と、いうわけで第十二話です。
感想、アドバイス、ミスの指摘などいつもの通りよろしくお願いします。
「アフリカ」基地の補給状態はとてもいい。
ロマーニャ軍とブリタニア軍からの兵站がしっかりしているし、ネウロイの攻撃によって廃棄された基地から物資を回収したりしているからだ。
しかもマルセイユの絶大な人気のおかげで酒類は各地からプレゼントされ、挙句の果てには島岡が来たことで本来は手に入りにくい海産物も大量に入手することが可能となった。
「正直言ってなかなか悩みどころです」
扶桑皇国陸軍航空魔女
しかし、調理する側としては、稲垣自身が魚の調理を苦手にしているのと相まって、悩みの種となっていた。
「時間が経てば腐らせちゃうし…。むぅ」
包丁片手に、一人悶々とする稲垣。そこに救世主が現れた。
「稲垣軍曹…。大丈夫か?」
「神崎さん。助けてください!」
稲垣は神崎に泣きついた。
「いいか?ここはこういう風に包丁を入れるんだ」
「こ、こうですか?」
「ああ。上手いぞ」
現在、厨房では神崎による料理教室が開かれていた。神崎自身も魚をさばきながら、稲垣に教えていく。その丁寧な教えのおかげか、最初はたどたどしかった稲垣の手つきも段々と上達していった。
「そ、そういえば…」
「ん?」
魚をさばいている途中、稲垣がためらいがちに声をかけた。稲垣にとって神崎は年上だということと男性であるということ、神崎が島岡とは異なる少し緊張した雰囲気を纏っているせいで、気軽に話しかけることは稲垣にはまだ難しかった。
「神崎さんは、普通に料理はなさるんですか?」
「実家にいた時に、時々妹たちに料理を作っていた。下手ではないが上手くもない」
「そうなんですか」
「魚は島岡と知り合ってからだな。いつもバカスカ釣ってくるから…。」
溜息をつきながら魚をさばく手を休めない神崎。
「稲垣軍曹はどうなんだ?」
「あの、よかったら真美と呼んでいただけますか?なんか慣れなくて・・・」
「・・・。真美はどこで料理を?」
「お母さんから教えてもらいました」
「そうか」
しばらくそんな会話をしていると、山盛りだった魚はすべてさばき終わっていた。ここから本格的な調理があるのだが、神崎は射撃訓練の為、これ以上は付き合えなかった。稲垣が神崎にペコリと頭を下げた。
「神崎さん、ありがとうございました」
「いや、気にしなくていい。・・・飯、楽しみにしてる」
「はい!任せてください!」
神崎が厨房から出ていくと稲垣は早速調理に取り掛かった。
「神崎さんってあまり怖くなかったな~」
鼻歌混じりにコンロに火をつける稲垣であった。
隊長用天幕にいる加東は例によって書類仕事に追われていた。飛行計画書や作戦立案書など重要な物から、隊員の人生相談から日々の日誌といった軽い物まで、処理する書類は多岐に渡るが、今日の書類にはいくつか嬉しいものも含まれていた。
「へ~。ロンメル将軍、太っ腹ね」
にやにやしながら一枚の書類を見ていると、マルセイユがやってきた。
「ケイ、暇だから酒でも・・・。何ニヤついているんだ?」
「うん?これよ」
マルセイユは差し出された書類を受け取って目を通すと、つまらなそうに言った。
「なんだ。私はもう持ってるな」
「あなたはね。でも、玄太郎と信介は多分これが初めてのはずよ。部下がちゃんと評価されるのって気持ちいいわね」
「評価者がロンメルの時点で結構贔屓が入ってそうだが・・・。」
渋い顔をするマルセイユだが、ピクンと何かを思いつき、ニヤリと笑った。
「じゃあ、ケイ。これはお祝いしなきゃいけないな」
「なぁに?宴会?」
「ああ。問題ないだろう?」
「まぁそうだけど。でも、前みたいに玄太郎を怒らせないようにね?」
