幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 あの時のフラグ回収。
 三人称視点です。
 では本編どうぞ。


二話 『明かされる正体』

「──ふむ。これでちと反省したかの」

 

 偽侠は意図的にスペルブレイクをし、侠の姿に戻った。目の前にいる妖怪達は器用に手足が凍っており、うまく立つことが出来ず、這ってその場を去って行った。

 

「しかし……この場にはいないのか? それなら別の場所を──」

 

 そう残念そうに呟き、体を翻して移動しようとした時──

 

 

 

 

 

「──騒がしいから来たものの……何だこりゃ!? 辺り一面凍っている……!?」

 

 

 

 

 

 急に驚きの声を上げながら現れた人物……白いワイシャツを着て、赤いもんぺを着ている──藤原妹紅だ。

 

 そして偽侠は喜ぶように妹紅に話しかける。

 

「ふむ……待っておったぞ。蓬莱の人の形、藤原妹紅!」

 

「え……!? 侠!? 何でこんな中途半端な時間でこんな竹林に……!?」

 

「我はお主に会いたかったのだ。騒ぎを起こして駆けつけてくれたのは幸いだの」

 

「……いや、違うな。よくよく考えてみれば侠は『蓬莱』という単語は知らないはず。口調も全然違うし、お前は一体誰だ!?」

 

 妹紅は目の前のいる人物を知り合いではないと判断した。体から炎を出して警戒する。

 

 しかし、偽侠は当然のように答える。

 

「我は幻想郷住民を一目見れば情報が流れ込む。もっと詳しくと言うのなら【蓬莱の薬】を飲んだ不老不死の蓬莱人だろうて」

 

「なっ……!?」

 

 妹紅は無意識に炎をしまい驚愕した。彼女は本物の侠に不老不死の蓬莱人だということを伝えていない。知っている人物もいるが、特別な理由がない限りは妹紅の事情は話さないだろう。しかし、目の前の偽侠は知っている。

 

 偽侠は妹紅が驚いている中、話を続ける。

 

「しかしのう……同じ蓬莱人通しだからといって蓬莱山輝夜と殺し合いは感心しないの。輪廻転生を本来すべきなのだが……まぁ、亡霊じみた我が言えるものじゃないが。例え不老不死であっても失うまでは人々と同じ命。生き返るからといって命を投げ捨てるような行動はすべきじゃないぞ、お主」

 

「……何処までお前は知っているんだ!」

 

 偽侠としたら説教のつもりだったが、知らない怪しい他人から自分のことをぺらぺらと喋られたらいい気分はしないだろう。警戒から怒りへ、妹紅の感情が表に出てきた。

 

 その様子の彼女を見てか、不満そうに偽侠は言う。

 

「ふむ……最近の若者は反省をせぬ者が多いの。少しばかりか拳骨をかます必要があるみたいだの」

 

「お前が何者かなんかはどうでも良い──ここで燃やす!」

 

 妹紅は炎を出し、相手を睨みつけて戦闘態勢に入る。

 

 そして偽侠は──龍の翼を出し、両腕を龍化させて構える。

 

「炎は水に弱いのが常識……我とは相性が悪いと思い知れ! 適合【ブリザードオーバードライブ】!」

 

 そう宣言した同時に──青のコートが現れ、龍化している翼と腕の赤い鱗の肌から水色の鱗に変化、髪の毛は水色に。そして冷気を放出させ──水色と白色の縞模様で二本の角が頭の左右に生える。

 

 

 

 その姿──氷龍の竜人。

 

 

 

 姿が変わった偽侠を見て妹紅はこういう。

 

「お前……妖怪だったのか。しかもなんだ……その半竜人みたいな姿は……?」

 

「我は諸事情でこれが全力なのだ。だが……ここで失った力の一つが手に入ることが確かだの。それと妖怪ではないわい」

 

「……水とか言いながら冷気を出していて氷じゃないか。それなら炎の私の方が有利だろう?」

 

「……あくまで我の属性が【氷】ならばな。しかし、(あるじ)の本当の能力で氷の能力を水の能力へと発展させた。水の状態変化は個体では氷だからの。我にとっては氷属性は水属性と同じ事なのだ。簡単に言えば我は氷を操れると同時に水も操ることが可能なのだ、妹紅よ」

 

「わかりやすい説明をどうも! そんなぺらぺら喋って後悔するなよ!」

 

「……フン。たわけが」

 

 お互いの言葉を最後に、偽侠と妹紅の弾幕ごっこが始まった……。

 

 

 

 

 

 

 

『あれは……妹紅が戦っている?』

 

 竹林から見えている炎を見た──上白沢慧音。しかし、いつもを格好が違い……全体的に緑の服と髪、頭からは片方にリボンを付けた二本の角が生えている。彼女は満月の夜にはワーハクタクへと姿が変わる半獣なのだ。

 

