ストライクウィッチーズ 一匹の狼   作:長靴伯爵

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忙しくて更新が遅れてしまった。orz  しょうがないね。

感想、ミスの指摘、アドバイス等、よろしくお願いします。 



第八話

第八話

 

 

 

 

 

 

 

「敵発見、ケリドーン型、数20」

『なかなか数が多いわね。増援は必要?』

 

「私がいるんだ。必要ないだろう?」

 

「・・・だそうです」

 

『まったく・・・。じゃあ、気をつけて。油断しないようにね』

 

了解(ヤヴォール)。行くぞ、ゲンタロー!」

 

「了解」

 

 

 

 神崎とマルセイユが二機編隊を組み始めて約一週間。

 

 最初のうちは、マルセイユの機動についていくのに精一杯だった神崎だが、何度もマルセイユの機動を経験してきたことで、今ではライーサには及ばないものの、二番機としてそれなりに動けるようになっていた。

 

 今回、遭遇したネウロイはケリドーン型。流麗なフォルムをしており、ヒエラクスとは比べ物にならないほどの機動力を有している。

 

「敵、円形防御」

 

「突っ込むぞ!」

 

 こちらに気付き、円形に陣を組んだ敵に対し、マルセイユは臆せずスピードを上げ、円の中心へ突撃を開始した。神崎もそれに続く。敵もこちらを近づかせまいと一斉に射撃を開始するが、マルセイユと神崎にはかすりもせず、円の中心への突入を許してしまう。

 

「がら空きだな!」

 

「・・・ッ!」

 

 敵の懐に入り、一気に弾をばらまく二人。瞬く間に仲間を撃墜された敵は蜘蛛の子を散らすように散開した。

 

「ゲンタロー、左に炎!」

 

「了解」

 

 敵が散開した中で、比較的密集している地点に、神崎が炎を放つ。その間にもマルセイユは次々と敵を撃墜していく。放たれた炎が爆発し、更に数機が撃墜されると、敵は撤退を始めた。

 

「敵、撤退を開始」

 

「今日はこのぐらいか」

 

 マルセイユはMG34の弾倉を代えつつ、周りを見渡し敵機がいないかを確認する。

 

「よし、戻るか」

 

「了解。RTB(基地に帰還する)

 

『了解。気をつけて帰ってきてね』

 

 神崎が基地に報告をいれると、二人は帰路についた。後には撃墜されたケリドーンの残骸が点々と残っていた。

 

 

 

 しばらくの飛行後、二人は基地の滑走路に降り立った。

 

「お帰りなさい。ティナ、神崎さん」

 

「ただいま」

 

「・・・ああ」

 

 ライーサの出迎えにそれぞれの返事を返す二人だが、彼女の姿を見て眉をひそめた。彼女がユニットを装備していたからだ。マルセイユが言う。

 

「今日の出撃は私達だけだろう?」

 

「うん。そうだけど・・・」

 

 ライーサがチラリと後ろを振り返る。ちょうどその時、零戦のエンジンが始動する音が響き渡った。

 

「ケイが、戦闘機と航空魔女(ウィッチ)の運用実験をしたいって!」

 

 エンジン音に負けないように、ライーサが少し大きな声で言った。マルセイユな納得した表情となり、そして何か思いついたのか神崎の方を向いた。

 

「ゲンタローは、シンスケと一緒に飛んだことあるのか?」

 

「本格的な戦闘機動はないです」

 

「え?なんだって?」

 

「実戦ではありません!」

 

 零戦が近づいてきた為に、エンジン音が更に大きくなり、二人は自然と怒鳴り合うようになってしまう。そんな二人を見て、ライーサは微笑んだ。

 

「フフッ。じゃあ、行ってきますね」

 

 軽く手を振って、離れるライーサ。それと入れ替わりになって、零戦が近づいてきた。コックピットには島岡がいる。

 

「二人ともお帰り!!」

 

 エンジン音に負けない大声で、島岡が叫ぶ。マルセイユは大声をあげるのが面倒なのか、手を上げて応えた。神崎は挨拶には応えず、零戦に近づいて言った。

 

「ペットゲン少尉と飛ぶのか?!」

 

「ああ。試験運用だってよ!」

 

「気をつけてな!」

 

「お前と違って、俺は一緒に飛ぶのはいつもむさい男ばっかだったからな。かわいい女の子と一緒に飛べるなんて最高だぜ!」

 

「・・・馬鹿なこと言ってないでさっさと行け!!」

 

