最初は裏主人公視点。
ではどうぞ。
次に来たのは妖怪の山を麓にとある一軒家。そこにもとある神様がいるらしいが……。
「文……まさか二人の秋の神様か?」
「ですね。守矢神社同様に話しておりますので」
「まぁ……文がそう言っているのなら大丈夫か?」
「はい! お任せ下さい! では向かいますよ!」
文は早歩きで神様が住んでいる一軒家に近づいて行った。あまり気乗りしないものの、オレも着いて行く。
「静葉さーん、穣子さーん、いらっしゃいますかー?」
文が扉を叩いてノックして所在を確かめる。待って数秒後……扉が開き、二人の人物が現れたが――
「はーい、お待たせしました――えっ」
「お姉ちゃん? 誰が来たの――えっ」
……一度文を見て挨拶をしようとしたが、オレを見た瞬間態度を変えたぞ? この神様達は?
確か紅葉の髪飾りをしている方が姉の秋静葉で、帽子を被って葡萄のなんかがあるのは妹の秋穣子だったけか? 聞いた話の記憶の間違いがなければ。
とりあえず、オレは友好的に挨拶をしようとしたが――
「よっすお前さん達。オレは神様の――」
「「お願いします滅ばさないでくださいっ!!」」
オレが謝罪を仕掛けた時――逆に何故か秋の神様達が土下座して懇願してきたっ!?
すぐに事情を話したはずの文に問い掛けた。
「おい文!? 何故秋の神様達はオレを恐れている反応をして土下座しているんだ!?」
「確かに静雅さんの素性はキチンと説明しましたよ? あなたが神様に嫌われやすい性質で神々を滅ばす神様ということを。ただ、静雅さんが紅魔館で重宝されている人物云々で話をしている時に反応が変わりましたね。まるで敵にしてはいけないみたいな反応されまして。後は私が個人的な意見で『静雅さんの機嫌を損ねたら性質で滅ばされるかもしれませんねぇ……おぉ、怖い怖い』と言ったぐらいですかね?」
「OK文。後でオレの能力で翼を封じた後、滝でコードレスバンジージャンプな」
「あやややっ!? コードレスバンジージャンプとは何ですか!? しかも私の翼を封じる必要があるのですかねっ!?」
要約すると紐無しでやるバンジージャンプだ。第三者から見ると単なる飛び降り自殺に見えるだろうな。
文のお仕置きはまた後で考える事にして、まずは秋の神様達の誤解を解くのが優勢だな……。
「あ~……お前さん達? オレの神様事情は間違ってはいないが、機嫌を損ねても滅ぼすつもりは絶対ないから安心しとけ。だから土下座は止めてくれ」
「ほ、本当なのそれ!?」
「う、嘘じゃないよね!?」
「疑り深いなおい? せっかく世間一般的に顔とか整っているんだからちゃんと顔を上げて話してくれ」
急に二人は立ち上がり、真意を求めるような事を言っていたが……煽てて機嫌をとらせるような発言をしてみると――
「えっ!? と、整ってる!?」
「えっと……その……ありが、とう……」
二人の神様は唐突に頬を赤く染め上げ、照れ始めた、姉の静葉は戸惑い、妹の穣子は照れながらもお礼を言ってくれた。
……何か神様の恋愛事情が気になって来たので、からかいも含めて問いかける事にした。
「……お前さん達って言われ慣れていないのか? もう何年以上も神様やっているんだろ?」
「そ、そう言われても……同じ神様の異性にそんな事言われなかったし……」
「に、人間で稀に言われた事はあったけど……それは収穫祭で、プライベートじゃないからその場のノリだと受け取って……ねぇ、お姉ちゃん?」
「そ、そうよね……」
妹の問い掛けでワンテンポ遅かったが頷いた。
そうなると――
「オレがお前さん達の初めてという事か……!」
「えぇえええっ!? 何か話が飛躍しているわよ!?」
「どうしてかイヤラシく聞こえる!?」
オレの急な発言の所為か、更に頬を染め上げる二人の神様。
……何か楽しくなってきた。
そして文も会話に加わり、癪に触るような言葉遣いで秋姉妹に話し掛ける。
「おやおやぁ? お二人はそういう事に興味があったとは……」
「ち、違うわよっ!? そういうのじゃなくて、その……」
「(お姉ちゃんと同じで、今までそういうのも含めて経験無いだなんて言えない……!)」
「さて、お二人さんは図星のようですし……それに対して静雅さんはどう思いますか?」
「「(言い返したいけど言い返せない……!)」」
問い掛けの内容の所為か、秋の神様達は文の言う事が当てられて更に恥ずかしがっていた。まさか本当にそういった経験が無いのか……?
