結構独自設定が入ってます
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砂漠の夜
月が雲に隠れた闇夜の中に瞬く妖しい赤い光。その光が見える度、一つまた一つと炎が上がる。
「
「敵はどこにいるんだ!?」
「真っ暗で何も見えん!!」
響き渡る爆発音と怒号、次いで銃声。闇雲に放たれた弾丸は何もない空間を貫き、ただただ無意味を重ねるだけ。
また一つ炎が上がった。
突如として風が吹き、雲間から月を覗かせた。月光に照らされた地面に走る影が一つ。その影はなおも砂にまみれてもがき続ける者達へと重なった。
「間に合わなかったわね・・・」
加東は唇を噛み締めつつ、報告の為に地上の有り様をカメラに納めていく。その間、神崎は加東の後方に付き周辺警戒に努めていたが、やおら口を開いた。
「・・・最近、夜間の襲撃が多くなってきています。しかもいまだに敵影すら捕捉できていないというのは・・・」
「夜間戦闘になると私達には厳しい所があるし何か手を打たないと・・・」
「そうですね・・・ん?」
その時、神崎の視界の隅で赤い光が煌めいた。
「ッ!?ケイさん!!下がって!!」
「え・・・!?」
警告を発するも撮影と思考に集中していた為か加東の反応が遅れた。咄嗟に神崎が加東の前に滑り込みシールドを張った直後、ネウロイのビームが直撃する。
「グッ・・・!?」
予想以上の威力に神崎は思わず声を漏らすが、ほどなくしてビームは止んだ。直ぐ様ネウロイが居たであろう方向に銃を向けるが、暗闇の中に紛れ見つけられない。
「ごめん!!大丈夫!?」
「大丈夫ですが・・・敵を見失いました」
後ろから投げ掛けられる加東の慌てた声に、神崎は振り返らず鋭い目で周りを見渡しながら答える。暫くの間、二人はじっと空中に留まり警戒していたが、次の攻撃はなかった。
「ここら一帯の空域を哨戒するわ。まだ近くにいるかもしれない」
「了解」
そこで加東が躊躇うように間を置くと、神崎から恥ずかしそうに目を逸らして言った。
「さっきは助かったわ。その・・・ありがとう」
「いえ・・・お気になさらず」
神崎は気まずそうに返事をして自ら加東後方の二番機位置に入った。
その後の哨戒は敵から攻撃を受けることも、敵を発見することもなく終わった。
トブルク カールスラント・アフリカ・軍団総司令部
「今回で8件目だ。そろそろ何か別の策を練らなければならない」
ロンメル将軍の音頭で会議が始まった。
彼の目の前には不機嫌そうに眉間に皺をよせて、テーブルの上に広げられた地図を眺めるモントゴメリー将軍と葉巻をふかして近くのソファにふんぞり返るパットン将軍。三将軍が集まるほどに、今回の夜間における襲撃の問題は重要なものとなっていた。
「
「徐々にではあるが各前線への補給にも滞りが見られ始めている」
「今はまだ小規模の部隊しか狙われとらんがなぁ。補給線に危険があるのは、喉元にナイフを突きつけられておるのと同じだ」
パットンは葉巻の煙を吐き出すと自分の首に手刀を当てるジェスチャーをした。ロンメルは頷くと、襲撃地点とその詳細が記された地図に目を落とす。
「今までは無理を押して『アフリカ』に対処させていが限界がある。これを何とかしないのは指揮官の怠慢だ」
「鍵となるのはやはり
そう言うモントゴメリーの表情は渋い。それは他二人も同じだった。
「・・・どこかからか
三人の頭を悩ませる問題をパットンがボソリッと呟いた。
夜間戦闘航空魔女 通称「ナイトウィッチ」
その名の通り夜間時の戦闘を専門とする
今回の件ではどう考えても
「いったい、どっから引っ張ってくるんだ?」
・・・多少などではない。大問題だった。
