まだペテルブルグ大作戦見てないです
早く見たいです
ブレイブのプリクエル2早く読みたいです
そんなこんなで第六十五話です
感想、アドバイス、ミスの指摘などよろしくお願いします!
たった1発の銃弾が大きく狂わせた。
神崎を包囲していた4人の航空
「グゥッ・・・!?」
残り少ない魔法力を振り絞り、包囲を脱するべく、神崎は一か八か
「なッ・・・!?」
自爆紛いの炎の放出はコリンの想定の範囲を超えていたらしいく驚愕の声をあげた。
コリン等はシールドを展開してただ耐えることしかできず、その間は何も手出しはできなかった。神崎が全速力で離脱するには十分な時間があり、これが起死回生の一手になる可能性があることには違いなかった。
『少尉、少尉。大丈夫ですよね?』
「なんとか・・・な・・・!」
インカムから聞こえる声も
付近にいるはずだが、狙撃手らしく姿を隠している。それがコリン等に対する抑止力になっていた。
「助かった。シーナ」
『いいようにやられていたようで。少尉らしくもない』
『何やられそうになってんだよ!?こっちだってやべぇんだぞ!?』
「言い訳できないな・・・。待て。通信が回復したのか?」
シーナらしい皮肉の効いた物言いと、憤慨気味な島岡の声に流されそうになってしまうが、ここで彼女と普通に無線での通信が出来ていることに気付いた。戦闘前、極々至近距離の島岡とでは通じていたが、距離があった鷹守とは通じなかった。ならば、地上にいるシーナとの通信も出来ないはずなのだが・・・。
『ここに来る途中に変な物を吹き出している車両があったので無力化してきました。あからさまに怪しかったので』
「・・・流石だな」
『じゃあ、これで増援も呼べんじゃねぇのか!?』
シーナの到着で戦況は好転した。
通信が回復したことで、島岡の言う通り増援も呼ぶことが可能になる。光明が見えてきたことに神崎は僅かに安堵の溜息を吐くが、インカムに紛れ込んだか細い声にその考えを否定された。
『いやぁ・・・。残念だけど、増援は・・・きびしいんじゃあ・・・ないかなぁ~』
「鷹守か・・・!?」
『無事かよ!?』
ようやく確認できた自分達の隊長の声に神崎も島岡も喜色を滲まして反応した。が、いつもなら1つは飛んできそうな軽口が全く無く、無線のノイズ以外で何故か途切れ途切れになっている。嫌な予感が神崎の胸を過ぎるが、鷹守は2人に返事をしないまま言葉を続けた。
『奴らは・・・ここで・・・僕達を完全に殺す・・・つもりだよ。それこそ・・・自分達の身命を賭してね・・・。その為に・・・第二次ネウロイ侵攻を・・・仕掛けて・・・全部隊を釘付けに・・・。万に一つ・・・増援は・・・来ないよ』
『増援・・・とは言えませんが、コッラー川の戦線から負傷者を輸送中です。護衛として私とシェルパとリタと歩兵部隊が。少しは手助けが可能かと』
2人の話を総合するなら、増援の可能性があるのは陸戦
神崎は高い針葉樹の陰に身を潜めると、背中を木の幹に、
「・・・鷹守、地上の状況は?」
『ん?あぁ・・・、そうだねぇ・・・』
戦場にそぐわない気の抜けた声を出す鷹守。その声には彼らしい明るさはなりを潜めており、言い淀むというより言葉を出すことが出来ないように感じた。
しかし、鷹守が言い出すのを待つ余裕は無かった。悲鳴のような荒い声がインカムから響く。
『おい!?こっちは逃げてんだよ!?早く教えろ!?』
島岡の声と共にエンジン音の爆音が入っていた。複数の航空
島岡の声に押されたのか、やっと鷹守が無感情な声で言葉を続けた。
『攻めてきた・・・共生派は・・・殲滅。でもねぇ・・・。こっちは・・・僕達は・・・殆どやられちゃったかな?えっと・・・何人残った?・・・2人?3人かぁ・・・』
「なんだ・・・と・・・」
鷹守の言葉を聞く内に神崎は自分の内側が冷たくなっていくように感じた。神崎は先程から感じていた嫌な予感が現実となっていくのを黙って聞くことしかできなかった。
『なんとか・・・スオムス陸軍の人達は・・・全員生きてるけど・・・。まさか・・・本当に・・・自爆なんてねぇ・・・。衝撃で・・・自滅しちゃってさ・・・。神崎くん・・・。島岡くん・・・。あいつら・・・死ぬ気だ・・・よ』
『そもそもお前ぇの声が死にそうじゃねぇか!?』
『すぐに助けに行きます。鷹守大尉、現在地を・・・』
「いや・・・だめだ」
鷹守を助けようと動こうとしたシーナを神崎は押し止めた。声を聞く限り、鷹守は無事ではない・・・むしろ危険な状態にあることが察せられる。救助するならば現在唯一の地上戦力であるシーナが向かうしかない。
だが神崎は、ここでシーナが動くことは結果的に自分達の首を絞めてしまうことに気付いてしまったのだ。
