とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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書いてて思ったこと。
総督日記を先に書けばよかった(ぉぃ

一巻と二巻と三巻分をまとめました。

恋愛フラグ? そんなの(ry


38(会長日記)

 ○月%日

 

 今日、学園内で一人の人間が死んだ。屋上から突き落とされて殺された。

 三年の上代徹君。面識は殆ど無い。普通の人間だ。

 殺したのは教会の堕天使の一人。なぜ殺したのか、理由は不明。

 リアスも、判らないとの事。

 身辺を調べたが、何らおかしい所も、特別な所も無い。本当に、普通の人間だ。

 ……ただ、巻き込まれただけかもしれない。

 可哀相に。

 せめて、仇くらいは取ってあげよう。

 

 

 

 ○月&日

 

 ……昨日死んだはずの上代君が、登校してきた。

 彼は確かに死んだはずだ。死体は見つからなかったが。

 もしかしたら、彼にも特別な力――『神器』のようなものがあるのかもしれない。

 もしくは、彼は堕天使に力を貸す人間の一人で、私達の出方を待っているのか…。

 しばらく注意が必要だ。

 

 

 

 ○月O日

 

 ○月%日以降、彼に変わった所は無い。今まで通りの学園生活。普通の日常を生きている。

 一度死んだとは思えないほど普通に、悪魔の学園で人間として生きている。

 何か考えがあるのか、何も考えていないのか。

 ……悔しいが、何を考えているか判らない。

 見張ってもらっていた生徒会のメンバーの報告からも、有益な情報は得られない。

 彼は、どこまでも『普通』を演じている。

 唯一マトモな情報と言えば、上代君から『神器』の波動を感じる、という程度だ。

 それがどんな『神器』なのか、というのも判らない。

 ……面倒な事になった、と思う。

 どう対応すべきか――敵対も友好の意志も無いのだ。彼の目的はなんなのだろうか?

 リアスも頭を悩ませていた。

 自分の領地での事だ、私以上に神経質になっている。

 

 

 

 ○月Q日

 

 リアスが、上代君に接触したと配下の匙から報告を受けた。

 ……痺れを切らしたか、と。

 彼女の気の短さは、私もよく知っている。よくぞ、今日までもったと思うほどだ。

 その結果は、惨敗、と言わざるを得ない。

 どうして悪魔の事や『神器』の事を簡単にバラして、更に転生悪魔の契約書にサインをさせようとしたのか。理解に苦しむ。もっとちゃんとした段取りをしてほしい。これでは無駄に警戒させるだけだ。……まぁ、そんな所が彼女らしいけど。

 明日から、どうしよう?

 変に警戒されたら面倒だなぁ。

 それと、リアスが『兵士』を見つけたようだ。『神器・龍の手』の所持者だとか。まぁまぁの『兵士』だと思う。

 龍属性の『神器』使いは貴重だ。匙も『兵士』の駒を4つ使って配下に出来たほどだ。

 中々面白くなりそうだ。

 うまくいけば、匙の良い好敵手になってくれるだろう。匙君も、少し気にしているようだった。

 良い傾向だ。

 

 

 

 ○月D日

 

 今日、改めてリアスが上代君に接触していた。

 どんな事を話したのかまでは判らないが、正直あまり良い感じがしない。

 ……あの子、変な所でテンパって、失敗するし。

 

 

 

 ○月J日

 

 最近、町の方で不穏な動きがある。

 教会の堕天使と神父の動きが目立ってきている。

 ……面倒だ。

 上代君の件といい。何か起きようとしているのだろうか?

 リアス達も動いているようだから、大丈夫だと思うけど……。

 匙が動くと言っていたが、止めておいた。彼はまだ未熟だ。もう少し力を付けてから、悪魔として働いてもらおうと思う。

 

 

 

 ○月{日

 

 最近、姫島朱乃の――リアスの『女王』の機嫌が悪い。

 どうやら、悪魔稼業のチラシで上代君に召喚されて、遊ばれてるらしい。

 ……中々肝が据わってるようだ、上代君って。

 正直、同性の私でも今の彼女は少し怖い。

 せめて、学業に影響がない範囲で遊んでほしい。

 

 

 

 ○月!日

 

 リアスの『兵士』が、自転車を漕いで悪魔稼業を行っているらしい。

 ……転移魔法も使えないのか。

 私の所の匙は最初からできていたのだが…彼は『兵士』の駒八つを使って転生させたらしいが、バグだろうか?

