とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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戦闘描写(?)難しい…もう諦めて、長くしたw
……日記らしくなくてすみませんorz


80(メイド日記)

 #月N日

 

 ……私は、今日という日を忘れない――と思う。

 とても、嬉しい事があった。

 

 今日は、徹様はあまり落ち着かれていなかったように感じた。

 やはり、戦いという行為そのものを、あまり好かれていないのだろうと思う。

 学園から帰って来られた後も、どこかここに在らず、という感じだった。

 

 そんな徹様が、夕食の後、明日勝ったら祝勝会をしよう、と言われた。

 負ける事など考えていない、徹様らしい言葉だと思う。

 徹様があんな――ただの上級悪魔。ディオドラなどには負ける事など考えられない。

 黒歌も、小猫も……明日共に戦う天使の二人も。

 足を引っ張るとしたら私だろう。

 部屋に戻る前に黒歌がフォローしてくれると言ってくれたが、それはそれで悔しいものなのだ。黒歌もその辺りは判って言ったんだと思う。緊張している。……明日は、徹様と出会って、今日まで過ごしてきた私を試す場所でもある。

 徹様、グレイフィア様、アーシア、黒歌、小猫――沢山の人が私を鍛えてくれた。支えてくれた。優しくしてくれた。――許してくれた。

 傷付けたりした。殺したりした。

 そんな私を許してくれた徹様やアーシアを守りたい。

 私を信じてくれている黒歌と小猫に応えたい。

 ――私は……明日、勝ちたい。

 

 明日のレーティングゲーム後の祝勝会。

 黒歌と小猫は刺身が食べたい、と言っていた。

 アーシアは腕を振るって御馳走する、と言っていた。

 それは祝勝会――祝う席としてどうだろうと思った。でも、アーシアらしいと思うと、おかしかった。

 アーシアの料理はとても上手だ。だから、私も楽しみにしたい。

 でも、祝いの席なら、明日くらいはアーシアの手料理は我慢するべきでは、とも思う。

 お祝いなのだから、少し値段が張る場所で外食でも――と思う。

 最近は徹様の家に住む人も増えたが、生活費は節約している。少しは貯えている。

 世の中、何があるか判らないのだ。

 徹様の能力なら、『神の子を見張る者』、冥界、天界…場所を問わず、稼げると思う。それに、アザゼル様や、魔王、熾天使にも面識があるのも大きい。

 だが、徹様はあまりそれらには頼らず、御両親から送られてくる生活費だけで、慎ましく暮らそうとされている。

 ……普通の生活。私達のような人外とはあまり関わらず、普通の人間、普通の生活、普通の日常。それらを大切にされている。

 なら私がする事は、徹様が必要以上に堕天使の総督などに関わらないで済むように、今のこの生活を続けられるように、送られてくる生活費を大切にし、出費を抑え、僅かでも貯えを作る。

 まるで、主婦か何かだな、と苦笑するしかない。……畏れ多いが。

 特に徹様はお身体が弱いのだから、もしもの時の為に蓄えは必要だ。

 それに、黒歌がテロリストとして稼いだお金もある。……これは、最終手段だが。

 

 だがそれを考えても、お祝いの席なら少しは贅沢を――と思ったのだ。

 ……徹様は、外食よりも私の料理が、と言って下さったが。

 正直、今でも信じられない気持ちが強い。

 グレイフィア様やアーシアのように、料理が上手な訳ではない。

 徹様と出会ったころに比べたら、多少は上達したと思うが…それでも、私の料理の腕など――私自身が理解している。

 とても――徹様に褒めていただけるような腕ではない。

 私よりも料理が上手な人など……。

 ――でも、嬉しい。

 

 外食よりも私の料理の方が好きだと言ってくれた。

 美味しいと、笑ってくれた。

 

 年下の男の子にそんな事を言われ、喜んで、多分――舞い上がってる。

 ……私も、随分変わったものだ。

 でも…こんな変化なら、悪くない。

 ――黒歌と小猫にはからかわれたが。

 こんな時くらい、少しはゆっくり喜ばせてほしい。

 まぁ、二人も喜んでくれていたようだったが。

 それでも、喜んでくれていても――恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 

 明日は勝とう……勝ちたい。

 

 

 

 #月O日

 

 体中が痛い。

 ……徹様を守れずに、なにが『女王』だ。

 

