とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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主人公が今回、すぐに目覚めた理由。
まぁ、それでも二日寝込んでますけどね

2013/11/07
Z日以降を追加しました
……普通に書き忘れてたorz



73(聖女日記)

 #月O日

 

 ディオドラさん。ディオドラ・アスタロトさん。

 以前私が助けた悪魔。私に求婚してくださった方です。

 ……どうして、あんな事になったのでしょうか? 私がしたことは、意味の無い事だったのでしょうか?

 ディオドラさんは、私を欲していました。それは、本当の事でした。

 私を手に入れる為に傷を負い、『神器』を使ってその傷を癒す所を教会の方に見せることで、私を教会から追放したらしいです。

 ディオドラさんの考え通り、教会から追放された私は庇護を失い、堕天使の方に利用されたまま……命を失い、悪魔へと転生しました。

 本当に、ディオドラさんの考え通りです。

 きっと今日、あの人の考え通りに物事が進んでいたら、私はあの人に……。

 ですが、裏切られたというのに、そうまで気にはしていない私が居ます。

 イッセーさんが助けてくれました。自分を傷付けて、それでも私を助けてくれました。今は、力を使い過ぎたらしくて、眠っておられます。死んだように眠っておられますが、ルシファー様やグレイフィア様が言うには命の心配ないそうです。

 ……ありがとうございます、イッセーさん。私はまた、貴方に救われました。

 どんなに辛くても、悲しくても、絶望しても……貴方が頑張るなら、私も頑張れます。

 だから、早く目を覚ましてください。

 イッセーさんが居ないと、寂しいです。

 

 そして、上代先輩。

 『禁手』へと至り、千の上級悪魔を退け、ディオドラさんの『女王』へ昇格した『兵士』8人と『戦車』2人を難なく倒した先輩。

 ディオドラさんを地に這わせ、シャルバ・ベルゼブブと名乗った旧魔王派の一人をイッセーさんと一緒に撃退した先輩。

 上代先輩の『禁手』――アザゼル先生が言うには、とても単純で……単純すぎるからこそ、問題がある能力だそうです。

 イッセーさんや部長のように破壊力が強い訳ではなく…ただただ、現状では対策が無い。

 周囲からの生命力と魔力の吸収。それが上代先輩の『禁手』の能力だそうです。

 先生に言われてから気付きましたが、私達が戦っていた場所……朽ちた神殿のような場所は、上代先輩から命を奪われ、半分近くが塵になったそうです。

 それは、先輩の能力が悪魔や天使等だけではなく、大地や植物などからも生命力と魔力を奪うかららしいです

 ……しかも、上代先輩は『駒王協定』の場で、魔王様やアザゼル先生にも干渉しています。

 おそらく、魔王様達からも、生命力を奪えると言う事です。

 上代先輩が敵対する事は無いでしょうけど、恐ろしい能力です。

 

 旧魔王派は壊滅した、との事です。アザゼル先生は、そう言ってられました。

 私はみなさんが戦っている時、次元の狭間に飛ばされて気を失っていました。

 ……本当に、私は足手まといでした。

 ですが、覚えています。

 イッセーさんの暴走――『覇龍』と言うらしいです。

 その『覇龍』となったイッセーさんを従え、戦場を歩いていた上代先輩を。お伽噺に出てくる魔獣を従える存在……『魔王』。

 ですが、上代先輩は魔王でも、神でもないらしいです。

 上代先輩は人間です。その事が――誇らしく思えます。

 ココロが強い人間なら、魔王も熾天使も堕天使総督も――誰もが認めてくれるのだと、教えられました。

 

 ……でも、代償も大きかったです。

 上代先輩……一度、死んでしまわれました。

 ディオドラさんとシャルバさん。二人を退けた後、突然現れた黒い女の子に……不意を突かれて殺されてしまいました。

 アザゼル先生が言うには、彼女が『禍の団』の首魁、『無限の龍神』オーフィスなんだそうです。

 ……その後、上代先輩は家で寝ていたらしいですけど。

 魔王様やアザゼル先生、今回の件に関わった皆さんが心配していたのに、です。

 レイナーレさんや黒歌さん、小猫ちゃんがどれだけ心配したか……私もです。

 上代先輩は、少し悪い人です。

 傷付けない事は大切です。上代先輩は、とても凄い事をしたのだと判っています。

 ですが、心配する人が居る事を、考えてほしいです。

 レイナーレと黒歌さんには、上代先輩が必要なんです。私にイッセーさんが必要なように。

 