「分かってるよ。あんなヘマは二度もしないさ」
そう言い残し、マルセイユは上機嫌で天幕から出て行った。
「ホント、子供みたいなんだから・・・。あ、子供か」
加東はそうぼやくと、再び書類仕事に向かっていった。
神崎はMG34を担ぎ、弾薬を抱えて滑走路の脇にある射撃場に向かって歩いていた。この前の戦闘で九九式機関銃が破損してしまったため、神崎はマルセイユ、ライーサと同じくMG34を使うことになったのだ。今回の射撃訓練はMG34の扱いを完熟させるためのものである。
「さて・・・、ん?」
射撃場に近づくと誰かの話し声が聞こえた。神崎が何気なく見れば、島岡とライーサが木箱に座って何やら話している。島岡は手を空中で動かしながら何かを説明しており、ライーサは島岡の手の動きを自分の手で追いながら興奮気味に話していた。
「何の話をしているんだ?」
神崎は射撃台にMG34と弾薬を置きながら二人に尋ねた。神崎に気づいた島岡は照れくさそうに言った。
「予科練にいた時の模擬戦の話だよ。ライーサが聞きたがってな」
「島岡さん、色々な模擬戦の話を知っているのでとても参考になります」
キラキラした目のライーサ。相当楽しんでいるようである。
「ああ。俺も釣りの最中によく聞いた」
神崎はそう言ってMG34に弾帯を装填した。このMG34は砂漠仕様に改造されているらしいのだが、見た目ではよく分からない。ともかく、神崎は魔力を発動して構えると、的に狙いを定めて引き金を引いた。連続した銃声と共に九九式機関銃とは比べ物にならない発射速度で弾丸が撃ちだされ、的を撃ち抜いていく。
「・・・む」
50発分の弾帯を撃ちつくすと、神崎は眉を顰めた。的の弾痕が狙ったところよりも下の方にずれていたからだ。神崎は新しい弾帯を再装填すると再び引き金を引く。しかし、結果は先ほどと同じで、着弾が下にずれていた。
「多分、発砲の際の跳ね上がりをエリコンと同じように抑えているから、弾道が下にずれているのでは?」
ライーサが後ろから覗き込み言った。ちなみにエリコンとは九九式機関銃の元となった機関銃の名前である。
「もう少し、抑え込みは弱くでいいと思います」
「分かった」
ライーサの助言を聞きながら、神崎は三度弾帯を再装填した。銃にかける力を先ほどよりも弱めながら、引き金を引く。撃ちだされた弾丸は的の中心周辺を貫いていった。
「こうも変わるか」
「へぇ。すげーじゃん、ゲン」
神崎は、ついさっきまでは当たらなかった的の中心を少し力を抜いただけで撃ち抜けたことに少し呆けた声をだすが、島岡は素直に賞賛の声を神崎に送った。ライーサは今しがた神崎が持っていたMG34を持ち上げると、構えた。
「私とティナは二脚を持つんですけどね。神崎さんもどうです?」
二脚を持つことで射撃の際の姿勢が安定するため、そういう撃ち方をするウィッチも結構いるらしい。しかし、今まで一回もそんな撃ち方をしたことがない神崎は少し抵抗感があった。
「・・・考えておく」
「撃ちやすいんですけどね」
そういってライーサは銃を構え、的に向け引き金を引いた。
アフリカの戦線を支える各国の軍。その軍には、ブリタニア王国、帝政カールスランド、リベリアン合衆国の三人の将軍がいる。
「さて、これをどう思う?」
場所はトブルク、連合軍総司令部会議室。そこでカールスランド・アフリカ陸軍、エルヴィン・ロンメル中将が口火を切った。テーブルにはアフリカでの作戦地図といくつかの報告書。
「どうもこうも、ネウロイが攻めてきただけだろう」
リベリオン第二軍団、ジョージ・S・パットン中将が葉巻を吸いながら言った。
「地上型のネウロイがアラメインを攻撃。その隙に航空型ネウロイが侵攻してきた。どっちも倒したんだ。なんも問題ない」
