また徹君が無双するから(ぇ
$月(日
色々と……何と書けばいいだろうか?
今日は色々あり、これからは徹先輩の家で暮らす事になった。
改めて私達姉妹の事を説明し、受け入れてもらえた。なんとなく、不思議な気分。
最初は徹先輩も難しい顔をしていたけど。
やはり高校生。しかも同じ学園に通っているのだから、色々と問題があるんだと思う。私は気にしませんけど。徹先輩は気にするようだ。
その辺りは、姉様に説得……というか、押されて頷いた感じだった。
徹先輩は、押しに弱いようだ。まぁ、なんとなく判っていましたけど。
あとは、私の呼び方か。姉様は白音、と…私の名前を呼んでほしかったみたいだけど、徹先輩からは、今まで通り塔城小猫と呼んでもらえる事になった。
これも、不思議…と言うか、複雑な気分。
徹先輩になら、どちらで呼んでもらっても良かったかな、と今なら思う。
でも、姉様から白音と呼んでもらって、徹先輩からは塔城さんと呼んでもらう。まぁ、今はこれでいいか。
ちなみに、レイナーレさんからは、小猫と呼んでもらう事になっている。
初めて会った時は悪魔と堕天使、敵同士だったのに…。
いつか、この呼び方も変わっていくのだろうか? 姉様が変わったように。
姉様は、徹先輩が本当に好きなんだ……って、態度で表していた。
私の話をしている時も、徹先輩の隣に座って、ずっとべったりだった。ずっとべったりで、嬉しそうに笑ってた。妹の私も覚えていない…知らないような笑顔。ちょっと複雑と言うか、嫉妬と言うか。徹先輩を妬んでしまいそう。冗談ですけど。徹先輩と姉様、お似合いだし。見ていて、なんだか笑って許せてしまう。そんな関係。
そんな二人を一歩引いた所で見ているレイナーレさん。それが、多分この家の当たり前。
今日からは、そこに私が加わる。
それと、今日からは姉様と一緒の部屋で生活する事になっている。
姉様がそれを望んでくれた。私と一緒を、選んでくれた。
空いている部屋はいっぱいあるけど、と徹先輩は言ってくれたけど、姉様は私と同じ部屋で、一緒に寝ようと言ってくれた。
$月)日
寝起きで猫の耳と尻尾を出していたら、徹先輩からいつも出してるのか、と聞かれた。
まぁ、寝起きで気が緩んでただけだが、出している方が落ち着くと答えた。実際、私は耳と尻尾を隠して生活しているので、出している方が楽だ。
それに、姉様も出してる。と言うよりも、姉様は隠す気が無いようだ。
徹先輩の家ならそれでいいと思う。外に出るなら、さすがに隠すだろうし。
出していても、アクセサリーだと言えば納得してもらえる……と思う。
それにしても……徹先輩って、外と内では、結構イメージが違う。
昼間から――姉様に、マタタビを嗅がせて……。姉様も受け入れて、リビングなんて人目のつく所でなんて……アーシア先輩ではないが、不潔ですと言いたいと言うか…。
目が合って、逃げるのもなんだか躊躇われて、結局一部始終を見せつけられた。
私もマタタビの匂いに囚われていたのだと思う。そうでなければ、昼間から姉の情事など……。
こんな事が毎日、だけは勘弁してほしい。
でも、その後姉さまは凄く機嫌が良かった。
……好きな人に愛でてもらうのは素敵な事だ、と言われた。惚気ないでほしい。
$月=日
徹先輩が、夏休みの課題が終わったと言っていた。羨ましい。
冥界に修行に行ったせいで、私の課題はまだ半分近く残っている。
残りの夏休みは、ずっと勉強だと思うと気が滅入る。
そう徹先輩に言うと、手伝ってくれると言ってくれた。
折角残りの夏休みを遊べるのに、と言ったが、構わないと笑ってくれた。
……ちょっとうれしい。
丁度良かったので、ギャー君も誘ってみた。