だが……それは随分惹かれる事実なので、思った事を言って見るオレ。
「逆にそれはそれで惹かれるものがあるよな。良いじゃねぇか。今はそういう経験が無くても。いざ本当に好きな奴とそういう関係になれば良いんだしよ。むしろオレはお前さん達を好ましく思うぞ。その分だけ、清い心を持っているという事なんだから」
「え……そ、そうなの……かしら……?」
「う、嘘じゃないよね!? わ、私達のご機嫌をとる言葉じゃないよね……!?」
……疑り深いな。まぁ、オレの性質でそう警戒するのは当然の事かもな。
「オレ個人の意見だけどな。実際、オレもそういう関係や経験が無いからな……いっそ、同じオレとそういう関係になって欲しいぐらいだ」
「「えぇええええっ!?」」
弄りも含めて言ったが、ここまで初々しいとは思わなかった。トマトのように二人の顔は赤く染まる。
……これから先、こういう話でそういう反応をとる事が心配だな。その内悪い男に引っかかるんじゃないか? ←悪い男の一例
そしてその二人を隣で見て聞いていた文は注意するように話しかけてきた。
「静雅さん。女性に簡単に『付き合ってくれ』とは言わない方が良いですよ? 中には本気になる人物もいるんですから」
「それは失礼」
「はい。わかってくだされば良いんです。それと……少しの間静葉さんの家の中でお話をしてくるので、申し訳ないですが外で待っていてくれますか? 女性同士でいろいろお話したい事がありますので」
「? まぁとりあえず了解した」
「あ、それと能力で話を聞くのも厳禁ですよ! わかりましたかっ」
「早苗といい、密談好きだよな……いいけどよ」
またもやオレに内緒で何か話すらしい。文はペンを唇に当てて言った。
話題に挙がった秋の神様達は驚いたような表情をしながら文に話し掛けようとしたが――
「えっ? 何を話すの?」
「どうしてその神様を省く必要が――」
「さあさあ! 続きはご自宅の中で!」
言葉を遮り文は二人の神様の背中を押しながら家に入った。
……一体何を話すのだろうか……?
~side 文~
さて、静雅さんが能力を使っていない事を信じるとして……お二人に改めて取材したい事があるんですよね。
「では……改めて静葉さんと穣子さんにお聞きしたい事があるんですよ」
「あ、改めて聞きたい事……?」
「な、何を聞くつもりなの……?」
お二人が戸惑う中、私は――本題を切り出した。
「ずばり――改めて静雅さんの事を神様としてどう思いますか?」
「「…………え?」」
私がそう問い掛けてみると、少し固まった後考える様子を見せた後――先ほどの会話の内容をおもいだしたのか、お二人の頬が赤く染まりました。
……むぅ。少し羨ま――ともかく、ちゃっちゃと取材する事にしましょう。
「お二人が何を考えているかはともかく……お二人に神様として静雅さんの事をどう思っていらっしゃるのかお聞きしたいんです」
「あ、そういう事――って、この間と言っていた事と全然違うじゃない!?」
「そうだよ! 何が怒らせると私達が滅ばされるって何!? どうしてそんな出任せを言ったの!? お姉ちゃんと怖がって震えてたのがバカみたいじゃないっ!?」
「まずはお二人が恐怖で怯える姿を撮りたかったんです。後悔も反省もしていません。あやや」
「趣味悪っ!? そんなの撮ってどうするのよ!?」
「それは聞かない方が身のためですよ……おぉ、怖い怖い」
「(凄く気になるけど踏み込んじゃいけない気がする……!)」
静葉さんの疑問に気になるが深く踏み込めないような穣子さん。
……お二人の写真は農家の方々に人気がありますからねぇ。静雅さんの嘘情報を教えた際の涙目の写真は高値で売れて私の懐が――ゲフンゲフン。話が反れそうなので戻しましょう。
「それで話を戻しますが……神様としての視線から見て静雅さんをどう思いますか?」
お二人は納得いかなそうな表情でしたが……それでも真面目な顔で考えてくれています。
最初に考えがまとまったのは――姉である静葉さんですね。彼女は口を開きました。
「神様としては……どうしようもないと思うわ。信仰とは違う力が源だと思うけど……彼は【神々を滅ぼす神】。信仰があるとしても神様を恨んでいる人妖だけ。でも実際信仰がなくても力が衰えているように見えない。確かに彼から神力を感じるけど……それだけ。神様の例外的存在だと思うわ。それに突然変異で神様になったとはいえ……その事で嫌われやすい性質じゃないかしら? 本来神様は多くの過程を終えて神様になれるのよ」
静葉さんの言葉をメモを書き取る。
過程を入れて神様になる……そういえば静雅さんの能力の【事象を操る程度の能力】は別名【過程を飛ばす程度の能力】でしたね。もしかしたらそれも関係あるんでしょうか……? なかなか興味深い発言ですね。
姉である静葉さんが話し終えるのを確認してか、今度は穣子さんが口を開きます。
「私個人としたら……彼の他の神様に及ぼす影響がなければ凄い神様になっていたと思う。静雅って言ってたよね? 紅魔館を居住地にして、その主の妹の従者を任されているのは凄い信用があるから任されているんだと思う。他にいろんな人々と関わりを持っているようだし……彼が他の分類である神様だったら、今頃凄い信仰を獲得してるんじゃないかな?」
ほうほう……穣子さんは肯定的ですね。もし彼の性質がなかったら莫大な信仰を獲得していると。
それは納得いける話に感じますね。静雅さんの能力は使いようで損得がはっきりする。貧困で飢えている人には救済を。破綻者には天誅を。
……もし、静雅さんが御利益の神様で、沢山の信仰を得ていたとしたら――
『オレは――新世界の神になる!』
…………今の静雅さんが良いですね、はい。そこまで大きい存在になると幻想郷崩壊の危機が。
というより……彼が月面戦争に参加していたら勝っていたかもしれませんね。情報が正しければ神様を降ろして戦う月人の方がいるそうですが……彼の性質と能力で無効化されそうです。
とはいえ、根本的な取材は終わりましたね。後は――個人的に聞いてみましょうか!
