とある神器持ちの日記   作:ウメ種

8 / 195
ふと思ったけど、感想が主人公の『神器』で盛り上がってる。
これって、主人公の『神器』の能力が判ったら感想が減るのではなかろうか?
……ちょ、シャレにならんっしょ


08(悪魔日記 エピローグ)

 

 △月G日

 

 私はその日の光景を、しばらく忘れる事が出来ないだろう。

 堕天使レイナーレ――堕天使としては上級寄りの中級程度。

 強いと言えば強いが、私や朱乃程じゃない。一対一なら祐斗や小猫でも十分に相手にできる敵だ。

 イッセーは転生してまだ間もないから難しかったが、まぁ、その程度の相手という事だ。

 つまり、勝つのは必然、滅ぼすのは必定、イッセーが悪魔として生きていくための、最初の儀式という訳だ。

 そのつもりだった。そのはずだった。

 たとえ何者かの邪魔が入っても、結末は変わらないはずだった。

 しかし、蓋を開けてみたらどうだ?

 イッセーは『神滅具』という極上の『神器』に覚醒したが、私の『滅びの力』で消したレイナーレは復活した。

 上手くいきすぎた事もあれば、最悪の結末にも至ってしまった。

 『滅ぼした』レイナーレを蘇生させた上代徹という存在。

 滅びとは、肉体だけではなく、魂すらも消すという事だ。

 すべての生命にとって、魂とは存在の根源。

 魂の消滅は存在の消滅。

 それは復活どころか再生も治癒も不可能な事。

 ――その筈だったのだ。

 だというのに、彼はあっさりと彼女を復活させてみせた。私達の目の前で、だ。

 

 

 

 

 

 △月B日

 

 上代徹という存在を調べてみると、驚くほどに“普通”だ。

 両親は共働きで、よく海外に出ているようだが健在。今は、父は上海、母はフランスへ出張中。

 家に一人暮らしで、小遣いは生活費とは別に、月に決められた額を振り込まれている。

 バイトはしていない。

 友人関係も良好で、学園内で孤立している訳でもない。

 独りではなく、学園でも近所でもそこそこの付き合いをしながら生活している。

 簡単に調べただけだが、まぁ、彼の身辺はその程度だ。

 そこに不自然な所は何も無い。

 頭が痛くなる。

 敵対の意志は無いようだが、それなら何者かくらい教えてくれても良いだろうに。

 レイナーレを従えたから、堕天使だろうか?

 だが、彼ほどの存在なら名前と顔が知れ渡っていてもおかしくはない。

 あまり疑いたくはないのだが……。

 今日は朱乃が彼に召喚されている。

 正直、イッセーやアーシアが召喚されなくてよかったと思う。

 朱乃なら、万が一何かがあっても自力で対応できるだろうから。

 ………だからって、料理を褒められたくらいで笑顔になられても。

 なんだかそんな事を話されると、本当に敵意が無くなってしまう。

 彼は何者なのだろうか?

 敵であってほしくない、と思ってしまう。

 

 

 

 

 

 △月A日

 

 廊下で上代君と会ったので、昨日の件のお礼を言っておいた。

 今日は朱乃の機嫌が凄く良い。

 しかし、最初に落とすだけ落して、次は褒めて上げるなんて、彼はやはりSだなぁと思う。

 あれだけピリピリしていた朱乃が、こうも簡単に機嫌を良くするなんて……女の扱いに慣れてる。

 恋愛経験、と書いていいものかどうかは判らないが、それなりに経験は豊富なのだろう。

 私は上代君より、イッセーみたいな恋愛初心者の方が可愛いなぁ。

 

 

 

 

 

 △月O日

 

 今日はアーシアの悪魔稼業初日だが、相手があの上代君である。

 あまりいい気はしないが、彼に不審な点は無い。

 イッセーは彼に怒られたらしいので、少し挙動不審だった。

 なんでも、レイナーレに「男が喜ぶ服」を渡したらしい。

 ……まぁ、イッセーって……ねぇ? 何の服を渡したのか、非常に気になった。

 怒ってアーシアに八つ当たり、というのも想像つかないし、大丈夫だろう。

 でも、アーシアとレイナーレは大丈夫なのだろうか?