「おう!じゅあな!」

 

 島岡は笑いながらコックピットに引っ込む。そして、ライーサが離陸するのに続いて零戦も飛び立っていった。マルセイユはその様子を見守ると神崎に尋ねた。

 

「シンスケと何話してたんだ?」

 

「大したことじゃありません」

 

「なら、教えてもいいだろう?」

 

「いえ、本当に下らないことなので」

 

 話はこれきりと、神崎は格納庫へと向かう。だが、マルセイユはチョロチョロと神崎につきまとった。

 

「なぁ?教えれよ。なぁなぁなぁ?」

 

「・・・」

 

 黙ってそっぽを向く神崎。マルセイユはそんな神崎の反応を見て、楽しんでるようだった。

 

 

 

 

 

アフリカ、トブルク某所

 

 

 

 人類連合軍の拠点、アフリカ防衛の要、トブルク。

 ネウロイとの戦争の真っ只中ではあるが、市場では沢山の人で賑わっていた。その喧騒の中を一人の男が歩いていた。砂漠用の衣服を纏い、砂塵避けの為のスカーフで顔を隠している。

 男は時折、人とぶつかりながらも、喧騒から抜け出し、裏路地へと入っていった。男は日の当たらない暗く狭い道をしばらく歩き、目立たない古い扉を潜った。軋む階段を上り、部屋に入ると一人の男が椅子に座りラジオを聞いていた。ラジオではネウロイとの戦争への協力を促進する番組が流れていた。

 

「相変わらずプロパガンダか。連合軍も芸がない」

 

 椅子に座った男は一つ鼻を鳴らすと、ラジオを消し、スカーフを巻いた男の方を向いた。

 

「どうだった?」

 

「失敗でした」

 

 スカーフを巻いた男が首を振り言った。

 

「『同志』等は一筋縄ではいけません。前回は偶然だったかと」

 

「だが、どうにかしなければならない。これからの為には」

 

「なら、私達が受動的になるしかありません」

 

 椅子に座った男は、また不機嫌そうに鼻を鳴らすと、窓に目を向けた。

 

「・・・人々は騙されているだけだ。我々が目を醒まさせなければ」

 

「しかし、本格的に動き始めるには、まだ障害が多すぎます」

 

「一つ一つ潰していくしかあるまい。闘いを終わらせるためには・・・な」

 

 スカーフを巻いた男は頭を下げると、部屋から出ていった。椅子に座った男は、その後しばらく外を見ていた。

 

 

 

 

 

統合戦闘飛行隊「アフリカ」基地

 

 

 

 神崎は、定時の出撃が終わると休憩がてらにベッドで横になることにしている。マルセイユの機動についていく為には相当な体力を消耗するからだ。その間に、仮眠をとることもあれば、読書をしたり、刀「炎羅(えんら)」やC96の手入れをしたり、はたまた趣味の歌の楽譜を読んだりしている。今回もさっさと自分の天幕に戻り、一眠りしようとしたのだが・・・。

 

「・・・」

 

「ん?」

 

 恨みがましい目で横を見る神崎。そのとなりには何でそんな目で見られるのが分かっていないマルセイユ。二人は、彼女の天幕に設置されている特設カウンターバーに座っていた。天幕に向かうところを彼女に無理矢理連れてこられたのだ。マルセイユはカウンターにいるマティルダが出したチーズをつまみながら言った。

 

「仕事終わりの一杯。これが最高なんだ」

 

「・・・仕事はまだ終わってないでしょう」

 

「私がたった一杯の酒で酔っぱらうとでも?」

 

「飲むのは一杯じゃないでしょう・・・」

 

 すでに彼女の手元には空のグラスが数個ある。

 

「マティルダ。ドライマティーニだ。モンティで」

 

「分かりました」

 

 更に酒を注文するマルセイユを、呆れた目で見つつ、神崎は仕方なくチーズを口に運んだ。普段はチーズなんて食べない神崎は、そのなんとも言えない匂いに顔をしかめる。

 

「なんだ。口に合わないか?」

 

「いえ・・・」

 

 なんとか飲み下す神崎。その様子を見てマルセイユが言った。

 

「マティルダ。ゲンタローにも・・・」

 

「酒は飲みません」

 

「だから、これを用意した」

 

 マルセイユはニヤリと笑い、マティルダに目配せした。マティルダは頷くとカウンターの下からビンを取りだした。マルセイユが挑発的に言う。

 

