とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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やる気でました


44(黒猫日記)

 凸月¥日

 

 次の仕事の説明をされた。今度、駒王学園で行われる三大勢力の会談だ。美猴、ヴァーリと組んでの仕事だ。あと、旧魔王派のなんとかって女とも。なんだったっけ? カテレア・レヴィアタンだったような気がするにゃん。

 それにしても、駒王学園って確かトオルが通ってる所にゃー。

 うーん……嫌な予感がするにゃー。あんまり気乗りしないにゃー。出来れば断りたいところだにゃー。

 でも、そこを断れないのが下っ端の辛い所だにゃー。

 はぁ……メンド。早く帰りたいよ。

 

 

 

 凸月A日

 

 今日はレイナーレが家に居なかったにゃん。なんでも、グレイフィア・ルキフグスに御呼ばれしたんだとか。

 初めて聞いた時は驚いたにゃ。だって、絶対私の事知ってるし。会わなくて済んでホッとしてる。

 ……これでも黒歌さんは結構有名人なのにゃ。でも、トオルもレイナーレも私の事を知らないにゃん。助かってるけど、結構複雑だ。まぁ、悪い意味で目立ってるから、知らない方が良いんだけどね。

 それはそれとして、今日はトオルのベッドにお泊りにゃー。

 レイナーレが居ないから、気兼ねなく甘えられるし。やー、黒歌さんとしてはもっとトオルとイチャイチャしたいのですよ? でもね、白音とトオルの次くらいには、レイナーレの事が好きなんだよ? にゃー、女同士の微妙な関係なんですよ。黒歌さんは二番で良いけど、そう言ってもレイナーレは信じてくれないにゃん。いつも嫉妬してる。可愛いにゃー。おねーさん、食べちゃいたいくらいだよ?

 そんな嫉妬しちゃうレイナーレが居ないので、好きなだけトオルに甘えるにゃー。

 マタタビを嗅がされたり、一緒にお風呂に入ったりしたけど、ベッドは初めてにゃん。今夜、ついに黒歌さんはトオルの雌にされちゃうのだにゃー……ドキドキだよ?

 猫なんだけどね?

 朝起きて、黒歌さんが人間になってたら、トオルは驚くかにゃ? ……それは後の楽しみだ。

 今は、野良猫じゃなくなった黒歌さんを幸せにしてもらおう。ペットの黒歌は、トオルと触れ合えるだけで温かくて、幸せなんだにゃー。

 

 

 

 凸月B日

 

 いつか、トオルに白音と一緒に飼ってほしいにゃー。姉妹で一緒に暮らしたいにゃー。

 ……難しいんだけどね? それに、私の問題だし。こればっかりはトオルには頼れない。

 でも、こうやって普通の日常を白音と送りたいにゃ。

 それにしても、レイナーレの勘は恐ろしい。野生の獣だにゃー。野生の獣は種を残す為に、色々と異性に対して貪欲なんだにゃー。

 まぁ、冗談は置いといて、トオルと一緒に寝た事を怒られちゃったにゃん。

 怒られたというより注意だったけど。可愛いにゃー。レイナーレも一緒に寝たいんだね? 判ります。

 なんでも、レイナーレはまだトオルと一緒に寝た事が無いらしい。自分で言ってる辺り、隠す気ないよね? レイナーレって絶対トオルの事好きだよね? ねぇ、悔しい? 先にトオルと寝ちゃってごめんね?

 でも、だったらレイナーレもトオルと一緒に寝れば大丈夫にゃー。羨ましがらなくていいにゃん。トオルだって、レイナーレの事好きなんだにゃん。じゃなかったら、一つ屋根の下に異性を置くなんてするはずないにゃー。

 ……そこまで鈍感じゃないよね、トオル?

 しかし、トオルの事で言い訳するレイナーレは可愛いにゃぁ。黒歌さん、そんなレイナーレだけでご飯が食べれそうだにゃ。

 

 

 

 凸月C日

 

 やー、結構簡単に考えてたわけですよ?