 明らかにハズレだろう。

 それよりも、生徒からの陳情処理が面倒過ぎる。

 匙が遅くまで手伝ってくれたが、もう少し掛かりそうだ。

 

 

 

 ○月:日

 

 最近、堕天使どもの動きが活発になっている。

 どうやら、リアスや私が動かない事で調子に乗っているらしい。

 取り敢えず、今夜、リアスが動くことになった。

 それで殲滅できなかったら、私も動く事にしよう。

 ああ、来月の学園の行事の日程をどうしよう……。

 

 

 

 △月G日

 

 リアスが、二人目の『僧侶』を手に入れた。

 アーシア・アルジェント。『神器・聖母の微笑』を持つ聖女だ。

 回復型の『神器』は珍しいので、正直羨ましい。まぁ、それでも負ける気は無いが。

 それよりも、問題はリアスの『兵士』だ。

 まさか『神滅具』持ちだなんて。『龍の手』が『赤龍帝の篭手』に化けるだなんて。『兵士』八つでよく配下に出来たものだと思う。それほどに、リアスはアタリを引いた。

 匙も悔しそうにしていた。それはそうだろう。これからは同期の『兵士』には兵藤一誠君が常について回るのだ。でも、折れないでほしい。匙の『神器』も強力なものだ。それに、使い手は同じ転生悪魔だ。

 それと、上代徹君。

 彼の『神器』も相当強力なようだ。しかも回復系。

 リアスの『滅びの力』で滅ぼした堕天使を生き返らせるなど……回復系『神器』の最上位と言えるかもしれない。

 彼が殺されても死ななかったのは、その『神器』で自分を蘇生させたからだろうか?

 どのような『神器』かは判らないが、興味深くある。

 とりあえず、しばらくはリアスが様子を見るようだ。それが良いだろう。私はあまり面識がないし、彼女の方が警戒されなくていい。

 ……変な失敗をしない事を祈ろう。

 

 

 

 △月Z日

 

 上代君は、先日問題を起こした堕天使と一緒に住んでいるらしい。

 保護、と言えなくも無いのかもしれない。

 彼がそうしなければ、きっとその堕天使はこの町を出る前に私かリアスに殺されるだろうし。

 そう考えると、敵にも情けを掛ける優しい人なのかもしれない。その優しさが正しいか、は判らないが。

 

 

 

 △月V日

 

 今日、町のブティックでリアス達を見掛けた。上代君と、件の堕天使も一緒だった。

 それは良いのだが…例の堕天使、レイナーレという名前らしいが。

 メイド服だった。しかも、徹様と呼ばせていた。

 ……上代君、そういう趣味なんだ。少し、見る目が変わりそうだ。

 

 

 

 △月~日

 

 上代君の『神器』は、懐中時計の形をしているらしい。

 リアスに聞かれたが、私もそこまで『神器』に詳しい訳ではない。

 あまり気が進まなかったが、お姉様に知っているか、手紙を送っておいた。

 直接聞くのは……まぁ、ちょっと。

 あまり期待しないで待とう。判っているのは『神器』の形状と、バアル家の力で滅ぼした相手すら復活させる能力。それだけだし。上代君の名前と身辺データ、特徴、所感も書いておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 △月D日

 

 以前、上代君の事で手紙を送っていた返事が返ってきた。もうほとんど忘れてたけど。

 まぁ、内容はお姉様も判らないという事だった。お姉様も『神器』にはそれほど詳しくないし、しょうがない事だろう。

 それに、上代君もあれから変わらずに普通に学園生活を送っている。喜ばしい事だ。

 もしかしたら、彼は『神器』を隠して生きていきたいのかもしれない。

 この学園に入学して二年とちょっと、その間隠し続けていたのだし。そう考えると、辻褄が合う。

 私達が気付かなかった事、特別な力があるのに悪魔に関わろうとしなかった事。

 ……もしかしたら、私やリアスがしている事は、彼にとってはあまり良い事ではないのかもしれない。

 もしそうなら…彼の『神器』は魅力的だが、手に入れるのは難しいかもしれない。

 

 

 

 △月G日

 

 最近は、匙がいつも以上に良く仕事を手伝ってくれる。

 良い子だな、と思う。もし彼が望むなら、次の生徒会長へ推薦していいかもしれない。

 そう同級生の友達に話したら苦笑された。何故だろう?