「いや、問題はある」
ブリタニア王国陸軍、バーナード・ロー・モントゴメリー中将はパットンの言葉を否定した。モントゴメリーは口にハンカチを当てて葉巻の煙を吸い込まないようにしながら、指で地図を叩いた。
「なぜ、航空型ネウロイが我々の警戒網に引っかからなかったのか?問題はそこだ」
「ふむ・・・」
地図を見つつロンメルはタバコを咥えた。モントゴメリーが非難の目を向けるが、構わず火を着ける。
「確かに。いくら地上型ネウロイが攻めてきてたとはいえ、まったく警戒網に引っかからなかったのはおかしい」
「あそこはブリタニアの管轄だったろ。なぁ?モンティ?」
「聞いてなかったのか?我々は防衛戦の真っ最中だったんだ。そして我々のバックアップはリベリオン。つまり貴様だよ、パットン」
バチバチと睨み合うモントゴメリーとパットン。そんな二人に構わずロンメルは言った。
「まぁ、ちょうど『アフリカ』がいてよかった。ティーガーも無事だったしな」
「おぉ!それだ、それ!ちらっと見たが、ティーガー、ありゃ素晴らしいユニットだ!あれが一個大隊ほどあれば、ネウロイなんてイチ殺だろうよ!」
モントゴメリーとの睨み合いを中断し、パットンが上機嫌に言った。やはり陸軍を統べる者として、敵を正面から叩き潰すような兵器は魅力的なのだろう。一方、モントゴメリーはタバコの煙を手で払いながら不機嫌そうに言った。
「『アフリカ』の神崎少尉だったか?どんなものかと思ってたが、なかなか使えるじゃないか」
「いや、もっと使えるようになる」
自分の部下でもないのに神崎のことを自慢げに話すロンメル。そんな彼を半ば呆れた目で見ながら、モントゴメリーはテーブルを叩いた。
「ともかく!この警戒網の不備はどうにかしなければならん。ロンメル、お前の部隊を動かせ」
「あそこはリベリオン陸軍の管轄だ。パットンがやればいい」
「ネズミ野郎の尻拭いなんざやりたくねぇな。自分のケツは自分で拭け、モンティ」
それぞれが勝手なことを言い、揃って青筋を立てる。そこから大乱闘に発展するのに大した時間はかからなかった。
いつもなんやかんや言って宴会を開くマルセイユだが、今回は少し違った。
「と、いうわけで・・・」
宴会を始める前の挨拶をするマルセイユ。彼女の目の前には、『アフリカ』の面々を始め、ブリタニアのマイルズ少佐を始めとした陸戦
「この地にやってきた新たな仲間と・・・」
マルセイユはここで一度言葉を切った。
「ゲンタローとシンスケの叙勲を祝して!乾杯!!」
「「「乾杯!!!」」」
ビールジョッキ、グラス、コップが打ち鳴らされ宴会が始まった。
「いや~。こんな沢山のかわいい女の子達が俺たちを祝ってくれてるなんてな。感激じゃね?」
「宴会の口実だろう。おそらく」
本日の主役、カールスランド皇帝から鉄十字章を受けた神崎と島岡。前回の護衛任務でカールスランド陸軍の新兵器である「ティーガー」を守りきったことが評価されたのだ。二人は今、盛り上がっている
「・・・誰かとよろしくできないかな?」
「やめておけ。
「だよな~」
チラリと島岡は自分の胸元に留めてある勲章を見た。複雑な表情をして言う。
「俺も勲章もらってよかったのかな?」
「俺を助けたからだろう」
「いや、お前は分かるけど俺はほとんど輸送部隊とは関係ないような・・・」
「通常兵器でネウロイを撃墜したこともあるんじゃないか?」
「そんなもんかねぇ」
「そんなものだ」
神崎の口はいつもより軽いし、時折勲章に目を向けている。やはり勲章を貰えたのは嬉しいのだろう。島岡は、いままでの神崎が経験してきたことを少しは知っているだけあって、自然と父親が息子を見るような暖かい目で神崎を見ていた。