明日は、勉強会だ。
姉様が羨ましそうにしてた。
……そんな良い物でもないと言うと、徹先輩と一緒の時間を過ごすのが羨ましい、と。
そうやって悔しがる姉様が、とても可愛く思えた。幸せを全身で表現する姉様が、羨ましく思えた。
私も、いつか誰かを好きになったら、姉様みたいに……。
$月~日
今日は、ギャー君と徹先輩の三人で夏休みの勉強会だった。
徹先輩は、お世辞にも勉強を教えるのが得意、という訳ではなかったけど…一生懸命教えてくれた。
何とか私やギャー君が理解できるように、何度も説明し直したり、絵とか文字で書いたり。
そんな姿が、少し可笑しかった。年上なのに、なんだか子供みたいと言うか。
兄、という者が居たら、徹先輩のような人なのだろうと思う。素直にそう思えた。受け入れられた。
……まぁ、徹先輩にはレイナーレさんもいるし。どうなるかは判らないか。
でも、姉様も徹先輩の事が好きだし。そのうち、本当に私の兄になるかもしれない。
徹先輩。兄様。……慣れない。けど、悪くないと思う。
徹先輩なら、姉様を絶対幸せにしてくれるだろうし。
それと、数日振りに会ったギャー君に、徹先輩と一緒に暮らしている事で驚かれた。
あと、羨ましいとも。
それなら、ギャー君も一緒に暮らせばいいのに。徹先輩なら、ギャー君…吸血鬼も受け入れてくれそうな気がする。
$月|日
今日もギャー君を呼んで勉強していたら、姉様が乱入してきた。
退屈……というよりも、徹先輩と遊びたくて、我慢できなくなったようだ。
でも、徹先輩からは、退屈なら散歩でもしてくれば? と言われていた。酷いと思う。
……徹先輩、鈍感ですね。姉様から足を踏まれていた。自業自得です。
ギャー君も苦笑していた。
そのあと、姉様が乱入してきた理由をレイナーレさんが徹先輩に説明していた。
……それも地味に恥ずかしいと思う。姉様を許してあげてほしい。
せめて、本人が居ない所で説明するとか……。
結局、勉強の邪魔になるからと、部屋から追い出されていた。
……のはいいのだが、徹先輩、姉様にマタタビを嗅がせて、部屋に放置していた。
部屋が、マタタビの匂いと、姉様の匂いとで……凄い事になっていた。
それと、姉様が勉強の邪魔をしてごめんと、しおらしく謝ってきた。
徹先輩に怒られたと思ったらしい。そんな事無いのに。
明日謝れば大丈夫だよ、と言うと安心して眠ってしまった。夕食も食べれないくらい疲れていたようだ。
マタタビを嗅がされて、一日中何をしていたのか……は、考えないようにしよう。
姉様の為にも。
$月@日
今日は一日、上代先輩が大変だったと思う。
昨日放置された姉様が、徹先輩から離れなかった。一日中マタタビを嗅がされていたのだから、しょうがないと思う。これは徹先輩も悪い。姉様、顔を真っ赤にして恥ずかしそうだったけど、徹先輩にべったりくっついて幸せそうだった。私やギャー君、レイナーレさんには目の毒でしかなかった。
あまり、そう言う所を見せないでほしい。
姉様ほどではないけど、私も昨日、マタタビと姉様の残り香を嗅がされたのだ。
……今日は殆ど勉強がはかどらなかった。
ギャー君も、顔を真っ赤にして目を逸らしていたのに、しっかり見てたし。
途中から逃げたけど。しょうがないと思う。
丸一日べったりして満足したのか、今日は早めに姉様は眠ってしまった。
幸せそうに眠ってる姉様が羨ましい。
そんな姉様を見ていると、誰かを好きになるのは……良い事なんだな、と。
そう思えます。
$月q日
部長が、オカルト研究部の部員で勉強会をするという事で、御呼ばれした。
徹先輩達も一緒だった。
姉様も一緒という事で、最初は部長たちは驚いていたけど、時間が経つと受け入れてくれていた。
