スオムスは魅力的なキャラが多いのですが、オリキャラとかも結構出てきます。
乞うご期待?
あと、おそらくこれが今年最後の投稿になると思います
感想、アドバイス、ミスの指摘、等々、気軽によろしくお願いします!
皆さん、よいお年を!!
第三十四話&人物紹介4
スオムス
国土の大半を森と湖が占めている、白い雪で包まれた極寒の、しかしとても美しい北欧の小国。
また、北欧におけるネウロイ防衛の最前線である。
1939年、初冬。
ネウロイがスオムスへ侵攻を開始。
主にカレリア、東カレリア方面から侵攻してきたネウロイに対し当初スオムス軍は太刀打ち出来なかった。特に陸軍は装備不足が顕著に目立ち、陸戦ネウロイに十分な対処が出来ず後退を続けた。次々と領土を飲み込まれていく中で水際立った活躍したのが空軍と各国から派遣された義勇独立飛行中隊の
それから約1年、ネウロイとの戦争は小康状態を保った。その1年の間に流れた平和の空気。しかしその裏、軍では不穏な空気が流れていた。原因は突如出現した人型ネウロイ。そして、洗脳という形ではあったがネウロイが人類とのコミュニケーションが可能という事実。凄惨な戦いに身を投じてきたスオムス軍の一部の者たちにとってその事実はとてつもなく甘い蜜だった。
スオムス軍はネウロイとの戦闘で疲弊し戦力の回復が急務。しかし、スオムスの国力は小さく、戦力を回復させようにも大変な困難を伴う。ましてや戦力を拡充するなど不可能に近かった。他国からの支援を当てにしようにも、どの国も他の戦線に戦力を集中させており、スオムスに回す余裕がない。
――もしかしたら、ネウロイを味方に引き込めるかもしれない・・・――
この状況下でそのような考えに囚われてしまうのも仕方が無いのかもしれない。
そして、1941年、初夏。
ネウロイが再び侵攻を開始した。
朝の六時きっかりに私は目を覚ました。
久しぶりにベットで寝た為か体の調子がすこぶるいい。気分よく手を動かしてさっさと身支度を済ませると、半分地面に埋まっている兵舎から出た。途端に刺す様に冷たい空気が私を包み込んだ。マイナス20度なんてここでは珍しくもない。でも今日の朝は一段と冷え込んでいる気がする。着込んだコートの襟をギュッと握り締めて足早に糧食班の所へと向かった。
朝食は茹でたソーセージとクラッカーそして濃いコーヒーだった。さして美味しいわけではないけど朝食をしっかり食べないと力が出ない。だから食べる。
野ざらしのテーブルに座りモソモソと朝食を口に運んでいると誰かが私の前に座った。
「おはよう、シーナ。早いね」
顔を上げると同僚のシェルパがいた。私のと同じメニューの朝食を携えて私の向かいに座る。
雪原用の迷彩服を着込んだシェルパ。
トレーをテーブルに置いて椅子に座る動きはどこか緩慢としているので声をかけてみた。
「おはよう、シェルパ。任務明け?」
「そうよ~。雪の中でひたすら長距離偵察・・・。ユニットの履帯が雪塗れで、凍りつく前に整備しなきゃいけないから苦労したわ~」
そういうとシェルパは湯気が立つコーヒーをぐいっと飲んだ。
「やっぱり任務明けは熱いコーヒーよね!」
「うん。私もそう思う」
雪中の長距離連絡は寒いのは勿論だけど、食事がカチカチに凍りついた乾パンなどになってしまうのは相当堪える。不用意に火も付けられないし・・・。体の芯から温まることができる熱いコーヒーは本当に生き返った心地になるものだ。まぁ、私はシェルパみたいにブラックでは飲めないんだけど。
当然ながら私の方が先に食べ終わり、シェルパと別れることになった。
「あ、そうそう!」
私がトレーを持って立ち上がると、シェルパは慌てて言った。
「今思い出したんだけど、隊長が呼んでたよ。可及的速やかにだって!」
・・・なんで今になっていうかなぁ。その条件だと遅刻確定だよ。
隊長は陣地の指揮所にいるらしい。私は雪搔きされた道を小走りで進み、陣地全体を見渡すことが出来る小高い丘へと向かう。そこの丸太と土嚢で作られた小屋が指揮所だ。その小屋の前に立つ歩哨に呼び出された旨を伝えて中に入ろうとする。扉をノックし名乗ろうとすると・・・。
「おお!シーナ!随分と遅かったな!お陰で一本空けてしまったぞ!」
大きな声が私の名乗りを遮ってしまった。傍に立つ歩哨と微妙な表情で顔を見合わせると、ついジト目になって部屋の中に脚を踏み入れる。
中に居たのはスオムス陸軍の仕官服にハーネスを合わせ、黒のストッキングと雪中用ブーツを履いた長髪で釣り目の女性。右手には空の酒瓶を持ち、彼女が座る椅子の傍らには使い込まれたスコップが置いてあった。そう。彼女こそ我らが隊長、アウロラ・E・ユーティライネン大尉。その性格は豪快にして大胆。先の戦争ではネウロイの大群相手に単身突撃し大立ち回りしてのけた。その頼もしすぎる後姿に、大尉のことを「姉貴」と呼ぶ人も少なくないとか。