「・・・なんだ?」
その視線に気付き、怪訝な顔をする神崎。島岡はニヤニヤしながら答えた。
「ん?嬉しそうだな~って」
「そうか?」
「よかったな」
「…ああ」
神崎が少し頬を弛めた。そこにマルセイユの声が割り込んできた。
「何ふたりだけで話してるんだ!こっちにこい。ゲンタロー、シンスケ!!」
ビールジョッキを振り回しながら騒ぎ立てるマルセイユ。そんな彼女を神崎は呆れたように、島岡は楽しそうに見た。
「行くか」
「俺は飲み物取ってくる」
「マルセイユの所にあるぜ?」
「酒だろ」
「そうだな」
「・・・取ってくる」
「おう。じゃあ先行ってるわ」
そう言って島岡はマルセイユの所に行った。島岡がマルセイユ達に迎え入れられているのを見届けて、神崎はカウンターバーへと向かった。無造作に置いてある瓶からグラスにジュースを注いでいると、誰かが近づいてきた。
「神崎さん、叙勲おめでとうございます」
「マイルズ少佐・・・。ありがとうございます」
ビールジョッキ片手のマイルズがカウンターの神崎の隣に寄りかかった。神崎もグラスを傾けながら、カウンターに寄りかかる。
「マイルズ少佐。マッダレーナ砦ではありがとうございました」
「いえ。あなたのおかげで私たちは安心して陸戦ネウロイと戦えたんです。こちらこそありがとうございました」
「それに撃墜された自分を・・・」
「お互い様です。仲間なんですから」
(仲間…)
マイルズの何気ない言葉に神崎は黙ってしまう。目を向ければ、酒を飲んでいるマルセイユや加東、お喋りしている稲垣やシャーロット、そしてこの空間を楽しんでいる沢山の
「私のことはセシリアでいいわ。それにそんなに畏まらなくてもいい」
「ですが・・・」
「こんな席では無粋でしょ?」
「はあ・・・」
神崎は首を傾げつつ、自分はジュースを飲んだ。神崎がジュースを飲むのを見てマイルズが尋ねた。
「あなたはお酒は飲まないの?」
「自分・・・、俺は未成年なので」
「もう一人の彼は飲んでるけど?」
「自分で決めていることだから」
「まじめね」
「よく言われる」
そんなことを始め、自分の国のことや互いの戦闘の話など、神崎とマイルズは二人でしばらく会話を続けた。航空
「ゲ~ン~タ~ロ~」
「・・・なんだ?ハンナ?」
ベロンベロンに酔っぱらってこちらに歩いてくるマルセイユ。足取りは相当怪しいがそれでもマイルズとは反対側の神崎の隣にたどりつき、神崎を睨み付けた。
「この私が呼んでいるのに来ないとはいったいどういうつもりだ?」
「シンが行っただろ?」
「お前も呼んだんだ!」
「分かった。分かったから」
酔っぱらいと言い争っても意味がない。神崎は諭すようにマルセイユにそう言うと、彼女は上機嫌になって神崎の腕を引っ張っていく。
「ほら、行くぞ!」
「ちょ!?」
「マ、マルセイユ!神崎さん、困ってるでしょ!」
「ん?」
マイルズの静止の声を聞いてやっと止まるマルセイユ。しかし、マルセイユはマイルズを見てニンマリと笑うと彼女の腕を掴んだ。
「お前もだ!一緒に来い!マイルズ!!」
「え!?」
二人はマルセイユになす術もなく引きずられていった。
「よう。遅かったな」
「セシリアと話してただけだ」
引きずられてたどり着いた先のソファで島岡が言う。神崎はマルセイユに掴まれていた腕をさすりながら、島岡の隣に座った。
「お前は何してた?」
「飲んで喋って笑ってた」
「随分と楽しんでたようで」
「さぁ!!!主役が揃ったんだ!どんどん飲んでいくぞ!!」
「「「お~!!!」」」
テンション絶好調のマルセイユの号令の元、魔女たちは各々テンションを上げていく。
「・・・」
