幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 表主人公の現段階の考え。
 引き続き表主人公視点です。
 では本編どうぞ。


六話 『宴会』③

『ほら、侠。私にお酌してちょうだい』

 

『その次は私ね〜』

 

「はぁ……わかりましたよ」

 

 紫さんとゆゆさん二人が猪口を出してきたので順番に入れる。注ぎ終えて藍さんと橙に話しかけられた。

 

「楽しんでいるか? 侠」

 

「侠さんはこんな風な宴会は初めてですか?」

 

「まぁ……こんな風に気楽に過ごしているのは始めただね。それと周りの反応で楽しんでいます」

 

 藍さん達の言葉に応えていると、隣にやってきた魂魄が飲み物の入ったコップを渡してくる。

 

「麦茶ですけど飲みますか?」

 

「うん。もらっとく」

 

 麦茶を受け取り、喉に通す。ちょうど喉が渇いていたところだったから良かった。

 

 自分の飲んでいる光景を見て、何故かゆゆさんは不満そうに話しかけてくる。

 

「妖夢〜! そこはお酒を渡さなくちゃダメでしょ〜!」

 

「あの……幽々子様? 静雅さんが言っていたじゃないですか? 侠さんにお酒は飲ませないようにしてくださいと」

 

「まぁまぁ幽々子。ちょっと良いかしら?」

 

 何故か紫さんは小声でゆゆさんと会話をし始める。そして……会話が終わると何故かご機嫌な表情に変わった。

 

「そういえばそうね〜。それなら任せましょう♪」

 

「えぇ。きっとしてくれるわ」

 

 ……一体何を話していたんだろう?

 

 そんな疑問をよそに、紫さんは自分に話しかけてくる。

 

「この幻想郷で過ごしてみてどう? 中々面白い世界でしょ?」

 

「……まぁ、飽きは来ませんね。独特な世界観ですし」

 

「そこであなたに聞きたいのだけど──」

 

 隣で魂魄が飲み物を飲んでいるときに、紫さんはこう言う。

 

 

 

 

 

「──彼女とか作る気はないの?」

 

 

 

 

 

『ブフッ!?』

 

 ……紫さんの発言に何故か魂魄が吹き出した。唐突の恋愛話についていけなかったのかもしれない。

 

 とはいえ、魂魄にズボンからハンカチを取り出して差し出す。

 

「……使う?」

 

「は、はい……ありがとうございます……」

 

 ハンカチを手渡した後、改めて紫さんの目の前に振り返って、話しかけることにした。

 

「急な話の話題ですね、紫さん。何故そのようなことを?」

 

「仮にも男の子なのだからそういう恋愛とかどうするのかと思ったのよ。気になる子とか見つかった?」

 

「……そもそも彼女とか作る気は無いんですけど……?」

 

「? それは何故なんだ侠?」

 

 紫さんの言葉に答えた後、その事に疑問に思ったのか藍さんが聞いてきたのでこう答える。

 

 

 

 

 

「……元々自分は元の世界の異常が直ったら帰る約束ですしね。彼女や誰かを好きなったら帰りにくくなるじゃないですか」

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

「侠さん外界に帰っちゃうんですか!?」

 

 淡々と答えると魂魄は何故か驚いている表情をして、橙はかなり意外そうにしている。

 

「この世界に来る前に紫さんと結んだ約束だからね。そうですよね、紫さん?」

 

「……えぇ。そうね」

 

 紫さんは自分の言葉を肯定した後、話を続ける。

 

「……仮に元の世界に帰るより、誰かを好きなった場合の気持ちが強いときはどうするのかしら?」

 

「…………そのときはそうですね──」

 

 少し言葉を考えて、こう答えた。

 

「──自分を引き取ってくれた親とよく話して決めます」

 

「……現実的ねぇ……」

 

「外界での生活もあるんですからちゃんと考えますよ。それはどちらか一方の世界を選ばないといけないんですし」

 

 …………。

 

