幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 美鈴(めいりん)と打ち込むより美鈴(みすず)と打ち込んだ方が楽な事についてどう思う?
 では本編どうぞ。


三話 『紅美鈴、実技試験』

『お嬢様! あの話しは本気ですか!?』

 

『えぇ、本気よ。彼が紅魔館にふさわしい人物かどうかを実際に見て判断するわ』

 

『実技試験といっても、一分間組み手の相手が美鈴ですよっ!? 美鈴は弾幕ごっこは余り得意でないとしても、接近戦だけなら幻想郷でもトップクラスです! 弾幕も使えない、スペルカードも持っていない外来人が勝てるわけありません! それで一分間立ち続けたら合格だなんて……』

 

『あら、咲夜はあの外来人のことが心配?』

 

『心配も何も、美鈴には本気を出すようにとさっきおっしゃっていたじゃないですか! これじゃあ、彼には勝機が全くない──』

 

『結論から言うわ。【外来人本堂静雅は実技試験に合格する】。それに無傷でね』

 

『──!? それは【彼の運命】ですか!?』

 

『そうよ。それに私の能力で操ってもいない。これから彼に起こる、ごく自然の運命よ。これから分かることは……彼の元々ある実力で耐えきるのか、それとも能力が発現して耐えきるのかどちらかだわ』

 

『では……彼の実力を計ると共に、能力の真意を確かめるためにですか?』

 

『そうなるわね。もし具体的な能力があるのならパチェにでも頼んで能力解析でもしてもらうわ。ただの外来人が美鈴の攻撃に耐えうるのなら、パチェだって興味は持つだろうし。咲夜も能力を使って不自然な点を見つけなさい。ただし、試験の邪魔にはならないようにするのよ』

 

『……わかりました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり門の入り口傍。そこにはオレと紅魔館の主のレミリアとメイドの咲夜、そして試験の相手は……中国っぽい服装をしたスタイル抜群な女性だった。

 

 少し咲夜が前に出て相手を紹介する。

 

「静雅様。今回のテストに相手である中ご──紅美鈴です」

 

「あの、咲夜さん? 今明らかに『中国』って言いかけましたよね?」

 

「彼女は門番をやってきてご覧の通り近接攻撃が得意で、中国拳法みたいな攻撃をしてくるので……死ぬ気で避けてくださいね?」

 

「無視しないでくださいよぉっ!?」

 

 美鈴が抗議するも、スルーする咲夜。上下関係みたいだと咲夜の方が上そうだな。

 

 ……確かこの人……もしかして……。

 

「もしかしてお前さん……オレの頭とぶつけたやつか?」

 

「あ……っ! もしかしてあなたでしたか!」

 

「すまないな。不可抗力とはいえ、お前さんに怪我させちまったか?」

 

「いえいえっ! 私の体は頑丈ですから問題ありませんよ! だからそう謝らないでください! 本当に大丈夫ですから! 寝ていた私も悪いんですし!」

 

「…………へぇ。やっぱり寝ていたみたいね…………」

 

 そこへ笑顔を浮かべながら怒りを表している咲夜の姿……威圧感がある。

 

「……さ、咲夜、さん……?」

 

「……後でお仕置きね」

 

「ひぃっ! ごめんなさい!」

 

 ……よほど咲夜の方が立場が上なんだなぁ……。

 

 一応、助け船を出すか。

 

「そういうなよ咲夜。そこで美鈴がその場で立って眠っていたから都合よく当たってある意味助かったんだ。オレ、頭から落ちていったから、着地地点が違かったら首の骨が折れて死んでたかもしれんし。このことは許してやってくれないか?」

 

「…………仕方ありませんね。美鈴。今回だけですよ」

 

「…………静雅さん、ありがとうございます〜!」

 

 咲夜の許しに少し涙目で感謝してきた……普段からどんなお仕置きをされているんだ。

 

「前座はそれぐらいで良いかしら? そろそろ試験を開始させようと思うのだけれど」

 

 しびれを切らしたのか、夕方にもかかわらず日傘を差して、影のある場所にいるレミリアから声が掛かる。

 

 日傘を差している理由をレミリアから聞いたら、吸血鬼に日光は厳禁ということ。これは吸血鬼の設定で良くある弱点だ。

 

「あぁ。とっとと始めてくれ」

 

「あの……静雅さん……残念ながら私はお嬢様から組み手は本気でやるようにと言われているんですけど……大丈夫ですか?」

 

 オレの了承に美鈴が心配そうに聞いてくる。

 

「何とかなるだろ。こう見えても良く親友と組み手やら試合やら結構やってたんだぜ? その親友も結構強い……というかオレより強いし」

 

「……本当に大丈夫ですか?」

 

「何、相手を打ちのめすって条件じゃないんだ。だからオレは防御と回避を中心としてやる」

 

