=月A日
今日は隣に住んでる天使が、晩御飯を食べに来た。
なんでも、グリゼルダが天界に帰って、ご飯を作ってくれる人が居ないらしい。
……お隣さんって、平和だにゃー。
なんか、警戒してる私が馬鹿みたい。
しょうがないんだけどね。ミカエルが、セラフ達が何考えてるか判らないし。
悪魔や堕天使みたいに、積極的にトオルに関わってくるでもない。かといって、傍にグリゼルダ達を置いてるから不可侵という訳でもない。
ほんと、何考えてるんだろ。
でも、グリゼルダ達は割と接し易くて、判りやすい。
トオルを心配してくれてる。それでいて、必要以上に関わらないようにしてる節がある。
だから、こうやって偶に一緒に晩御飯を食べたりしてる。
――天界の出方が判らない。
こうやって疑ってる自分が、少し嫌いになりそうだにゃー。
だって、白音もレイナーレも、全然疑ってないんだもん。
トオルなんて、信頼してる節すらある。
損な役回りだにゃー。おねーさんも楽がしたいよ?
=月B日
最近、レイナーレの特訓の時間が増えた。
トオルと白音が居ない日中は、仙術や妖術を教えたり、戦ったりしてる。
どれだけ成長したかは、まぁ、アレだけどね?
それでいて掃除とか家事とかもしてるんだから、ホントにレイナーレは凄いと思う。
戦う力が強くったって、役に立つのは戦闘の時だけだもんね。
そういう意味じゃ、私はレイナーレが羨ましいにゃー。
掃除、洗濯、料理、何でも出来るもんね。
私も一応できるけど、面倒だにゃー。そういうのは、レイナーレにお任せ。
だって猫だもん。うなー。
ヤル気と努力と根性はあるよねー。愛がなせる業かにゃ?
=月C日
トオルが、リアス・グレモリーの事で愚痴を言ってた。
でも、トオルの愚痴はちょっと間違ってると思うにゃー。
リアス・グレモリーは赤龍帝が好きだから、赤龍帝が自分以外の女に目を向けてるのが嫌なんだよ。
デートの邪魔をするのは簡単だけど、そうじゃない。
自分を見てくれない赤龍帝に苛々してる。焼きもちを焼いてる。
トオルにはまだ早いかにゃ? なんちゃって。
トオルもそれくらいは気付いてくれないと、黒歌さんも焼きもち焼いちゃうよ?
まぁ、そんなトオルも好きなんだけどね? 偶に優しくしてくれるの、嬉しいし。
いつも優しくされると溺れて沈んじゃいそうだから、今は偶に優しくしてくれるくらいで良いや。
=月D日
今日は久しぶりに、リアス・グレモリーの所の吸血鬼が遊びに来てた。
ギャスパーって言うんだって。
そう言えば、今日初めてまともに話した気がする。何度か見た事はあったけど。
怯えられてた。なんで? 人見知りが激しいにも程があると思う。
黒歌さん、ちょっとショックだにゃー。
トオルに『神器』の扱いが上手くなったって、褒められてた。頬を赤く染めてた。
……うん、可愛かった。女の子みたいだった。男の子だけど。女装してるだけなんだけど。
反則だにゃー。トオルも微妙な顔をしてた。
判るにゃ。アレは下手な女の子よりも女の子してるにゃ。
ちょっとイラっとしたので、吸血鬼に見惚れてたトオルに抱きついてやった。
顔を真っ赤にしてた。
私達が居るのに、他の女…男? まぁいいや、他の人に目を向けるなんて、デリカシーが無いにゃぁ。
私って、魅力が無いのかにゃ?