「オレンジジュースだ。これなら大丈夫だろう?」

 

「まぁ・・・。これなら・・・」

 

 マティルダからコップを受け取り、オレンジジュースに口をつける神崎。少し苦味があったが、あまり気にせず飲む。・・・となりでマルセイユがほくそ笑むのにも気づかずに

 

 

 

 酒を飲むと人は変わる。泣く人もいれば、笑う人、はたまた怒る人もいる。だが、大概の人は気が大きくなり、口が滑りやすくなる。

 哨戒任務時には神崎からはあまり聞き出せなかったマルセイユは考えた。神崎を知るために色々と聞きだすにはどうすればいいか?簡単だ。酒を飲ませて酔わせればいい。頑なに飲酒を拒む神崎に飲ませるにはどうすればいいか?これも簡単だ。別の飲み物に偽装すればいい。結果・・・。

 

「・・・ゥップ」

 

「おいゲンタロー。大丈夫か?」

 

「大丈夫・・・だ」

 

 神崎が頭をゆらゆらと揺らし始めた。いつもの敬語もなくなってる。神崎が飲んだオレンジジュースは勿論ただのオレンジジュースではなく、アルコール度数の高い酒を混ぜた特別製だった。マルセイユはニヤリと笑うと神崎に問いかけた。

 

「なぁ、ゲンタロー」

 

「あ?」

 

「この部隊のことどう思う?」

 

 マルセイユが聞きたかったのは、この部隊に対する神崎の率直な思いだった。

 

「この部隊・・・か?」

 

「ああ」

 

 神崎はオレンジジュースを一口飲み、答えた。

 

「戦闘力、士気が高く、隊員同士の結束も固い。戦果も挙げていて、補給も十分。非の打ち所もないと思う」

 

「む、そうか」

 

 そういうことを聞きたかった訳じゃないんだが・・・、とマルセイユは顔を渋らせるが、別の質問を投げかけた。

 

「なら、私のことはどう思う?」

 

「お前?」

 

 神崎が据わった目でマルセイユを見つめた。マルセイユも負けじと見つめ返すが、今まで異性と見つめ合うことがなかったため、すぐにたじろいでしまった。

 

「ゴホンゴホン。で、どうなんだ?」

 

 若干赤くなりながらも、マルセイユは尋ねた。

 

「あ~・・・。空戦じゃ絶対に敵わないと思う。動きを参考にしたい」

 

「そんなんじゃなくてだな・・・。人としてどう思う?」

 

「人として・・・。かっこいい?」

 

「なんで疑問形なんだ?」

 

「裏を返せば只の酔っぱらいだから」

 

「・・・ほう?」

 

 こめかみにピキッと青筋をたてるマルセイユだが、マティルダにたしなめられる。

 

「鷲の使いよ。落ち着いてください」

 

「そうだ。そうだな」

 

 マルセイユは一つ深呼吸をして自分を落ち着かせると、更に質問を続けた。

 

「ケイは?」

 

「指揮官としても人としても尊敬できる・・・と思う。軽いけど」

 

「ライーサ」

 

「しっかりしてて信頼できる」

 

「真美」

 

「飯が旨い。感謝してる」

 

「マティルダ」

 

「まじめだな」

 

「シンスケ」

 

「特にない」

 

「むぅ・・・」

 

 自分だけが若干評価が低いことに少し不満があるものの、そんなに皆を敬遠していないことが分かり、マルセイユはグラスを取った。そのまま口をつけようとした時、神崎が呟いた。

 

「だけど・・・俺は魔女(ウィッチ)は・・・」

 

 そう言うと、カウンターに頭を預けうつらうつらし始める。そうとうアルコールが回ってしまったらしい。マルセイユは慌てて尋ねた。

 

魔女(ウィッチ)がなんだって?」

 

「魔女《ウィッチ》は・・こ・・・い・・・。・・・ZZZ」

 

 神崎はそのまま眠ってしまった。

 

「なんて言ったか聞こえたか?」

 

「いえ」

 

 マルセイユもマティルダも神崎の呟きを聞くことができず、ちょっとの間寝ている神崎を見つめた。

 

「まぁいいか。十分聞けただろう。マティルダ、もう一杯」

 

「分かりました」

 

 神崎を放置しつつ、マルセイユはもう何個目かわからないグラスを手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつもは男ばっかですからね。今日はライーサと飛べてよかったですよ」

 

「もう、何言ってるんですか」

 

「あれ?ライーサ、顔赤くない?」

 