 今回の仕事も、終わったらまたこの家で暮らせるって。この家に帰って来れるって。

 うーん…ちょっと難しそう。

 駒王学園の仕事が終わった後は、そのまま冥界入りするかもしれないにゃー。黒歌さんはやり手だから、引く手数多なんだにゃー。

 ……二ヶ月くらいだっけ? 思ってたより短い時間だったにゃぁ。………もうちょっと、居たかったにゃ。

 トオルとお別れは寂しいにゃ。レイナーレとお別れすると悲しいにゃ。

 でも、テロリストと一緒になんて暮らせないよね? 黒歌さんは悪者なんだにゃー。

 

 

 

 凸月D日

 

 レイナーレが、私を疑ってる。……私が悪く考えすぎなんだろうけど。

 でも、私の事を聞きたがってるのは判る。黒歌さんは猫。獣。野生の勘は健在なんだにゃー。

 とまぁ、そんな事はどうでもいい。

 次は何時、トオルの家に帰れるかにゃ? 早く帰ってきたいよ? ホント……猫は寂しがり屋だから、家で大好きな人に甘えたいんだにゃ。

 『禍の団』には、もう少し空気を読んでほしいにゃ。

 

 

 

 凸月E日

 

 うーん。カテレアってバカだよね? あれ、コカビエルと一緒。今時戦争なんて流行らないにゃー。

 ……ヴァーリみたいに「俺は、俺より強いヤツと戦いたい」って言うのもちょっとアレだけど、今時「戦争したい」なんてのもどうかと思う。

 旧魔王の血を引いてるらしいけど、頭の中身はお花畑だよねー。だって結局、レヴィアタンの座を取られたのもカテレアが弱いからだし。

 それを逆恨みして戦争起こして世界を壊すってのもねー…。ちょっとヒくわぁ。

 まぁ、それを私が言う資格は無いんだろうけどにゃー。

 それはそれとして、あの女、ちゃっかりオーフィスから『蛇』を貰ってきてるにゃー。面倒だにゃー。どうにかして、会談の前に亡き者に出来ないかにゃ?

 オーフィスの『蛇』は特別なんだにゃん。レイナーレが危ないかも。あの子弱いし。弱いのにトオルの傍に居ようとするし。そういういじらしい所も好きなんだけど。

 トオル? トオルの強さは本当に次元違いだからにゃー。オーフィスの『蛇』に干渉できるとは思わないけど、死ぬところは予想できないにゃー。普通の人間なのに、不思議だよねぇ。まぁ、時間を操るっていうのはそれだけ出鱈目だって事だ。私も早く、時間操作系の術を覚えたいにゃー。そうすれば、私がトオルもレイナーレも守れるにゃ。トオルもレイナーレも、無茶をしなくていいにゃ。にゃー。

 でも、『神器』を使うとすぐに倒れちゃうけど。私も、時間操作系の術を使ったら倒れちゃうのかな? 怖いにゃー。

 ……トオル、私が居ない間に無茶しないでよ? 黒歌さんは、結構心配性なのだ。……最近気づいたんだけどね?

 ホント、こんなの私のキャラじゃないにゃー。家から離れると不安だにゃー。

 や、私が寂しい訳じゃないよ? 猫は寂しがり屋だけど、たった2、3日でホームシックにあるほど子供じゃないにゃ。心配なだけにゃん。トオルって、気付いたら無茶してるイメージがあるし。

 ……言い訳だよねー。

 寂しいにゃー。トオルに撫でてもらいたいにゃー。

 トオルー、トオルー……。

 

 

 

 美猴に煩いと怒られた。

 空気読んでほしいにゃー。

 

 

 

 凸月F日

 

 今日は駒王学園の下見をしたにゃー。

 魔王の方は町を見て回ってたし、熾天使の方は神社で何かやってるっぽい。

 ……堕天使の総督は、レイナーレに接触してるみたい。何を話してたんだろう?

 私の事じゃないと良いにゃぁ。まぁ、私がトオル達と一緒に居るってのは気付かれてないだろうから、大丈夫だと思うけど。

 しかし、授業中のトオルは真面目にノートを取ってた。結構真面目君だったんだね。おねーさん、ちょっとびっくり。

 学園の授業なんて、私には子守歌にしか聞こえなかったにゃー。

 白音ちゃんも真面目ちゃんだった。うーん……おねーさん、そんな二人だと安心だにゃー。私が不真面目だっていうのは、自分でも判ってるし?

 しっかし、駒王学園の結界は面倒だにゃー。さすがグレモリー家とシトリー家の妹が治めてる場所にゃ。

 でも、この結界を会談当日は利用させてもらうにゃ。便利だにゃ。

 ……トオル、会談に参加しないよね?

 なんだかあの子、魔王に気に入られてるし、嫌な予感しかしないよ? 危ないからね?

