この世界はおかしい。いつも通りに自分は過ごしていたはず。なのに──ある一定の日付まで時間が戻っている。
自分は困惑した。何故時間が巻き戻った? そして食堂に行ってみるなり見たことのある風景が広がっていた。確かこの日は生徒通しの喧嘩で、上級生が仲裁をしていた。そして──誰もこの光景に疑問を覚えない。君ら、この光景は見たことがあるはずなのに忘れているようだった。
同室で一緒に過ごしてきた親友にこのことを打ち明けてみた。でも、親友はその事に疑問に思っていなく、『デジャブか何かじゃねぇの?』と流された。これはデジャブなんかじゃない。親友までもが忘れているようだった。
自分は必死に何が原因か調べた。しかし、そんな簡単に出てくるものじゃなかった。時間だけが過ぎていく。そして──一定の日付が終わると、また同じ日付に巻き戻った。
──何なんだこれは!? 何で巻き戻る!?
また生徒通しが喧嘩をして、上級生が仲裁。おかしい。何故皆疑問に思わない!?
その時間の中でも何故こうなるのか調べた。しかし、成果は出てこない。
巻き戻る日付が近づき、途方に暮れていた自分は、図書室でとある生徒が調べていた資料が気になって、その生徒が資料を元に戻した資料を目に通す。それはとある新聞記事で、他校の不幸についての記事だったが……。
「……あれ? これって……本当に他校?」
その記事は何だか身近に感じた。何だか、親友の言うデジャブに感じて──
「──っ!?」
何故か急に頭の中に映像が流れてくる。どこかの森で、多数の同じ制服の生徒が倒れていて──途中で自分は悟ってしまった。
「…………もしかして、今の自分は死にかけている?」
何故かそういう考えが頭によぎり、確信がないはずなのに確信に近かった。非現実的なのに。時間が巻き戻るなんて普通ないのに。一体これは……?
「…………一体何なんだこれ…………?」
誰かが死になくないから巻き戻している? やり直したいことがあるから巻き戻している?
どちらにせよ、自分だって……死にたくない!
だけど……他に調べるも時間が過ぎてしまい、巻き戻ってしまう感覚になったとき──自分の体がどこかに落ちていく。
「!? 何!? この場所は──!?」
自分の落ちた空間みたいなものは多数の目が有り、こちらをずっと見ている。
そして──声が聞こえてくる。
『──外界にこんな世界があるなんて驚いたわ』
大人の女性らしき声が聞こえる空間上に響いてきた。自分はその人に話しかけようとする。
「……あなたは誰ですか?」
『私? 私は八雲紫よ』
「八雲さん、この場所は一体何!? 自分をどうしてこの場所に連れてきたの!?」
空間に必死に呼びかける。こんな空間は非現実的だ。どうしてこのような場所が存在しているのか。何がどうなってこのような状況になっているのかわからなかった。
自分は答えを求めている中、空間から響く八雲さんの声。
『私の作った空間のようなものよ。興味本位であなたのいる世界を見てたら……部外者のあなただけがそちらの世界の現象を認知していたから連れてきたの』
「……部外者? それは時間を巻き戻した犯人を知っているということ!?」
『えぇ。その犯人達がいるわね。とあるお友達を死なせたくないがために。彼らが安心するまで時間の巻き戻し──いえ、別世界の構築を止めることはないわ。何も事情を知らないあなたにとっては地獄でしかない。そんなあなたに私は救済をしに来たのよ』
……犯人は知っているが、安心するまで時間の巻き戻しが終わらない? 一体この人は何処まで知っているんだ?
そして次の言葉が聞こえる。
『あなた──幻想郷に来てみない?』
「……幻想郷?」
聞いたことのない場所に来ないかと言われる。幻想郷……? そんな地名があったっけ?
『そうよ。私達が暮らしている世界。人間はもちろん、魔法使いや妖怪、神様といった外界から忘れられたものが集う世界』
「……そんなファンタジーな世界を信じろというのですか?」
『あら? 現にあなたの世界はファンタジーな事が起こっているじゃない』
「……それはそうですけど」
それでも……魔法使いや妖怪、神様? そんなものが存在しているのだろうか……?
『そちらの世界で巻き戻しが終わる期間だけ、こちらで過ごせば良いのよ。何時その世界の時間が元に戻るか分からない。だったらこちらの世界で過ごしてみたらどう?』
「言いたいことは分かりますけど……それは自分の世界が元通りになったら帰してくれるということですか?」
『……まぁ、そうなるわ』
……どうすればいい? 確かに言う通りにすれば困ることはないかも知れない。けど、この人は犯人を知っている。でも、複数人。腕っ節には親友からのお墨付きだけど、時間を巻き戻す相手だと……難があるかもしれない。
迷っている自分を察してか、八雲さんは語りかけてくる。
『自分一人で寂しいなら後でなじみの深い人物を送るわ。それなら良いかしら?』
なじみ深いとなると……一人しか思い浮かばないけど……どうしようか?
でも……繰り返す時間よりは幻想郷の方が良いかもしれない。
自分は決心してこう言った。
「幻想郷に……行かせてください!」
『えぇ。招待しましょう。幻想郷は全てを受け入れるわ』
八雲さんの声が響くと──正面に石段がある風景が広がった。
続けて八雲さんは話しかけてくる。
『これからあなたは博麗神社に向かってもらうわ。そこで博麗の巫女、博麗霊夢からいろいろなことを学びなさい。幻想郷での説明をしてもらえると思うから』
「……わかりました」
『あ、それと……出来るだけ多い額の賽銭をすることをお勧めするわ」
……願掛けついでに賽銭をしろということだろうか?
「出来るだけ多く賽銭することを心がけます」
『そうしてちょうだい。そして……最後の確認をするわ。あなたの名前は?』
「──辰上侠」
自分の名前を言った後、八雲さんは催促を付け足す。
「言い忘れてたけど、スペルカードや能力についても霊夢に尋ねなさい。詳しいことは神社で聞いてちょうだい」
「? 分かりました……」
八雲さんの言葉を頭に入れ、自分は石段の風景へと飛び込んだ。
「ようこそ、幻想郷へ」
こんにちは、鷹崎亜魅夜です。カタカナ表記でアミヤでもあります。
定番である八雲紫による幻想入り。さてさて。これからどうなるのか。
ちなみに主人公は腕っ節に自信があるとありますが、ごつい体型ではありません。希望があれば主人公設定について乗せたいと思いますが、辰上侠は少し童顔寄りで身長は170センチほどで体重は58キロぐらいです。一般的な体型です。
質問などはどんどん送ってきても構いません。時間があれば答えたいです。