 今日は、ディオドラ・アスタロトとのレーティングゲームの日だった。

 色々とあったが――ただ、最悪の日だった、としか書きようがない。

 ゲームの直前に渡された『王』の駒は、徹様の『神器』の能力を抑制するものだった。

 その事は、ゲームの後に伝えられた。せめて、ゲームの前にその事は伝えてほしかった。

 そうすれば、きっとトオル様はもう少し上手く立ち回られていた。時間の操作が妨害されて、徹様は酷く戦い辛そうだったから…。

 ディオドラ・アスタロトは裏切り者だった。『禍の団』の旧魔王派らしかった。

 黒歌はそんな大事な事を忘れていた。オーフィスの蛇というものを見るまで、思い出せなかった。

 そんな大事な事は、忘れないでほしい……。だが、その事を黒歌には言えない。その事を一番気に病んでいるのは黒歌だからだ。一番後悔しているのは、私もよく判る。

 今回のゲームは、徹様を餌に旧魔王派を誘き出す為の一戦だった。

 つまり、私達は悪魔側からも――裏切られた、とは思いたくない。

 だが――冥界を…悪魔を、これからはあまり信用できそうにない。少なくとも、魔王は。

 そして……『無限の龍神』オーフィスが、徹様を確認しに来ていた。

 そんな色々な事が重なって……本当に、最悪の日だった。

 徹様を失ったと思った。

 ――あの時の気持ちを、私はきっと忘れない。

 きっと、絶望というのは――ああいうものだ。

 

 レーティングゲームの直前、魔王ルシファーから『王』の駒を徹様が頂いていた。

 これで、正式に私や黒歌、小猫は徹様の配下になれた。

 それはとても誇らしい事に思えた。これから一層、徹様の『女王』として精進したいと思った。

 アーシアとグリゼルダ様、紫藤イリナと合流し、レーティングゲームの会場である古代遺跡のような場所に魔法陣で移動して――最初に異変に気付いたのは黒歌だった。次にグリゼルダ様。

 勝負は私達とディオドラ達のはずなのに、転送された先には千を越える上級悪魔が待ち構えていた。

 それこそ、空を覆うほど、だ。

 黒歌とグリゼルダ様が奇襲とも言える第一波を凌いでくれたが――二人が居なかったら、どうなっていた事か。徹様の『神器』の能力も制限されていた状況だ、ゲームのシステム上、死ぬ事は無かっただろうが…最悪、本当に命を失っていたかもしれない。

 それほどまでに激しい攻撃だった。

 私と小猫は、徹様を守るだけで精一杯だった。 

 紫藤イリナには感謝している、アーシアを守っていてくれたから。

 その攻撃の隙にディオドラは本性を現し、アーシアを攫った。

 攻撃を凌ぐだけで限界だった私達は何も出来ずに、それを見ている事しかできなかった。

 

 その時の事は、私は今でもあまり理解できていない。

 アーシアが攫われようとした時、黒歌たちが上級悪魔の攻撃にさらされている時、徹様は『禁手』へと至った。

 千の悪意とディオドラの裏切り。

 それを、ただの一瞬で黙らせた。

 空を覆う上級悪魔達は地に落ち、勝ち誇っていたディオドラはその瞬間表情を凍らせた。

 それはそうだ。

 上級悪魔千体。それを一瞬で倒すなど、常軌を逸している光景だ。

 私達でさえ、徹様がそんな事を出来るだなんて思えなかった。

 そんな光景を前にして、徹様が怖くなったのかディオドラはすぐに逃げた。…アーシアを連れて。

 私たちはその後をすぐに追って、そのあと兵藤君達と合流した。

 オーディン様やオリュンポスの神々、帝釈天に魔王達も倒れた旧魔王派の上級悪魔達を手際よく拘束していった。

 ディオドラの裏切りは、一瞬のうちに瓦解していた。徹様一人によって……。

 

 ――これでは、あの時と同じだ。

 『駒王協定』の場、徹様が倒れた時と。

 徹様は、誰もが傷つかないように、自分を犠牲にする。犠牲に出来る。

 それはきっと、他人から見たら素晴らしい自己献身に見えるだろう。

 ……けど、私達からしたら、その姿は酷く、辛い。

 大切な人が優しいのは嬉しい事だ。だが、それで倒れられては、意味が無い。

 徹様が傷つき、倒れる姿など――見たくないというのに。

 だと言うのに、私には、戦う力が無い。

 今回も結局――最後は徹様に縋ってしまった。

 

 

