「先祖返りってなだけで人間なんだけど……レミリアに関してはその言い方何とかならないの?」

 

「もうこの呼び方で定着しているし、細かい分類であれば人間ではないじゃない」

 

「……まぁ、いいや……」

 

 ある意味諦めている侠に、先生さんこと慧音は侠に話しかけた。

 

「……まさか龍神の後継者とは……子供たちに教えることが増えるな」

 

「え……教えるんですか?」

 

「初代龍神のお墨付きなんだろう? 子供たちも必然と興味を持つさ」

 

「……侠」

 

 先生さんが侠と話していたとき、先生さんの友人(藤原妹紅というらしい)が悩んでいるような声で侠に問いかける。

 

「? 何?」

 

「そのさ、初代龍神に私の事で何か言われなかったか?」

 

「……特に何も言っていなかったよ?」

 

「そうか……なら、明日寺子屋に来るだろう? その時に待っていてほしい。ちょっと話したいことがある」

 

「……わかった」

 

 ……? フラグといえばフラグだが……何か重要な話っぽいな。とりあえずは首を突っ込むのはやめておこう。

 

 そして最後に魔理沙が話しかけるが……最もな疑問を侠に聞く。

 

「なぁ……初代龍神と侠は『運命共同体』とか言っていたが……結局、お前に負けた初代龍神はどうなったんだ?」

 

「そのこと? ……ちょっと待ってて――」

 

 魔理沙から問いかけられると侠は目を瞑り始めた。

 

 そして目を開けたとき──目が黒から赤に、髪の色が全体的に赤色が変わり──

 

 

 

 

 

「──(あるじ)と意識を交換した。そういう疑問は我に話すといい」

 

 

 

 

 

『──えっ!?』

 

「なっ……!?」

 

 ──オレも驚いた。意識が侠から──初代龍神に変わっている!?

 

 その変化にいち早く気付いた霊夢はお札を構え、威嚇を含めた声で初代龍神に問いかける。

 

「あんた! 侠の体を──」

 

「慌てるでない霊夢。合意のうえで主に体を貸してもらっておるだけだの。質問を終えたら主に体を返す。で、魔理沙の質問についてだがの……我が用件があるとき、借りることになっておる。今みたいな我の質問などにな」

 

「そ、そうなのか……」

 

「それで良い。今の内に我に質問がある奴はおらぬか?」

 

 侠の体を借りた初代龍神は反応を確かめる。その中、八雲紫が前に出る。

 

「……質問をしてもよろしいでしょうか? 龍神様?」

 

「別に今の我は初代龍神なだけで現在統治する龍神ではないがの……それで何用だ? 紫よ」

 

「……私はてっきり龍神様は永遠の命かと思っていたのですが……残留思念があるということは寿命があるんですか?」

 

「その事は主や霊夢にも話をしたのだが……単純に言えば世襲制だのう。我が全盛期の時はそうだったのだが、我が寿命設定を行ったのだ。生き物は輪廻転生をする。そうは言っても我はこの様だがの。おそらく今の龍神は三代目か四代目のはずだの。幻想郷を統次する者として寿命は長く設定しておるが」

 

「……そうですか」

 

「ふむ。他に質問は……ないの。では我はこれで失礼する。またの機会に会おうっ!」

 

 初代龍神のティアーは目を瞑ると……目と髪が黒にもどり、多分侠に戻ったのだろう。その侠がこの場にいる皆に話しかける。

 

「──と、ご先祖様と言った通りかな? 体を共有していることになってる。ちなみに心で会話して伝えることもできるみたい」

 

 ……軽く二重人格だよな、それ? まぁ、侠が無事なら構わないんだが。

 

 

 

 

 

 ──何がともあれ、この騒動は無事に収まった……。

 

 

 

 




 核の章、終わりです。

 この後書きで、この小説の初代龍神の設定を。(長いので注意)

 〜幻想創りし創造神〜
 ティアー・ドラゴニル・アウセレーゼ

 職業;辰上侠の守護霊(?)

 能力;力を手に入れる程度の能力

 住んでいるところ;辰上侠の心


 幻想郷を創った初代龍神。外界にいた人間の女性に一目惚れし、幻想郷に自身の分身をおいて本人は外界で暮らす。寿命設定を自らに施し、亡くなったはずだが……幻想郷への想いの強さで、亡骸に残留思念が残る。その後、辰上本家の行動により、ティアーの細胞が侠の体に。普通なら拒絶反応を起こして死ぬはずだったのだが──奇跡的に侠は天然の先祖返りであったため、適合し一命を取り留めた。それ以降は影ながら侠に力を貸していたり、助けていた。ちなみに龍神は世襲制となり、本人曰く今の龍神は三代目か四代目のこと。分身においては彼が亡くなると共に消えた。

 【外見】
 学生服を着た辰上侠と瓜二つ。違うとしたら目の色が赤、髪は黒みの掛かった赤髪。本人曰く、「我が主に似ているのではなく、主が我に似ている」ということ。

 【性格】
 大らかな性格であり、差別をしない。幻想郷を想っているのは確かだが、【善】の分類である自分の子孫、辰上侠の事は特別で大事だと思っている。彼がフランとの戦いで窮地の状況になったとしても、力を貸して手助けをする、少々お節介な一面もあるようだ。

 【能力】
 かつては色々な能力を保持していたみたいだが……長い期間実体が無い、ブランクがある所為か全盛期の力は失われた。現時点では最低限必要な力の一つとして、【火】と【水】の能力を持っている。彼の能力は、辰上侠の本当の能力である【力を発展させる程度の能力】と相性が良く、細胞と侠の体が常に隣接しているため、多くの力を対象に、発展した能力扱いとして条件を満たせば能力を手に入れることが出来る。この力は【弾幕】、【固有の能力】を元にした力を手に入れることが出来る。妹紅については【弾幕】は【火】の為元々対象内だったが、本来チルノの【固有の能力】は対象外だった。しかし、侠の能力でティアーの能力は強化され、【冷気を操る程度の能力】を発展させて【氷水を操る程度の能力】、つまり水の状態変化を操る力として手に入れることが出来た。侠がチルノの能力を自分に当てはめたときの違和感がこれである。ちなみに本編であるとおり、妹紅の能力を手に入れた際の能力は【火炎を操る程度の能力】である。


 次に辰上侠の能力追記。

 【力を発展させる程度の能力】
 常に隣接している条件の元に発動する。ティアーは細胞が体に付いているため問題ないが、それ以外の人物の場合は【肌の接触】が必要。(例;常に手を繋ぐ)辰上侠と常に触れている人物は基礎体力、霊力など力の源の底上げ、運動神経が活性化。さらには個人が持っている【能力】も発展する。
 例として霊夢の場合は【法則から浮く程度の能力】。元々の能力がそれなりに強い能力だったが、さらに広範囲になる。【攻撃から浮く】という事にすれば、あるいみ常に夢想天生の無敵状態に近い。

 ……後書きで1250字超えるとは思わなかった。

 次回からは後日談。

 ではまた。

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