「やれやれ……また輝夜とやっているのか……」

 

 後で迎えに行こうとしたその時、最近見慣れた男が話しかけてくる。

 

『姿が変わっているが……先生さんか?』

 

「君は……静雅か。どうしたんだこんな夜中に?」

 

「実は──」

 

 そう言いかけたとき、静雅の背後に現れる二人の姿。

 

「静雅。急いで行くなんて珍しいわね。そこまで自称人間もどきの存在が気になるのかしら?」

 

「……」

 

 紅魔館の主レミリアと従者の咲夜が遅れてやってきた。その二人に慧音は話しかける。

 

「紅魔館の吸血鬼まで……今日は一体どうしたんだ?」

 

「率直に聞くわ。自称人間に似た人間は見なかった?」

 

「……自称人間? 誰だそいつは?」

 

「静雅の親友の辰上侠のことです。その似ている人物は見かけませんでしたか?」

 

「(……何故自称人間なんだ?)侠は見ていないぞ? 静雅の伝言で二日間ほど寝込んでいることを聞いたからな。それと何だ? 似ているって?」

 

 レミリアの疑問に咲夜が補足して、慧音はそう答える。

 

 会話の終了を確認した静雅は話題を変えて話しかける。

 

「竹林の方で見えている炎はなんだ?」

 

「あぁ、あれか……私の友人がまぁ……喧嘩しているんだと思う」

 

「喧嘩には派手すぎないか? あれ?」

 

「静雅。その二人は因縁がある通しなのでたまにあることなのよ──」

 

『慧音先生ーっ!』

 

 咲夜が説明していたときに、少女が静雅達の元へと走ってきた。その少女は困っているような、泣いているような表情をしている。

 

 慧音は見覚えがちゃんとある。その少女は寺子屋に通っている少女だった。彼女の目線に合わせて腰を落とし、目線を合わせて話を聞く。

 

「……どうしたんだ? そんなに慌てて?」

 

 

 

 

 

『……侠先生が私を庇って妖怪と戦っているの! 助けてあげて!』

 

 

 

 

 

「「「なっ!?」」」

 

 慧音を除く三人が驚愕した。この少女はさっきまでの話題の中心人物が急にやってきた少女が知っているのだ。驚くのも無理はない。

 

 慧音は冷静に情報を引き出そうとする。

 

「……それは侠だったのか?」

 

『う、うーん……よくよく思い返してみれば何て言うか雰囲気や口調が違うような気がする……』

 

「ビンゴだ! そっちに向かう!」

 

 静雅は少女がやってきた方向に向かって駆け出した。遅れてレミリアと咲夜も追いかけ始める。

 

 三人を見てか、慧音も急ごうとする。

 

「心配するな。侠は私達が助けに行くからな!」

 

 方便ということで慧音は少女に話して、三人の後を追った……。

 

 

 

 

 

 

 

 そして──偽侠と妹紅の決着が着いた。結果は──

 

「だから相性が悪いと言うたろうに」

 

「くっ……!」

 

 偽侠は普通に立っており、妹紅は倒れ伏している。意図的にスペルブレイクをして龍化を解いている偽侠に妹紅は悔しげに話しかける。

 

「お前は一体……何者何だ……!? 侠の姿をして、私のことを知っている……!?」

 

「ふむ……その前に事を済んでから話そう。お主は我に負けた。その事実には変わりはない」

 

「……それがどうした……!」

 

「きちんと自分で認めているなら問題ないの。現実を認める。これは大事なことだからの。そして──」

 

『そこまでだ!』

 

 急に聞こえてくる声。その人物に続いて三人やってくる。

 

「……自称人間に瓜二つの風貌……そして私が感じていた違和感はお前か」

 

「……双子!? 姿写しのような……!?」

 

「! 大丈夫か妹紅!」

 

「慧音……大丈夫だよ私は……」

 

 各々の反応をしながら、妹紅は慧音に弱々しくも返事をする。やってきた四人をみて偽侠は反応を返す。

 

「我を探しに来たか……永遠に幼き赤い月のレミリア・スカーレット、紅魔館のメイドの十六夜咲夜。知識と歴史の半獣であり、満月によって姿が変わるワーハクタクの上白沢慧音。そして──主の親友、本堂静雅」

 

「…………」

 

「こいつ……私達のことを知っている?」

 

「我は幻想郷住民の情報はわかるからの。本堂の者は特別だが」

 

「……やっぱりそうか」

 

 黙って偽侠を見ている咲夜をよそに、レミリアの疑問に当然のように答える偽侠。そして何か確信したのか静雅は偽侠に話しかける。

 

「お前さん……侠の体に付いていた【アレ】の残留思念か何かだろ?」

 

「静雅……?(もしかして……あの侠の一部の真実?)」

 

 彼の言う言葉に咲夜は思い当たる節がある。彼女は過去に──辰上侠についての過去を聞いたことがあるのだ。それに伴い、とある真実まで。

 