姉様が徹先輩のいう事をちゃんと聞いているというのもあったのかもしれない。
一度は『禍の団』としてイッセー先輩と戦ったけど、あの時の感じが無いからかもしれない。
それに、イッセー先輩も姉様の事はあまり気にしていないようだった。
姉様は今日一日、徹先輩の膝の上で撫でられていた。猫の姿で。そんな姿を見ていると、警戒するだけバカらしい、と部長が言っていた。ありがとうございます、部長。
レイナーレさんはお茶の用意なんかをしてくれていた。
しかし、本当にレイナーレさんは徹先輩のメイドなんだな、と思う。
私達にお茶を用意しながら、ちゃんと徹先輩の事を気に掛けているようだった。
初めて会った時とは全く違う姿に、部活の皆は改めて驚いていた。
徹先輩に教えてもらっていたおかげで、私とギャー君は今日で夏休みの課題は終わった。
アーシア先輩と祐斗先輩も。部長と副部長は、すでに終わっていた。
後はイッセー先輩とゼノヴィア先輩だ。その二人も、もうすぐ終わりそうだった。
夏休みも、もうすぐ終わる。
新学期は……また、賑やかになりそうな気がします。…楽しみです。
$月r日
今日は、朝から姉様に仙術の使い方を教えてもらった。
というよりも、気の練り方…冥界で教えてもらった事の復習だ。
基本が大事、という事らしい。
姉様は才能で戦うのに、修練に関しては、基本的な事を重視するタイプのようだ。
私は姉様のように仙術に才能があるか判らないので、基本を教えてくれるのは判りやすい。
一緒にレイナーレとも手合わせをした。
あの時……アーシア先輩が攫われた時とは、別人のように強くなっていた。
アザゼル先生の『人工神器』と徹先輩の『女王』となった事で威力が増した光の槍。
悪魔に転生したのに、悪魔の弱点である光に耐性があり、光を攻撃に使う。
悪魔の天敵のような悪魔だと思った。
姉様にしたら、まだまだ弱い、という事だったが。
接近戦の殴り合いだったから勝てたが、なんでもありの戦場ならどうなっていたか判らない。
それが、徹先輩の『女王』。徹先輩の配下。
天才的な術使いの姉様と、光を使う悪魔。私も、負けていられない。もっと強くならないと。
それと、今日はアーシア先輩が泊まりに来ている。
昨日の勉強会で、徹先輩にお勉強を教えてもらったお礼にと、ケーキを焼いてきてくれた。
そのまま、今日は泊まる事になっていた。
なんでも、以前から何度か泊まっているらしい。知らなかった。
昨日、レイナーレさんと仲が良さそうにしていたが、私が知らない所でそんな事になっていたようだ。
レイナーレさんは、料理はアーシアさんに教わっているのだとか。
今日の晩御飯も、レイナーレさんとアーシアさんの合作だった。とても美味しかった。
今まで一人暮らしだったからか、こうやってお泊り会のような事も新鮮だ。
遅くまで話し込んでしまった。
まぁ、内容は徹先輩やイッセー先輩の事ばかりだったが。
あと、この前のアーシア先輩への求婚の話。アーシア先輩は断る気のようだ。
そこまで想われているイッセー先輩は幸せ者だと思います。
レイナーレさんと姉様に茶化されて、照れているアーシア先輩が印象的だった。
誰かを好きになる……好きな人がいる三人が羨ましいと、そう思えました。
$月s日
今日は、姉様の日用品の買い出しに出かけた。
姉様、本当に着の身着のままと言った風で生活してるから困る。
徹先輩も、姉様の服とか、気にしていた。
なので、今日はその辺りを一通り揃えてしまった。
ショッピングは、とても楽しかった。姉様と一緒に買い物になんて、夢のような時間だった。
服を選んで、選んでもらって。私と姉様では服の趣味は違ったけど、そんな違いも楽しかった。
