本格的にアフリカでの戦いが始まります。
感想、アドバイス、ミスの指摘など、よろしくお願いします。
第六話
統合戦闘飛行隊「アフリカ」基地、早朝。神崎は、無理やり飲まされたアルコールのせいで痛む頭を抱えて、素振りをしていた。赤城に乗っていた時、坂本に無理やりやらされていた素振りだが、一応続けることにしていた。
「84・・・85・・・86・・・」
早朝にも関わらず日差しが強く、素振りをしている神崎は、既に汗だくになっていた。
「97・・・98・・・99・・・100」
顔に垂れた汗を拭きつつ、一息つく神崎。近くに置いていた上着を拾って、自分の天幕に戻っていった。
「まさか、アフリカで和食が食えるとはなぁ・・・」
「そうだな」
豚汁をすすり、麦飯をパクつく神崎と島岡。驚くことに、扶桑人以外も沢山いるにも関わらず、ここの部隊の主食は和食だった。聞けば、ここの食事は全て稲垣が作っているらしい。しかも相当いい腕をしていた。
「どうですか?お口に合いますか?」
「もちろん。美味しいよ」
「ああ。旨い」
心配そうな稲垣の問いを、島岡と神崎がそろって否定する。
「あら?もう真美に餌付けされちゃった?」
「こんな旨い料理なんだ。当然だな」
「ティナ。口に牛乳が付いてます」
食事を受け取った加東が二人を茶化し、マルセイユが自分のことのように胸を張る。しかし、口についた牛乳のせいで威厳半減だった。
「ハハハ」
「・・・」
そんなマルセイユを見て、島岡は笑ったが神崎は黙ったまま豚汁をすすっていた。
今日の神崎と島岡の予定は哨戒ルートの確認、また神崎は更に編隊飛行の確認があった。
「アフリカってどんなトコかと思ったけど、結構いいとこだな!暑いけど」
「そうだな」
哨戒ルートを確認中、無線を通じて会話する神崎と島岡。ちなみマルセイユ他のユニットは零戦、零式の航続距離についていけず、二人だけの飛行となっている。
「みんないい人そうだしな。安心して戦えそうだな」
「そう・・・だな」
明るい声の島岡に対して神崎の声は若干暗い感じがした。
「どうした?なんかあったか?」
「いや、昨日のアレを見たらな・・・」
昨日の大宴会を思いだし、遠い目をする神崎。島岡は苦笑した。
「あ~。でも、楽しかったぜ?」
「それに・・・な・・・」
そう言って神崎は口を閉ざした。
「それに・・・なんだよ?」
「いや・・・なんでもない」
神崎は首を振り、それ以上答えなかった。島岡は首を捻ったが、それ以上は尋ねなかった。
「おかえり~」
哨戒ルートの確認は何事もなく終わり、滑走路に降りてきた神崎と島岡を加東が出迎える。加東の後ろには稲垣が少し隠れたようにして、こちらを見ていた。
「ただいまっす」
「・・・」
島岡がコックピットから手を振り、神崎は黙って頭を下げた。そんな二人に稲垣が声をかける。
「昼食を用意してますので!よかったら・・・」
「お!やったぜ!」
「・・・すまないな」
既に正午が回っていたので、空腹の二人にこの申し出はありがたかった。
「昼食を食べたら、玄太郎は編隊飛行ね。別に急がなくていいわ」
「了解」
神崎は頷くとユニットを脱ぐべく、ユニットケージに向かっていった。
「俺は何すればいいすか?」
「そうね・・・。夕方にもう一回哨戒してもらうから、休んでていいわよ」
「分かりました」
加東との会話を終えた島岡は、神崎と共に昼食に向かった。どうやら、二人の胃は既に稲垣の料理に掌握されたらしい。
「じゃあまず、マルセイユの二番機として動いてくれる?」
『了解』
『フフン。私についてこれるか?』
加東は地上から神崎とマルセイユの動きを見ていた。ちなみに、稲垣は食料庫の管理でこの場にはいない。
マルセイユが動き出し、神崎はそれに追従し始める。加東が双眼鏡で二人の様子を見守る中、マルセイユは右に左にと様々な機動を取り、意地悪くいきなりの急旋回や宙返りなどを織り込むが、神崎は苦戦しながらもなんとか追従している。
「へ~。そう動くんだ・・・。お!そこでその動き!?マルセイユも手加減なしね・・・。ほ~。玄太郎もよくやるわ・・・。えぇ!?でも、あれじゃ・・・」
「ケイさん。何してるんすか?」
「わっ!?」
「うおっ!?」
いきなり島岡に声をかけられ、二人の動きに集中していた加東はひどく驚く。
「なんだ、信介か。びっくりした・・・。もう休憩はいいの?」
「はい。飯食ったし」
どことなく満ち足りた表情の島岡は、自前の双眼鏡を持って加東の横に立った。
「ゲンはどんな感じすか?」
「いい調子よ。マルセイユの反則的な機動によくついていってる」
「さすが」