・・・私は呼んでないけど。というか、その光景を目の当たりしていた身としては頼もしさよりむしろ恐怖心を抱いたけどね。
私は気をつけの姿勢を取ると冷静に答えた。
「つい先程命令が伝えられたので。それに、その程度のお酒は水と同じでしょう?隊長なら」
「う~ん。確かにアルコール分が少ないな。ま、少ししか待ってないから許そう」
その少しの間で一本飲み干したのかとか無神経なことは言わない。いつも隊長はこんな感じだから。代わりに呼び出された用件を聞くことにした。
「で、私はなんで呼び出されたのでしょうか?」
「そうだった。シーナ、今日はいつもの任務に就かなくていい」
「いいんですか?」
予想外の一言に思わず聞き返してしまった。ネウロイ相手に雪の中を這い回っての防衛戦なんて誰も好き好んでやろうと思わないだろう。
「その代わり、ヴィープリまで行って、扶桑の海軍さんからのお客さんを迎えに行ってくれ」
「増援ですか?扶桑からはるばる?しかも海軍?」
ふつうなら陸軍がきそうなものだけど・・・と首を傾げていたら、隊長は面白くなさそうな顔で空き瓶を近くの机の上に置いた。
「増援なのは確かだ。けど、うちじゃない。近くの空軍にだ。
「はぁ・・・空軍さんにですか・・・」
最近の空軍の動きはどうも変だ。全部がというわけじゃないけど、ここら辺の部隊は特にネウロイの迎撃にどこかやる気が無い。撃退はしているけどね。けど、自分達への増援なのに
「ま、お前は最近休みなしだろ?休暇だと思って行って来い」
そう言うと、隊長は私に出迎えの詳細が書かれた書類を渡し小屋から追い出した。何か納得できないもやもや感を胸に抱きつつ、さっきの歩哨に挨拶をして歩を進めた。少し進めば森が開ける。そして視界一杯に大きな湖が広がった。
ラドガ湖。
スオムスとオラーシャの境にある巨大な湖にして、水を嫌うネウロイに対する防壁。
太陽の光を反射させてキラキラと輝く水面はいつもながらとても綺麗だった。もやもやしていた胸のうちも軽くなって気がする。
「ま、いいか」
一言呟いて気分を切り換える。書類に書いてある行動予定を見れば出発まであまり時間が無い。準備する物も色々あるし、さっさと行動しよう。
陣地から出発して一時間程スキーを飛ばして最寄の駅へ。そこから列車に揺られること数時間、ヴィープリに到着した。予定ではここで扶桑海軍の増援、
ヴィープリの街並みを眺めながら自転車を進ませる。この辺りは軍の施設があるためか賑わい見せている。だが、ちらっと別方向を見ればネウロイの爆撃跡が色濃く残っている。前線から割りと離れてるこの街にも侵攻の手が伸びているんだ。私達は必死に戦っているけど、どうしてもネウロイの方が数が多い。そのことを考えたら・・・
「・・・二人でも増援は嬉しいな」
なら早く二人を迎えに行こう。私は陸軍で増援は空軍で、あまり関係ないかもしれないけどスオムスを守れるなら関係ない。私は知らず知らずのうちにペダルを漕ぐ脚に一層の力を込めた。
「扶桑海軍の増援?あぁ、あれか。彼らはまだ来てないよ。どうも列車の運行が遅れているらしくてね」
張り切って自転車を駆った結果がこれである。駐屯地の門の警備主任の曹長は言った。
「彼らが到着するのは駅だからそこで待っていたらどうだい?」
しかも、来た道を戻ることになるなんて・・・。ヒィヒィと息を切らせて元来た道を自転車で全力で戻った。大慌てで駅に飛び込み、駅員に列車の到着時刻を聞くと後30分ぐらいで到着するとのこと。
すれ違いは避けられたみたい・・・。
安心したらどっと疲れが出てきたので私は近くにあったベンチに座り込んだ。そよ風が自転車を漕いで火照った頬を撫でて心地よい。目を閉じてその心地よさを楽しんでいると、風とは違う刺すような冷たさが私の頬に走った。ゆっくりと目を開けて空を仰ぐと、どんよりと曇った灰色の空から雪がハラハラと落ちてきていた。スオムスでの雪など日常茶飯事でさしてきにすることではない。
でも、何故かゆっくりと舞い落ちる雪に、私は目が離せなかった。
ピィーッという甲高い汽笛の音がボゥとしていた私の意識を呼び戻した。いつの間にか30分経っていたらしい。少し風が強くなってはいるけれども、私は特に気にすることなくベンチから腰をあげ駅のプラットホームへ向かった。
今しがた到着したからは続々と乗客が降りてくる。その中には普通の民間人に混じって少なくない数の軍人がいた。彼らはすぐに戦場に赴くのだろう。ここ最近の戦闘でどこの部隊も消耗しているらしいし・・・。
さて、問題はこのごった返す人波の中から、どうやって扶桑軍人二人組を探し出すかだ。こう考えている間にも、私の両脇を多くの人が通り抜けていく。もたもたしていたら入れ違いになりかねない。
もう自転車漕ぐのは嫌だなぁ・・・。確実に見つける為に『視て』しまおうか?
