文字に起こしてみて気付いたこともあり結構時間がかかりました。
そして初の1万字突破!!キツイ・・・
あと、お気に入りが200超えました。ひとえに読んでくれる皆さんのお陰です。ありがとうございました!
と、言うわけで第十九話です。
感想、アドバイス、ミスの指摘など、よろしくお願いします!
※少し編集しました
「では、その時の状況を話してもらえるかな?」
トブルク、KAK(カールスランド・アフリカ・軍団)司令基地。その中で一般の兵士には知られない部屋があった。必要最低限のライトと簡素なテーブルがあるだけだが、そこには軍団長であるロンメル中将と諜報部に属する少佐が一人。そして、テーブルを挟んで一人の一兵卒がいた。
「わ、私が気づいた時には、バイクがこちらに近づいてきました」
第21装甲師団麾下第2警備小隊所属フーゴ・バルテン上等兵。彼は少佐と中将という雲の上の存在を前にしてとてつもなく緊張していたが、必死に声を絞り出していた。
「停止を勧告したのですが、い、一向止まる気配がなく、威嚇射撃を行いました」
上等兵が話し、少佐がその内容を書き取り、中将が静かに聞く。
「バイクは転倒。私は尋問するために接近しました」
「続けて」
「接近して、止まらなかった理由を尋ねると拳銃を取り出し自殺しました」
「・・・」
「その時、何か言葉は?」
ロンメルが黙ると、少佐がさらに催促してきた。
「『これが我々の戦いだ』・・・と」
統合戦闘飛行隊「アフリカ」基地 上空
「屋根よ~りた~か~い鯉の~ぼ~り♪」
アフリカの青い空を一機のストライカーユニットが飛んでいた。メッサーシュミットBf109E-4。それを駆るは神崎玄太郎。いつもの第二種軍装を身に纏い、手にはMG34、腰には扶桑刀「
『どうだ?カールスランドのユニットは?』
神崎がクルクルとロールしながら飛んでいると、同じく空を飛んでいるマルセイユが少し離れたところから無線を通して質問を投げかけた。今回彼女は、慣れないユニットを装備している神崎のサポートと、彼の
「零戦とは勝手が違うな」
神崎は呟くように言った。
何故、神崎がBF109E-4で飛行しているのか?
その理由は単純で、先日の戦闘で大破した零式が修復不可能となったからだ。整備隊長である氷野曹長が見たところ、暴走のせいで魔導エンジンに許容範囲を超過する魔力が送られて熱暴走を起こしてしまったらしいということだった。そして、神崎の固有魔法は炎。悪いことに他の
残念なことに零式は扶桑海軍きっての最新機種であるため、おいそれと予備を回すことができない。というよりも、ほとんどが激戦地かつ劣勢である欧州、つまりは遣欧艦隊の方に優先的に配備される為、激戦地とはいえ比較的戦況が安定しているアフリカは後回しになっているのだ。
そんな理由もあり、本来ならば予備機が来るまで待機となる神崎だが、比較的安定しているとはいえアフリカで航空
そんな訳で、神崎が隊の予備機として保管されていたBf109E-4で飛ぶことになったのだが、自分に声をかけるマルセイユが離れているように感じた。魔女
「あと、ハンナ。流石に離れすぎだ。まだ近づいても大丈夫だ」
『そうか?なら近づこう』
そう言うとマルセイユは神崎にグッと近づき、並んで飛び始めた。
「いつゲンタローが襲ってくるかわからないからな」
「お前がついてくるって言ったんだろう」
「そうは言ってもな。この傷を見れば・・・な」
マルセイユは目を伏せながら頬に貼られた絆創膏を撫でた。その仕草に罪悪感を感じ何も言えなくなってしまう神崎だが、その絆創膏が取れかかっているのに気付いた。
「それは悪かったと思っている。・・・が」
神崎はジト目になってマルセイユの頬に手を伸ばし、絆創膏をひっペがした。
「イタッ」
「何が『この傷を見れば・・・』だ。傷痕なんてどこにもない」
「と、ところで零式とはどう違うんだ?」
自分の不利を悟ったのか、マルセイユは慌てて話題を変えた。神崎はその慌て様に小さく苦笑しつつも答えた。
「運動性が格段に劣ってる。この機体の系列でお前はよくあんな機動ができるな。素直に尊敬する」
「ふふん。まぁ、私は最強のウィッチだからな!」