 まぁ、いざという時は白音ちゃんとレイナーレを守ってもらわないと困るけど。

 男の子なんだから、女は守るものにゃ。……トオルは優しいから、心配してないけど。でも、身体は人間だから、無茶しちゃだめだよ?

 ついでに、黒歌さんも女の子だから、守ってほしいにゃー。

 男の子に守ってもらうのは、女の子の憧れにゃ。できればお姫様抱っこもしてほしい。…うにゃん。

 

 

 

 凸月G日

 

 トオルに撫でてもらった。いっぱい優しくしてもらった。

 寂しかったにゃー。会いたかったにゃー。うにゃんうにゃん。トオルは温かいにゃぁ。

 でも、私が居ない間に、レイナーレと進展はなかったみたい。残念だにゃー。

 何かあったら、黒歌さんがお赤飯炊いてあげるよ? というか、男女が二人きり、一つ屋根の下で何も無いのも問題だにゃー。心配だよ? 私が居なくなってもこの調子かも、と思うと心配で心配で、夜も眠れなくなるにゃん。寝不足は美容の敵なのだ。黒歌は、トオルの前では綺麗でいたいのに、だ。

 なので、私の美容のためにも、早急に今以上に進展してほしい。

 ……もうすぐ、私は居なくなるんだし。幸せな二人を見てから、野良猫に戻りたいにゃー。

 

 

 

 凸月H日

 

 明日は、駒王学園で授業参観なんだって。楽しそうだにゃー。

 白音ちゃんは大丈夫かな? おねーさんも見に行きたい。

 でも、何か魔王も来るらしいし、難しいのにゃ。……行きたいにゃー。

 レイナーレにも誘われたけど、断った。魔王に見つかったら面倒だし。

 明日は何をしよう? 『仕事』だって嘘吐いちゃったにゃー。

 

 

 

 凸月I日

 

 白音ちゃんって優等生だよねぇ。授業参観、真面目に授業受けてたし。

 ……やー、欲望に負けて授業参観しちゃったよ。白音ちゃんの成長をちゃんと見てきちゃったよ。身体は小さかったけど。幼かったけど。どうして姉妹でこうも違うのかにゃー? 私が白音ちゃんと同じくらいの時には、もっとボンキュッボンだったにゃー。

 まぁ、身体の事はさておき。

 ちゃんと授業参観に参加できなくて心苦しい。申し訳なく思う。

 白音には、迷惑というか、苦労を掛けてると思う。いつか、私も陽の下を堂々と歩きたい。白音と並んで。

 ――できれば、トオルとレイナーレも一緒に。

 難しいだろうけど。

 窓から白音を眺めてると、そんな未来を想像してしまった。……『禍の団』に関わってたら、難しいだろうな。

 でも、帰る家はトオルの家だけど、私の居場所は『禍の団』なのだ。

 

 

 

 授業が終わると、トオルとレイナーレが屋上でお弁当を食べていた。

 もう付き合ってるよね、あの二人。恋人同士じゃないの?

 ……そこに、私は居ないけど。

 でも、それでいいんだと思う。

 トオルに優しくされて、今日まで幸せだった。暖かかった。寂しくなかった。

 それだけでいい。しばらく寂しくなるけど、それもまた慣れるにゃ。黒歌さんは、以前のように孤高の、独りで大丈夫な、強い野良猫に戻るんだにゃー。

 最初から決めていたんだにゃ。いつか私は、トオルの傍から居なくなる、って。

 だから、寂しいけど、我慢できるにゃー。

 泣かないよ? 黒歌さんは強いんだから。

 

 

 




最初に…皆様に色々と御心配、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

朱乃さんの話は今後も書いていきたいですし、おそらく書くと思います
感想欄が荒れ、と言うと違うのかもしれませんが、ああいう状態でも、
後書きまでちゃんと読んで下さっている読者の方も多く、
この作品は自分で思うほど嫌われたわけではない、と一晩経って思えるようになりました。

暖かい感想や、励ましの感想もたくさん頂けました。ありがとうございます。

また、ヒロインの定義のことも…主人公と結ばれる=ヒロインと考えていたので
これでも、皆さんに不要な不安を抱かせてしまったのかもしれません。
申し訳ありません。

ソーナ、朱乃、小猫はこれから出番も増えていくと思いますし、
できればifという形で、彼女たちにもスポットを当てたENDを書けたら、と思っています。

これからものんびり書いていきますので、よろしくお願いしますorz

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