 もしかしたら、その辺りを考えてアーシアを召喚したのかもしれない。

 まぁ、明日になれば判る事か。

 その後、イッセーは自転車を漕いで上代君の家に向かった。

 アーシアが心配なのだろう。

 仲間を心配し、大切に思う事は良い事だ。やはりあの子を眷属にして良かったと思う。

 

 

 

 

 

 △月Z日

 

 アーシアは、無事に帰ってきた。

 レイナーレとも話す事ができ、先日の事は水に流す事になったようだ。

 こういうのは時間が経つだけ面倒になるし、早くから仲が良くなるのは良い事だと思う。

 やはり上代君は、そういう事を考えていたのだろうか?

 敵であったレイナーレの事を考えていてくれている。

 彼も私と同じように、仲間を大事に思っているのだろうか?

 だとしたら嬉しく思う。

 

 

 

 

 

 △月X日

 

 今日も朱乃が召喚されていった。

 何をしていたのか聞いてみると、食事の用意をして、一緒に食べてきたのだとか。

 監視の意味合いも兼ての召喚だが、なんだ、随分と上手くやっているようだ。

 しかし、朱乃の手料理なんて誰も彼も食べれるものじゃないのだけれど…上代君はどう考えているのだろう?

 そう朱乃に聞いてみると、少しだけ笑って帰っていった。

 …………なんだ、この言い様の無い敗北感は。

 少し前は、女扱いされない事にイライラしていたくせに……妬ましい。

 

 

 

 

 △月V日

 

 レイナーレの服が無いとかで、上代君が相談してきた。

 まぁ、今まで男所帯だったのだからしょうがないか。

 という訳で、朱乃とイッセーも誘って買い物に行ってきた。

 小猫とアーシアは、今日も楽しく悪魔稼業だ。

 しかし、イッセー? 貴方、節操がないにも程があるんじゃないかしら?

 なんでレイナーレにメイド服なんか……しかも、どこで手に入れたのよ?

 魔界の私の実家になら結構あるけど、日本でなんて見かけないんだけど?

 今日のショッピングは、中々に楽しいものだった。

 上代君に蘇生されたとはいえ、一度は滅ぼした相手だったので、わだかまりも殆ど無い。

 それに彼女、随分と丸くなっていた。上代君と一緒に生活しているからだろう。

 というか、メイド服に丁寧語……元の荒い口調を知っているだけに、違和感を感じてしまう。

 ……彼、こういう趣味もあるのかしら?

 ちょっと、上代君を見る目が変わりそうだ。

 それとイッセー? まず下着売り場に向かうのはやめなさい。

 朱乃? 今日はレイナーレの服を選びに来たのだから、自分の服を真っ先に選ばないで。

 ――私は保護者か何かだろうか?

 

 

 

 

 △月N日

 

 今日は小猫が上代君に召喚されていった。

 ……朱乃(S)を苛めて、レイナーレにはメイドプレイ、そして小猫召喚。

 朱乃が最近優しくされてたから私の気の所為だったのかな、と思ったけど……やっぱり。

 彼って、趣味の範囲が広すぎると思う。

 イッセーも八方美人な所があるし、男って皆そうなのかしら?

 祐斗に聞いてみると、苦笑されてしまった。

 というか、最近祐斗の声を聴いてない気がする……気のせいかしら?

 あと朱乃? 笑顔が怖いわ…イッセーが怯えちゃって、部室の隅で震えていた。可愛いなぁ。

 

 

 

 

 △月M日

 

 しかし、普通の顔をして…せ、性癖は随分とアブノーマルよね、上代君。

 Sを苛めるドSで、支配欲が強くて、ロリータコンプレックスだなんて。

 そういう意味では、女性に移り気すぎるだけのイッセーがまともに見える。

 そして今日はアーシアが召喚されている。

 ……つ、次はアーシアが――(文字が汚くて読めない)

 

 

 

 

 △月#日

 

 上代君が、朱乃に『神器』を見せてくれたらしい。

 そのくらいには私達を信じてくれた、という事だろうか?

 少し気分が良い。

 しかし、懐中時計型の『神器』となると、時間操作が得意なのだろうか?

 そうなると、レイナーレの蘇生が出来ないはずだが……。

 『神器』の能力――流石に、そこまではまだ教えてはもらえないか。

 朱乃も何処か憂鬱そうな顔をしていたし。

 また、上代君と何かあったのだろうか?

 

 

 

 

 




なんでか知らないけど、私の中ではグレモリーさんは耳年増なイメージがある。
どうしてかは判りませんけどね。
次は堕天使日記を書いて、二巻に突入です。
……主人公の性癖は、いたってノーマルですよ?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。