誇ったように胸を張り、ドヤ顔を向けるマルセイユ。あながち間違いじゃないのが凄いところだ。
「一体どういう風に操っているんだ?」
「色々とあるが、一つは出力調整だな」
褒められたのが嬉しかったのか、マルセイユがニコニコしながら喋り始めた。
「旋回する時に出力を絞るんだ。そうすれば小さい半径で旋回できるから、格段に早く方向転換を終えられる」
「だが、そんなことすれば失速しないのか?」
「その時は、機体性能を活かして急降下して速度を保ちつつ離脱するんだ。そして急上昇もう一度ドッグファイトを仕掛ける」
「なるほど・・・。零式では出来ない機動だ。零式は急降下速度の制限がかかっている難しい」
神崎は自分が今装備しているユニットを見た。
「このユニットでもできると思うか?」
「出来なくはないと思うが・・・E型だから難しいかもしれない。私とライーサのユニットはF型だからな」
聞けば、F型はE型よりも全体的に性能が向上されており、格闘性能の改良されているらしい。
「だから私はF型が好きなんだ。思う通りに動いてくれる」
今度はマルセイユがクルクルとロールをし始めた。まるで自分のユニットを愛でるかのように・・・。
「・・・いい機体だな。やはり零式には及ばないが」
「そんなことはない!」
マルセイユがムキになって神崎の言葉に反論する。だが、神崎は鼻で笑って挑発した。
「なら見せてくれ。Bf109が零式よりも優れている証拠を」
「分かった!よく見ておくんだな!」
そう叫ぶと、マルセイユは勇んで加速し、様々な戦闘機動を披露し始めた。
「簡単に挑発に乗ったな。・・・妹みたいだ」
神崎はマルセイユの行動にどことなく自分の妹の面影を感じていた。彼女の動きを追う視線も自然と妹を見守る兄のそれのようになるが、その実、真剣そのものだった。
マルセイユは「アフリカの星」と呼ばれる通り、アフリカ随一の、そして世界を通して見ても最強と言っても過言ではない
・・・決してからかうのが面白かったからではない
「どうだ!Bf109の方が優れてるんだ!」
一通りの飛行をし、若干息を切らせたマルセイユが神崎の前に立つ。彼女の飛行は素晴らしいの一言に尽きた。旋回性の低いユニットでシザースを決め、更には捻り込みなどもやってみせるのだから、賞賛せざるを得ない。その分、色々と参考にさせてもらったのだが。
「ああ。さすがハンナだ」
「う、うん」
神崎が素直に賞賛すると、マルセイユは神崎の反応が予想外だったのか強気な態度がなりを潜め、しおらしくなった。神崎は微笑むとポンッとマルセイユの頭に手を乗せ言った。
「お前が操るBf109は零式よりも優れている」
「わ、分かればいいんだ!」
神崎に褒められたのが余程嬉しかったのか、マルセイユは機嫌が良くなり、基地に戻るまでずっと鼻歌を歌っていた。神崎もそんなマルセイユの姿を見て人知れず頬を緩ましていた。
「あれ?私が操るBf109ということは、BF109自体は優れてないということか?」
「さぁ、どうだろうな」
「おい!ゲンタロー!」
「ほら。さっさと着陸するぞ」
統合戦闘飛行隊「アフリカ」基地
隊長用テントでは、加東が毎度のごとく書類整理に追われていた。加東は忙しい忙しいと嘆いているが、実は最近はそうでもなかったりする。
「ケイ隊ちょ・・・さん。飛行訓練終了しました」
「あら、そう。お疲れ様」
神崎が現れると、加東もちょうど一段落ついたのか、ペンを置いて伸びをした。
「ん~。で、零式以外のユニットを使ってみてどうだった?」
「いい機体ですが・・・正直使いづらいです。曲がりづらい」
「やっぱり零式の方がいい?」
「そうですね。出来るならば是非」
加東が知る限り、神崎がこの部隊に来てからこんな風に我が儘を言うのは初めてだった。まだ慣れていないようだが、加東のことも階級なしで呼ぶようにしてくれているし、段々と心を開いてくれているのだろう。この変化は加東とっても嬉しいことだし、出来るならばこの我が儘も叶えてあげたいのだが、いかんせんそれは彼女にはどうしようも出来ないことだった。
「う~ん、どうかしらね・・・」
首を捻り、考えを巡らすがあまりいい答えが出そうにない。そこで、加東は意見を求めることにした。
