とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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SSを書いてると、その人を好きになっていく気がする
これが魔力か……(違


48(会長日記 エピローグ)

 

 凸月U日

 

 今日から上代君が学園に復帰した。

 顔色も良くて、いつも通り元気だった。良かったと思う。

 今回も、彼は巻き込まれた側なのだし。

 いくら強力な『神器』を持っているとはいえ、人間なのだ。彼が倒れるという事は、コカビエルの一件で判っていた。それでも倒れさせてしまったのは、私達が巻き込んでしまったからだ。

 今後は、このような事が無いように、私達が問題を解決できるようにならないといけない。

 リアスの『僧侶』ギャスパー君も、上代君を心配していた。

 まるで兄妹のようで微笑ましい。男の子だけど。あの女装はどうにかならないのだろうか?

 しかし、倒れたというのに、上代君はあまり変わってなかった。

 ギャスパー君を助けた事も、三大勢力の会談の事も、自分のじゃないと言っていた。あの場に居た皆が頑張ったのだと。

 ……正直、当たり前のようにそう言える彼が眩しく思える。

 だが、そう真っ直ぐ言える事は彼の美徳だが、あまりそう言っていると頼ってしまいそうになるからやめた方がいいと思う。

 

 

 

 凸月V日

 

 サーゼクス様、そして堕天使総督のアザゼルから連絡を貰った。

 明後日から、アザゼル総督を駒王学園で働かせるのだと……。

 きっと、上代君の監視だろう。彼は、今回やり過ぎた、とも言える事をした。三大勢力のトップが興味以上の感情を覚えてしまうほどの事だ。

 どの勢力も、きっと彼を手に入れたいのだろう。

 ……こうなると判っていただろうに。どうしてあんな無茶をしたのか…。

 溜息しか出てこない。

 悪魔に転生するのか、天使に昇華するのか、堕天使に堕ちるのか。

 これ以上私達に関わるというなら、人間の肉体では限界があるはずだ。現に、もう何度も倒れている。

 死んでも蘇る、と書けば不死身と言えるのかもしれないが、大規模な能力を使った後は倒れている。

 きっと、私達がまだ気づいていないだけで、彼の負担が彼自身の何処かに溜まっているのだろう。

 無茶ばかりして、心配ばかりさせられる。

 ……私達が不甲斐ないのが原因なのだが。

 守ってもらったのに一方的に心配する、というのは傲慢だな。

 

 

 

 凸月W日

 

 案の定、アザゼル総督が上代君にさっそく接触した。しかも、明日からはアザゼル先生だ。

 上代君の傍には堕天使のメイドが居るから、迷惑を掛けてないかの確認だと言っていたが。

 ……彼の傍に特定の勢力が居るというのも、問題なのかもしれない。

 今は堕天使だけだが、今後はもっと増えるだろう。悪魔、天使……私でも考える事だ、きっともう行動に移っているはずだ。

 彼の傍には、誰が付くのだろうか? 不安だ……。

 上代君は、何でも受け入れてしまいそうな危うさがあると思う。

 出来る事は多くないだろうが、今後も気にしていよう。

 友人だし、助けてもらったし。何かお礼をするべきだろう。というか、したい。

 そう思えるのは、上代君の人徳だろう。

 

 

 

 凸月%日

 

 アザゼル先生には、授業の担当からは外れてもらう事になった。まぁ、当たり前か。

 正式な教員免許は持ってなかったし。本人は、取ってこようか、と言っていたが。

 片手間で取れるようなものじゃないのだが、あの堕天使が言うと冗談に聞こえない。

 そっちはどうなるか判らないが、当分はオカルト研究部の顧問として、『神器』使いの育成に携わってもらう事になっている。彼が持つ『神器』の知識は三大勢力でも随一。『神器』マニアと呼ばれるほどだ。出来れば、私達にもいろいろと教えてほしい。

 それと、上代君にレーティングゲームの事も教えるのだとか。

 魔王様から『悪魔の駒』を戴いたのは知っているが、本当に彼をゲームに参加させるのだろうか?

