とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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今回で主人公視点終了



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 $月X日

 

 朝起きたら、隣に黒歌が居た。というか、寝てた。人間だった。猫耳があるけど。

 うーむ、由々しき事態です。黒歌が猫だ。人間の姿なのに猫の行動をとってる。由々しき事態だ。

 じゃれついてくる、抱きついてくる、くっついてくる、おぶさってくる。

 どれもこれも、男の子にはつらい。だって、黒歌って凄くスタイルが良い。あと、着てる物も際どい。美人だし。年上のお姉さんっぽい。

 しかも、塔城さんも付いて来る。お姉さんと離れたくないんだとか。仲良いね。良い事だけど、しばらく勘弁してほしい。というか、黒歌はもっと妹を大事にするべき。俺に抱きつくより、妹と話すべきだと思う。言っても聞いてくれなかったけど。塔城さんと話すより、まずは俺に抱きつきたいらしい。妹をもっと大事にしろよ。

 塔城さんも塔城さんで、俺に対抗意識を燃やしてるっぽい。違うか? まぁ、兄妹が居ない俺にはよく判らんけど。

 そんな俺を見て笑ってるグリゼルダさんや紫藤さん、オカ研の連中。地獄に堕ちろ。ここが地獄だけど。

 まぁ、困ったらレイナーレさんが引き剥がしてくれたけど。

 

 午後からは、サーゼクスさんが黒歌を連れていった。テロリストの事を聞くためだ。

 でも、すぐに黒歌は帰ってきた。知ってることは全部言ったらしい。でも、知ってることはあまり多くなかったそうだ。まぁ、猫だしね。

 すぐに抱きつかれた。気分的にはぎゃーである。

 レイナーレさんの視線が痛い。微笑ましいモノを見るような目で見ないでほしい。邪まな事を考えている自分が痛い。だって、黒歌って温かくて柔らかいんだもん。俺は悪くない。男なんてそんなもんだ。

 というか、絶対黒歌も判っててやってるんじゃないか? そんな気がしてきた。

 

 今日一日、黒歌に振り回された気がする。というか、昨日もだけど。

 

 

 

 $月Y日

 

 朝、黒歌がベッドに潜り込んでくるのをレイナーレさんとグリゼルダさんに相談した。

 明日からはレイナーレさんが阻止してくれるらしい。ありがとう。ありがとうレイナーレさん。

 グリゼルダさんは、黒歌が少し苦手っぽい。相談した時、微妙な顔をしてた。猫が嫌いなんだろうか?

 それはそれとして、明日は若手悪魔のレーティングゲームである。せっかくなので楽しもうと思う。

 参加? しないよ。メンバー、レイナーレさんと黒歌だけだし。三人でどうしろと。俺は戦力外だし。

 なんでも、グリゼルダさんと紫藤さんが手を貸してくれるらしい。それでも難しいだろうな。五人だし。俺抜いたら四人だし。16対4とか、勝負にもならんだろ。

 黒歌は不満そうだったけど。無茶言うな。

 

 そう言えば、グレモリーに褒められた。褒められた? それで合ってるか判らないけど。

 黒歌って、なんか凄いらしい。俺はよく判らないけど。

 その黒歌を『僧侶』の駒一つで配下に出来た俺って、才能があるんだってさ。

 才能があっても戦うのとか痛いのは嫌だから、あんまり嬉しくない。平和が一番さー。

 

 

 

 

 さっき、塔城さんが部屋に来た。

 なんでも『戦車』として俺の配下に入れてくれ、という事だった。

 配下が居ないので悩んでたの、気付かれたんだろうな……普通にリビングでグレモリー相手に愚痴ってたし。

 塔城さんと黒歌の姉妹で配下とか、良いのだろうか? それに、塔城さんってグレモリーの配下でもあるし。

 その辺りは問題ないらしい。

 一応、優先順位はグレモリーの方にあるから、グレモリーと勝負するときは塔城さんは敵になるけど。

 そもそも、レーティングゲームに乗り気じゃないので、サーゼクスさんの顔を立てる為にも、一戦だけできればいいと思ってる。

 これで『女王』と『僧侶』1人『戦車』1人が揃った訳だ。まぁ、駒はまだ余ってるけど。

 紫藤さん達も誘ってみたけど嫌だってさ。まぁ、天使だもんね。

 とりあえず、今日はもう寝よう。明日の朝は、黒歌も大人しいだろう。

 

 

 

 $月Z日

 

 朝起きると、ベッドの脇でレイナーレさんが打ちひしがれていた。というか、また黒歌がベッドに潜り込んでいた。

 レイナーレさんが言うには、負けたらしい。何に? 教えてくれなかった。取り敢えず、黒歌は柔らかい。だから困る。

 あと、レイナーレさんのパジャマ姿を初めて見た。シルクの大人っぽい奴。あれはあれで目の毒だった。

 俺って絶対男として見られてないと思う。そのうち悟りでも開くかもしれん。無理っぽいけど。

 