「中尉。そこのところどうかしら?」
加東は自分の机から右斜め前で書類仕事を続ける中尉に話を振った。
名は金子といい、つい先日扶桑本国から来た扶桑陸軍の主計中尉だ。中背で少しぽっちゃりとしており、一見凡庸な印象を受けるが実は相当出来るようで、貯まった書類を片付け、補給や他部隊との折檻などをそつなくこなし、他国の人ともすぐに打ち解ける。しかも、戦術に関しても一家言持っているとか。
金子は加東の言葉を受けると、机にある書類の山をあさり、数枚取り出して言った。
「大本営からの報告では、本国から欧州にいる部隊への向けて補給部隊が出発したそうです。その部隊にはここアフリカへの補給も含まれているらしいですね」
「ストライカーユニットの補給もあるのかしら?」
「補給の要請リストには入っていたのでおそらくは」
「いつぐらいに到着する予定?」
「二週間前に出発したようなので、こちらに到着するのは一、二週間でしょうか?」
「ということよ。玄太郎、分かった?」
「・・・はい。分かりました」
少し残念そうにしながらも神崎は了承した。加東に頭を下げると、続けて金子に向いた。
「金子中尉。ありがとうございました」
「本官は何もしてませんよ。少尉」
律儀に頭を下げる神崎に、金子は人のいい笑顔を浮かべる。神崎は天幕の入口に立つと最後に敬礼を残し外に出た。
天幕の外に出ると相変わらずの日差しが襲い掛かり、神崎は辟易して帽子を被った。特にすることもないので、自分がこれから使うであろうBf109E-4を見ておこうと考えて神崎は格納庫へ歩を進める。が、そこでマティルダを従えて暇そうに佇んでいるマルセイユに捕まった。
「お?ゲンタロー!報告は終わったのか?」
「ああ。特に問題はなかった」
神崎としてはそこで話を終わらせるつもりだったのだが、マルセイユはまったくその気はなかった。
「私の動きのどこがよかった?」
「・・・さっきの空中機動か?」
「そうだ」
何か期待している目をマルセイユから向けられ、神崎はどう答えればいいか迷ってしまうが、結局・・・
「さっき言った通りだよ。素晴らしかった」
と、いう無難な物になってしまった。同じことを言っただけで神崎は若干申し訳なく思っているのだが、言われた当の本人は全く気にしていないようで、
「そうか!やっぱり私が最強だな!」
ご満悦な様子だった。そして気を良くしたのかマルセイユは続けて言った。
「それに、まだ私の得意技も見せてないしな!」
「得意技?なんだ、それは?」
「ん?なら見せてやろう!マティルダ!」
マルセイユの一声で、マティルダはどこからともなく弾倉付きベルトを取り出すと、マルセイユに差し出す。マルセイユは鷹揚に頷きながらそれを受け取り、腰に巻くとニヤリと笑みを浮かべる。
「見とくんだぞ?」
「?分かった」
何をするか分からないので、とりあえず返事をしておく神崎。そんなことはつゆとも知らず、マルセイユはいきなり腰を大きく振った。
「フッ!」
「!?」
いきなり何をしでかすのかと度肝を抜く神崎だが、ベルトに取り付けられた弾倉がキンッという小気味よい音と共に外れ飛び、そのままマルセイユの手の中に収まったのを見て、ただ目を丸くしていた。
「・・・なんだそれは?」
「フフン。私の得意技『おしりロード』だ!世界広しといえども私にしかできまい!」
マルセイユが胸を張って自慢するが、驚きから脱した神崎が冷静になって言った。
「すごいはすごいが・・・手でやった方が楽だし早いだろう?」
「な、なんだその言い方は!せっかく見せてやったのに!」
「いや、非効率なような気が・・・」
神崎は口ではそう言いながらも、興味は惹かれているようで「こう?こうか?」とか言いながらマルセイユと同じように腰を動かしてみたりしていた。マルセイユも「違う!そうじゃない!」とか言いながら、再び披露し始めた。
傍から見たら二人して腰をクネらせている奇妙な光景である。
「・・・あいつら、なにやってんだよ。暑さでおかしくなっちまったのか?」