「ハハハ。なんだ、ライーサ。かわいいじゃないか」

 

「もう、ティナ!」

 

 騒がしい会話で神崎は目を覚ました。カウンターに突っ伏していた為に所々痛む体で立つと、何故か気分が悪く、頭がふらつき、ズキズキと痛んだ。

 

「ツツ・・・?」

 

「お?ゲン、やっと起きたか」

 

 島岡の声がする方を見ると、魔女の面々と島岡が宴会をしていた。

 

「なんだ?大丈夫か?ゲン」

 

「なんか頭が痛いんだが・・・。気分も悪いし・・・」

 

「まぁまぁ気にするな。ゲンタロー、これでも飲め!」

 

 二人の会話にマルセイユがビールジョッキ片手に割り込んだ。神崎はジョッキを一瞥すると嫌そうに言った。

 

「自分は酒は飲まないとあれほど・・・」

 

「何言ってるんだ?もう飲んでるじゃないか」

 

「は?」

 

 マルセイユが何を言ってるのか理解できない神崎。

 

「ちょ、マルセイユ。そのことは・・・」

 

「さっきお前が飲んでたオレンジジュースには、酒を混ぜてたんだ」

 

 何かを察した島岡がマルセイユを止めようとしたが、間に合わずに言ってしまった。

 

「俺に飲ませたんですか?」

 

「うん」

 

「騙して?」

 

「まぁ、そうだな」

 

 うつむく神崎。酔っぱらっているマルセイユはその変化をあまり気にしなかった。

 

「まぁ、飲んでしまったんだから仕方ないな。これからは心置きなく酒を・・・」

 

「ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ中尉」

 

 マルセイユの言葉を遮り、神崎が底冷えするような声で彼女を呼んだ。そして、顔を上げ、物凄い形相で睨み付る。

 

「今後、このようなことは絶対にしないでいただきたい」

 

「な・・・!?」

 

 下手をすれば殺気まで含んでいそうな神崎の視線にマルセイユは絶句してしまう。後ろにいる面々も相当驚いていた。

 

「・・・失礼します」

 

 睨んでいたのは少しの間だった。神崎はすぐに目をそらすとふらつき天幕から出ていった。

 

「おい!ゲン!!」

 

 慌てて島岡も外に出る。天幕の中には魔女達だけが残った。

 

「ちょっと強引だったかしらね~」

 

 いち早く驚きから脱した加東がコップを弄りながら言った。マルセイユは未だ呆然と立ったままでいる。

 

「すごく怖かったです」

 

 怯えた声で稲垣が言った。見れば、稲垣とライーサは涙目になっている。

 

「どうしたものかしらね・・・」

 

 加東は稲垣の頭を撫でながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ゲン!待てって!」

 

「・・・」

 

 島岡の制止も聞かず、神崎は自分の天幕に向かいフラフラと歩き続ける。

 

「だから待てって!!」

 

 島岡は神崎の肩を掴み、強引に止めさせる。そのまま顔を覗き込むが、その真っ青な顔色に驚く。

 

「お、おい。大丈夫か?」

 

「・・・大丈夫じゃない」

 

 そう言った直後、神崎は倒れこみ吐いてしまった。

 

 

 

「二日酔いか?どんだけ飲んだんだよ」

 

「・・・オレンジジュース一本分」

 

「強い酒を混ぜたらしいから、アルコールが相当回ったのかもな」

 

 そんな話をしながら、島岡は神崎を担ぎ、自分達の天幕へ連れて行った。そして神崎をベッドに寝

かせ、水の入った水筒を差し出す。

 

「ほら」

 

「すまん」

 

 弱々しい動きで水筒を受け取り、飲む神崎を島岡は自分のベッドに座り見守る。神崎が飲み終わり、落ち着いたのを見計らって口を開いた。

 

「さっきのはやりすぎじゃないか」

 

「・・・」

 

「なんであんなことしたんだよ?」

 

「・・・凄くムカついたから」

 

 島岡はため息をついて口を開いた。どうやら相棒はアルコールのせいで自制心が相当弛んでいたらしい

 

「お前が頭にきてるのは分かる。酒飲むのを嫌がってたのに騙されて飲まされたんだからな。でもな、お前にもその原因があるんだぞ」

 

「俺に・・・」

 

 圧し殺した声で神崎が言う。

 

「俺に何の原因がある?」

 

「お前はマルセイユやケイ、ライーサとかから出来るだけ距離を置こうとしてるだろ」

 