 アザゼル様に説明された話だと、徹様はあの場に居た旧魔王派の上級悪魔達から生命力を奪い、なにかしらの大掛かりな魔法を発動させようとしていたらしい。

 多分、あの時――レーティングゲーム会場の奥、ギリシアの神殿を思わせる場所。

 その場所で、ディオドラと…後から現れた、もう一人の旧魔王派の魔王。

 その二人と対峙した場所で、徹様から感じた……恐怖。多分、あの時だ。

 あの時……徹様が、怖かった。

 圧倒的な力。絶対的な存在感。レーティングゲームの会場を覆う結界が軋み……世界が揺れたような気がした。

 本当に、比喩ではなく――そんな気がしたのだ。

 怖かった。時間を操る徹様。でも、その能力も一部でしかないのかもしれない。

 底が知れない私の主。

 まるで……世界が徹様の支配下にあるように感じた。

 この世界で徹様が中心なのだと――そう、心のどこかで思ってしまった。

 それは、羨むような力ではない。

 人の手には、個人には、手に余る力。

 ――徹様には、似合わない力。

 

 『神滅具』に囚われたアーシア。

 アーシアを裏切ったディオドラ。

 そのアーシアを傷付けたシャルバと名乗った悪魔。

 『覇龍』へと至り、人の姿を失った兵藤君。

 その兵藤君の変化に動けなかった私達。

 ――その中で、徹様だけが『神器』を使い、この世界の全てを支配した。

 あれは一瞬だった。徹様の一言に、その場にいた全員が従った。

 『覇龍』となった兵藤君でさえ徹様に怯え、従った。

 神や魔王さえ倒せる二天龍。その片割れであるドライグ。

 力と暴力の象徴である赤龍帝が、「動くな」と言われ、それに従った。

 きっとアレは、本能だ。

 徹様に逆らってはいけない、そう、本能が警告したのかもしれない。

 事実――あの時の徹様は、全くの別人だった。

 冷めた視線、無表情ともいえる顔、躊躇い無く戦場を歩く姿。

 あの時、戦う事を恐れていた人とは全くの別人だった。

 きっと、あのまま徹様が動いていたら――徹様は、殺していたと思う。ディオドラ・アスタロトとシャルバ・ベルゼブブを。

 そう判っていても、私も、黒歌も動けなかった。

 ……怖かったから。

 徹様が、怖かったから。

 あの時、アーシアを殺されたと思った。怒りが湧いた。殺意しかなかった。ディオドラを殺したかった。

 だが。そんな感情すら、凍りついた。

 直後に刻まれた、ディオドラを中心に現れた魔法陣。銀色の魔力を溢れさせたアレは一体なんだったのだろう?

 アザゼル様も、知らないと言われていた。

 

 

 ――オーフィスが現れ、徹様を止めなかったら、徹様は何をしようとしたのだろう?

 ただ、ディオドラは酷く怯えていた。

 怯えて、喋る事も出来ず、ただただ震えていた。

 あのあと合流したアザゼル様や魔王ルシファーに助けを求めるほどだった。

 アレは異常だ……いったい、徹様は何をしようとしたのだろうか…。

 『覇龍』となった兵藤君は、魔王ルシファーが用意した歌を聞くと、元に戻っていた。

 アーシアも、『禍の団』の白龍皇と孫悟空が助けてくれていた。

 黒歌の件もある。『禍の団』と言っても、旧魔王派とは違うのだろう。

 今度会ったら、お礼を言わないといけない。

 

 徹様は、オーフィスに胸を貫かれていた。

 あの時は取り乱したが、家に帰ると、徹様は眠っていた。

 まるで何事も無かったかのような寝顔に、涙が零れた。

 グレイフィア様やアーシアに慰められた自分が恥ずかしい。

 ……でも、徹様は、やはり体調を崩された。目覚められない。日が落ちる頃には、明らかに変調をきたしていた。

 それに、今までは倒れられた時も微かに意識があった。

 けど、呼びかけても返事が無く、ただ荒い息を吐かれる。熱もひどく高い、

 ――怖い。

 徹様を失うのが。……怖い。

 あの時――ディオドラと対峙した徹様を見た時以上に、徹様を失うのが怖い。

 今は、黒歌が徹様を見ていてくれている。

 仮眠を取ったら、交代するつもりだ。

 ……強くなりたい。

 徹様が戦わなくてすむように……私が、徹様の分まで戦えるように。

 強くなりたい。

 徹様を守れるくらい――力が欲しい。

 

 

 

 #月P日

 