ランニング姿の島岡は弾薬箱を担ぎ格納庫に向かう途中だった。腰をクネクネと動かしている神崎&マルセイユを見てしまい、可哀想な者を見る目になる。二人にとっては至極真面目な事なのだろうが、第三者から見れば良くて変な踊り、悪くて変態にしか見えない。そして、島岡には後者に見えた。
「ゲンがああなるとはな~。暑さはこえ~な~」
適当なことを言いつつ、弾薬箱を担ぎ直して歩き始める。この弾薬箱に入っているのは、零戦の機銃用7.7mm弾だ。本来、弾薬補給も機体整備と共に整備兵が行うことだが、出撃の命令がかかるまで、特にやることなく暇だったので自ら買ってでたのだ。
島岡は格納庫に着くと、零戦の整備をしている整備兵に声をかけた。
「7.7mm持ってきました!」
「おう!そこ置いといてくれ!」
エンジン部分を整備している兵士の声に従い、ドスンと弾薬箱を降ろす。今整備している人達は全員島岡よりも年上であり、親子ぐらいの年の差の人もいた。皆職人気質の気のいい人たちである。固まった筋肉をほぐすように肩を回しつつ、整備の様子を眺めた。
「零戦の具合はどうすか?」
「あちこちガタが来てるな。補給がさっさと届けば問題ないが」
オイルで顔を汚した中年の整備兵が言う。ここの整備兵は扶桑もカールスランドも皆腕が良く、戦闘機もストライカーユニットもいつも万全な状態にしていた。しかし、部品の損耗や消費はどうしようもなく、しかも島岡の腕がいいこともあってか消費速度は普通よりも速かった。
「まだなんとかなるが、余り無茶な操縦はしないでくれよ?」
「それは約束はできないっすね」
「それもそうだな」
ガハハと荒っぽい笑い声を上げて中年の整備兵は再び作業に戻った。島岡が格納庫から出て、腰に下げていた手拭いで汗を拭きながら自分のテントに戻っているとライーサとばったり鉢合わせになった。
「お、おう。ライーサ」
島岡はこの前の神崎との会話のせいか、ライーサと会話するのが勝手に気まずく思っていたりする。
「島岡さん、こんにちは・・・ッ・・・!?」
最初は普通に挨拶したライーサだが、島岡の姿をしっかり認識しきすると途端に顔を赤くした。
「な・・・な・・・!?」
「ん?ど、どうかしたか?」
「なんて格好してるんですか!?ちゃんと服を着てください!」
「へ?服は着てるだろ」
「下着じゃないですか!」
島岡は今までの部隊ではランニング姿で過ごすことが普通だったので、なぜライーサがこんなことになってるかさっぱり分からなかった。
「と、とにかく!服を着てください!」
「わ、わかった!」
今一つ納得はいってない島岡だが、ライーサの尋常じゃない様子に慌てて自分の天幕へと走った。転がりこむように天幕に入ると、神崎が団扇片手に相変わらず散らかったベッドに寝転がっていた。島岡の慌てた様子に神崎は身体を起こす。
「・・・何してるんだ?」
「いや、それがよ・・・」
島岡が事の顛末を話すと、神崎は納得したように頷いて言った。
「ライーサは恥ずかしかったんだろう」
「は?なんで?」
「ライーサは十代の女の子で、男のそんな格好を見慣れてるとは思えん。普通の男性兵士の天幕からは離れてるしな」
「そ、そうなのか?」
「つまるところ、お前の配慮が足りなかったんだ」
それだけ言って神崎は再び横になった。島岡は首をひねりながらも近くに置いていた飛行服に袖を通す。
「前の部隊じゃ普通だったんだけどな~」
「それは男だけだったからだろ」
「お前はよく分かるな?」
「ずっと航空
「そりゃそうか」
島岡は飛行服を着終わると、バッグの中から小さな箱を取り出した。先日の釣りの前にトブルクで買った物なのである。島岡は少し考えて飛行服のポケットに入れた。
「さっさとライーサに謝ってこい。後腐れがなくて済む」
「おう。後、お前さすがにそのベッド片付けろ」
「・・・前向きに検討する」
「しないつもりだろ」
島岡が天幕から出ると再び砂漠の日差しが照りつける。
「ランニングの何がいかんのかね~。女はよう分からん」
早速服の中が蒸れ始め、島岡はやってられねーとばかりに頭を掻いた。
ライーサは顔を赤くしたまま、自分の天幕に戻っていた。
「あれ?ライーサさん?顔が赤いですよ。大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫だよ」
