筆者としても初めての試みなので余り期待せずに読んで下さい
時期的にはライーサと島岡が付き合って少し経った頃です
感想、ミスの指摘、アドバイスなどよろしくお願いします!
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番外編2 譲れない闘い
炎天下の中、島岡は前に立ち塞がる敵を睨み付ける。
それは神崎。
「そこをどけ。ゲン」
「・・・断る」
神崎は表情こそ静かなものの全身から強烈な気迫が立ち昇っていた。お互いに一歩も譲る気はなく、おいそれと手を出せない。
一陣の風が二人の間に砂を巻き上げた。
先に動いたのは島岡。素早い動作で足を動かし、神崎の横をすり抜けようとする。だが、神崎もその動きに対応した。一瞬後には島岡の前に立ち塞がった。
そして・・・、
「・・・貰った」
「んな・・・!?」
島岡が保持していた
「まだまだだな・・・!」
「ちくしょぉぉおおお!!」
統合戦闘飛行隊「アフリカ」は絶賛サッカー中であった。
一面ただ広い砂漠だった基地の隣は今やサッカーグラウンドと化していた。サッカーグラウンドと言ってもそんな大層な物ではない。ただ間に合わせのゴールポストを二つ、ベンチには申し訳程度のイスを置いただけ。ラインにいたってはすぐに砂で隠れてしまうため引いてもいない。そんな中で神崎、島岡を始めとした有志11名が走り回っていた。
わぁわぁと騒ぐ彼らを見守る影が5つ。
「おお!やっぱりゲンタローは上手いな!」
「ティナ。シンスケも負けてないよ」
マティルダが支える大きな日傘の陰で言葉を交わす、マルセイユとライーサ。その隣ではカメラを構えてシャッターを切る加東と浮かない表情の稲垣もいた。
「やっぱり戦力的には玄太郎と信介かしらね」
「あの、ケイさん。やっぱりあの話は本当なんですか?」
「だから皆本気になっているんじゃない。信介は特に・・・」
そう言いながらすさまじい気合いと共にシュートを放つ島岡をカメラに納める。その会話を横で聞いていたマルセイユはからかいの目でライーサを見た。
「愛されているな?」
「もう!!ティナ!」
ライーサは顔を赤くして声をあげるが、その実満更でもなさそうだった。
事の始めは一週間程前に遡る。
「最近はネウロイの襲撃や市街地の治安維持活動が多発したせいか、士気が落ち込み気味だ。何かこう、うまい具合に士気を上げる方法はないだろうか?」
トブルクのカールスラント陸軍アフリカ軍団総司令部から、協議の為と呼び出しを受けて向かった加東が、到着してまず最初に聞いた言葉である。言ったのは、もちろんカールスラント陸軍アフリカ軍団の長であるロンメル将軍だった。
「ないだろうか・・・って、そんなことはあなたが考えることじゃないでしょう?」
「それはそうだが、別に私が考えてしまっても構わないだろう?」
どこぞの弓兵のような物言いに加東は呆れた目を向けた。だが、ロンメルはニコニコと笑って加東の返答を待つだけ。仕方なく加東は口を開いた。
「・・・疲れが溜まっているなら、普通に休暇をあげればいいんじゃない?」
「そうだが、ただやるだけでは面白みがなくないか?」
「・・・なんで面白みを求めてるのよ?」
「それに、疲れもだが不満や鬱憤なども溜まっている気がする。それらも何とかして解消してやりたい」
余りのどうでもよさに頭が痛くなってきた加東は適当に答えた。
「なら、競技会か何かしてその勝者が特別休暇を貰えることにすれば?別に賞品とかでもいいし」
この提案にロンメルは少し考えて表情を明るくした。
「・・・ふむ。それはいいかもな。君達にも何かしらの協力を要請するかもしれないがいいか?」
「まぁ、任務に支障がなければ」
「分かった。さらに計画を練って後で伝えよう」
「了解・・・って、もしかして協議ってこれだけ?」
「そうだが?」
「このくらいのことで呼びつけるな!!」
そして数日後、トブルク近辺に駐留する全部隊に1つの通達が送られた。内容は・・・
「全部隊対抗サッカー大会開催!優勝部隊MVP選手には統合戦闘飛行隊『アフリカ』の
・・・・・・。
「あんの、アホ将軍!!!」