 

 

 #月P日

 

 レイナーレさんが、凄く落ち込んでいました。

 黒歌さんは変わらないようでしたが、でも……どこか無理してるようでした。

 小猫ちゃんも、悲しそうでした。

 あんな三人を見ていると、とても心が痛みました。

 レイナーレさんと一緒に料理をすると、とても楽しいです。イッセーさんとお話をする時みたいに、胸の奥が暖かくなりました。

 黒歌さんはいつも明るくて、元気を分けてもらえました。

 小猫ちゃんは頑張り屋さんですから、私も頑張ろう、という気持ちになれます。

 ……上代先輩、早く目を覚ましてほしいです。

 上代先輩が居ないと、私の大好きな人たちが暗くなっています……。

 

 

 

 #月Q日

 

 今日の朝、上代先輩が目を覚ましたらしいです。

 小猫ちゃんが教えてくれました。けど、心配なので暫く学園の方はお休みするそうです。

 面会に行くと、涙が出てしまいました。恥ずかしいです。

 ですが、本当に安心したんです……。凄く心配したんです。

 上代先輩も、私が生きていて良かった、と――泣いておられました。

 レイナーレさんも黒歌さんも、小猫ちゃんも。みんなが泣いてました。それくらい、皆が上代先輩を必要としてるんです。

 ですから、今回のような無茶を、もうしないでほしいです。

 上代先輩が倒れたら、きっとまたレイナーレさん達は哀しみます。…自分を責めます。

 ……きっとそれでも、上代先輩はまた無茶をするんだろうと思います。

 あの人は、そんな人です。誰かが傷つくより、自分の身を捧げる。

 そんな人なんだろうと思います。

 

 

 上代先輩は、ディオドラさんの事でも悲しんでおられました。

 私達を裏切り、傷つけようとしたディオドラさん。

 ですが、上代先輩の能力で無傷で捕まったディオドラさん。

 ……あの人は『地獄の最下層』で永遠に封印されるそうです。

 その事を聞いた時、上代先輩は哀しそうにしていました。

 レイナーレさんも黒歌さんも、当然だと言いました。

 私や小猫ちゃんも――口にはしませんでしたが……。

 ですが、上代先輩だけは――それでも、永遠にとらわれたディオドラさんの為に、悲しんでいました。

 ……本当に、凄い人です。

 きっと――あの人のような人間を、聖人というんだと思います。

 

 

 

 #月R日

 

 今日も、上代先輩は学園をお休みされていました。

 小猫ちゃんが言うには、大事を取ってらしいです。私もそれが良いと思います。

 上代先輩は、誰かが休むように言わないと……どこまでも無茶をしそうです。

 イッセーさんが倒れているので、オカルト研究部の活動も、どこか心ここに在らずでした。

 部長さんも朱乃さんも、何をするでもなくボーっとしてました。

 ……イッセーさんに会いたいです。声を聞きたいです…。

 

 

 #月S日

 

 今日は、上代先輩のお見舞いに行きました。

 熱が出たらしいので、私の『神器』を使って治しました。

 せめて今だけでも、上代先輩を助けになりたいです。

 それと、上代先輩が倒れていた間の事をお話しました。といっても、殆どイッセーさんの事ばかりでしたが。

 話していたら、また上代先輩の前で泣いてしまいました。最近、泣いてばかりです。恥ずかしいです。

 それでも、先輩は静かに聞いてくれました。

 私が落ち着くまで待ってくれました。

 ……優しい人です。

 レイナーレさんが好きになるのも判ります……。

 

 

 

 #月T日

 

 今日は、上代先輩が登校されました。体調もずいぶん落ち着いていたようです。

 皆さんが心配していました。

 旧魔王派を壊滅させた英雄。魔王や熾天使、堕天使総督が認めた人間。上代先輩。

 部長も支取会長も、上代先輩の復帰を喜んでいました。

 オカルト研究部の皆もです。

 ……上代先輩は、学園に居る人達の中心みたいな人です。

 これからは、あまり無茶をしないでほしいです。

 

 

 

 #月U日

 