 

 

 

 △月H日

 

 リアスが、フェニックスの家の男と婚約するらしい。

 ライザー・フェニックス。不死鳥の男だ。

 あまり女性関係で良い噂を聞かないが、家柄は魔王の妹であるリアスとも釣り合う。

 ……同じ女として、あまり良い気はしないけど。でも、私達にとっては結婚も義務の一つだ。諦めるべき事なのかもしれない。リアスはこれからどうなるのだろう? 

 複雑だ。

 

 

 

 △月J日

 

 今日、件のフェニックスの男が学園に来た。

 それはいい。リアスとの顔合わせ、と言えなくもない。

 だけど、魔王ルシファーの『女王』グレイフィア・ルキフグスまで来るとは思わなかった。

 しかも、上代君もその場に居たらしい。

 グレモリー家は、上代君を悪魔の事に関わらせる気なのだろうか? ……そうなのかもしれない。彼の『神器』は強力だ。悪魔側に引き込む算段なのだろう。

 魔王から目を付けられたことを、羨むべきか、哀れむべきか。

 話した事も無いが、彼の人となりは知っている。普通に生活している事も。だから、可哀相だな、と思う。

 …それだけだ。私に出来るのは、それだけしかない。

 せめて、彼が悪魔になった時には少しは優しくしようと思う。

 

 

 

 △月K日

 

 リアスが今日から修行の為に山籠もりをするらしい。

 どうにも、婚約の件を反故にするために、レーティングゲームを挑んだらしい。

 無謀というか、リアスらしいというか。ライザー・フェニックスといえば、若手で連勝している事で有名な男だ。

 知識でしかレーティングゲームをしらないリアスでは、無謀にも程がある。

 それでも諦めない、のだろうが。頑張って、と応援した。私に出来るのはそれくらいだ。

 それにしても……授業はどうするのだろうか?

 相変わらずそう言う所は考えないな、と思う。

 

 

 

 △月+日

 

 最近は、匙が遅くまで残って生徒会の仕事を手伝ってくれる。

 お蔭で随分と助かるけど、あまり無理はしないでほしい。

 まだ高校二年生。遊びたい盛りだろうし。

 そういうと、私を手伝いたいのだ、と言ってくれた。

 良い子だな、匙は。

 それにしても、上代君は可哀そうだと思う。

 ルシファー様の妹であるリアスに気に入られ、フェニックスとも顔を合わせ、魔王の『女王』であるグレイフィア様も彼の事を気にしてるらしい。

 これでは、普通の生活など夢のまた夢だ。

 これから、彼の周りは騒がしくなるだろう。可哀相に。

 そう言うと、匙が複雑そうな顔をしていた。上代君の事を考えてくれていたのだろう…優しい子だ。

 

 

 

 △月@日

 

 明日、リアスの未来を掛けたレーティングゲームが始まる。

 ……なぜかその場には上代君も呼ばれているらしいが。

 どれだけ不幸なんだろう、彼は。同情してしまう。

 フェニックスにも目を付けられたようだし…。

 

 

 

 △月◎日

 

 レーティングゲームは、リアスが負けたらしい。先程、結果をグレイフィア様が教えて下さった。一応、私も駒王学園の生徒会長だからか。

 ……これから、彼女はどうなるのだろう?

 まぁ、ライザー・フェニックスと婚約。学園卒業後は、結婚……だろう。

 それが良いのか、悪いのか、私には判らない。

 リアスは今、どんな気持ちなんだろう?

 

 

 

 △月□日

 

 リアスの婚約パーティが開かれた。

 昨日の今日で気が早い、と思うがグレモリー家、しかも魔王ルシファー様に呼ばれては行かざるを得なかった。

 身嗜みを整えて行くと、見知った姿があった。お姉様も、この婚約パーティに呼ばれていた。しかも、いつもの何か間違った魔法少女の服装で。

 ……恥ずかしかった。なので、見付からないようにすぐに場の隅へ隠れた。

 その後、パーティは恙なく進行していった。何人かの貴族が私の姿に気付いたが、お姉さまに気付かれるのが嫌で早々に挨拶を終わらせた。

 リアスは今、何をしてるのだろう?

 どんな気持ちで、パーティの時間を過ごしているのだろう?