 静雅の言葉に言葉を返す偽侠。

 

「さすがに我のことは知っていたか。本堂の者よ」

 

「おかしいとは思ったんだ。何で侠の能力は【龍化】なのか。露骨すぎる。何故あの人外じみた実験の生き残りが侠なのか。侠と他の奴らの違いは望んでそういうことをしたか。辰上の祖先は何故龍なのか。そして何より──幻想郷を創ったといわれるのは龍神なのか。親伝いで真実を知っていたが……本当のことだったんだな」

 

「……君は一体何を言っているんだ?」

 

 静雅の言葉に慧音達は疑問しか浮かばない。しかし、偽侠は満足したような表情になる。

 

「……まだ(あるじ)に一部の真実を伝えるのはともかく、全てのことを伝えようとしないことだの。それは主の心が完璧に治ったときに言うものだからの」

 

「そんなことオレは一番よく知っている。どれだけ幼なじみをしていると思っているんだ?」

 

「十三年以上はしているの。お主は」

 

「……静雅。この自称人間もどきを知っているの?」

 

 レミリアは静雅に疑問をぶつける。そしてこう答える。

 

「……前に侠について話し合ったことがあっただろ? 侠は先祖返りなんかじゃないかって。侠自身は辰上家と関係ないと思い込んでいるが……真実は違うんだ。単純明快──」

 

 静雅は言葉を句切り、はっきりと告げた。

 

 

 

 

 

「──侠は龍の先祖返りだ!」

 

 

 

 

 

「えっ!? それじゃあ私の言っていたことは合っていたわけ!?」

 

「あぁ。本来はオレの口から言うべきだったんだが……人数が如何せん多すぎたせいでな。喋るに喋れなかった」

 

 静雅からの真実に今まで聞いていた妹紅は尋ねる。

 

「待て! それじゃあ侠は妖怪なのか!?」

 

「それは違う! 侠は──」

 

「本堂の者よ。それは我から説明しよう──が、その前にやることはやらないといけないのもがあるからの。それが終わってから話すとしよう」

 

 偽侠は指を鳴らすと──妹紅から朱色の光が出てくる。

 

 過去に霊夢から聞いた謎の光。咲夜たちはその光を見て驚愕。

 

「!? あれが謎の光……!?」

 

「ふむ。この際に我の能力について教えておこうかの」

 

 その朱色の光は偽侠の体に入っていき、偽侠は白紙のスペルカードを取り出して、輝かせながら宣言。

 

 

 

 

 

「──適合『フレイムオーバードライブ』!」

 

 

 

 

 

 そう宣言した瞬間──偽侠の体は炎に包まれて髪の毛は腰まで伸びて白髪に染まり、目は朱色。朱色のコートを着て炎の中から現れ、瞬時に周りの気温が上昇した。

 

「なっ……妹紅にそっくりになった!?」

 

 慧音は心底驚いた。少しは違えど、友人の姿に似ている。偽侠の様な体まで変化するスペルは初めて見たのだ。無理はない。

 

「安心すると良い。妹紅の力をそのまま手に入れたに過ぎぬ。それといって妹紅は力を失ってはいないからの。まぁ、今回は特性として蓬莱人だがの……火を酷使する力を手に入れたのだ。しかし……主がいて我の能力は真価を発揮するのだがの……」

 

 少し悩むようにして偽侠は呟いた。

 

 そして咲夜がその光景を見て。偽侠に言う。

 

「……それがあなたの能力だったわけね……条件を満たすことで【他人の能力を使う程度の能力】があなたの力」

 

「正式名称は【力を手に入れる程度の能力】だがの。咲夜の言う通り、我は現在条件を満たさぬと能力を手に入れることが出来ぬ。かつての力を失った我は優先すべき力から手に入れぬと他の力は手に入らぬのだよ。そうしたら紅魔館住民の力は手に入れているからの」

 

「…………」

 

 レミリアはじっと偽侠を見定める。そして……疑問を含めた声で偽侠に話し掛けた。

 

「……お前の運命が感じられないわね。それはどういうことかしら?」

 

「我の運命を操るなぞもってのほか。我にはそういう類いの事は効かぬ。何せ我は元々幻想郷の頂点(・・・・・・)なのだからな」

 

「…………は? お前が幻想郷の頂点だった?」

 

 よろめきながらも妹紅は立ち上がり疑問をぶつける。それに対して偽侠は意図的にスペルブレイクをして──何者かが答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ! 名は【ティアー・ドラゴニル・アウセレーゼ】! 我は最古にしてこの幻想郷を創りし者! 初代【龍神】なり!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ……初めに書いておきます。

 ――この【龍神設定】は二次創作です。名前もそうです。そこのところを、お願いします。

 次話以降、章タイトルの【???】を【幻想郷】に変えておきます。

 ではまた。

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