 上代先輩は快復されましたが、イッセーさんはまだ冥界で療養中です。

 早く、イッセーさんにも快復してほしいです。

 部長さんもゼノヴィアさんも、イリナさんも心配しています。私も心配です。

 イッセーさんが居ないと、毎日が物足りないです。

 上代先輩はみなさんの中心にいる人ですけど、私の中心はイッセーさんです。

 だから……早く逢いたいです。寂しいです。

 

 

 

 #月V日

 

 部活の最中、部長たちがいきなり帰られました。

 家で聞いたら、町に強力な何者かが侵入したらしいです。

 ……すぐに消えたらしいですけど。

 また『禍の団』が何かしているのでしょうか……?

 不安です。

 上代先輩は病み上がりですし、イッセーさんは居ないです。

 ……早く帰ってきてください。

 

 

 

 #月W日

 

 今日はグレイフィア様が来られ、『おっぱいドラゴン』のおもちゃを置いて行かれました。

 イッセーさんが主役の特撮らしいです。

 もう少ししたら、冥界のテレビで放送されるようです。

 ……イッセーさん、冥界でも大人気なんですね。

 嬉しいですけど、複雑です。

 イッセーさんはよくハーレムと言っています。

 ……私は、そのハーレムに入れるのでしょうか?

 部長や朱乃さん、ゼノヴィアさんのようにおっぱいは大きくないです。

 ――溜息しか出てきません……。

 

 

 

 #月X日

 

 今日は休日でしたが、何をするでもなく一日を過ごしてしまいました。

 ゼノヴィアさんから心配されてしまいました。

 ですが、イッセーさんが倒れている時に、遊ぶと言うのも……どうかと思います。

 結局今日は、朝から夕方まで、ベッドの上でした。

 イッセーさん……早く逢いたいです。

 

 

 

 #月Y日

 

 明日は体育祭です。イッセーさんと二人三脚で参加します。

 ……参加する予定でした。

 私と一緒に参加する筈のイッセーさんは倒れたままです。

 ですが、学園の行事を休むわけにもいきません。そうしたら、それこそイッセーさんにも御迷惑を掛けてしまいます。それだけは、嫌です。

 それに、イッセーさんのお父様とお母様も楽しみにして下さっています。

 お父様とお母様は、イッセーさんの事をあまり心配されていません。

 信じてられるのです。

 私も、イッセーさんの事を信じています。

 きっと、いつものように笑って帰ってきてくださると。

 

 

 

 #月Z日

 

 今日は、最高の一日です。最高の体育祭でした。

 イッセーさんが帰ってきてくださいました。

 私と一緒に、二人三脚に参加してくださいました。

 ……イッセーさんに、キス、してしまいました。

 でも、後悔していません。

 凄く、嬉しいです。まだ、唇に、感触が残ってます。思い出すとドキドキします。

 きっと今日は眠れないと思います。興奮しています。

 

 主よ、私などの願いを聞いていただき、ありがとうございます。

 私はこれからも――イッセーさんと一緒に、楽しく暮らしていきます――。

 願わくば……見守っていて下さい。

 主よ。どうか、イッセーさんをこれからもずっとお守りください。

 

 

 

 #月!日

 

 上代先輩の家族関係はどうなっているのか、と部長さんが話していました。

 なんでも、ルシファー様やアザゼル先生が接触しようとしているらしいですが、どうしてか見つけられないらしいです。

 以前聞いた話ですと、ただのサラリーマンだ、と教えてもらったと記憶していますが、魔王様や堕天使総督が接触できない人が、ただのサラリーマンなのでしょうか?

 ですが、存在しないという訳ではなく、確かに上代先輩の御両親は人間として存在しているらしいです。謎です。部長さんも頭を悩ませていました。

 ……上代先輩の周囲が、慌ただしいです。

 これから先輩は、どうなるのでしょうか?