姉様と一緒に生活して、お話をして、買い物をして…普通の姉妹のような時間を過す。
諦めていた……というよりも、考えもしていなかった時間を過ごせている。
徹先輩は、買い物を待っていて退屈そうにしていた。
けど、それも可笑しくて、楽しくて、笑ってしまった。
今日の夕食は、外食だった。少し物足りなかった。
レイナーレさんの料理の方が美味しいと思えた。そう言うと、嬉しそうに笑っていた。
徹先輩の周りは、温かい。居心地が良い。全員が、楽しそうにしているから。
姉様が、徹先輩を好きになった理由がまた少しだけ、判った気がする。
この夏休みは、本当に色々な事があった。
きっと、忘れられない思い出というのは、この夏休みのような事を言うのかもしれない。
$月t日
今日で夏休みも終わりだ。明日からは、また生徒として学園に登校する事になる。
姉様が、明日からは昼間が暇になる、と言って徹先輩を困らせていた。
徹先輩の方は慣れたもので、そんな姉様にレイナーレさんの手伝いを、と言っていた。
……姉様は、寝たふりをしていたが。
でも、きっとレイナーレさんの手伝いをするんだろうな、と思う。
姉様、レイナーレさんと仲が良いし。
明日から、新学期。
また賑やかに――騒がしい生活なんだろう。楽しみだ。
$月 u日
徹先輩と登校するのは、なんだか気恥ずかしかった。
いずれ慣れるのかもしれないけど、何とも微妙な感じだ。
徹先輩も誰かと登校するのは初めてだ、と嬉しそうに笑ってくれていた。
今日は始業式だけだったので、それが終わると、真っ直ぐ帰宅した。
家に帰ると、姉様が暇そうにしていたので仙術の練習に付き合ってもらった。
姉様は強い。
今の私では、手も足も出ないくらいに――強い。
結局今日も、一撃も入れる事が出来なかった。
レイナーレさんは、夕食の準備とかもあるのに、ちゃんと自分の仕事を済ませてから鍛錬をしている。
中級の堕天使。確実に勝てる、弱い存在。
そんな事は、もう思えなくなっている。
レイナーレさんは、まだ強くないけど、凄い。素直にそう思える。
姉様も、レイナーレさんの事を認めていた。認めているからこそ、私以上に厳しく叩きのめしていた。
いつか、私はレイナーレさんに追いつかれるかもしれない。
いや――徹先輩の『女王』として、もっと強くなってほしい。
私よりも、姉様よりも。素直に、そう応援できる。
それは、レイナーレさんの人徳だと思う。頑張ってほしい。
今日、私がこの家に来たお祝いにと、徹先輩がケーキを買って帰ってきた。
夕食の後、皆で食べた。市販の、少し高価なケーキ。とても美味しかった。
レイナーレさんが凄い人なら、徹先輩は優しい人だ。
姉様の為に、魔王様を説得してくれた。
姉様の居場所を用意してくれた。私達姉妹を受け入れてくれた。
……私も、レイナーレさんに負けないように頑張ろうと、素直に思えるのは徹先輩のお蔭かもしれない。
私のもう一人の『王』。ご主人様。姉様の好きな人。……兄のような人。
でも姉様…いくら徹先輩を好きだからって、あまり妹の前でベタベタしないでほしいです。
目の毒だし、妹として複雑です。
レイナーレさんは、そういう時でも凄いと思う。
受け入れて、微笑ましく見ているのだから。
……姉様が幸せに笑えるのは、私も嬉しいけど。
徹先輩には、どれだけ感謝してもし足りない。
ありがとうございます。そして、これからも……よろしくお願いします。
ギャー君の出番が少ないなぁ、と思った。
どっかでまた、吸血鬼日記を――ん? 木戸君? ああ、うん。うん、判ってるよ?
判ってる判ってる。大丈夫。
木林君でしょ? M○Rに就職した。