 

 レーティングゲームの前に、支取と会った。パーティ以来だったので、久し振りのような気がした。

 向こうもだったようで、一緒に「久し振り」と言ってしまった。笑える。

 腕にぶら下がってる黒歌を見て、微妙な顔をしてたけど。うん、すまん。言っても聞いてくれないんだ、アイツ。猫の本能なのか、ずっとくっついてくるのだ。嬉しいけど。懐いてくれてるって事だし。でも、姿は美人な女の人なので困る。後、服装も困る。

 まぁ、黒歌はさておき。

 支取にはぜひ頑張って夢を叶えてほしい。

 悪魔の未来は、支取に掛かってると俺は思ってる。

 

 

 参加者じゃない俺は、観戦席に案内してもらった。なんか、一等席って奴? サーゼクスさんとセラフォルーさんも居た。

 アザゼル先生と天使の偉そうな人も。人間が一緒に居ていいの? 凄い場違いだった。浮いてた。俺って庶民、一般の人間なんだけど

 それと、観戦席…というか、観戦室? のドアの前で、凄い人と会った。

 オーディン様。俺でも名前を知ってる。グングニルと斬鉄剣の人だ。

 一緒に凄い美人の人が居た。ロスヴァイセさんというらしい。オーディン様の付き人なんだと。流石神様。お付きの人も人間離れした美人だった。見とれてたら手を振ってくれた。笑顔も素敵だった。

 ……その後、黒歌に足を踏まれたけど。見てるだけでもダメらしい。ウチの黒猫は厳しい。

 まぁ、あんな美人とはもう二度と会えないだろうけど。いや、レイナーレさんや黒歌も美人なんだけどね。銀髪の北欧系の美人って知り合いに居ないし。居たら居たで困るけど。

 その後、そこに居た人たちでグレモリーと支取、どっちが勝つか予想した。俺はもちろん支取だ。

 セラフォルーさんから抱きつかれた。最近こんなのばっかだ。嬉しいけど、周りの視線が痛い。特に、ロスヴァイセさんの冷たい視線が堪えた。こりゃ、脈は無いな。あっても困るけど。あんな美人、俺じゃ相手にならない。

 そのあと、アザゼル先生が爆笑してたけど。オーディン様とサーゼクスさんも笑ってた。恥ずかしい。

 

 

 結局、勝負はグレモリーの勝利だった。

 支取のチームはギャスパー君や兵藤、アーシアさんを先に落としたけど、その後ゼノヴィアさんや木場君が頑張って盛り返した。

 最後は、支取とグレモリーの一騎討ちで、グレモリーが勝った。

 匙君とか頑張ってた。本当に惜しかったと思う。勝負が終わった後、ため息が出てしまった。惜しかったな、支取。

 あと兵藤。お前は地獄に堕ちろ。というか、明日にでも支取たち全員に土下座しろ。マジで。なんだパイリンガルって。俺が相手なら、意地でも一発殴るレベルの暴挙だと思う。まぁ、その後死ぬだろうけど。というか、殴った腕が無事じゃない予感。あいつドラゴンだし。

 お前のエロ先輩のアザゼル先生すらドン引きしてたぞ。

 匙君を褒めたオーディン様にも謝れ。匙君が頑張った感動が台無しだ。

 

 

 医務室にお見舞いに行くと、支取が落ち込んでた。負けたもんな。

 でも、その後サーゼクスさんが匙君にレーティングゲームで一番頑張った人に贈るっていう勲章を贈ってた。

 良かったな、匙君。これからも支取を守ってくれ。俺? 俺はただの人間だし。

 ……しかし、彼はなぜ俺なんかをライバル視するのだろう? 戦ったら負ける自信がある。というか、勝てる気がしない。

 今度は俺に勝つと言っていた。勘弁してほしい。殺す気か。

 匙君が褒められて支取は嬉しそうだった。

 

 

 

 $月!日

 

 やっと家に帰ってきた。あと約二週間程で、支取の家で頑張った夏の課題を写してしまわないといけない。

 ……というのに、今日は一日、黒歌と遊んでしまった。

 あと、相談事をされた。塔城さんと一緒に暮らしたいんだって。

 ちなみに、塔城さんの本名は白音というらしい。白音さん。そういうと頬を抓られた。白音が良いらしい。さん付けが駄目なんだろうか?