などと考えていたが、目的の二人はあっさりと見つかった。
「痛い!?アフリカとは違う意味で風が痛い!?」
「・・・へっくしょん!!」
人波の一番後方から聞こえた叫び声と大きなクシャミ。私は勘みたいなものを感じて声が聞こえた方向に向かった。スオムスに居てあんな台詞を言うスオムス人など絶対にいない。言うとすれば外国人だ。例えば・・・扶桑人とか。
人波を抜けると私の予想が当たっていたことが分かった。停車した列車の傍に立つ、スオムス軍とは違うコート纏った二人の軍人。足元には大きな鞄が置いてあり、一人は腰に反りのある剣を携えていた。目や髪の色、体格もスオムス人とは違うし多分あの二人が扶桑海軍の増援だろう。
「ったく、めちゃくちゃ寒ぃじゃねぇか・・・。もっと中に着込むべきだった・・・。つか、坊主の頭が寒ぃ・・・」
「流石にこの寒さは堪えるな・・・。氷点下など軽く下回っているだろうな・・・」
「あ~。アフリカが恋しい~。ライーサが恋しい~」
「・・・お前はブレないな」
「あの、すみません」
「んお?」
「・・・はい?なんでしょうか?」
少々ぶしつけではあったが、二人の会話に割り込ませてもらうことにした。声をかけると明るそうな方は不思議そうに、剣を携えている方は鋭い視線でこっちを見てきた。
・・・なにか警戒されてるような?
「失礼ですが、お二人は扶桑皇国海軍の・・・えっと・・・神崎玄太郎少尉と島岡信介特務少尉で間違いないでしょうか?」
「そうですが・・・。貴女は?」
資料に書かれていた二人の名前を何とか思い出して尋ねると、剣を携えた方・・・多分神崎って方かな?勘だけど・・・、がいぶかしんだ様子で尋ね返してきた。
まぁ、ちゃんと名乗るしかない。
私は背筋を伸ばして踵を合わせると挙手の敬礼をする。
「私は、お二人の案内を任されました、スオムス陸軍第12師団第34連隊第6中隊所属、シーナ・ヘイヘ曹長です」
これが彼らとの出会い。そして・・・戦いの始まりだった。
人物紹介4
名前 鷹守 勝己
年齢 20(1941年時点)
階級 技術大尉(元宮菱技術者)
使い魔 無し
人物設定
神崎、島岡と共にスオムスへ出向することになった整備班のリーダー。天才と称されてもおかしくない頭脳を持ち、零式艦上戦闘脚の陰の開発者。ストライカーユニットだけでなく魔導針などの
魔法力そのものを愛しており、男性であるのにも関わらず魔法力について造詣が深く、魔力を『理解』する能力を持つ。その能力を発揮する為には肉体的接触が不可欠。通常は握手程度で十分だが、魔法力が自分好みであれば興奮して理性を失い、抱きつくなどの過剰な接触を試みようとする。
容姿は180程度で伸ばしっ放しの茶色掛かった髪を無造作に束ねており、丸眼鏡を付けている。技術大尉ではあるが、本人は軍人という自覚が薄く、とても砕けた態度をとる。
年末は皆さんどうお過ごしする予定でしょうか?
私は、サン・トロンのBDを見つつゆっくりしたいと思います
来年もストライクウィッチーズの熱が上がっていくと思うので楽しみです!