そう言って島岡と加東は、ワイワイ騒ぎながらマルセイユと神崎を見ていった。周りの整備兵達がジロジロと二人を見ているが、空を注視しているため全く気づいてい。そんなこんなしていると、2人の所にライーサが現れた。足にはストライカーユニット Bf109F-4/Trop。
「ケイ、準備できました」
「ん?あぁ、ライーサ。じゃあ、すぐ飛んで頂戴」
「了解です」
ライーサは、島岡に微笑んで目礼すると滑走路に向かった。
「ライーサってどのくらいの腕なんすか?」
滑走路から飛びたったライーサに手を振りながら、島岡が加東に尋ねた。
「相当いい腕をしているわよ。なんたって、私たちがアフリカに来る前からマルセイユの背中を守ってるんだから」
「へ~」
加東の言葉に相槌を打つ島岡だが、今ひとつ分かっていない様子。それを察した加東はさらに続けた。
「カールスラント軍の報告書って、とても詳細に記入しないといけないの。いつ、どこで、どんな風に敵機を撃墜したか、誰がそれを確認したか、とかね。で、ライーサはマルセイユの機動についていって、彼女の撃墜を確認して、さらには敵の露払いもするの。それって、とてもすごいことよ」
「そんなにすか!?すげぇ・・・」
やっとライーサの凄さを理解して、島岡は感嘆の声を上げた。そんな島岡を満足そうに見て、加東は無線で空の三人に呼びかけた。
「じゃあ、ライーサも来たことだし、次は玄太郎が長機でライーサと二機編隊を組んで。そして、マルセイユと模擬戦。いい?」
『了解』
『了解です。神崎さん、よろしくお願いします』
『・・・よろしく』
『今回は私に勝てるかな?』
空の三人は準備が整ったようだ。加東が期待を込めた目で双眼鏡を覗く。
「さて、今度はどんな感じになるかしら?」
「ケイさん、すごく楽しそうっすね」
島岡は、そんな加東を見て苦笑しつつ、同じく双眼鏡を覗いた。
数分後・・・。
加東の目は死んだ魚のようになっていた。
「・・・何?あの動き。全然ダメじゃない・・・」
「おぉ・・・」
島岡が思わず息を漏らす。それほど神崎の動きの激変っぷりは凄まじい物だった。ついさっきまでの動きはどこにいったのか?ライーサを従えて飛ぶ神崎は、まったく安定しておらず、連携はもちろん満足にマルセイユを追撃することさえも出来なかった。
『神崎さん!落ち着いてください!』
『どうした、ゲンタロー?さっきと同じ動きでいいんだぞ?』
『・・・分かってる』
ライーサはおろか敵役のマルセイユにまで心配される始末。加東が頭を抱えた。
「長機の経験がないのかしら?まいったわね。真美と組ませようかと思ったけど、当分無理そうね・・・・」
「長機の訓練はしてるとは思うんですけど・・・」
島岡は返事をしながらも、神崎から目を離さずにいた。いつもの神崎とは決定的に異なる部分を感じていたからだ。ジッと模擬戦を見つめ、ポツリとつぶやく。
「もしかして・・・怖がってるのか?」
だが、一体何を?
「ん?今なんて・・・」
島岡のつぶやきを聞き取れず加東が尋ねようとした時、警報が鳴り響いた。空の三人の動きが止まり、加東の表情も隊長のそれに変わる。直後、通信担当の兵士が駆けつけてきた。
「何があった!!」
「
兵士の報告を聞き、加東が素早く指示をとばす。
「訓練中止!マルセイユ、ライーサ、玄太郎は急いで補給に降りて!私と真美が先行するから、ユニットの準備を!信介も発進準備!」
「『了解!』」
加東は、皆の返事を聞くと格納庫に向かい走る。その表情は曇っていた。
「こんな時にくるなんて・・・。」
司令部からの報告では、今日はネウロイの襲撃ないはずだった。だから、ユニットを使った模擬戦を行ったのだが、それが裏目に出てしまった。マルセイユとライーサが出遅れるのは痛い。高性能の航空型のネウロイが出ていれば、私と真美だけでは苦戦を強いられる可能性が高くなる。加東は唇を噛み締めた。
(いやな状況ね・・・。)
そこで一つの通信が入った。
『加藤大尉、自分が先行します』
それは神崎からの通信だった。見れば、神崎は未だ空に残っている。
『まだ十分に飛べますし、固有魔法と刀があれば、銃なしでも時間稼ぎは可能です。』
確かに、零式の航続距離と神崎の固有魔法なら戦闘は可能だろう。しかし、先程の無様な飛行を見た加東は首を横に振った。
「ダメよ。今みたいな飛行で戦えるわけない」
『・・・。一人なら大丈夫です。それに時間が惜しい』
加東は立ち止まり、考えを巡らせた。少しして言う。
「分かった。じゃあ、玄太郎は先行して。絶対に無理はしないで。着任早々戦死したんじゃ。笑い話にもならないわ」
『了解』
神崎はすぐに移動を開始した。加東は、神崎を見送ると格納庫へと走った
少し短いですが、あしからず。
現在、何人かオリキャラを考えているのですが、ネタがない。
ヒロインが決まらない・・・。