 そう思うと、この場に居る事すら悪く感じてしまう。せっかくのパーティなのに、私は彼女を祝えそうにない。

 けど、そんな重苦しい時間はすぐに終わりを告げた。

 リアスの『兵士』、兵藤君がこの場に現れた。リアスの婚約を反故にするために。

 そして、魔王ルシファー様と、お姉様と一緒に現れたのは、上代君だった。

 ……どうして彼があの場に居たのか、私には判らない。ただ、ひどく驚いた。

 人間が悪魔の婚約パーティに居る事もそうだが、魔王ルシファーと私の姉である魔王レヴィアタンに挟まれていたからだ。

 『神器』を持っているとはいえ、ただの人間が……きっと、その場に居た貴族の全員がそう思ったはずだ。

 しかも、兵藤君とフェニックスの一騎打ちだというのに、上代君は『神器』を使って、リアスを助けてくれた。魔王ルシファーが余興と言った戦いに、人間が介入した。その場に居た悪魔達の何人が気付いたかは判らないが。恐らく、兵藤君の強化。

 『神滅具・赤龍帝の篭手』の『禁手』に至った兵藤君を強化なんて、並みの『神器』では難しいだろう。

 ……それを、上代君は成した。しかも、簡単に。銀時計の『神器』を見せるように揺らしながら。

 あれが、上代君の『神器』。初めて見た銀色の『神器』は、とても綺麗に思えた。

 リアスの婚約パーティを壊す事、魔王の前で『神器』を使う事、リアスを助ける事――それが、どういう意味か、上代君は判っているのだろうか?

 これで、彼はますます普通から遠ざかる。普通に戻れなくなる。

 それが判って、彼はリアスを助けたのだろうか?

 ――判っているのだろう。だって、それを覚悟しなければ、あの場で『神器』を使うなんてできないはずだ。魔王が定めた一騎打ちに介入なんてできないはずだ。

 素直に、凄いと思う。

 私はあの場に居ながら、リアスの事を考えながら……何もしなかったから。

 そんな上代君を見ていられなくて、その後すぐに帰った。

 今日はもう寝よう。疲れた。

 

 

 

 △月AP日

 

 上代君が、魔王ルシファー様から直々に『悪魔の駒』を戴いたらしい。

 ……驚き半分。そして、喜びが半分、だ。

 魔王様直々に『悪魔の駒』を貰った人間など、レーティングゲームが始まって以来初めてだ。そもそも、レーティングゲームに人間が参加できるのかが判らないが。

 そして、これからはその、魔王様から認められた人間が私の同期に居る事になる。

 その事を、私は少し喜んでいる。

 ――私にはできなかった、リアスを助けてくれた彼と勝負が出来る。その事を、喜んでいるのだと思う。

 

 

 

 △月AI日

 

 上代君は結局、あれからもあまり変わっていないと思う。

 普通に学園生活を満喫している。良かったと思う。上代君の日常は、まだ普通らしい。

 ……それも、いつまで続くか判らないが。

 それはそうと、今日、匙が上代君の事を聞いてきた。

 いきなり現れた好敵手を気にしているのだろう。相手は魔王様に認められるほどの人間だ。

 でも、普通に学園生活を送ろうとしている、普通の人間でもある。

 『神器』が強力すぎて、普通からだんだんと遠ざかっているが。それが、少し面白い。

 いったい何時まで、上代君は普通でいられるのだろう? 最近、そう考えている自分が居る。そして、一日でも長く普通で居てくれれば、とも。難しいだろうけど。難しいと判っているから、普通の上代君を見て楽しんでいるのか? 我ながら、嫌な性格だ。

 匙にそう説明すると、複雑そうな顔をしていた、

 ……うん。

 確かに、こうやって日記にすると、説明にもなってない。匙には悪い事をしたな。

 

 

 

 △月AY日

 

 先日、匙にした上代君の説明があまりにアレだったので、今日改めて説明した。

 と言っても、私も上代君の事はあまり知らないのだけど。

 その後、匙が他の生徒会メンバーに慰められていた。

 相手は魔王様に認められるほどの人間だし、ね。心が折れなければ、と思う。

 まぁ、別れ際に「負けませんから!」と大声を出してたから大丈夫だろう。微笑ましかった。

 

 

 

 

 

 

 

 □月B日

 

 ……お姉様が来られた。

 遊びに来た、と言っていたが、魔王としての仕事をちゃんとしてほしい。

 ただでさえ、服装と言動で他の貴族達から良く思われていないのに。……それでも、ちゃんとする所はするから強く言えないのだが。

 それと、上代君の事を聞いてきた。フェニックスの一件からどうしているか、と。

 まぁ、普通に学園生活を送っている、ような事を伝えた。

 どうしてか、溜息を吐かれたが。溜息を吐きたいのはこっちだ。

 

 

 

 □月E日

 

 匙の仕事への熱心さは、私でも凄いと思うほどだ。あんなにも駒王学園を愛してくれているのだと思うと、私も嬉しくなる。

 それはそうと、リアスの件も落ち着いたし、そろそろ上代君に私達生徒会の事も説明しようと思う。

 そう生徒会メンバーに言うと、半数は賛成してくれた。

 もう半数は微妙な反応だった。どうしてだろう?