「では――異性として静雅さんの事をどう思いますかっ」
「えぇっ!? は、話が急に飛んだわよ!?」
「い、異性って……静雅とはあって間もないワケだし、そんな対象で見れるワケ……」
案の定、お二人は頬を赤く染め上げて動揺し始めました。私が言えた事ではないですが、慣れていないんですね。
……それと、穣子さんは静雅に惹かれ始めているような気が……。
とりあえず、個人取材を始めますか。
「まずは姉である静葉さん……異性として静雅さんをどう思いますか?」
「する必要ないんじゃないこれ!? もう単にあなたが人様の事情に興味を持っているだけよね!?」
「先ほどの静雅さんのドッキリ発言で思いっきり動揺していたではないですか? まるでそういった経験が無いように見えましたので。まぁ、私の勘違いなら謝りますけど」
「あ、あろうがなかろうが言うつもりは無いわっ!」
曖昧な表現で明らかにごまかしましたね。
態度からバレバレのような気がしますが……これが【つんでれ】というものでしょうか?
それでは……取材対象を移すとしましょうか。そう思い、体の向きを変えて穣子さんの話を聞く事に。
「では穣子さん、あなたは静雅さんを異性としてどう思いますか?」
「……顔や性格とか何て言えばいいんだろう……? そういうのも含めて、いい人……だと思う……」
……あやや。案外素直に話してくれましたね。隣にいる静葉さんはもの凄く驚いていますが。
妹の言葉の発言にかなり意外と思ったのか、驚愕の声をあげながら静葉さんは問い掛けました。
「穣子!? あなたは何言っているの!?」
「だってお姉ちゃん、今日改めて話してみて……楽しかった私がいるの。あまり私達は信仰が少なくても……信仰してくれる人でも遠慮がちだったでしょ? 信仰していない人だって、たまに私達をぞんざいな扱いをされる時もあるけど……静雅は違うと思うの」
一度話を区切り、一呼吸して話を続けました。
「私達が誤解していた時の応対とか、距離感が感じない言い方で説明してくれたし……多分、それでも緊張していた私達を気遣って冗談を言ってくれたと思うの。彼の性質で誤解しちゃったけど……そういう……神様性? そういう事は評価できると思ったり」
穣子さんの心が荒らされてますね。
はぁ……静雅さん。あなたの冗談が思いっきり影響を与えていますよ……さすがは荒人神といったところでしょうか?
とはいえ、聞きたい事は全部聞き終えましたね。私はお二人に御礼を言う。
「ありがとうございました。後者の取材は新聞には載せませんのでどうぞご心配なく」
「やっぱり私用で聞いたんじゃない……」
静葉さんからの視線は痛いですが……一先ず静雅さんと合流する前に扉に手をつけて、私は顔の向きを振り返って言う。
「そうでした。言い忘れていた事がありましたので一言」
「? 何?」
穣子さんが代表するように返事をしてくださり、私はある事を言う。
「――静雅さんの競争率は意外に高いんですよ?」
「「…………えっ?」」
「では失礼します――」
私はそう告げ、家を出た。家の中では何やら騒がしい声がしますが……おいておくとしましょう。
そして待っている静雅さんはというと――
「おー、文。女子会は終わったのか?」
「まぁ、終わりましたけど……何しているんですか?」
「ブリッジという名の柔軟体操だが?」
手と足を使い、体を半円のような形を作って顔はこちらに向けている静雅さん。
まぁ……手持ち無沙汰にしてしまった私も悪いんですが……。
静雅さんは柔軟体操を止め、立ち上がり姿勢を整えながら話しかけてきました。
「昼の時間帯的にそろそろ寺子屋の授業が終わっているだろうから、フラン嬢を迎えに行っても良いか? 迎え終わったらまた再開する」
「こちらとしても付き合ってもらっている身ですからね……わかりました。では人里に向かいましょう」
私達は飛翔し、人里へ飛んでいった。
……このわずかな時間でも、距離を縮めなければ……!
……こうしてみると随分平和的だと思ったりする。本編だと……まぁ、その話はまた今度という事で。
人様の妹に好かれる事に定評がある(?)裏主人公。ここから先、妹キャラについての構成を考えなくては……!
二人目の取材相手は秋姉妹でした。正解し続けている方はいます。誰の回答が近い、もしくは正解するのか。
ではまた。