ストライクウィッチーズ 一匹の狼   作:長靴伯爵

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ついに新章。

いままではオリキャラ三昧でしたが、今回からはアニメのキャラも出てくると思います。


感想、アドバイス、ミスの指摘等よろしくお願いします




ここまで長かった・・・。


Ⅳ 1944 ブリタニア
第七十一話


「この情報は確かなんだな?」

 

「はい。内外からの裏付けは取れています」

 

「まったく・・・。『魔女狩り』がやっと終息したというのに・・・」

 

「首魁がようやく顔を出したと思えば」

 

「分かっている。派遣するのは・・・」

 

「彼が適任でしょう」

 

「だろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1944年。

 欧州本土の大半がネウロイの手に落ち日に日に戦闘が激化していく中、世界各国は事態の打開を図るためにある航空団が組織された。

 

統合戦闘航空団。

 

過去に結成された義勇独立飛行隊、統合戦闘飛行隊などの多国籍部隊のノウハウを以って、世界各国からエース級の航空魔女(ウィッチ)を集めて一大戦力を形成しようとする計画だった。

その第一陣として結成されたのが第501統合戦闘航空団。

またの名を「ストライクウィッチーズ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリタニア連邦。

海峡を挟んで大陸から離れた島に位置するこの国は、欧州の対ネウロイ戦争における最後の防波堤としての役割をになっている。侵攻してくるのは海峡を突破できるほどの航行距離を有した大型の物が多く、現在に至るまでその悉くを撃破していた。

 そんな国家の首都であるロンドンの一番大きな駅の前に1台の車が停まっていた。

 

「出迎えには貴女までわざわざ来なくてもよかったのよ?美緒」

 

「そう言うな、ミーナ。あいつと会うのは数年振りなんだ」

 

 車の後部座席で会話をしているのは第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」に所属し、隊長の任に就くミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐と同航空団戦闘隊長坂本美緒少佐。彼女達の台詞から察するに、ミーナの用事であった誰かの出迎えに坂本が同行してきたようだった。

 

「今回は中々急な決定だったな」

 

「前から打診はあったのよ。私達には影響はなかったけど、物騒な事件も多くて中々進まなかったみたい」

 

「例の『魔女狩り』事件か・・・」

 

 そう言った坂本の顔は不機嫌そうに眉を顰めていた。

 

 「魔女狩り」

 この名は数年前から横行している魔女(ウィッチ)失踪事件のものだ。

 発生当初は噂だと思われていた。ネウロイの戦闘を行った魔女(ウィッチ)部隊の戦死者の報告のタイミングが遅れたために失踪扱いになった・・・と。事実、そうだった為にこの噂は終息するかに思えた。

 しかし、魔女(ウィッチ)達の間でこの噂は消えることはなかった。それどころか、実しやかに語られ続け、ついにこの噂を裏付けてしまう出来事が起こった。

 ある日、ある基地に重傷を負った1人の魔女(ウィッチ)が運び込まれてきた。ネウロイとの戦闘で負傷したのではと基地の救護室に運び込まれる中、彼女は一言語った。

 

 人間の部隊に襲撃された。私以外全員殺された・・・と。

 

 件の魔女(ウィッチ)は収容されてすぐに負傷が原因で死亡してしまったため、この言葉の真偽を確かめることはできなかった。しかし、この言葉は石を投げ込まれて生まれた湖畔の波紋のように広まり、非公式ながらも実際に戦闘が行われていることと魔女(ウィッチ)が殺害されていることが確認された。

 この一連の動きで軍も動かざるを得ず、この事件を『魔女狩り』事件と呼称し魔女(ウィッチ)警護の為に動き始めた。そのお陰か「魔女狩り」事件も噂も徐々に少なくなり、いまでは思い出したら話が出てくる程度にまでなった。

 

「実際にどこの部隊で起こったかは分からないんだがな・・・」

 

「士気への影響を考えて上層部が公表しなかったらしいけど、私も何人かの友人から聞いたわ」

 

「私も耳にしたことはある」

 

 2人の間に漂う暗い雰囲気を払うかのように坂本は声を明るくして言う。

 

「だが、今回奴が来るなら相当戦力になるはずだ」

 

「確かに幾つか情報を貰ったけど、ここ最近はウラル方面で戦っていたらしいわ」

 

「相当腕を上げているに違いない。会うのが楽しみだ」

 

「そう・・・ね」

 

 本当に楽しそうに目を細める坂本に対し、ミーナはどこか固い笑みを浮かべた。

 

 

 

 しばらくして駅から列車の到着を伝える汽笛の音が聞こえた。坂本は自身の懐中時計を確認して、予定通りに列車が到着したのを確認する。

 

「予定なら今到着した列車に乗っているはずだな?」

 

「そうね。手紙で迎えに来ていることは伝えているわ」

 

「そうか。お・・・?」

 

 会話をしている中で、坂本が車の中から何かを見つけた。それに倣いミーナも視線を車外に向けると、駅の大きな入り口から沢山の乗客が出てくる所だった。その人ごみの中に、目立つ真っ白の軍服を着た人物が確認できた。

 

「どうやら無事到着したみたいね」

 

「そうだな。よし・・・!」

 

「ちょっと、美緒!」

 

 ミーナが制止する暇もなく坂本はドアを開けて外に出てしまった。彼女がどれだけ今回の人物の到着を楽しみにしていたかが伺える。しかし、ミーナはその限りではないのだが。

 

「悪いことが起こらなければいいけど。もしそうなれば・・・容赦しないわ」

 

 ドアを開けた時にボソリと呟いた声に含まれる冷たい殺気を感じる者は、運転手以外誰もいなかったのが幸運だろう。しかし、その運転手も知らぬ存ぜぬの態度を貫いていたにも関わらず背中に冷や汗を垂らしていたのだが。

 

「お~い!こっちだ!!」

 

「どうやら気付いたようね」

 

 坂本が大きな声と手振りで呼ぶと、その人物もこちらに気付いて足早に歩いてきた。コツコツと革靴で石畳を踏む音を鳴らし、坂本とミーナと数歩間隔を空けて止まる。そして、手に持っていたカバンを地面に置き、腰に据えた扶桑刀「炎羅」に手を添えて、綺麗な敬礼をして言った。

 

「扶桑皇国海軍第16飛行大隊第343飛行中隊から転属してきました。神崎玄太郎大尉です。本日付で第501統合戦闘航空団に着任いたします」

 

 スオムスの戦いから2年の歳月が経った。

唯一の魔法使い(ウィザード)である神崎玄太郎は大尉へと昇進した。

次なる戦場はブリタニア。

そして第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」

 

 神崎の戦いが、再び始まる。

 






プロローグがてらに短めです

更新の期間は長くなると思いますが、これからもよろしくお願いします

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