 そんな風に答えたあと、ゆゆさんが自分に話しかけてくる。

 

「まぁ、これからの生活次第じゃない? この幻想郷でそういう関係になっても良いし、外界に帰ったとしてもこことの繋がりが切れるとは思わないし」

 

「そんな易々来られる世界じゃないでしょう?」

 

「紫の能力で迎えに来てもらえれば良いのよ。そうでしょ?」

 

「その時は幽々子の言う通り来たいときは私が連れてきてあげるわよ。別に幻想郷の誰かを好きになったとしても、私の能力で行き来できるんだし」

 

「……その時は考えましょう」

 

 そう答えて、あることを思い出しながらその場を立つ。

 

「ちょっと博麗探してきます。少し捜し物にしては遅いから」

 

「あらそう? なら行ってらっしゃい」

 

 自分は博麗を探しにその場を離れた……。

 

 

 

 

 

「……妖夢。彼は外界に帰る気持ちが高いわ。あなたはどう思う?」

 

「…………まだ、彼のことをたくさん知りたいと思っています…………」

 

「それなら──彼に振り向かせるように精進しなさい」

 

「……わかりました!」

 

 

 

 

 

 博麗を探しに神社の中へ探しに行ったがいなかった。もしかすると納屋に取りに行ったのかも知れない。神社の裏から納屋に向かっていると──何やら白い霧みたいなのが突如発生し始める。

 

 少し身構えて様子を見てみると──

 

『やっと着いたよ。私が宴会に遅れるなんて……』

 

 ──以前神社にいた鬼の伊吹萃香が現れた。少し焦ってきたような表情だったけど、とりあえず話しかけることに。

 

「……伊吹? どうやってここまで移動してきたの?」

 

「おっ──侠じゃないか! 相変わらず表情変化に乏しいな。それとどうやってここまで来たかって? そういや侠は私の能力を知らなかったね」

 

 瓢箪を口に付け、お酒を飲んだ後答え始める。

 

「私は【密と疎を操る程度の能力】を持っていてね。その気になれば体を大きく出来るし、分裂も出来るんだよ。さっきみたいに応用で霧みたくして移動も可能なのさ」

 

「……それなら何でさっき『遅れた』とか言ってたの?」

 

「勇義達──地底の妖怪達とちょっとした宴会をしててね。紫からはお前と……その親友だっけ? そういう関係の宴会があると紫から聞いていたんだけど……ちょっと眠っちゃっててね。大急ぎできたわけさ」

 

「……別に大急ぎに来なくても良いと思うけどなぁ……」

 

「宴会ある場所に萃香ありってことを知らないのかいっ!?」

 

「知らないよそんな事。それなら宴会場に向かったらどう?」

 

 当然な返事をして促したつもりなんだけど……何故か伊吹が不満そうに顔を見てくる。

 

「……む。侠……お前──酒を一滴も飲んでいないな! せっかくお前達の宴会なのに酒を飲まないとは何事!?」

 

「前にも言ったけど……自分はお酒は飲めないんだよ。まぁ、射命丸の言う通り一口二口ぐらいは飲もうかと思ったけど──」

 

 そう言った瞬間……伊吹は持っていた瓢箪の口をこちらに向けて上機嫌に話を進め始めた。

 

「そうかそうか飲もうと考えていたのか! だったらこれを飲んでみれば良い! これが慣れれば幻想郷の酒なんて簡単に飲めるさ!」

 

「……それってお酒の強さ大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫!(私にとっては)強くないよ!」

 

 どこからか杯を取り出してお酒を注ぐと、その杯を自分に持たせてきた。

 

 ……静雅から絶対飲むなと言われているけど、一口二口なら大丈夫だよね?

 

 

 

 そして──少し勢い付けてお酒を飲んだ──

 

 

 

 




 案外あややの説得に飲もうという考えが生まれた表主人公。

 どうなるかは……おそらく、察しがついているかと。

 ではまた。

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