凸月¥日
次の仕事の説明をされた。今度、駒王学園で行われる三大勢力の会談だ。美猴、ヴァーリと組んでの仕事だ。あと、旧魔王派のなんとかって女とも。なんだったっけ? カテレア・レヴィアタンだったような気がするにゃん。
それにしても、駒王学園って確かトオルが通ってる所にゃー。
うーん……嫌な予感がするにゃー。あんまり気乗りしないにゃー。出来れば断りたいところだにゃー。
でも、そこを断れないのが下っ端の辛い所だにゃー。
はぁ……メンド。早く帰りたいよ。
凸月A日
今日はレイナーレが家に居なかったにゃん。なんでも、グレイフィア・ルキフグスに御呼ばれしたんだとか。
初めて聞いた時は驚いたにゃ。だって、絶対私の事知ってるし。会わなくて済んでホッとしてる。
……これでも黒歌さんは結構有名人なのにゃ。でも、トオルもレイナーレも私の事を知らないにゃん。助かってるけど、結構複雑だ。まぁ、悪い意味で目立ってるから、知らない方が良いんだけどね。
それはそれとして、今日はトオルのベッドにお泊りにゃー。
レイナーレが居ないから、気兼ねなく甘えられるし。やー、黒歌さんとしてはもっとトオルとイチャイチャしたいのですよ? でもね、白音とトオルの次くらいには、レイナーレの事が好きなんだよ? にゃー、女同士の微妙な関係なんですよ。黒歌さんは二番で良いけど、そう言ってもレイナーレは信じてくれないにゃん。いつも嫉妬してる。可愛いにゃー。おねーさん、食べちゃいたいくらいだよ?
そんな嫉妬しちゃうレイナーレが居ないので、好きなだけトオルに甘えるにゃー。
マタタビを嗅がされたり、一緒にお風呂に入ったりしたけど、ベッドは初めてにゃん。今夜、ついに黒歌さんはトオルの雌にされちゃうのだにゃー……ドキドキだよ?
猫なんだけどね?
朝起きて、黒歌さんが人間になってたら、トオルは驚くかにゃ? ……それは後の楽しみだ。
今は、野良猫じゃなくなった黒歌さんを幸せにしてもらおう。ペットの黒歌は、トオルと触れ合えるだけで温かくて、幸せなんだにゃー。
凸月B日
いつか、トオルに白音と一緒に飼ってほしいにゃー。姉妹で一緒に暮らしたいにゃー。
……難しいんだけどね? それに、私の問題だし。こればっかりはトオルには頼れない。
でも、こうやって普通の日常を白音と送りたいにゃ。
それにしても、レイナーレの勘は恐ろしい。野生の獣だにゃー。野生の獣は種を残す為に、色々と異性に対して貪欲なんだにゃー。
まぁ、冗談は置いといて、トオルと一緒に寝た事を怒られちゃったにゃん。
怒られたというより注意だったけど。可愛いにゃー。レイナーレも一緒に寝たいんだね? 判ります。
なんでも、レイナーレはまだトオルと一緒に寝た事が無いらしい。自分で言ってる辺り、隠す気ないよね? レイナーレって絶対トオルの事好きだよね? ねぇ、悔しい? 先にトオルと寝ちゃってごめんね?
でも、だったらレイナーレもトオルと一緒に寝れば大丈夫にゃー。羨ましがらなくていいにゃん。トオルだって、レイナーレの事好きなんだにゃん。じゃなかったら、一つ屋根の下に異性を置くなんてするはずないにゃー。
……そこまで鈍感じゃないよね、トオル?
しかし、トオルの事で言い訳するレイナーレは可愛いにゃぁ。黒歌さん、そんなレイナーレだけでご飯が食べれそうだにゃ。
凸月C日
やー、結構簡単に考えてたわけですよ?