このまま自分が無事でいられるか不安になってくる神崎であった。
すでに無事でない三人もいた。
「「「・・・」」」
モントゴメリー、ロンメル、パットンはそれぞれ黙って顔の傷を治療していた。つい先ほどまで大乱闘を演じていた三人だが、血気盛んな精神に年を取った肉体がついていけず、誰がとめる訳でもなく自然と終息した。
「ツっ・・・。・・・ブリタニアは動けない。どうしようもない」
切れた口元をハンカチで押さえながら、モントゴメリーが告げる。
「ったく・・・。こっちが動けばいいんだろ?わかったわかった」
鼻血を鼻に紙を突っ込んで止めながらパットンが言った。
「だがわし等だけじゃきつい」
「・・・こっちも少しは動いてやる」
顔にできた青タンを濡れたタオルで押さえながら渋々とロンメルが言った
「だが、トブルクから部隊を引き抜くことになるぞ。基地警備や治安維持への手が薄くなる」
「・・・しょうがない。それはこっちでなんとかする」
不承不承といった感じでモントゴメリーが言った。
こうして今夜の会議は終了した。
「なんで殴り合う前に結論がでないんですかね?」
「言うな。兵卒」
テントの外で警備をしていた兵士たちの言葉が将軍たちに届くことはなかった。
神崎が目を覚ましたのはソファの上だった。
「寝てたのか・・・」
酒は飲んでないはずだが、酒の匂いにあてられたのか頭が痛い。神崎は頭を振りながら体を起こして周りを見ると隣で島岡が、そこかしこに酔いつぶれた
「ひどすぎるだろ・・・」
ついさっきまで寝ていた自分は棚上げして呆れた目でさらに周りを見渡す。
「あ・・・」
「・・・!」
カウンターの所にシャーロットが一人座っていた。コーヒーか何かを飲んでいるらしい。目が合ったので、神崎は彼女の所へ行くことにした。床で酒瓶を抱えて寝ているマルセイユを踏まないようにして移動する。
「となりいいか?」
「はい」
緊張した様子でコクンと頷くシャーロット。神崎は隣に座るとシャーロットに尋ねた。
「この前俺に聞いたよな?」
「なんで戦うのか・・・?」
「ああ。・・・なんでそんなこと聞いたんだ?」
すぐには答えず、シャーロットは少し俯いてコーヒーを啜った。神崎は黙って彼女が答えるのを待った。
「・・・分からないんです」
「分からない?」
「なんで怖い思いをしてまで戦わなきゃいけないのか・・・。みんな笑うか、怒るかでちゃんと答えてくれない・・・」
そう言ってシャーロットは椅子の上で膝を抱えてしまった。小さな少女が思い悩む姿に神崎は何も言えなくなってしまう。しかし、少し経つと彼女から話しかけていた。
「・・・あの言葉はなんですか?」
「ん?ああ・・・」
ネウロイとの戦闘の直前に言ったことだろう。「成すべきことと、したいこと」と神崎は答えた。
「俺の恩師の言葉だ。俺が軍に入った時のな」
「あるんですか?その・・・」
「まだ探している途中だ。偉そうに言っていて恥ずかしいが…。お前も探せばいいんじゃないか?」
「そうですね」
緊張が解れ、クスリと笑うシャーロットのコップにはすでにコーヒーはなかった。それに気づいた神崎は椅子から立ち上がりながら言った。
「温かいのを淹れよう。コーヒーでいいか?」
「あ、はい」
神崎はやかんを右手に持ち、固有魔法の炎で加熱しながら左手でコーヒー豆を煎る。シャーロットは目を丸くしながらその様子を眺めて、そして二人でそのコーヒーを楽しんだ。
今回は日常(?)回でした。なかなか書くのが難しかったです。
注)モントゴメリーは「砂漠の鼠」という別名があります。パットンがネズミ野郎と言ったのはそのためです。わからなかった人はゴメンネ。ちなみに、ロンメルは「砂漠のキツネ」です。