ストライクウィッチーズ 一匹の狼   作:長靴伯爵

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コミケに行けなかったのは本当に残念
ストライクウィッチーズ関連の同人誌は店で買うしかない!

そんな訳で第七十二話です

感想、アドバイス、ミスの指摘、などよろしくお願いします!



間違えて二つ投稿されていたので片方消去しました



第七十二話

 

 

 

「第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』戦闘隊長の坂本美緒少佐だ。神崎大尉、貴官の着任を歓迎しよう」

 

「ありがとうございます」

 

 神崎の敬礼に坂本も同じ敬礼で応え、2人の間にピリッとした真剣な空気が漂う。しかし、すぐに坂本は表情を緩ませて右手を差し出した。

 

「2、3年振りだな。共に戦えることが出来て嬉しいぞ、ゲン」

 

「ああ。これからよろしく頼む、坂本」

 

 坂本の手を握り返し、神崎も小さな笑みを浮かべた。そんな中へ、ミーナがさりげなく近寄って来て声をかけてた。神崎も坂本から手を離し、ミーナに向き合う。

 

「私よりも先に歓迎されたら隊長として面目が立たないのだけど?美緒?」

 

「ハッハッハ!!そう言うな、ミーナ。久しぶりの友人との再会で舞い上がってしまったようだ」

 

「もう・・・。第501統合戦闘航空団の隊長を務めるミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です。1度会ったことがあると思うのだけど?」

 

「覚えています。神崎玄太郎大尉です。よろしくお願いします」

 

「あなたの戦歴は聞いています。期待してますよ」

 

「微力ながら力を尽くします」

 

 神崎を見るミーナの視線には僅かながら警戒の色が滲んでいたが、それを神崎は顔色1つ変えずに冷静に受け止めてみせた。

ミーナと神崎が敬礼を交わし終えると、ミーナが助手席に、坂本と神崎が後部座席に乗り込んだ。車は501の基地に向かって走り始め、ロンドンの街並みを進んでいく。

 

「最後に会ったのはここブリタニアだったか?」

 

「ああ。俺がスオムスに派遣される直前だった」

 

「あの時も戦闘だったな。どうだ?腕は上がったか?」

 

「少なくとも経験は積んだ」

 

「ならその経験の成果を楽しみにしているぞ」

 

 後部座席で頻繁に話しかける坂本に神崎は言葉少なながらもしっかりと受け答えをしていく。その会話に助手席のミーナが面白く無さそうに耳を傾けていた。

 

「スオムスでの戦いの後はどこに?」

 

「ウラルでの戦闘に参加していた。第343飛行中隊。あそこも激戦地だった」

 

「ネウロイとの戦闘はどこも激戦地さ」

 

 坂本も幾つもの戦場を経験した身。どこの戦場でも誰もが戦力で戦い、命を散らしていったのを知っている。だからこそ、今の彼女の言葉には重みがあった。

 

「・・・そうだな」

 

 神崎の言葉にも重みがある。しかし、その重さの意味を坂本は分からないだろう。

 

「そういえば、島岡はどうした?あいつは元気にしているか?」

 

「ここ数年は・・・会っていない」

 

「・・・何かあったのか?」

 

「スオムス戦で重傷を負い昏睡状態に。治療でリベリオンに移送されて・・・以来会っていない」

 

「そうだったのか・・・。すまない。辛いことを聞いたな」

 

「いや、大丈夫だ。・・・誰も無事ですむはずはない」

 

「そうだな・・・」

 

 坂本は目を伏せ、耳だけ傾けていたミーナも何かから逃げるように視線を外に向けた。漂ってしまった暗い雰囲気に寄せられるように空もどんよりと暗くなってきていた。

 

「・・・ブリタニアの天候は崩れやすいな」

 

 窓から空を見た神崎の言葉はどこか空虚だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3人を乗せた車は曇り空の元ロンドンを離れ、ドーバー海峡に面する第501統合戦闘航空団の基地に到着した。基地は古代の城を再利用したのか城壁と高い塔を有しており、神崎がいままで滞在したことのあるどの基地よりも規模が大きなものだった。

 

「大きいな」

 

 車か降りて基地を見た神崎の一言は素直な感想だった。目を細めて塔を見上げていると、夕焼けに染まる基地上空に幾線もの飛行機雲が描かれているのが目に入った。

 

「航空魔女(ウィッチ)か・・・」

 

「ストライクウィッチーズに所属している魔女(ウィッチ)達だ。皆、腕が立つぞ」

 

 同じく車から降りた坂本が神崎の視線に気付き、教えてくれる。その間にも飛行機雲が複雑な軌跡を描いていた。その複雑さが坂本の言う魔女(ウィッチ)達の優秀さを示していた。

 

「今日は荷物の整理をしていて下さい。すでに貴方の荷物は受領済みです」

 

「はい」

 

「基地の規則上、あなたの部屋は魔女(ウィッチ)の居住区から離れた所になります。しかし、作戦行動の都合上離れた整備兵の所に居てもらう訳にもいきません。ですので、急遽新たな部屋を用意しました。不便な点もあるとは思いますが・・・」