 ディオドラは、『地獄の最下層』に封印される事になったそうだ。

 当たり前だ。

 殺されなかっただけでも――とも思うが、最後に見たあの怯えようを思い出すと、どうにも悪く思えない。

 アーシアを裏切ったディオドラ。

 きっと、罪悪感など無かったはずだ。

 そんな根っからの悪人が、憎むべき現魔王に助けを乞うほどの恐怖を感じたのだ…相応の罰は受けたのかもしれない。

 それでも、私はあの男を許す事は出来ないだろうが…。

 もう一人の旧魔王派――シャルバ・ベルゼブブには逃げられてしまったらしい。

 そう知らせて下さったグレイフィア様は、徹様を心配されていた。

 魔王には……『王』の駒に細工がしてあったし、旧魔王派を誘い出す為の餌にされた。

 だが、グレイフィア様から受けた恩が無くなるわけではない。

 私は、徹様の『女王』でありメイドである。

 その事を教えてくれた方だ。

 今はまだどう接すればいいが迷っているが、出来るなら――嫌いたくない。

 恩人なのだ。

 

 誰もが、徹様を心配している。

 徹様は誰からも慕われているのだと思うと嬉しくもあり、誇らしくもある。

 だが――その徹様は、今日も一日倒れられたままだ。目覚められる様子は無い。

 小猫には学園に行かせた。

 心配してくれていたが、だからと言って学園を休まれては、きっと徹様も気にされると思う。

 そう言うと、しぶしぶだが学園に登校してくれた。

 黒歌は、昨日から休みなしで徹様の看病をしている。

 レーティングゲームの時から休みなく、だ。黒歌も倒れないかと、心配してしまう。

 ……心配しかできない私に、怒りすら湧く。

 どうして私は、何も出来ないのか……。

 徹様の分の食事も用意したが、結局食べていただく事は出来なかった。

 私の料理を好きだと言ってくれた徹様。

 美味しいと笑ってくれた徹様。

 早く目を覚ましてください。

 黒歌も、小猫も――私も。

 徹様を心配しています。だか――

 

 

(文字が乱れていて読めない)

 

 

 

 #月Q日

 

 徹様が目覚められた。

 喜ぶべき事だし、きっと誰もが喜んでくれると思う。

 ……だが、喜べない事もあった。

 どうやら、徹様はレーティングゲームの事のほとんどを忘れられているようだった。

 これが一時的なものか、それとも――ゲームの際の変調の後遺症なのか、まだ判らない。

 冷徹な、普段の徹様らしくないあの時の徹様。

 でも、目を覚ました徹様は、いつも通りの――優しい徹様だった。

 嬉しくて、安心してしまって、抱きついてしまった。

 ――心配させてごめん、と言って下さった。

 アーシアの無事を知って、涙を流されていた。

 

 ……でも、ゲームの際に何が起きたのか、徹様が何をしようとしていたのか…その事を、忘れられている。

 それは……大丈夫、なのだろうか?

 黒歌に聞いたが、判らないと言っていた。

 体調を崩すだけではない『神器』を使った後遺症か……あの時の、圧倒的な『力』の後遺症か。

 しばらくは、学園はお休みしてもらおうと思う。

 体調もそうだが――何が起きるか判らない。

 心配だ。

 

 黒歌や小猫に相談して判った。

 私達は、徹様の事を何も知らないのだと。

 ……それが、酷く悲しく思えた。

 

 

 

 #月R日

 

 徹様には無理を言って、学園を休んでもらった。

 申し訳なく思うが――心配しているのを、判ってもらえてよかった。

 その徹様は、今日一日退屈そうにされていた。

 本当に、申し訳なく思う。

 しかし、病人…ではないが、体調を崩した時は、食事を摂るのも大変だとは判る。

 だが、あーん、というのをする意味はあるのだろうか?

 あんなのは漫画の中だけだと思っていた。

 黒歌に言われるままにしたが……徹様が恥ずかしがられていた。…嫌がられては、なかったと思う。

 思いたい。

 私は別に、恥ずかしくなかった。年下の男の子。しかも看病なのだ。恥ずかしがる必要が無い。

 ……黒歌に茶化されたから恥ずかしく感じただけだ。

 そのあと、徹様と私を茶化した黒歌は徹様に遊ばれていた。

 

 徹様はまだ体調を崩されているけど、ようやくいつもの日常に帰ってきた気がする。

 良かった、と思う。

 気掛かりな事はたくさんある。

 私も黒歌も…今は、その事に目を逸らしてしまっている。

 一日が終わり、こうやって自分の部屋で一人になると不安になる。

 でも――きっと、この日常は続いていく。

 そう信じれる。信じたい。

 ……徹様。今度は必ず、守ります。絶対に。――命に代えても。

 

 

 

 #月S日

 