隣のベッドで本を読んでいた稲垣が心配していたが、なんでもない風に装ってベッドに飛び込んだ。暑さのせいでマットが熱を持ちムシムシしていたが、今のライーサには気にならなかった。気を抜けば、先程の島岡の姿が浮かんでくる。
(島岡さんの身体・・・凄かったな・・・)
島岡の身体は、Gに耐え、どんな状況でも操縦桿を操る為に鍛え抜かれていた。今まで彼が生き残れたのはその身体のお陰である部分が大きい。少し先程の島岡の姿を思い返していたライーサだが、すぐに顔が赤くなる。おまけに何故か胸が苦しくなってきた。
(でも、あんな格好するなんて・・・う~)
今まで一緒に過ごしてきた中で、ライーサは島岡がどんな人物であるのかは分かっていたし、色々と考えることもあり、それなりに好意もある。それが恋愛感情であるかどうかは微妙ではあるが・・。だが、そのことを置いておいても、さっきのは流石に刺激が強すぎた。神崎の言う通り、島岡の配慮が足りなかったのだ。
「ライーサさん、本当に大丈夫ですか?」
「う~、真美。ちょっと大丈夫じゃないかも・・・」
「え!?ど、どこか悪いんですか!?」
「・・・心が」
「こ、心!?ど、どうしよう・・・。私、心の治療方法なんて分からないよ・・・」
オロオロし始めた真美を見ていると、少し楽になったライーサ。
「フフッ。大丈夫だよ、真美。冗談だからそんな慌てなくても・・・」
そこまで言った時、基地に警報が響き渡った。すぐさま、ライーサと稲垣の顔が引き締まる。
「行くよ!真美!」
「はい!ライーサさん!」
二人はすぐさま天幕から飛び出した。
「信介とライーサを先に上げるわよ!機体の準備に取り掛かって!」
「「「了解(ヤヴォール)!!!」」」
マルセイユと神崎はついさっき飛んだばかりでユニットの整備が間に合っていないし、神崎にいたっては満足に戦闘機動できるかも怪しい。加東の号令の元、整備兵が各自の仕事に取り掛かった。
「なんだよ!ライーサに謝る暇もないじゃねぇか!」
島岡は毒突きながらも、零戦のコックピットに飛び乗った。手早く動作確認をしていると、加東がコックピットの横に取り付いてきた。
「ライーサにも言ったけど、敵はヒエラクスよ。数は少ないみたい。私と真美は後詰めに回るから、よろしくね」
「了解っす」
加東が機体から飛び降りるのを確認すると、島岡はエンジンに火を入れて回転数を上げていく。エンジンが問題ないのを確認すると、機体を滑走路に出して離陸準備に入った。
「出ますよ!!」
大声で周りに注意を促すと、島岡は零戦を離陸させた。基地上空を旋回していると、少し遅れてライーサが上がって来た。
『す、すみません!遅れました!』
「あ、ああ。じゃあ、行くぞ」
先程のこともあり、若干気まずいが問題はない。二人は二機編隊を組み、戦闘空域に向かっていった。
程なくして戦闘空域に到着した。が・・・
「・・・見えるか?」
『・・・いえ』
敵影の姿が全くなかった。通常なら簡単に見つかるはずなのだが・・・。
「司令部のミスとかじゃ・・・」
『島岡さん!!上です!!避けて!!』
「ッ!?」
ライーサの警告を受け、島岡は荒っぽい動作で機体を大きく振った。強引に機体をずらして生まれた空間に数発のビームが走り抜け、次いで数体のヒエラクスが通過していった。
「野郎、どこにいやがった!」
『太陽の中です!光に紛れて分かりませんでした!』
「チッ・・・。猪口才なことすんな!迎撃すんぞ!」
『
二人は捻り込むようにロールすると、急降下を開始した。二人の先には5体のヒエラクス。普通の戦闘機なら油断ならない相手だが、島岡にとっては取るに足らない。ライーサは言わずもがな。
「落ちろ!!」
『
島岡は7.7mm機銃を、ライーサはMG34をそれぞれ撃った。放たれた弾丸は寸分たがわずヒエラクスの一団に向かい瞬く間に二機を撃墜した。ヒエラクス等も残った三機がバラバラの方向に散会する。
「右を狙う!」
『左に行きます!』