 今回の件もあり、興味はあるが……レーティングゲームの度に倒れられても心配なのだが…。

 匙は私なら余裕で勝てると言っていたが、そういう問題でもない。

 勝負するなら、勝ちに行くのは当然だ。彼の『神器』はデタラメだが、レーティングゲームのルール上、基本的に退場させればゲームには戻れない。

 彼は強力だが、弱い人間。勝つ方法なら、いくつか思いつく。それが通用するかは、まだ判らないが。

 けど、勝つ事が出来ても、その後倒れられたりしたら寝覚めが悪い。また心配しないといけないし。

 そういうと、匙も考えを改めてくれた。

 上代君はライバルであり友人である。倒れたら心配するのは当然だ。

 

 

 

 凸月X日

 

 リアスに聞いたが、魔王ルシファー様の『女王』グレイフィア様が上代君のメイドの堕天使を鍛えるらしい。

 ……正直、羨ましい。

 グレイフィア様と言えば、魔族では知らない者が居ないほどに有名な『最強の女王』だ。

 その方に鍛えてもらえるなんて……。

 私の配下の皆も羨ましがっていた。私も羨ましい。何度も書くが、羨ましい。

 上代君に、ちょっと嫉妬しそうだ。

 まぁ、上代君の立場を考えたら、あの堕天使の立ち位置は本当に微妙というか、危険なのも判るから何とも言えないが。

 

 

 頭では分かっていても、羨ましいモノは羨ましいのだ。

 いいなぁ。

 

 

 

 凸月#日

 

 今日から、あの堕天使はグレイフィア様と特訓を開始したのだと思う。

 ……一晩経って考えると、グレイフィア様との特訓だ。命懸けなのではないだろうか?

 上代君の傍に居るとはいえ、あの堕天使の能力はあまり高くない。というよりも、低い。

 生き残れるのだろうか? 心配だ……。

 だが、上代君の『女王』であり、グレイフィア様の『弟子』となるかもしれない。

 気を引き締めなければならない。

 レーティングゲームでは、『最強の女王の弟子』と戦う事になるかもしれないのだから。

 楽しみだ。凄く。不謹慎だけど、そう思ってしまう。

 私も悪魔なのだ。強いヒトが好きだ。

 匙も同じ意見らしく、今日は気合が入っていた。

 生徒会の仕事が終わった後、リアスの眷属たちに混ざって特訓していた。良い事だ。

 

 

 

 凸月Y日

 

 匙の『神器』の応用性は高い。

 『赤龍帝の篭手』のような爆発力は無いが、選べる選択肢は『赤龍帝の篭手』より多いと思う。

 まぁ、私は『神器』使いではないので、私の感覚は匙のソレとは違っているのかもしれないが。

 それでも、レーティングゲームでなら、匙だって兵藤君に勝てると思う。

 同じ手は通じないだろうけど。そういうと、匙も喜んでいた。

 それも、今以上に匙が『神器』を使いこなせないといけないのだが。

 頑張っていた。

 どうにかして勝たせてあげたいと思う。勝ってほしいと思う。

 匙の努力を、形ある物にしてあげたい。それは配下の皆も一緒だ。

 夏休み。私の初めてのレーティングゲーム。最初を勝ちで飾りたい。皆の努力を、形にしたい。

 ……相手も決まっていないのに、気が早いと自分でも思う。

 

 

 

 凸月Z日

 

 今日からいったん、グレイフィア様が冥界に戻られた。

 上代君のメイドの特訓も一時終了。なんとか無事だったようだ。グレイフィア様の話だと、才能は無いし、地力も無い。『最弱の女王』と言われていた。

 ……けど、グレイフィア様は楽しそうだった。油断できないと思った。なんとなくだが。

 匙達は安心しているようだったが、気を引き締めるように言っておいた。

 才能が無い、地力が無い。なら、才能を必要としない――努力で地力を埋めてくる可能性がある。

 その究極と言える形を知っている。サイラオーグ・バアル。いつか戦い、勝たなければならない相手だ。

 彼も、才能ではなく努力を極めた存在。油断はできない。

 そして、彼女は堕天使だ。努力をする時間と体力は十分ある。

 なにより、上代君の『女王』だ。

 油断をして負けるより、油断をしないで完膚なきまでに叩き潰した方が安全だ。

 上代君のレーティングゲームを見てみたい。まだ配下も揃ってないが、それでも興味深い。

 きっと、彼のチームは強いと思う。弱くても、強くなると思う。

 

 

 

 凸月=日

 