 

 ミーナは申し訳なさそうに言うが神崎は問題ないとばかりに頷いた。

 

「大丈夫です。・・・砂も雪もない分マシです」

 

 いままで砂漠だったり極寒の雪原だったりと極限環境の中で戦ってきたことも多々あった神崎。たとえ天候が崩れやすい気候でも屋根があり空調もある居住施設に住めるなら文句など全く無かった。

 訓練があるらしい坂本とはここで別れ、ミーナに先導されて神崎は基地の中へと入る。まるで城のような廊下を歩きながらミーナがこの基地の規則の重要な部分を幾つか教えてくれた。

 

「この基地では魔女(ウィッチ)と男性兵士との接触を極力禁止しています」

 

「・・・なるほど。しかし自分はどうすれば?」

 

 規則がそうであるならば理由は兎も角まずは守らなければならない。しかし、魔法使い(ウィザード)として出撃するならば航空魔女(ウィッチ)との接触は避けられない。ミーナもそこは考えていたようだが、どうやら難しそうだった。

 

「戦闘以外の行動は様子を見ながらになります。今のところは、食事以外の日常生活は別の所で行ってもらいます」

 

「分かりました」

 

 そうする内にどこか人気の無い廊下に入り、その奥にある1つの扉の前に止まった。

 

「ここが貴方の部屋です。すでに荷物は中に運び込んであります」

 

「ありがとうございます。・・・なにがともあれ、これからよろしくお願いします」

 

「ええ。・・・こちらこそよろしく」

 

 口調が固いながらも2人は挨拶を交わして別れた。

ミーナが廊下からいなくなるのを確認して、神崎はドアノブに手をかけてゆっくりとドアを開けた。古びた部屋の内装に真新しいベッドと箪笥、机が設置され、配属に先立って輸送していた荷物を収めた木箱が置かれていた。床に擦った後や凹んだ部分があるのを見るに、元は物置にでも使っていたのかもしれない。

 

「さて・・・。荷物は無事に・・・。・・・」

 

 持っていたカバンを床に置いた神崎は、運び込まれていた木箱に視線を向けて・・・一瞬動きを止めた。そして静かに腰から炎羅(えんら)を抜くと、すでに開けられている木箱(・・・・・・・・・・・・)にゆっくりと近づいた。耳を澄ませば木箱の中で何か物音が聞こえる。それに僅かな息遣いも・・・。

 警戒心を上げ、いつでも攻撃ができるように右手に炎羅(えんら)を握ったまま木箱の蓋に手をかける。

 

「・・・ッ」

 

 一呼吸置いて蓋を一気に跳ね上げた神崎が見たのは・・・。

 

「・・・うじゅ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・うじゅ?」

 

 流石の神崎も木箱の中にツインテールの少女が入っているとは夢にも思わなかっただろう。せっかく高めた警戒心が全て吹き飛び、神崎は炎羅(えんら)を片手に持ったまま無表情で少女と見つめ合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・。ようやく落ち着けるわね・・・」

 

 自分の執務室に戻ったミーナは、執務机のイスに深く腰掛けゆっくりと息を吐いた。このままコーヒーでも淹れて一服したい所だが、仕事が溜まりに溜まっている。せめて必要最低限の案件は始末しないといけない。

 

「せめて副官でも欲しいわ・・・」

 

 そう独り言を呟きながら机の上の書類を幾つか手にとって見ると、大きな茶封筒が顔を覗かせた。途端にミーナの表情は固くなり、更に疲れを滲ませてその茶封筒を取った。

 

「もう何度も見たはずなんだけど・・・」

 

 そう言いながらも手は茶封筒に封をしている紐を解き、中身を取り出していた。出てきたものは、上層部から送られてきた神崎に関する情報だった。

 

 アフリカ、スオムスに配属され、スオムスの戦闘での負傷により扶桑皇国へと一時帰還。復帰後はウラル方面へ配属され、501への配属が決まるまでそこで戦い続けていた。幾つかの勲章も授章されており、撃墜数もトップレベルに食い込むほどだ。人物評価も概ね良好。

性別が違う以外は、癖の強い魔女(ウィッチ)が集まる501にとって非常にありがたい存在に違いない。違いないはずなのだ。

 

(でも・・・何か・・・)

 

 ミーナは書類を見ながら何かの違和感を感じていた。それは唯の思い違いであるだけかもしれない。理性的な部分がそう囁いていた。

 だが、それでもミーナは自分が感じた違和感の存在を信じた。

 

(私は決めたんだから。もう家族を、愛する人を傷つかせないって・・・)

 

 例えそれがエゴだとしても。1つでも危険を排除できる要因になるのなら、それはするべきことなのだろう。

 そして彼女は机の電話に手を伸ばした。

 

「もしもし。私だけど・・・。ええ。少し調べて欲しいことがあって・・・」

 

 その電話がこれから先にどう影響するのか。それは電話している本人にさえ見当も付かなかった。

 




501で神崎と性格が合うのって・・・ん?

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