現に、このパットンの問いかけにモントゴメリーは眉間の皺を一層深くさせ、ロンメルは諦めの溜め息を吐いた。
今さらだが、ここでアフリカの戦場の特性を説明しておこう。平坦で障害物の少なく、見晴らしのよいアフリカは男性兵士がネウロイと対等に戦える数少ない戦場の一つである。
しかし悲しいことに、その事実故に
しかも
「
「
「ブリタニアの
三者三様の台詞を吐き、そして揃って青筋を立てる。
「錬度不足ならここまで連れてきて訓練させればいいだろう!?あの扶桑の
「それなら、カールスラント御自慢の夜間戦闘航空団から引き抜いてきたらどうだ!?それが確実だろう!?」
「お前達とは違ってカールスラントには
「本国の防衛は最重要任務だ。本国の戦力を引き抜くことなどできん」
「あんなのは戦力の持ち腐れでしかないがな!!」
「なんだと!?なら貴様等は・・・」
売り言葉に買い言葉。会議は踊る、血と共に。
天幕の外で待機している兵士達のことなど露知らず、三人は肉体言語で会議を進めていった。
統合戦闘飛行隊「アフリカ」基地
「で、その結果が『これ』という訳?」
「まぁ、そうだな」
目の前では改造作業を受けている零式艦上戦闘脚とその傍らで死んだ魚のような目でひたすら分厚い書物をめくっている神崎。
加東はそんな光景を横目で見つつ嘆息すると、神崎がこうなってしまった原因を持ち込んできたロンメルに向き合う。いつものようにニコニコとした表情だが、その顔面にはいくつかの絆創膏と湿布が張られている。
「
「なんでそれを殴り合う前に思い出さないのよ・・・」
加東が大袈裟に溜め息をつくがロンメルは一向に気にしていない。そんな彼を置いておいて加東はひたすら書物を呼んでいる神崎の所へ向かった。
「大丈夫?」
「なんとか・・・」
問いかけには返事をする神崎だが、目はページの文字を追っている。
「それが終わったら仮眠を取ってね。初のことなんだから、万全の体制で望まなきゃ」
「分かりました。しかし・・・まさかこんなものがあるとは思いませんでした」
一段落着いたのかずっと伏せていた顔をあげる神崎。その目は純粋な驚きがあった。
「これが実用化されれば戦局は変わるわ。えっと・・・何て名前だっけ?」
「鷹守式魔導針です」
神崎が再び書物へと視線を落とす。その表紙には「鷹守式魔導針取扱説明書」と書かれていた。
魔導針。
魔法力によって形成されたアンテナから電波を発して、夜間での視覚補正及び索敵を行う魔力運用技術の一つである。
魔導針を起動させる装置はストライカーユニットに組み込まれており、訓練をすれば誰でも使用が可能となるものだ。
だが、習得するために必要な訓練期間は決して短くないため、この訓練を受けるのは専ら
これは従来の魔導針、八木式や宇田式、リヒテンシュタイン式の場合である。
今回、神崎が受領したのは「鷹守式」魔導針だ。扶桑皇国海軍の技術部が開発した新型である。訓練を受けていない
従来品に比べ性能は約2分の1、消費する魔法力量も馬鹿にならないが、扱いやすいように操作が簡略化され自動稼働の調整がされていた。まだ試作品の段階だが、もしこれが実用化されれば夜間戦闘の戦力が一挙に増大し、戦況に大きな変化を及ぼすことになるであろう物だった。
このことを海軍から打診を受けていたロンメルは
零式への魔導針の組み込みが終わるのとほぼ同時に、神崎は説明書を閉じた。
「あら、早かったわね」
「・・・なんだかんだ言って、この手のことは飛行訓練を受けていた頃に散々行ったので・・・。将軍は?」
「ついさっき帰った。頑張ってくれ、だって」