白音に聞いたら、胸を睨まれた。うん、ごめん。
まぁ、トオルも胸は大きい方が好きみたいだし、これからもがんばろう。
……白音が怒って口をきいてくれないにゃー。
=月E日
最悪だにゃー。ちょっといい事もあったけど、最悪な一日だった。
トオルとデートしてたら、オーディンと会った。
日本の街中で北欧の主神と会うとか、トオルは本当に平穏とは程遠いにゃー。
折角楽しい一日になりそうだったのに、最悪だにゃー。
しかもあの人、何か嫌な感じがした。
トオルを見る目が、トオルじゃなくて、もっと別の物を見てるっていうか…ホント、嫌な感じ。
北欧の主神だからって、どれだけ偉くてもトオルを害すならどうにかしないといけない。
その後、どうしてかメイド喫茶になんか連れていかれた。
なんか興味があったらしい。主神なら、メイドなんてより取り見取りだろうに。
トオルはあんまり興味が無かったみたい。オーディンと話してばっかりだった。面白くなかったにゃー。
だって、私が居るのに、私よりオーディンを優先してるんだもん。
しかも、オーディンと会った時、この前傍に控えていた戦乙女の事を聞いて少し残念がってた。
私と一緒に居るのに、他の女の事を気にするのってマナー違反だにゃー。
私が怒った理由をトオルに聞かれたけど、教えてあげない。それくらい判れー。
トオルのバカ。鈍感。朴念仁。
その後堕天使総督や幹部が来たけど、どーでもいい話をしてた。
ちぇ。せっかくトオルと二人でデートしてたのに。
オムライスにトオルと私の名前を書いてもらってからかったら、少し照れてたけど。
……そのせいで、今晩は晩御飯抜きにされた。
トオルはいけずだにゃー。
――でも、オーディンはどうにかしないといけない。
この前の、ディオドラの時みたいに何かあったら嫌だ。
トオルはもう、戦わせたくない。
……好きなんだもん。本気なんだ。
好きな人が死ぬところなんて、もう見たくない。
白音とレイナーレに相談したけど、あんまりいい案は出なかった。
だって結局、トオルの意思次第なんだもんね。
=月F日
レイナーレが寝坊した。
多分、最近のオーバーワークが原因だと思う。
体調を崩したわけじゃなくて、普通に疲労。ただ疲れただけ。
でも、しばらくは無理はしない方が良いのかにゃー。
……本人は、無理しそうだけど。
偶になら朝食を作るのも楽しいし、少しは楽をしてほしいにゃー。
トオルも気にしてたんだし、少しなら休んでもいいのに。
――ホント、レイナーレは真面目だね。
休む暇を無くしてでもトオルの役に立ちたいんだろうな。
判るよ。凄く。
でも、それでトオルに心配を掛ける事になるなら、多分その頑張りは少し間違ってる。
……私が言っても、大丈夫の一点張りだったけど。
頑固だね。
レイナーレのそう言う所……私は好きなんだけどね。
その頑固さに、私は救われたんだし。
=月G日
トオルから、レイナーレの事で相談された。
まぁ、あの頑固者の事は、おねーさんに任せなさい。
という訳で、昼間の掃除とか代わりにしてあげた。
私は昼間はのんびりとお昼寝をしたい猫なんだけどにゃー。
そんな私に掃除洗濯を手伝わせるなんて、レイナーレは酷い奴だにゃー。
昼食も、夕食の準備も手伝った。
……あーあ、こんなの私のキャラじゃないにゃ。レイナーレには、早く体調を戻してほしい。
訓練も禁止。焦っても、身体を壊すだけだし。
レイナーレには強くなってほしいけど、無理をしてほしい訳じゃないにゃ。
白音にも、それとなくレイナーレを気に掛けるように言っておいた。
=月H日
トオルとレイナーレが、朝からイチャイチャしてた。心配して早起きしたのにさ、二人でベタベタして……羨ましい。
でも、そんな二人の時間を邪魔するほど、黒歌さんは空気が読めないわけじゃないよ?
まぁ、トオルが学校に行った後、そのネタでからかわせてもらったけど。
気付いてないと思ってたの? 馬鹿だなぁ。私がそんな面白いイベントを見逃すはずないよね?
どうしてだろうね。
レイナーレって長生きしてるのに、恥ずかしい事に慣れてない。
優しくされるのに慣れてない、っていうのかな? そんなアンバランスさも可愛いにゃー。
あと、今日はアーシアが遊びに来た。
レイナーレを心配してくれたみたい。ありがとね、アーシア。
トオルとレイナーレの友達は、優しい人が多いね。
=月I日
レイナーレが不調なので、今日も白音と二人で訓練してた。
白音の訓練は、順調に進んでる。
『悪魔の駒』の特性もあるのか、殴り合いなら私でもそろそろ危ないかも。
強くなったよね、白音。でも、グレモリー配下も白音と変わらないスピードで強くなってる。
才能があるって羨ましいね。ま、私が言える事でもないけど。
そういえば、レイナーレって、あんまり才能に嫉妬しないよね。
私には判らないけど、そういうのって、実はすごい事なんじゃないかな?
そう言うと、そんな事は無いっていってた。嫉妬した事あったんだ。
レイナーレでも嫉妬するんだにゃー。
まぁ、私に嫉妬してるって言われた時は驚いたけど。
むしろ、私がレイナーレに嫉妬してるんだけど?
