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彼女が銃の薬室に弾丸を送り込めば死神が鎌を構える。
彼女が狙いを定めれば死神が鎌を振りかぶる。
そして、引き金を引けば・・・死神は無造作に、だが確実にネウロイの命を刈り獲っていた。
何故、彼女はこんなにも簡単にネウロイを葬ることができるのか?
それは、彼女が持つ天性の射撃センスと激戦を潜り抜けて培った射撃スキル、そして「魔眼」。この三要素が合わさった結果であった。
彼女の魔眼。
「魔眼」の固有魔法自体はそんなにも珍しくもない。能力は視力強化であったり夜間視だったり、コアを見透かす能力であったりと様々。そんな中で、彼女の魔眼は未来視の一種だった。
彼女が視るのは放った弾丸がもたらす結果。
彼女が撃ち抜く標的の成れの果て。
標的を確実に死に導く彼女の魔眼はいつしかこう呼ばれた。
死神の目
そして数多のネウロイを葬った彼女、シーナはこう呼ばれた。
白い死神
と・・・。
「・・・!」
照準を通して見る先には塹壕に篭る男性兵士を踏み潰さんとする陸戦ネウロイの姿。
シーナはすかさずネウロイの死に様を「視る」と浅く息を吐いて、構えた
ネウロイが光の粒子となる姿を見届けずに、すぐさま別のネウロイに狙いを定める。銃が全くぶれない程の滑らかな動作で次弾を装填するとそのまま引き金を引く。その挙動を何度か繰り返していく内に弾切れになった。だが、シーナは流れるような挙動でクリップで留められた5連発の徹甲弾を
そして、再び迫り来るネウロイにその銃口を向けた。
シーナはこの動作のサイクルをかれこれ3回程繰り返していた。彼女が今の地点に到着してからさほど時間は経っていない。だが、その間に既に10体程のネウロイを葬りさり、いまだ陸戦
が、それも時間の問題。
シーナが葬り去っても後から後からネウロイは防衛陣を突破しようと侵攻してくる。稀に見る大攻勢だった。
「これ以上は・・・早くシェルパ達がこないと・・・」
弱音を吐きながらも、シーナはまた1体ネウロイを葬る。防衛陣地は既に半ばまで食い込まれていた。幾つかのビームがシーナの傍に着弾し、それを彼女はシールドを張って凌ぐ。
こんなことなら
悔やんだ時耳慣れた駆動音が彼女の耳に入った。
『やっっっと着いたぁ!押し返すよ!!』
高らかに響き渡る魔導エンジンの駆動音と共に現れたのは、シェルパを先頭にした陸戦
『シーナ!援護頼むよ!』
「もう、やっとだよ・・・。了解!!」
シーナは立ち上がるとT-26改を唸らせ、移動を始めた。援護に適した場所を確保する為に。
神崎と島岡がアウロラに連れられて来たのは指揮所から少し離れた、陣地全体を見下ろせる小高い丘だった。二人はシーナが一人で次々とネウロイを葬っていく姿にただ愕然としていた。
「どうだ?凄いだろう?うちのシーナは」
アウロラは肩に担いだスコップを揺らしながら楽しそうに言った。だが、二人にはそれに答える余裕はなかった。つい先程まで苦労性の気の毒な少女が、
二人が唖然としている間にも戦況が移り行く。
シーナが単独でネウロイの侵攻の波を押し止めていた結果、遅れていた他の陸戦
「確かに・・・大尉の言う通りです」
「ああ・・・すげぇ・・・」
神崎は頷きながら、島岡は感嘆の溜息を混じらせながら言った。その間にもネウロイの侵攻は押し返されていく。防衛戦は勝利に終わったかに思えた・・・が、
「おっと・・・これは・・・」
アウロラが担いでいたスコップを地面に突き立てた。先程までの楽しそうな笑みは無く、真剣な表情で遠方を見ている。
その視線の先には・・・先程の陸戦ネウロイの数倍にはなるであろう巨大なネウロイ。しかも、上空に複数の飛行型ネウロイを伴わせていた。先程までは勢いよくネウロイを押し返していた
「しょうがない。私が行くか・・・。シーナ?」
ぼやくようにアウロラは呟くと、懐からインカムを取り出しシーナに連絡を取った。
『はい、隊長?』
「あのデカいのは私が相手をする。時間稼ぎ、頼めるか?」
『その程度なら。どうも、弾が足りません』
「すぐ向かう。他の奴らにもそう言っておいてくれ」
交信を終えるとアウロラは二人に向き直った。
「と、言う訳だ。二人は・・・」
「飛行型はどうするつもりですか?」
アウロラが言葉を発する前に神崎が先んじて尋ねた。見たところ、この部隊には対空兵器はない。その状況でどのように対抗するのか?