今回の仕事も、終わったらまたこの家で暮らせるって。この家に帰って来れるって。
うーん…ちょっと難しそう。
駒王学園の仕事が終わった後は、そのまま冥界入りするかもしれないにゃー。黒歌さんはやり手だから、引く手数多なんだにゃー。
……二ヶ月くらいだっけ? 思ってたより短い時間だったにゃぁ。………もうちょっと、居たかったにゃ。
トオルとお別れは寂しいにゃ。レイナーレとお別れすると悲しいにゃ。
でも、テロリストと一緒になんて暮らせないよね? 黒歌さんは悪者なんだにゃー。
凸月D日
レイナーレが、私を疑ってる。……私が悪く考えすぎなんだろうけど。
でも、私の事を聞きたがってるのは判る。黒歌さんは猫。獣。野生の勘は健在なんだにゃー。
とまぁ、そんな事はどうでもいい。
次は何時、トオルの家に帰れるかにゃ? 早く帰ってきたいよ? ホント……猫は寂しがり屋だから、家で大好きな人に甘えたいんだにゃ。
『禍の団』には、もう少し空気を読んでほしいにゃ。
凸月E日
うーん。カテレアってバカだよね? あれ、コカビエルと一緒。今時戦争なんて流行らないにゃー。
……ヴァーリみたいに「俺は、俺より強いヤツと戦いたい」って言うのもちょっとアレだけど、今時「戦争したい」なんてのもどうかと思う。
旧魔王の血を引いてるらしいけど、頭の中身はお花畑だよねー。だって結局、レヴィアタンの座を取られたのもカテレアが弱いからだし。
それを逆恨みして戦争起こして世界を壊すってのもねー…。ちょっとヒくわぁ。
まぁ、それを私が言う資格は無いんだろうけどにゃー。
それはそれとして、あの女、ちゃっかりオーフィスから『蛇』を貰ってきてるにゃー。面倒だにゃー。どうにかして、会談の前に亡き者に出来ないかにゃ?
オーフィスの『蛇』は特別なんだにゃん。レイナーレが危ないかも。あの子弱いし。弱いのにトオルの傍に居ようとするし。そういういじらしい所も好きなんだけど。
トオル? トオルの強さは本当に次元違いだからにゃー。オーフィスの『蛇』に干渉できるとは思わないけど、死ぬところは予想できないにゃー。普通の人間なのに、不思議だよねぇ。まぁ、時間を操るっていうのはそれだけ出鱈目だって事だ。私も早く、時間操作系の術を覚えたいにゃー。そうすれば、私がトオルもレイナーレも守れるにゃ。トオルもレイナーレも、無茶をしなくていいにゃ。にゃー。
でも、『神器』を使うとすぐに倒れちゃうけど。私も、時間操作系の術を使ったら倒れちゃうのかな? 怖いにゃー。
……トオル、私が居ない間に無茶しないでよ? 黒歌さんは、結構心配性なのだ。……最近気づいたんだけどね?
ホント、こんなの私のキャラじゃないにゃー。家から離れると不安だにゃー。
や、私が寂しい訳じゃないよ? 猫は寂しがり屋だけど、たった2、3日でホームシックにあるほど子供じゃないにゃ。心配なだけにゃん。トオルって、気付いたら無茶してるイメージがあるし。
……言い訳だよねー。
寂しいにゃー。トオルに撫でてもらいたいにゃー。
トオルー、トオルー……。
美猴に煩いと怒られた。
空気読んでほしいにゃー。
凸月F日
今日は駒王学園の下見をしたにゃー。
魔王の方は町を見て回ってたし、熾天使の方は神社で何かやってるっぽい。
……堕天使の総督は、レイナーレに接触してるみたい。何を話してたんだろう?
私の事じゃないと良いにゃぁ。まぁ、私がトオル達と一緒に居るってのは気付かれてないだろうから、大丈夫だと思うけど。
しかし、授業中のトオルは真面目にノートを取ってた。結構真面目君だったんだね。おねーさん、ちょっとびっくり。
学園の授業なんて、私には子守歌にしか聞こえなかったにゃー。
白音ちゃんも真面目ちゃんだった。うーん……おねーさん、そんな二人だと安心だにゃー。私が不真面目だっていうのは、自分でも判ってるし?
しっかし、駒王学園の結界は面倒だにゃー。さすがグレモリー家とシトリー家の妹が治めてる場所にゃ。
でも、この結界を会談当日は利用させてもらうにゃ。便利だにゃ。
……トオル、会談に参加しないよね?
なんだかあの子、魔王に気に入られてるし、嫌な予感しかしないよ? 危ないからね?