 取り敢えず、呼び方は本人に聞こう。俺としては、塔城さんが呼びやすい。今までそうだったし。

 まぁ、暮らせばいいんじゃないかな? 姉妹なんだし。そういう話をした。

 ……寝る前に、少し勉強しよう。

 

 

 

 $月”日

 

 グリゼルダさんが、天界のスタッフさんを紹介してくれた。何でも、冥界に行ってる間にこっちに来てたらしい。おかげで仕事が溜まってるんだと。御愁傷様です。なんか、疲れたOLみたいだった。いや、言わなかったけどさ。

 お隣なんだし、何か手伝いたいところである。冥界で一緒に過ごした仲だし。

 紫藤さん? 紫藤さんは兵藤の家に遊びに行ってた。大変だね、グリゼルダさん。

 でも、兵藤達ってまだ冥界から帰ってきてないんだよね。なんかグレモリー家で色々やってるらしい。なんでも、本当なら支取に完勝しないといけないのに、苦戦したからだとか。大変なんだな、悪魔も。

 負けて当たり前って言われてた勝負で、あれだけ頑張った支取は本当に凄いな。

 これからも頑張ってほしい。俺は支取の夢を応援してる。

 ちなみに、俺たちはセラフォルーさんが帰してくれた。

 

 

 

 $月#日

 

 黒歌が猫になった。どうやら、人間の姿も猫の姿も出来るっぽい。

 猫本来の姿のなので、心置きなく弄った。だって猫だし。やましい気持ちは何も無い。

 でも、腹を撫でてる途中で人間の姿になるのはズルい。俺を社会的に殺す気か。家のリビングで良かった。外ではできないな。うん。

 

 黒歌のスキンシップが辛い。

 抱き付いたり、くっついてきたり、じゃれてきたりならいい。良くないけど、まぁいい。取り敢えず、別の所に置いておく。

 一緒にお風呂とか無理です。前に何回か入った? その時は猫だったじゃん。

 どーしよう? 黒歌さんの誘惑で、俺の心はボドボドダー。…これって何のネタだったっけ?

 

 

 

 $月$日

 

 どうして俺なんかに、ここまで懐いてくれてるのか判らない。

 なので聞いてみた。

 命の恩人なんだそうだ。それと、優しくしてほしい時に優しくしてくれた、と。まったくわからない。

 命を助けた覚えは無いし、優しく――餌を上げた事だろうけど、それくらいしかしていない。……命を助けたってソレか。そんなに腹が減ってたのか、黒歌。

 でも、黒歌は、俺にとっては「それくらい」の事が、とても嬉しかったんだと……。

 そう言われると、何も言えない。

 

 好きだと言われた。キスされた。

 

 ……うーむ。黒歌にとってはただのスキンシップなんだろうけど、恥ずかしい。

 だって、黒歌って凄い美人だし。猫だけど。俺も男の子なのだ。色々と勘違いしてしまいそうになる。黒歌は美人だけど、猫なのだ。女の子なんだけど、猫なのだよね。

 せめて、もー少しお淑やかというか、落ち着いてというか……ねぇ? 困るのだ色々と。年頃の男というのは。しょうがないよね。兵藤の気持ちがちょっと判った。

 

 

 

 $月%日

 

 レイナーレさんが、堕天使の翼の毛繕いをさせてくれた。というか、して下さいとお願いされた。恥ずかしそうに「お願いしていいですか?」と上目遣いだ。反則だと思う。断れるはずがない。日ごろ、お世話になってるのでお安い御用だ。

 でも、翼の毛繕いなんかしたことが無いので、教えてもらいながら、言われるがままだったけど。

 気付いたら一時間くらいしてたと思う。ブラッシングとか、何とか色々。時々聞こえる声とかもちょっとアレだった。男の子にはつらい。

 下手で申し訳ないです。謝ると、お礼を言われた。ほんと、良い人だよね、レイナーレさん。

 またお願いしますと言われた。マジで? 次は、もっと上手くやれるように頑張ろうと思う。

 

 

 

 $月&日

 

 グリゼルダさんが、晩御飯を作り過ぎたとかで、肉じゃがをくれた。美味かった。

 というか、天使が肉じゃがって……。

 あと、猫黒歌がベッドの上で寝てる。どうしよう?

 

 

 

 $月’日

 

 アーシアさんが遊びに来た。何でも、相談事があるらしい。

 ちなみにその相談事って、求婚されたけどどうしよう、だった。マジでだ。

 流石アーシアさん、と思う。

 レイナーレさんも真剣に悩んでた。友達だもんね。

 相手はディオドラ・アスタロトさん。悪魔なんだって。アスタロトって、何かゲームで良く聞くし、有名なんじゃなかろうか?

 しかし、求婚か……グレモリーはゲームで婚約を反故にしてたな。なんとなく思い出したけど。

 結局、どうにも答えようがなかったので、話を聞いただけで終わってしまった。

 大変だな、アーシアさん。

 

 そう言えば、なんか黒歌が首を捻ってた。アスタロトって名前に聞き覚えがあるんだって。

 まぁ、有名な名前だしね。

 そう言ってしまうと、それまでなんだけど。

 今まで何度もお世話になってるし、どうにかしたいけど、どうにかなるようなものなのかね?

 

 




次は誰視点かなー。
取りあえず、平和な主人公視点は終了だ。

白猫さんの扱いはエピローグで。

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