 部長さんやイッセーさんも判らないそうです。……不安です

 

 

 

 #月”日

 

 また、町に強力な力を持った何者かが侵入したそうです。私は気付きませんでしたが。

 何者なのでしょうか? 部長さんは『禍の団』かもしれない、と言っていました。

 『禍の団』が上代先輩を狙っているのかも、と。

 私は良く覚えていませんし、説明をされてもあまり理解できていませんが……ディオドラさんの件で、上代先輩は目立ち過ぎてしまったらしいです。

 冥界、天界、『神の子を見張る者』はその事を危惧しているらしいです。

 ディオドラさんが起こした戦いの時、私ではなく上代先輩が攫われていたらと思うとゾッとします。

 私の『神器』は回復です。『反転』させられたら、聖魔関係無く傷つける力になります。

 そして、上代先輩の『神器』は時間。

 時間を反転させると言う事は、どういう事なのでしょうか? 部長さんに聞いてみましたが、答えは判らない、でした。どうなるか判らない、と。

 

 

 

 #月$日

 

 今日、魔王様から素敵な贈り物が届きました。

 私達がレーティングゲーム前に受けたインタビューがテレビで放送する前の、未編集の映像です。

 ディオドラさんが映っているので破棄される予定だったらしいですが、ルシファー様がそれならば、と送ってくださいました。

 せっかくでしたので、レイナーレさんと黒歌さんを呼んでの鑑賞会となりました。

 イッセーさんは、これからは部長さんの配下としてだけではなく、『おっぱいドラゴン』として冥界の子供たちの為にもレーティングゲームを頑張るそうです。

 凄く、素敵な戦う理由だと思います。

 子供たちの為にも頑張ってほしいです。

 部長さんや支取生徒会長、その配下の方達の映像もありました。

 支取生徒会長にも同じ映像は送られているそうです。

 

 ……そして、上代先輩。

 取材の内容は、とても酷い物でした。

 レイナーレさんを元堕天使、しかも中級だと見下していました。

 黒歌さんを元テロリストの犯罪者。そんな人をどうして配下にしたのか、と聞いていました。

 グリゼルダ様やイリナさん、私と小猫ちゃんに触れなかったのは、対外的な理由があったのだと、部長さんが言っていました。

 天使のお二人を悪く言えば天界との間に亀裂が入りかねない。

 私と小猫ちゃんはグレモリー家の次期当主である部長さんの配下でもあるので、悪く言えない。

 結果的に、レイナーレさんと黒歌さんのお二人だけが悪く言われていました。

 とても酷い内容でした。

 ――ですが、その質問に対して、上代先輩の回答は簡潔なものでした。

 黒歌さんは自分の飼い猫なんだから、最後まで面倒は見る、と。

 黒歌さんが死ぬまで。絶対に――と。

 死ぬまで面倒を見る……というのは、その……正直に言いますと、私もイッセーさんに一度は言われてみたいセリフです。

 その後イッセーさんと目が合ったら、顔を赤くしてました。そうですね、凄く恥ずかしいセリフですよね…。

 部長さんたちも、顔を赤くしてました。

 ……いつもは陽気な小猫ちゃんのお姉さんである黒歌さんは、耳どころか、首筋まで赤くなって顔を服の袖で隠していました。いつもとは全く違う姿に、不謹慎にも、可愛いな、と思ってしまいました。

 レイナーレさんの事も、自分なんかよりもずっと強い、と言っていました。

 そんなレイナーレさんを尊敬し、信じている、と

 興味本位、悪意を感じられる質問に、真っ向からそう断言しました。

 ……素直に、格好良いな、と思いました。凄いな、と思いました。

 テレビ越しでしたが、その真っ直ぐな視線を受けて、レイナーレさんは嬉しそうに笑っていました。

 笑顔でした。

 良かったですね、と……素直にそう言える。そう思えるような笑顔でした。

 上代先輩は、元中級の堕天使。元テロリストの黒猫。その二人を、きっと世界の誰よりも認めているんだと思います。

 その事が嬉しかったです。

 

 でも、小猫ちゃんは少し不機嫌そうでした。

 まぁ、私と小猫ちゃんの事は話に上がらなかったから当然なのですが……。仲間外れのように感じたのでしょうか? それとも――それ以上日記に書き残すのは、無粋でしょうか?

 私や小猫ちゃんの事も悪く言われたら……上代先輩は、なんと言ってくれたでしょうか?

 ……ちょっとだけ、聞いてみたくもあります。

 

 




『禁手』は何気に弱体化というか、補助的な役割です。
まぁ、元の能力がクソチートなんでしょうがないんですが。
上級悪魔千体の魔力を吸収してもぶっ倒れるほど消費が激しい『神器』だという事です

まだまだ強化・進化していきますけどね。


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