まぁ、いざという時は白音ちゃんとレイナーレを守ってもらわないと困るけど。
男の子なんだから、女は守るものにゃ。……トオルは優しいから、心配してないけど。でも、身体は人間だから、無茶しちゃだめだよ?
ついでに、黒歌さんも女の子だから、守ってほしいにゃー。
男の子に守ってもらうのは、女の子の憧れにゃ。できればお姫様抱っこもしてほしい。…うにゃん。
凸月G日
トオルに撫でてもらった。いっぱい優しくしてもらった。
寂しかったにゃー。会いたかったにゃー。うにゃんうにゃん。トオルは温かいにゃぁ。
でも、私が居ない間に、レイナーレと進展はなかったみたい。残念だにゃー。
何かあったら、黒歌さんがお赤飯炊いてあげるよ? というか、男女が二人きり、一つ屋根の下で何も無いのも問題だにゃー。心配だよ? 私が居なくなってもこの調子かも、と思うと心配で心配で、夜も眠れなくなるにゃん。寝不足は美容の敵なのだ。黒歌は、トオルの前では綺麗でいたいのに、だ。
なので、私の美容のためにも、早急に今以上に進展してほしい。
……もうすぐ、私は居なくなるんだし。幸せな二人を見てから、野良猫に戻りたいにゃー。
凸月H日
明日は、駒王学園で授業参観なんだって。楽しそうだにゃー。
白音ちゃんは大丈夫かな? おねーさんも見に行きたい。
でも、何か魔王も来るらしいし、難しいのにゃ。……行きたいにゃー。
レイナーレにも誘われたけど、断った。魔王に見つかったら面倒だし。
明日は何をしよう? 『仕事』だって嘘吐いちゃったにゃー。
凸月I日
白音ちゃんって優等生だよねぇ。授業参観、真面目に授業受けてたし。
……やー、欲望に負けて授業参観しちゃったよ。白音ちゃんの成長をちゃんと見てきちゃったよ。身体は小さかったけど。幼かったけど。どうして姉妹でこうも違うのかにゃー? 私が白音ちゃんと同じくらいの時には、もっとボンキュッボンだったにゃー。
まぁ、身体の事はさておき。
ちゃんと授業参観に参加できなくて心苦しい。申し訳なく思う。
白音には、迷惑というか、苦労を掛けてると思う。いつか、私も陽の下を堂々と歩きたい。白音と並んで。
――できれば、トオルとレイナーレも一緒に。
難しいだろうけど。
窓から白音を眺めてると、そんな未来を想像してしまった。……『禍の団』に関わってたら、難しいだろうな。
でも、帰る家はトオルの家だけど、私の居場所は『禍の団』なのだ。
授業が終わると、トオルとレイナーレが屋上でお弁当を食べていた。
もう付き合ってるよね、あの二人。恋人同士じゃないの?
……そこに、私は居ないけど。
でも、それでいいんだと思う。
トオルに優しくされて、今日まで幸せだった。暖かかった。寂しくなかった。
それだけでいい。しばらく寂しくなるけど、それもまた慣れるにゃ。黒歌さんは、以前のように孤高の、独りで大丈夫な、強い野良猫に戻るんだにゃー。
最初から決めていたんだにゃ。いつか私は、トオルの傍から居なくなる、って。
だから、寂しいけど、我慢できるにゃー。
泣かないよ? 黒歌さんは強いんだから。
最初に…皆様に色々と御心配、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
朱乃さんの話は今後も書いていきたいですし、おそらく書くと思います
感想欄が荒れ、と言うと違うのかもしれませんが、ああいう状態でも、
後書きまでちゃんと読んで下さっている読者の方も多く、
この作品は自分で思うほど嫌われたわけではない、と一晩経って思えるようになりました。
暖かい感想や、励ましの感想もたくさん頂けました。ありがとうございます。
また、ヒロインの定義のことも…主人公と結ばれる=ヒロインと考えていたので
これでも、皆さんに不要な不安を抱かせてしまったのかもしれません。
申し訳ありません。
ソーナ、朱乃、小猫はこれから出番も増えていくと思いますし、
できればifという形で、彼女たちにもスポットを当てたENDを書けたら、と思っています。
これからものんびり書いていきますので、よろしくお願いしますorz