この通達が届いた時、加東は書かれている書類を全力で叩きつけ、即刻抗議の電話を入れた。
しかし・・・。
「通達を送った全部隊から物凄い速さで参加申し込みの連絡が来てな。今さら中止にはできん。それに君は協力を了承したはずだが?」
という感じで、ロンメルはのらりくらりと抗議をかわしてしまった。 その夜、加東はやけ酒で相当な飲んだという。それに神崎が付き合わされたとかないとか・・・。
この通達で怒ったのは加東だけ出はなかった。
「アフリカ」にこの通達が広まった時、島岡は激怒した。
「人の彼女を賞品にするとは許せねぇ!将軍を殴ってでもやめさせてやる!!」
けど、銃殺だけは勘弁な!と、訳が分からないことを言い始めたので、ライーサがやんわりと押し留めた。さすがに将軍を殴るのはやめた島岡だが、別の方法を思いついたらしい。それこそ、
「俺らが優勝して、俺がMVPを獲ればライーサを守れるし、(公式で)キスができんじゃね!?」
というもの。マルセイユや加東はいいのか、といった抗議もあったがライーサを守ることで頭が一杯の島岡はまったく気にすることなく、思い立ったが吉日とばかりにその日のうちに部隊の男性兵士を巻き込んでサッカーチームを結成。さっそく練習を開始した。
そして今に至る。
「どうしてサッカーになったんだろうな?」
マルセイユがいつの間にか持ってきたロングチェアに寝転がりながら言う。加東は少しだけ考えて彼女の疑問に答えた。
「それは、世界中の人が出来るからじゃない?私は余り馴染みがないけど、海軍の方じゃよくやっていたって言うし。だから、玄太郎も信介も上手いのかもね」
そんな事を話していると、島岡が見事なシュートと放ちゴールを決めた。それを見ていたライーサと稲垣が黄色い歓声を上げる。
「シンスケはMVPを狙えるんじゃないか?」
「それは試合になってみなきゃ分からないわね」
「・・・もし、ゲンタローがMVPを獲ったら誰を選ぶんだろうな?」
「!?!?!?」
思わずマルセイユの方を勢いよく振り返る加東。マルセイユはニヤニヤして見ている。
「誰を選ぶんだろうな?」
「そ、それは玄太郎の勝手でしょ!?」
明らかなからかいだが、加東は頭では分かっていても冷静にはなれなかった。
「まぁ、楽しみにしていればいいさ」
「まったく・・・」
加東は憤慨しながらその場から離れる。その時、神崎を目で追ってしまったのはしょうがないことだろう。
数週間後・・・。
「さて、ついに始まりました。全部隊対抗サッカー大会、決勝戦。実況は私、ブリタニア陸軍のセシリア・G・マイルズが「グリンダー!!!」ちょっ、誰よ!ミドルネームは呼ばないでってゲフンゲフンッ・・・務めさせて頂きます。それでは決勝戦に勝ち上がってきたチームをご紹介しましょう。まずは、我らが誇るアフリカの守護神、統合戦闘飛行隊『アフリカ』から、チーム『アフリカ』!名前もそのままですね。さて、いったいどんなチームなのでしょうか?解説のポルシェ少佐?」
「今回、解説を務めさせて頂く、カールスラント陸軍のフレデリカ・ポルシェ少佐です。「空飛ぶおっぱい!」「テメェ、俺の魔女に色目使いやがって!!」「誰が俺の魔女だゴラァ!」・・・。さ、さて、チームアフリカについてですが、島岡選手と神崎選手をエースに置いたバランスのいいチームですね。両名が攻守とも高いレベルでこなせるので他選手も安心してプレイできるようです。今までの試合も危なげなく勝ち進んできました」
「なるほど、さすが神ざ・・・ンンッ。で、では対するチームは!チーム『R』!!このチームはどんなチームなのでしょうか?」
「一言で言えばチームワークがいいですね。特徴的な部分はありませんが恐ろしいまでに統制された動きをしています」
「なるほど、ではまもなくキックオフです!」
「チーム『R』の『R』は!『ロンメル』の『R』!!」
「何やってんすか!?将軍!?」
センターラインに仁王立ちするロンメルに島岡は有らん限りの大声でツッコミを入れた。
「
「それ目的でこんな設定をしたのか。・・・職権乱用ではないか?」
神崎も静かにツッコむがロンメルは意図的に無視した。
「さぁ、やろうではないか!」
「チクショウ!ぜってぇライーサは守ってみせる!」