 今日、徹様がまた熱を出された。

 だが意識はしっかりされていたので、疲れが出ただけだろう、と黒歌は言っていた。

 念の為に今日も学園を休んでもらった。

 黒歌が看病をしてくれていた。あのレーティングゲームの日から、黒歌もずっと休んでいない。

 一応夜は寝ているようだが、日中はずっと徹様の事を気にしている。

 ……多分、口にはしていないけど、黒歌は徹様が倒れた事を、私以上に怖れている。

 依存、と言えるのかもしれない。

 態度には出していないし、私の思い違いかもしれないが……どうしてか、今日、そう感じた。

 ただの、私の気のせいだろう。

 

 

 

 #月T日

 

 徹様の体調も落ち着いたので、今日からは学園に行かれる事になった。

 私は行けないので、学園の事は小猫にお願いしている。

 たぶん大丈夫だろう。掃除をしながらも、ずっと心配してしまった。

 ……我ながら、どうかしてる。

 こんなに心配症だっただろうか、私は?

 自分の変化だが、どうにもよく判らない。

 何時からこうまで変わったのか……笑うしかない。嬉しくはある、が。

 日中、黒歌も家には居なかった。

 多分徹様の様子を見に行ってたのだと思う。聞いたら恥ずかしそうにしていたし。

 

 徹様は、小猫と一緒に帰って来られた。

 『覇龍』へと至った影響で兵藤君が倒れているので、アーシアは呼べなかったけど、グリゼルダ様と紫藤イリナを呼んで祝勝会……と言って良いかは判らないが、集まって、一緒に夕食を食べた。

 兵藤君が目を覚ましたら、改めてアーシアを呼ぼう、と徹様は言われていた。

 それが良いと思う。

 きっと、アーシアも喜ぶだろう。

 しかし、グリゼルダ様は天使なのに和食が上手だ。

 今度、レシピを教えてもらおうと思う。

 料理を教えてもらいたいと言うと、快く了承してくれた。

 洋食はグレイフィア様とアーシアから教えてもらったが、和食は我流なのだ。

 黒歌も和食が得意だが、私と一緒で我流なので、味付けが濃い。

 濃い味付けは身体に悪いのだ。

 

 

 

 #月W日

 

 今日、グレイフィア様が訪ねてこられた。

 なんでも、いま冥界では兵藤君を主人公とした『おっぱいドラゴン』という特撮が流行っているらしい。

 ……名前が、どうかと思う。サンプルを渡されたが、内容もだった。

 初見では、黒歌ですら絶句する内容だった。

 どうしてこんなのが流行るのか……徹様は冥界の子供の将来を心配されていた。

 私もです。

 小猫の教育によろしくないので、サンプルは次の燃えるごみの日に処分させてもらおうと思う。

 

 

 

 #月X日

 

 今日は、休みの日だと言うのに、徹様が掃除を手伝って下さった。

 先日のレーティングゲームの件もあるので休んでほしかったが、それでも手伝って下さった。

 ……すこし、嬉しかったです。

 

 それと、黒歌がまた翼を繕ってもらえと言ってきた。

 それを徹様に聞かれてしまい――思い出すだけでも、恥ずかしい。

 堕天使と天使、そして悪魔の翼。

 三対六枚。私には、不相応な翼は徹様から与えられたものだ。

 いつか、この翼に相応しい『女王』になりたいと思う。

 

 ……徹様に翼を繕ってもらっている間、黒歌と小猫の視線が痛かった。

 羨ましがられた、のだと思う。

 言い出したのは黒歌なのに、どうしてあんな視線を向けられなければならないのか……。

 徹様も、あまり無理をされてはまた倒れるかもしれないのに……。

 でも、嬉しかった。

 またしてほしいと思う。

 ……だが、私からしてほしいと言うのは、憚られる。

 けど、徹様からさせてほしいと言われると――いい、かもしれない。うん。

 

 

 

 #月Y日

 

 徹様やレーティングゲームの事で忘れていたが、明日は体育祭だった。

 ……お弁当の準備など忘れていて、夕食の後、慌てて食材を買い出しに行った。

 徹様と小猫、黒歌に私の分。

 早起きには慣れているが、朝食の用意にお弁当。

 明日は朝から大変そうだが……楽しみだ。

 グリゼルダ様も、紫藤イリナの様子を見に来られるそうだ。

 明日は本当に、楽しみだ。まるで子供のようにワクワクしている自分が居る。

 

 




黒歌ならヤンデレな要素がついてもいけるっ! ……といいなぁ。

主人公が何をしようとしていたのかは、皆さん想像していてください。
近いうちに別の日記で書きます。具体的には2~3日後。多分(ぇ

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