時刻は午後3時すぎ。マルセイユ達は哨戒任務や訓練で空に上がっており、格納庫は数人の整備兵が詰めているだけでガランとしていた。神崎は説明書を脇に置くと立ち上がって大きく伸びをして固まった筋肉を解す。まだ日が高いがこれから夜間哨戒に向けて仮眠を取らなければならない。
「・・・自分の出来る限りのことはしてきます」
傍らの加東に一言告げると軽く笑って格納庫を後にした。
午後9時
「出力・・・異常なし。操作系・・・異常なし。兵装・・・異常なし」
ランプの灯りを頼りに神崎は出撃前の点検を済ませていく。目の前に続いている滑走路にもランプが置かれ光のラインを描いていた。
「魔導針は・・・正常に作動。異常なし」
零式艦上戦闘脚を履き、銃と扶桑刀「炎羅」を装備する神崎だが、頭部には見慣れない物があった。細身の鉢巻きの様な物だが、特殊な樹脂で出来ており右こめかみ部分には幅が樹脂と同程度の長方形の装置が付いている。これは「鷹守式」の最大の特徴を表す物だ。
「・・・ッ」
神崎が魔導針へ魔法力を送ると、一瞬間を置いてアンテナが現れた。頭部から2本、そしてこめかみの装置から短めの物が1本。この頭部の装置が魔導針の制御装置となっており、この装置がなければ神崎は魔導針を使いこなすことができなくなる。
神崎が何度も魔法力を送り、慎重に問題がないことを確認していると、インカムから加東の声か聞こえてきた。
『任務は夜間哨戒と補給部隊を襲撃している中型ネウロイの発見及び撃破。玄太郎、大丈夫?』
「問題ありません。いつでもいけます」
答えながら目を横へと向けると、心配の目をしている加東と、興味津々げなマルセイユ、あくびを噛み締める島岡とそれを諌めるライーサがいた。
『ゲンタロー!次、それを私に貸してくれ!!』
『ふぁあ・・・。はやく寝てぇからさっさと行け。そしてさっさと帰ってこい』
『シンスケそんな言い方は・・・。神崎さん、お気をつけて!』
インカムから聞こえてくる言葉は相変わらずの物ばかり。そんな彼らに神崎は苦笑しつつ手を振って離陸し、星が煌めく空へ飛び立っていった。
離陸してすぐ、神崎は魔導針の凄さを痛感した。先日までは闇夜で視界が取れず苦労して飛行していたが、今は昼間と殆ど変わらない視界を確保できていた。これは魔導針のアンテナから発信されている電波が周りの空間情報を読み取っているからである。
それを
「結構な魔力を消費するが・・・これは凄い」
周りを見渡しながら舌を巻く神崎だった。
だが、魔導針の性能にも関わらず目標である中型ネウロイを発見できずにいた。
すでに5時間近く飛行し、時刻は深夜2時を回っている。常に警戒している分神経がすり減り、心なしか手の銃と腰の「炎羅」がいつもより重く感じた。
(少し疲れたな・・・)
神崎は気分を変えようと仰向けとなり、星空を見上げた。魔導針越しに見る星はいつも見るよりも数倍綺麗で神崎は知らず知らず目を細める。
インカムからノイズが走ったのはその時だった。
「ッ!?」
この状況でノイズが走るのは不自然。臨戦態勢にはいった神崎は銃を構え辺りに鋭く視線を走らせる。
が、何もない。
(なんだったんだ・・・?)
神崎は首を傾げると、少し考えて再び星空を仰いだ。すると、再びノイズが走る。さらに制御装置である短めのアンテナが不規則に瞬いた。
(魔導針の誤作動か・・・?試作品らしいが・・・)
そう思いつつ零式に目を向けていると、再びノイズが走った。
『ザザザッ・・・ラ・・・ザザザザッ・・・・ラン・・・ザザザザザ』
一度は夜間飛行というものをしてみたいですね
最近は暑くなって夜寝付けない日が続いているので、そんな日に飛びたいです
番外編になってからケイさんがヒロインにしか見えない現象が発生している
なぜだ!?(笑)