 夏休み、冥界に戻って若手の悪魔がレーティングゲームをする。それはいい。

 けど、お姉様が見に来られるのは……。恥ずかしい。きっといつもと同じ服装だろうし。

 仕事も、その為に早く終わらせると言っていた。私にとっては大事だが、お姉様にとっては仕事の方が大事でしょうに……言っても聞いてもらえなかったし。

 溜息しか出ない。

 恥ずかしくも、上代君に愚痴を聞いてもらった。丁度溜息を吐いている所を見られたのだ。恥ずかしくて穴があったら入りたい気分だ。

 しかも、上代君も上代君だ。

 頑張れ、応援してる、本気で。なんて他人事のように言うし。私より、自分の心配をしてほしい。

 きっと、私よりも上代君の方を誰もが興味を持って観戦する筈だ。

 魔王ルシファーが認めた人間。レーティングゲーム初の人間の『王』。

 魔王に認めてもらいたい悪魔にしたら、最高の餌だ。人間なんて、と思っている者も多いはずだ。

 ……もっと、自分の立場を深く考えればいいのに、と思う。

 せめて、『騎士』と『戦車』くらいは揃えるべきだ、とは言っておいた。少数精鋭と言えば聞こえがいいが、数が居なければ勝負にすらならないだろうし。

 でも、上代君ってそういう事を頼める伝手は居るのだろうか? 私が知っている限り……まぁ、伝手は十分か。魔王に堕天使総督、熾天使。

 正直、上代君が本気で配下を集め始めたら、同期……若手最強を簡単に揃えられると思う。

 それに、私が手を貸すのも……紹介くらいはして大丈夫か?

 微妙な所だ。魔王の友人。その肩書に寄ってくる悪魔も多いだろうし。

 

 

 

 凸月ー日

 

 お姉様が上代君を夏休み、家に招待したいと言っていた。勘弁してほしい。迷惑だろう。そもそも、家に招待するほど親しくない。警戒されるのがオチだと思う。

 クラスメイトに聞かれると面倒だと言う事くらい、私にも判る。なので、生徒会室で話す事にした。私の配下達なら聞かれても問題ない。

 一応言っておかないと後が面倒なので言うだけ言ったが、やはり断られた。私もそれが良いと思う。

 丁度良かったので、昨日愚痴を聞いてもらったお礼に、お茶を御馳走した。

 といっても、生徒会に置いてあるお茶だが。

 それにしても、上代君とお姉さまは仲が良い……と言えるのだろうか? 最近よくお姉様から上代君の事を聞かれる。上代君はどうか、とか、上代君は元気か、とか。

 まぁ、上代君の中ではお姉様は魔王ではなく魔女っ娘らしい。勘弁してほしい。

 お姉様は魔王だ。魔女っ娘ではない。訂正はしたが、どこまで通じたか……そうやって間違った認識を広げるから、お姉さまは苦手なのだ。

 けど、お姉様と仲良くしてほしいとお願いしておいた。お姉様、上代君の事を気に入ってるのは確かだし。上代君は困った顔をしていたけど。

 多分、同じことを言われたら私も同じような顔をすると思う。

 

 

 

 凸月三日

 

 上代君に、匙の事で相談された。

 なんでも最近、匙から睨まれているらしい。

 まぁ、あの子も上代君をライバルのように思ってるようだし、きっとそれが視線に強く出てしまったのだろう。

 そういうと、困ったように苦笑していた。弟の可愛い行動だ、大目に見て欲しい。

 それに、上代君も上代君だ。普通の人間なんだけど、なんて言っても誰も信じないと思うけど。

 その言い方があまりにも疲れた感じだったので、笑ってしまった。今の状況は、上代君自身の所為だろうに。普通に生きたいなら、上代君は頑張り過ぎだとしか私は言えない。もう少し自重してもいいと思う。

 しかし、面と向かって堅物会長だとか、私も笑うのか、とかは酷いと思う。

 私だって楽しい時や嬉しい時は笑いもする。上代君は失礼だ。

 そう怒る……というほどでもないが、言うと、慌てて謝られた。それが可笑しくて、また笑ってしまったけど。

 そのあと、お姉様の事や、夏休みの事を相談した。

 相談といっても、上代君の問題じゃなくて私の問題だから、どうしようもないのだけれど。

 

 

 

 凸月☆日

 

 夏休みが近い。正直、ワクワクしてる、と思う。

 初めてのレーティングゲーム。負けるかもしれないけど、それでも今の自分を試したい。そして、勝ちたい。

 勝たなければならない。私を信じてくれている皆の為に。

 たとえ相手が上代君であっても、だ。

 私の相手は誰だろうか? 上代君か、リアスか、それともまた別の誰かか。

 それでも、負ける気は無い。勝ちたい。私の夢の為に。

 夢を叶えるために、私は勝たなければならない。

 

 

 ……私の夢、教えたら笑われるだろうか?

 

 

 




カイチョー好きだよ?
なんか、話が書きやすいし。
さすが鈍感仲間w

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