「まぁ、なんとかするさ。二人は・・・ここに居てもいいし、さっきの指揮所に戻ってもいい」
不敵な笑みを残し、アウロラはスコップを手に小走りで格納庫に向かっていった。走り出す直前、どこからか取り出した酒瓶を傾けていた気ように見えたが・・・。
「さぁて、どうする?」
「俺はここに居るつもりだが・・・いいか?」
「戦況の確認もできるしな。俺は構わねぇよ」
「すまん」
短いやりとりを終えると二人は黙って前を見た。既に巨大ネウロイとの戦闘は開始されている。
陸戦
「ちょっと、やばいんじゃない!?」
「ちょっとじゃないよ!結構だよ!」
「凄くだ!!馬鹿なこと言ってないで撃ちまくれ!!」
シェルパの戯れ言に律儀に応えるリッタ・フルメ軍曹。
そしてそんな二人に律儀にツッコミを入れつつも叱りつけるマルユト・カッピネン中尉。
三人とも口ではそんな会話をしつつも絶え間なく、引き金を引き続けていた。彼女達以外もずっと撃ち続けている。巨大ネウロイに向けて、上空の飛行型に向けて。
だが、貧乏所帯のスオムス軍にこのような弾幕を張る続ける程の弾薬の余裕はなく、押し止められなくなるのも時間の問題だった。
『もうすぐ隊長が到着します』
インカム越しに聞こえるシーナの声。
だが、彼女達にはそれに返事をする余裕が無かった。巨大ネウロイと飛行型ネウロイが一斉に反撃してきたからだ。皆、歯を食いしばってシールドで耐える。ただ、ネウロイを隊長のアウロラの来るまで押し止める為に。
砲撃の衝撃で雪煙がもうもうと吹き上がり、視界が効きにくくなる。
声が聞こえたのはその時だった。
「待たせたな」
雪煙の中に現れる黒い影。
その影は巨大ネウロイの足下に近づくと、おもむろに右手を翻した。ネウロイの右脚を、先程まで数多の銃弾を弾き返したはずの装甲の堅牢さを感じさせないような勢いで歪ませ、バランスを崩させる。地響きを立てながら横倒しなる巨大ネウロイ。それを黒い影が踏みつけた。
「お前らにこの国は渡さん。絶対にな」
脚には、スオムス陸軍では比較的新型にあたる陸戦ユニット「Tー34」、右手にはスコップ、左手には
アウロラ・E・ユーティライネン大尉は自分の足下の巨大ネウロイを見下ろしニヤリと笑った。そして右手のスコップを高らかに掲げる。相手を食い殺してしまいそうな圧倒的で破壊的な威圧感。
「それじゃあ、終わらすか」
空気を切り裂く音と共にスコップが振り下ろされる。
バギャッッ!!!
上部装甲をいとも容易くかち割りコアを含めた内部を露出させる。アウロラはその割れ目に容赦なく収束手榴弾を突っ込んだ。そして・・・。
ドゴォォォオオオン!!!
収束手榴弾の爆発は巨大ネウロイを内側から食い破り、コアを木っ端微塵に破壊した。
十人単位で足止めしか出来なかったネウロイをたった一人で、しかも僅かな時間で葬り去ったアウロラ。只の飲んだくれではない、最強の部隊を率いるに足る最強の
アウロラは気怠そうにスコップを地面に突き立てると空を仰いだ。
「さて、後は空の奴らだが・・・」
先程までは対空砲火で近寄ってこれなかった飛行型が・・・アフリカの
「どうするかな・・・ん?」
アウロラが何かの気配を感じて振り返る。自身が先程まで立ち、戦況を見ていた小高い丘。だが、今そこに居るのは・・・。
「ほぉ・・・やるな」
アウロラが感心したように呟く。
それと同時に丘から数多の炎が奔った。慌てて回避行動をとり始める飛行型ネウロイだが、炎は完全に飛行型ネウロイを捉えている。
丁度その時、シーナからインカムで通信が入る。
『隊長、見ましたか?』
「ああ、シーナ。神崎少尉か?」
『はい。少尉の固有魔法のようです』
「ストライカーユニットの魔力増強も無しにこの数にこの威力」
アウロラはここで一度言葉を切り、酒瓶を傾けた。小さな酒瓶であるため、すぐに飲み干してしまう。空になった瓶をだらりと垂らし、獰猛な笑みを浮かべた。
「いいな。私の所に欲しい」
『少尉は空軍への増援ですよ?』
「ソルタヴァラのとこの空軍に送ったって宝の持ち腐れだ。なら、いっそ私が使った方がいい」
『・・・さすが姐貴。唯我独尊ですね』
「ほぉ・・・お前が私を姉貴と呼ぶとは珍しい。明日は爆撃が激しくなるか?」
『・・・失礼。では』
「ああ。また後でな」
通信が終え、アウロラは周りを見渡した。
つい先程まで戦っていた
「さて、もう一本空けたい所だが私ももう一仕事するか」
アウロラは突き立てていたスコップを抜き取ると、自身も救助活動に参加すべく歩き出した。
飛行型ネウロイを全機撃墜したのを確認して、神崎は構えていた左手をゆっくりと下ろした。撃ち洩らしに対応するべく次弾を準備していたのだが、初撃で決着がついたので必要がなくなったのだ。
「お~、一撃だな。さすが」
「だが、魔力消費が多い。ユニットがなければ・・・こんなものだ」
島岡の褒め言葉にも厳しい表情を崩さない神崎。その額は僅かに汗ばんでいたが、すぐに冷気によって凍りついた。神崎は冷たく走る痛みに僅かに顔を顰めつつ、凍りついた部分を払い落とす。
「ユーティライネン大尉の指示通り、指揮所に戻るぞ。・・・さすがに寒い」
「だな・・・。つうか、なんか防寒対策しねぇとやべぇ・・・」
身を震わしながら扶桑の二人はもと来た道を歩く。道の彼方此方に爆発跡があり、戦闘の激しさが窺えた。最前線から離れているのに関わらず・・・。
「・・・これがスオムスの戦いなんだな」
「・・・ああ。激戦だった。アフリカも厳しかったが、ここもな」
「なんで、俺ら激戦地にばかり送られるのかね?」
「俺が知る訳ないだろう」
「あ゛~。無性にライーサに会いたい」
二人の重くなっていく心のように、頭上の空からは圧し掛かるように新たな雪が降り始めていた。
最近はこのサイトで、ストライクウィッチーズのオリ主二次小説が増えている感じがして、嬉しいです(^^)
色んな話が読めて楽しい今日この頃