島岡が気持ちを新たにして気合をいれるが、神崎は浮かない顔をしていた。
「・・・ロンメル将軍が相手ではこちらのカールスラント軍人がやりにくくなる。大丈夫か?」
「そんなの関係ねぇ!!」
そんな問答をしているうちにホイッスルが鳴る。ある意味最強の相手に試合は始まった。
「まさか、ロンメル将軍のチームだったとは・・・。これは相当やりにくいでしょうね。解説のポルシェ少佐?」
「ええ。特にカールスラント軍人には効果抜群でしょう。チームアフリカのカールスラント軍人は明らかに動きが悪くなっていますからね」
「しかも、ロンメル将軍の指揮でチームアフリカは完全に押し込まれてますね」
「今まで個人プレイに頼り気味だった分、神崎選手、島岡選手の攻撃を防がれてはチームアフリカに攻撃力はほとんどありません。ロンメル将軍の指揮するディフェンス陣に二人は何度もボールを獲られてます」
「しかし、扶桑軍人の頑張りのおかげか前半戦は0-0。すごいと思います」
「ですが、流れは依然としてチームロンメルが握っています。この状況を打開する『何か』がなければチームアフリカは負けてしまうでしょう」
「そうですね。では、後半戦が始まります」
「チクショウ・・・。やっぱり将軍相手じゃやりづらいか・・・」
額から流れ落ちる滝のような汗を拭い、島岡は愚痴った。動きが悪くなったカールスラント軍人達のフォローに回り続いて相当な体力を消費していた。神崎も同様であり、汗をかきながら憮然とした表情をして言った。
「早く何か手を打つ必要があるな」
「けど、攻撃までに移る余裕がねぇ・・・。くそぅ、今まで全試合で得点してるからMVPは確実なのによぉ・・・。勝てなきゃ意味ねえよ」
悔しそうに呟く島岡。その様子に神崎は1つ頷くとこう提案した。
「後半は俺達からの攻撃だ。・・・ここは俺に任せてくれないか?」
そして後半戦。
センターラインに神崎が立つ。
「相手は君か。だが、私が指揮するこのディフェンス陣を抜けるかな?」
ロンメルの挑発に神崎は静かに答える。
「その必要はない」
「なに?」
不思議そうな表情をしたロンメルに神崎は行動で答えを示した。
神崎の頭から狼の耳が、臀部から尾が生える。
「ッ!?まさか!?」
驚愕の色に染まるロンメル。神崎はボールを真上に蹴り上げると、魔法力を最大限に発動させ空中へと飛び上がった。一同がポカンと口を開けて見上げるなか、神崎はクルクルと体を回転させる。そして・・・
「ファイア○ルネード・・・!!!」
「どこの超次元サッカーだよ!?!?」
島岡の渾身のツッコミと共に放たれた炎のシュートは寸分たがわすゴールに吸い込まれた。ゴールキーパーはとっくに逃げており陰も形もない。
「・・・魔力の使用は別に禁止されてないからな」
一同唖然した中で見事な着地をして地面に降り立った神崎はどこか誇らしげな表紙でニヒルに言い放った。
なんだかんだあったが、結局このゴールは有効になった。当然、チームロンメルは抗議したが、審判はその抗議を聞き入れなかった。(たまたま審判の後ろ姿を見た者の話では、審判のズボンの後ろのポケットからは写真のような紙切れが覗いていたらしい)
流れを掴んだチームアフリカはそのままチームロンメルの攻撃を防ぎきり1-0で勝利。かくして、「アフリカ」
しかし、問題が一つ。
「MVPは・・・神崎少尉!!!」
「なんでだよ!?!?!?」
マイルズから告げられた一言に島岡の悲痛な絶叫が響き渡る。
「あの炎のシュートは見事でした!これはMVPしかないでしょう!」
「ああ・・・。何と言うか・・・。すまない、シン」
「本当の敵は味方だったのかよ!?」
後日、アフリカの部隊内では頬が赤くなった神崎の姿が見られた。その日は加東の顔が1日赤くて、マルセイユが既に仕事を果たしたような雰囲気を醸し出していたとか何とか・・・。真相は誰も知らない。
ちなみに、島岡とライーサはいつもの変わらずイチャイチャしていたらしい。
私が書きたかっただけです(笑)
慣れないことをした(笑)
ちなみに、サッカーはイギリス海軍が日本海軍に伝えたのが日本てま広まった始まりだとか。この世界だとJリーグも早く出来たかもしれませんね