私はきっと、レイナーレみたいに才能が無かったら、途中で諦めてるにゃ。
そういう意味でも、私はレイナーレの事を尊敬してるんだろうね。
頑張ってね『女王』様? 私の『女王』は、レイナーレだけなんだから。
=月J日
オーディンが訪ねてきた。
……やはり私は、あの年寄りがあまり好きにはなれない。
トオルを巻き込もうとしてる。きっと、そうだ。
何が起きているのかはまだわからないけど、何か起こそうとしてるのは判る。
猫は、悪意には敏感なんだにゃー。
だから、嫌い。
トオルを意図して危険に晒そうとするヤツは、嫌い。
白音とレイナーレにも注意するように言っておいた。
だってあの年寄りの目、トオルを面白い玩具か何かと勘違いしてる目だった。
レイナーレに戦い方を教えたって聞いてたけど、きっとそれも何か考えがあってだと思う。
……せっかく最近は平穏だったのににゃー。
やっぱり、トオルが平穏になるのは難しいのかにゃー? 諦めないけど。
それにしてもあの戦乙女。強いにゃ。
レイナーレが手も足も出なかった。
あれでも、中級ではそれなりに戦えるだけの実力はあると思う。
もう少しで上級とも戦えるくらいには――それでも手も足も出なかった。
まぁ、相性もあるんだろうけど…北欧にも、化け物が多いにゃー。
寝る前、お隣さんのグリゼルダにオーディンの事で何か知っていないか尋ねてみた。
訪日の理由は教えてくれたけど、それ以外は知らないってさ。
まぁ、トオルも目的の一つ、というのは私も感じてる。
北欧の主神が、戦乙女だけを傍に置いてお忍びみたいな感じで人間一人に接触するなんて思えない。
きっと、トオルの『神器』が目的なんだろう。
――あの時の、怖いトオル。
私はもう、あんなトオルを見たくない。
=月K日
あー、もう。どうしてこう、私って後手後手になっちゃうんだろうにゃー?
まぁ、トオルも悪いと思うよ? だって、オーディンに誘われたら、簡単について行っちゃうんだもん。キャバクラ? そんなのに興味があったの?
私とレイナーレが、トオルの好きなだけ、トオルが好きな事をしてあげるのに。……ばーか。
それにしても、ロキ――北欧の悪神、ロキか。オーディンが日本の神話体系に接触するのが面白くないって言ってたけど、絶対利用されてると思う。
なんか、馬鹿っぽかったし。年寄りの方が、感情を隠してる分、狡猾に見えた。
まぁ、実力は本物だったから、口だけじゃないんだろうけど。
それにフェンリルまで連れてきて……困ったにゃ。
アレは流石に、私でも手に余る。ロキはともかく、フェンリルは危険だ。
ヴァーリ達も来たけど、多分正面からならヴァーリでも勝てるかどうかわからないくらい強い。
神の天敵。神殺しの狼。それがロキの息子、フェンリル。
……そのフェンリルを、トオルは犬呼ばわりしてたけど。敵どころか、味方だって唖然としちゃったよ? だって、神の天敵を犬呼ばわりだよ? しかも、目の前で。
そんなに挑発しないでほしいにゃー。私、さすがにフェンリル相手だとトオルを守れる自信が無い。
というか、トオルに助けられちゃったし。溜息しか出ない。
そりゃ、突然だったし、フェンリルまで現れて少し混乱してたけどさ。
フェンリルに噛まれそうになったら、トオルがヴァーリを強化して助けてくれた。
それに、フェンリルに噛まれた赤龍帝の傷も回復してた。
レイナーレに聞いてたけど、本当に二天龍にまで干渉できるんだ。
トオルの『神器』って何なんだろう?
私達が戦えない相手にレイナーレや白音が戦えるはずも無く、トオルと一緒に後ろに下がっててもらった。
トオルにも、出来れば『神器』を使ってほしくなかったけど…それは難しかった。
多分、それがオーディンの目的なのかもしれない。
ロキとフェンリル。トオルを戦わせて、トオルの『神器』を調べるのが。
……その為に同族を危険に晒すのだから、絶対…とは言えないけど。
でも、オーディンは神話では知識を得るために自身すら犠牲にする神だ。トオルの情報を得る為なら、そこまでするかもしれない。
――それ以上も。
もしかしたら、私やレイナーレ、白音にだって手を出すかもしれない。
あの年寄りなら、それくらいするかもしれない。
敵は多分、ロキじゃない。
いや、ロキが敵なんだろうけど…あの年寄りは、味方じゃない。
少なくとも――私は、味方と思えない。ロキに襲われた時、ロキやフェンリルを見ずに、トオルを観察してた。神の天敵であるフェンリルなんか、気にしてなかった。トオルを見てた。
……嫌な感じ。私、オーディンは嫌い。
それと、ヴァーリ達がしばらくの間家に滞在する事になった。
ロキと戦う間、だけど。
頼もしいにゃー、懐かしいにゃー、今日は遅くまで話しちゃった。
ヴァーリも美猴も、あんまり変わってなかった。
オーフィスの事を聞いたらはぐらかされたけど。何か隠してるよね?
はぁ……頭が痛いよ、トオル。
どうすれば、私達は幸せに暮らせるのかにゃー?
トオルの所為だよ? トオルが強いから。強すぎるから。
まったく。困ったご主人様だにゃー。
まぁ、そんな所も好きなんだけど。
まぁ、中身は真っ黒黒助だしね
しょうがない