「・・・ああ」

 

「あいつ等は、お前と打ち解けたいと思って、お前のことを知ろうとしたんだよ」

 

「それが何故酒を飲ませることに繋がる?」

 

「酒を飲めば大概の人は口が緩くなるから」

 

「・・・だが、騙すのは・・・」

 

「それは向こうが悪い。悪気はないんだろうけどな」

 

「・・・」

 

 少しの間静かになった神崎だが、再び口を開いた。

 

「だが、俺は騙すような奴等と打ち解ける気は・・・」

 

「そんなに魔女(ウィッチ)が嫌いか?」

 

「・・・なに?」

 

「いや、魔女(ウィッチ)怖いんじゃねぇか?」

 

 神崎はムクリと起き上がり、島岡を睨み付けた。

 

「・・・なぜ?」

 

「今までお前が受けてきたことと、あの二機編隊の酷い飛行を見りゃ分かるだろ。あれは、二番機のライーサから逃げてたんだろ」

 

 島岡が落ち着いた声で言う。神崎はじっと島岡を睨み付けていたが、やがて諦めたように溜め息をつき、目を伏せた。

 

「・・・ああ」

 

「一緒に飛ぶのは大丈夫なのか?」

 

「まぁ・・・我慢できる。問題なのは自分の後ろ。昔、編隊飛行中に二番機の奴から撃たれた。それ以来ダメだ」

 

「撃たれたって・・・。実弾じゃないよな!?」

 

「訓練だったからそこは問題ない。だが、それ以降、長機はしてない」

 

 そう言うと神崎は言葉を切り、躊躇いがちに言った。

 

「シン。このことはケイ大尉には・・・」

 

「俺からは言わない」

 

 そう言って島岡は立ち上がった。

 

「あいつ等の所にもどる。ちゃんと今回の説明をしなきゃいけないしな」

 

「・・・すまない」

 

「別にいいって。でも・・・」

 

 天幕の入り口に手をかけながら島岡が言う。

 

「お前、このままで大丈夫か?ネウロイと戦うということは、魔女(ウィッチ)と一緒に戦うっつうことだぞ?」

 

「・・・分かってる」

 

 そう言って島岡は天幕から出ていった。神崎は一人ベッドの上で呟く。

 

「分かってる。分かってるさ。でも・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 島岡がマルセイユの天幕に戻ると、既に宴会は終わっており、中にはソファーに寝ているマルセイユとその隣に座っている加東しかいなかった。

 

「玄太郎どうだった?」

 

 こちらに気づいた加東が尋ねる。島岡は肩をすくめて言った。

 

「相当酒が回ってたみたいで。一回吐いたら落ち着きました。今はベッドで寝ています」

 

「そう。よかった」

 

 加東はそう言うと寝ているマルセイユの頭を撫でた。静かな調子で言う。

 

「マルセイユ、皆が出て行った後、取り乱しちゃって。今まで、あんな風に人から敵意を向けられたことがなかったのね。泣き疲れて寝ちゃった」

 

「そうすか・・・」

 

 島岡は近くにあった椅子に座ってマルセイユの寝顔を見た。確かに睫毛が濡れている。

 

「・・・ゲンは真面目だし、少なからず皆を信頼してたから自分を騙したことが許せなかったんだと思います。普通だったらあんな風にならないけど、酒が入って・・・」

 

「別に玄太郎が悪いって訳じゃないのよ?今回の原因はマルセイユだし、どちらかといえば玄太郎が被害者なんだから」

 

 島岡の神崎を庇う言葉に、加東は慌てる。言葉を飲み込む島岡。でも・・・と加東は言葉を続けた。

 

「これじゃ玄太郎は・・・」

 

「そう・・・すね」

 

 一瞬、神崎が魔女(ウィッチ)恐怖症であることを言おうかと迷う島岡だが、その考えを頭から消し、わざと明るい声で言った。

 

「ゲンだって仲良くしようとしてますよ。俺も手助けしますし」

 

「なんだか玄太郎の保護者みたいね」

 

「それを言うならケイさんはマルセイユの保護者じゃないすか」

 

 しばらく、二人は軽口を叩き合い、笑い合った。

 

 




話の全体像が大体固まってきました。時間はかかるかもしれないけど、書いていきます。


ヒロインの件について

ヒロイン決まりました。決めきれないキャラを選んで最終的に、あみだくじで決定しました。ただ、話的に恋愛要素がいつ絡むかは未定です。あしからず。

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