二人もすぐさま対応し、左右に別れた。島岡は地上スレスレを飛行する一体の背後に食らいつく。背後につかれたヒエラクスも、零戦を振り切ろうと左右に蛇行するが、それは叶わなかった。島岡は完璧に後ろを取り続け、十分に引きつけてから7.7mm機銃を放った。エンジン部分に直撃を受けたヒエラクスは、失速するとそのまま砂漠に激突して砕け散る。
「うし!ライーサ!」
『こっちも終わりました!』
目を向けると一体のヒエラクスが光の粒子となっているのが見えた。
「なら、後一体は・・・」
『そっちに向かってます!注意して!』
ライーサの声に反応して、島岡は最後のヒエラクスを見つけた。やや上方から、小細工なしで真正面から突っ込んでくる。
「
ならばこちらもと島岡も操縦桿を操り、ヒエラクスを真正面に捉えた。
お互いの距離が縮まり、絶対に外さない距離に達した時、両方同時に動いた。まず、ヒエラクスがビームを放つ。戦闘機のとっては一撃必殺の攻撃。だが、島岡は直前でそれを躱していた。
「当たるかよ!」
ヒエラクスがビームを放つ直前に、エルロンロールを仕掛けたのだ。ビームはコックピットのすぐ上を通過して焦げ目を作るが、島岡はそのまま20mm機銃の狙いをつける。
「ッテ!」
撃ちだされた炸裂弾はヒエラクスに食い込み、内側から爆発させる。ヒエラクスはそのまま砕け散った。これで、全機撃墜任務終了となる。
が、そうはならなかった。
「ぐおッ!?!?」
突如、零戦が被弾した。装甲に穴が空き、キャノピーが割れて島岡に降りかかる。とっさに左腕で顔を庇うが、ガラスの欠片が頬を浅く切った。
「ちっくしょう・・・。ついてねぇな」
ヒエラクスの攻撃を受けたわけではない。受けたならすでに木っ端微塵になっている。
島岡はゴーグルを取ると、機体の状態を確認した。胴体部分に所々穴が空き、翼からは燃料が漏れ出ていた。さらに悪いことにエンジンにも被弾したらしく、黒煙を吹き始めていた。
『島岡さん!?大丈夫ですか!?』
無線機からライーサの声が響いた。どうやら無線機は生きていたらしい。
「燃料の漏れがひどい。エンジンにも被弾したし不時着してみる。援護頼めるか?」
『分かりました!すぐにそっちに・・・あ!』
そこで通信が一度途切れた。
「ライーサ?」
『新手です!確認できただけでもケリドーン型が三機!』
時折MG34の射撃音が割り込む。すでに交戦状態に入っているらしい。
「ならこっちは気にすんな!なんとか自力で切り抜ける!」
『島岡さん!?シンスケ!?』
「大丈夫だ!俺を舐めるなよ?」
そこで島岡は通信を切った。正直、話しながら操縦できるほど生易しい状況ではなかった。被弾の影響のせいか、操縦桿の動きにしっかりと機体が追従せず、更には不気味な振動を始めていた。
「クソッ!こんくらいで根を上げるなよ!」
島岡は毒突きながらも、必死に機体を制御した。このままいけば不時着ぐらいはなんとかなる・・・が、敵はそんなやつを見逃したりしなかった。
フラフラと飛ぶ零戦に影が陰る。ライーサと戦闘していたはずのケリドーンが追いついたのだ。容赦なくケリドーンはビームを発射してくる。
「ヤバッ・・・!」
反射的に目をつぶってしまう島岡だが、一向にビームは襲いかかってこなかった。
「シンスケ!」
「ッ!?」
ライーサが間一髪で零戦の盾となりビームを防ぐ。ライーサはシールドを張りながら片手でMG34を撃ち、即座にケリドーンを撃墜した。そのままケリドーンの破片を防ぎながら、島岡を振り返った。
「私があなたを守ります!なんとか離脱を・・・」
「馬鹿!前見ろ!」
「え?・・・キャッ!?」
ライーサが注意を逸した瞬間、何を思ったかもう一体のケリドーンが体当たりしてきたのだ。まさかの攻撃にライーサは対応しきれず、シールドで防いだものの吹き飛ばされてしまった。
「カ・・・ハッ・・・!?」
「おい、大丈夫か!?!」
吹き飛ばされたライーサは背中を零戦のコックピットに強か打ちつけしまった。ライーサから力が抜けてしまい、MG34が手から離れ、Bf109F-4/Tropが足から抜け落ちる。
「ライーサァアア!!!」
島岡の絶叫が響き渡る。砂漠に銃とユニットが落ちていった。
後半、神崎が空気な件について・・・
完全に島岡が主人公じゃないですか!ヤダー!
すでにダブル主人公と化してますけどね(笑)