『ゲン!?』
『そうだね~。ヘイヘくんは来ない方がいいねぇ・・・』
『鷹守!!手前ぇ、死にてぇのか!?』
『ハハハ・・・。死にたい・・・かぁ・・・。どうだろうねぇ・・・』
諦観が滲み出る乾いた笑い声で島岡の怒号を受け流す鷹守。だが、神崎の意見に賛成したのは自分が助かるのを諦めたからではないようだった。
大分落ち着いた神崎は冷静になった頭でこれからどうしなければならないかを考える。自分が感情のままに動いてしまったせいで最悪の状況に片足を突っ込んでしまったのだ。仲間の命が刻一刻と死に近づいている以上、自分が持ち得る・・・いや持ち得る以上の力を以って戦わなければならない。
『僕達を助けてくれるなら・・・彼女達をどうにかしないとねぇ・・・』
「そうなるな。・・・シーナ?」
『なんですか?』
「さっきコリン・カリラともう1人を抑えることはできるか?」
『・・・厳しいが出来ます』
「シン。追撃してくる
『あぁ!?どうするつもりだよ!?』
実行しようと考えただけで湧き上がってくる恐怖を何とか押し殺し、神崎は自分に言い聞かせるように告げた。
「・・・ケリをつけるぞ」
「助けたと思ったら、無理難題を吹っかけてきますか・・・」
ラドガ湖防衛陣地のすぐ近くにある雑木林。
木々と雪で彩られた地面に溶け込むように、雪原用迷彩のポンチョとマスクを身に纏ったシーナは静かに白い布で巻かれた
シェルパ、リタと共に撤退中の部隊を護衛していたシーナ。負傷した人員を運んでいる分、進軍速度は非常に遅く、安全確保の為に地上と上空両方の索敵が必要だった。
異変を感じたのはシーナが斥候として、部隊より先行していた時だった。防衛陣地まであと少しといった距離でインカムに雑音しか流れなくなってしまったのだ。異変を察知したシーナは、周辺を探索し金属片を放出する無人の車両を発見。どうにも怪しいと車両を無力化するとなぜか通信が回復。
この行動が命運を分けた。
ラドガ湖防衛陣地での戦闘の様相が聞こえたのはその時だった。
神崎達が劣勢に陥っているのを知ると、シーナは居ても立ってもいられず陸戦ユニット、T-26改の魔導エンジンを全力で駆動させていた。纏うマントを風にはためかせ一目散にラドガ湖へと向かい、陣地が一望できる雑木林に潜伏した。
真っ白な
解放した魔眼「死神の目」で機影を捉えれば包囲されているのが神崎であるのが分かる。
ならばやることは1つだけだった。
滞空した敵を1発で2人を撃ち落すのは、「死神の目」ならば造作も無かった。
「ですがまぁ、機動中の敵を狙うのは骨ですが・・・」
風景に紛れ込んだシーナが片膝立ちで
「・・・出来ないことはないですね」
その瞬間、発砲音と共に弾丸が発射され・・・回避行動しながらシーナを探している航空
だがもう1人の航空
いくら「死神の目」があるとはいえ、自身の場所が露見した状態では上空で飛び回っている方が有利なのは火を見るより明らかだろう。
「対抗手段はあります」
この戦場は我が家同然のラドガ湖防衛陣地。隅から隅まで知り尽くしているこの場所でならやりようはいくらでもある。
神崎からの要請は、敵の抑え。こちらに出来るだけながく惹きつけていなければならない。
シーナは立ち上がると、用済みとばかりにポンチョとマスクを取り外した。ポンチョの下から現れたのは、腰に提げられた短機関銃KP/-31。さらに小柄な体にこれでもかと巻きつけた
シーナはM28/30《スピッツ》を右手に、腰のKP/-31を皿型弾倉を装填したうえで左手に持つ。そして陸戦ユニットのT-26改の魔導エンジンを1度力強く唸らせると、自ら雑木林から雪原へと飛び出した。
上空の航空
敵はコリン・カリラだ。
「舐めてかかったら・・・撃ち落としますよ?」
シーナは巧み挙動で雪原を疾走しながら、感情を伺わせない無表情で、しかし瞳には確固たる意思を感じさせ、両手の銃をコリンに向けた。
彼女の対空機動戦ともいうべき戦闘が始まった。
シーナが対空機動戦を開始した頃。
島岡は航空
大気を切り裂くような轟音を響かせ空を縦横無尽に飛翔する島岡の零式。それに追いすがり回りこんで包囲しようとする
まともにやれば一方的にやられるだけの戦闘で、島岡は何とか渡りあっていた。
「ハァ・・・クソッ・・・ハァ・・・こん畜生が・・・!!!」
幾度となく高いG、急激な急上昇と急降下による急激な気圧変化に晒され、四方から来る銃撃に神経を尖らせ、さらに加えて戦闘機動をこなしていた。体力はすでに限界に近づいているが、それは機体も同じだった。
胴体から主翼にかけて所々に弾痕が穿たれ、コックピットの風防に幾つか穴が開き罅割れている。奇跡的に操縦系統や燃料系統に損傷は受けていないのが救いだが、問題は燃料の残量だった。コッラー川への長距離輸送任務から続く支援任務、そしてこの戦闘である。油断すれば燃料不足で不時着もあり得る。