 少し前に出て美鈴の前で構えをとる。ぶっちゃけ、槍があればバリエーションが増えるんだけどなぁ……。

 

「では、お互いによろしいですね?」

 

 咲夜が俺達に準備が出来たか問いかける。

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「いつでもオッケーです!」

 

「それでは……始めっ」

 

 咲夜が持っていた懐中時計を見ながら言った。

 

「すみません──先手必勝です!」

 

 開始した直後、一気に踏み込んで美鈴は正拳を放ってくる。

 

「ほっとっ!」

 

 オレは体を反らしながら、あえて美鈴の手首を掴んで体勢を崩させた。

 

「──っ!?」

 

 普通に避けるのではなく、体勢を崩したことに美鈴は動揺した。

 

 そして……条件に合った、親友の技を借りる! 反らした分の運動エネルギー、体勢を崩した体に合わせて──

 

「辰上流【岩突撃衝】!」

 

 ──遠心力の掛かった膝蹴りを美鈴の脇腹に当てようとする。

 

 この技は親友の家系流体術だが、よく組み手をしている内に見てて、試しに実践して覚えた技。敵の攻撃をいなした後、回避した分の運動エネルギーを利用して膝蹴りを当てる。いわばカウンター技。親友の育ての親曰く、【重さなること、土龍の如し】。

 

 確実に入ったと思われたが──

 

「──くっ!」

 

 とっさに捕まれていなかった方の手を突き出して防御された……マジかっ!

 

 オレは一気に後退して体勢を立て直す。同じく体勢を立て直した美鈴がこちらに話しかけてくる。

 

「まさか受け流したらと思ったら、攻撃されるなんて予想外でした……」

 

「別に一分間立ち続けたら合格のワケだから【攻撃はしてはいけない】ということじゃないからな。出来れば今のが当たって怯めば良かったんだが……」

 

「成る程……確かに私は勘違いをしていました。てっきり躱すことと防御をするしかしないと思っていましたから──ねっ!」

 

 そう言うと美鈴は間合いを一気に詰めて回し蹴りを放ってくる。オレはその蹴りを後ろへバク転することで回避。

 

 ……ドラマのダンスで覚えた技術がこんなところで役立つとは。

 

「あの……失礼を前提で聞きますが……人間ですよね?」

 

「人間、やろうと思えば基本な事は出来るっ!」

 

「そうですか……何だか私、楽しくなってきましたよ!」

 

「奇遇だな! 親友以外にここまで組み手を出来る奴なんて久しぶりだ! 存分に楽しませてもらうぞ!」

 

 そこからは基本美鈴の攻撃を避ける、受け流すを中心に。たまに攻撃を加えたりして一進後退……のように見えるが、だんだんとオレは押されている。拳での組み手は美鈴の方が断然上みたいだ。

 

 そして、周りに気を配っていなかったのか。自分の背中に木がぶつかった。

 

「しまったっ!?」

 

「これで終わりです!」

 

 それを好機に美鈴は心臓めがけて正拳を放ってくる。

 

「終わるわけにはいかない!」

 

 オレは何とかちょんよけに近い動作で何とか体をずらす。

 

 よしっ! 攻撃はよけられた──

 

 

 

 

 ──バキッ──ドスゥンッ!

 

 

 

 

 ──が、代わりに攻撃を受けた木が……折れた。たった一発の正拳で。

 

「そこまでっ!」

 

「………………………………………………………………はっ?」

 

 咲夜が静止の声をかけるが……オレはさっき起こったことが信じられなかった。女のパンチで木が折れるんだぞ!?

 

 美鈴は悔しそうにしていたが、あっさり自分の負けを認める。

 

「あちゃ〜……私の負けですね〜……」

 

「………………………………………………………………」

 

「あの〜静雅さん? どうかしましたか?」

 

 美鈴が不思議そうに聞いてくる……。

 

「あのさ、美鈴……これ、オレが当たってたら死んでたよな?」

 

 折れた木を指さして聞く。

 

「お嬢様から本気でやるようにと言われていましたからねぇ……ま、結果オーライなんじゃないんですか静雅さんは? これで紅魔館に努めることが出来るんですから」

 

 ……まともに防御をしなくてよかった。もししていたら粉砕骨折をしていただろう。

 

 ……親友でも何か凄い拳の装備をしていても、ここまで出来ないと思うんだが。

 

 命って大事だな……。

 




 裏主人公、就職先決まる。衣食住に困らなくなったよ。やったね!
 何故か裏主人公サイドで表主人公の情報が出てくる。まぁ、仕方ない。
 普通に考えれば普通美鈴の得意な近距離戦に裏主人公は勝つことが出来ません。それについてはこの章で明らかに。
 ……表主人公と裏主人公が巡り会うのにどれだけかかるんだろう?

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