「だからって、んなこと気にしてられねぇよ!!!」
限界を誤魔化すように、島岡は力の限り吼え、操縦桿を振るった。彼の気勢に応えるように、零式も一際大きいエンジン音を響かせた。大きく機体を翻した零式は、襲い掛かる銃火を搔い潜って急降下する。神崎の指示に従って雑木林に向かうためだ。
機速を一気に増加させて
島岡は体を押し潰してくる重圧の中、霞む視界で回りこんできた航空
いままでの戦闘の中でも射撃はしていたが、飛び回っている人間大の大きさではまともに命中するはずもなく、辛うじて命中したとしても戦闘機程度の機銃、機関砲ではシールドで容易く防がれてしまった。正直、勝ち筋は殆ど見えない状態。
「だからってなぁ・・・」
だが、島岡は急降下中の機体をコントロールして航空
その様子を見た瞬間、島岡は破顔した。急停止すれば当然急降下している零式との距離が一気に縮まる。回り込もうとしてきた航空
「やりようはあるんだよぉお!!!」
零式と航空
この攻撃は航空
「東側だから、あっちだよな・・・」
罅割れた風防越しに地形を確認しつつ、ちらりと叩きつけた右翼を見る。相当無理な操作のせいで凹みが出来ており、微弱な振動がおき始めていた。もう先程のような無理は効かない。
「ボロボロじゃねぇか・・・。ゲンの野郎、こっからどうすんだ?」
最高速度に近い速度で飛行している今、雑木林上空には到着する。加えて通過するのは数秒しかない。神崎には何か考えがあるのだろうが、そんな一瞬で出来るのだろうか?
それが分かったのは、島岡が背後からの銃撃を回避しつつ雑木林の上空に到達した時だった。
雑木林の一番高い木の上を通過した瞬間、零式のすぐ横を下から飛び上がる人影。島岡は半ば確信しつつも慌てて背後を振り返った。
その目が捉えたのは、3人の航空
恐怖に向き合う、というのは世間一般でよく言われていることだ。実際は、その言葉は例え話に近いものであって、本当に恐怖と向き合うということはない。
だが今、神崎は自身の恐怖と向き合っていた。
出来るだけ早くこの戦いを終わらせる為に、神崎は島岡に自身が潜む雑木林に来るように指示を出した。
それだけは何としても避けなければならない。
ならば・・・やるしかない。
雑木林に隠れている間、残り少ない魔法力を少しずつに集束させていた
島岡の零式が雑木林上空を通過するタイミングを見計らい、神崎は空中に一気に躍り出た。
追撃してくる3人の航空
それでも、歯を喰いしばって恐怖をねじ伏せて
ゴォオオオオッ!!!
という轟音と共に、周辺の酸素を燃やし尽くす勢いで
戦闘機を追っていたはずが、いきなり目の前に
神崎の策は失敗した・・・かに見えた。
確かに彼女達は炎をシールドで防いだだろう。それは火傷1つ負っていない様子を見れば分かることだ。だが、ここで重要となるのは炎に何が変わったのかだ。神崎が集束させていた魔法力量で炎の熱量は相当高くなっていた。すると当然、炎によって周辺の空気は熱せられ高温になる。
では、その高温の空気はどうなるのか?
航空
ならストライカーユニットは?
それも守られるだろう。炎ならば。
ストライカーユニットの魔導エンジンを稼動させるのに必要なのは燃料、魔法力、
するとどうなるか?
零式を追撃し、あまつさえ急降下から回復して最高速度に近い速度を出しているのだ。ストライカーユニットを限界まで酷使し、魔導エンジンも全力で稼動しているだろう。そこに高温の空気が送り込まれると・・・。
熱暴走・・・そして爆発だ。
ほぼ同じタイミングで、3人の航空
「フゥー・・・」
神崎は力を抜くように長く息を吐き、堕ちていく3人を一瞥する。そして、何も言わぬまま
「アアアアアアアアアアアア!!!!!」
獣のような絶叫が神崎の耳を貫き、直後凄まじい衝撃と共に何かが体にぶつかった。あまりに突然すぎて神崎は声すら出せない。だが、衝撃によって飛びかけた意識の中で辛うじて自分に取り付いた何かによって急激に降下していることだけは分かった。
「グ・・・ガァッア!!!」
ここで落ちる訳にはいかない、と神崎も吼えた。
辛うじて握っていた
だが・・・なんとか見開いた目が取り付いた何かを視認した時、不覚にも動きを止めてしまうほどに飲まれてしまった。
体中を鮮血で染め上げて、もはや腕1つ動かすのも厳しいはずなのに。既に力尽きたと思っていたのが人物が、自分の残っている命の火をすべて費やすかのような決死の形相で・・・コリンの身代わりに神崎の散弾を全身に受けた小柄な
神崎は何もできないまま、地面に堕ちていった。