 匙に聞くと、緊張した風にどうしてか、と聞かれた。まぁ、最後には納得してくれたが。

 明日にでも、上代君を生徒会室に呼ぼうと思う。

 

 

 

 □月F日

 

 上代君に、生徒会メンバーを紹介した。全員が悪魔なのだ、とも。そう言うと、少し驚いていた。

 その反応は本当に普通の人間のようで、少し可笑しかった。魔王様に認められたからと、やっぱり人間であることは変わらないようだ。

 私の事も説明した。魔王レヴィアタン、セラフォルーの妹なのだという事も。

 そう言うと、色々と複雑な顔をして「大変だな」と言ってくれた。この人は判ってくれるのか……素直に嬉しい。

 私を魔王の妹として見る人は多いが、そうやって言ってくれた人は久しぶりだ。ちなみに、リアス以来だ。普通に嬉しかった。

 だって、お姉様って間違った魔女…魔法少女? を広めてるし。私も同じ目で見られるのだ。辛いのだ。大変なのだ。自重してほしい。

 その全部を判ってるわけではないだろうけど、そう言ってくれるだけでも随分と癒された気分だ。

 上代君も、これから大変だろうけど頑張ってほしい。

 ……私の愚痴も聞いてくれたし。良い人だな、やっぱり。

 

 

 

 □月G日

 

 球技大会で不正が無いかの見回りが終わった後、生徒会室に戻るとこちらの手違いで上代君の所属が生徒会になっていた。どうしてこうなったのだろうか? 不自然にも程がある。生徒会メンバーに聞いたが、誰も判らないとの事。誰か不正をしたのだろうか? だが、今更修正するのはさらに不自然だ。

 上代君には悪いが、しばらく付き合ってもらう事になる。

 それはそれとして、最近匙の様子が少しおかしい。何かあったのだろうか? 聞いても教えてくれない。心配だ。弟を心配する姉の心境とは、こういう事なのかもしれない。私には姉しかいないが。

 

 

 

 □月H日

 

 放課後、上代君と匙を連れてリアスに球技大会の事を話しに行った。

 リアスとは同期でもあり、勝手かもしれないが、好敵手のように思っている。

 上代君を巻き込んでしまったのはこちらの意図した事ではないが、それでもいい勝負にしたいと思っている。

 リアスも同じだったようで、握手に応えてくれた。

 しかし、リアスは上代君にどういう対応をしているのだろうか?

 私が上代君に放課後の用事が無いか尋ねた時、「支取は用があるか聞いてくれるのか」と、驚いた顔をされた。

 ……リアス。

 我が強いのは貴女の美点と言えるのかもしれないけど、少しは他人を気にしなさい。

 

 

 

 □月I日

 

 上代君は、どういう人間なんだろう? よく判らなくなった。

 魔王ルシファーに認められた人間だという事は知っている。

 相応の能力を持っているのだとも思う。でも、今日の球技大会では、個人戦は初戦敗退。部活別はリアス率いるオカルト研究部と戦った時は一番最初に脱落した。

 普通の人間? その程度の身体能力しかなかった。

 色々と複雑だったが、申し訳なくも思う。

 今日は、試すような真似をしてしまった。こんな事は、もう二度としないようにしよう。

 

 

 

 □月K日

 

 最近、町が騒がしいと思ったら、以前の堕天使騒ぎの際の残りが町で好き勝手にしているようだ。

 しかも、聖剣を振り回して、だ。

 面倒だな、と。それに、今日はヴァチカンから来た聖剣使いと会った。こちらも面倒だ。

 町で暴れている聖剣使いを見つけるまで、不干渉を、との事だった。

 一応、リアスに話を付けるようには言っておいたがどうなるか…。

 球技大会が終わったばかりだというのに、頭が痛い。

 

 

 

 □月O日

 

 学園で暴れるのは良いが、限度というのを考えてほしい。

 半端な結界の中で暴れられると、近隣住人から苦情が来るのだ。

 ……こんな苦情の対処は教師の仕事だと思うが、どうしてか生徒会にこの手の仕事は回ってくるのだ。

 それに、そんな時に限って匙も休みだし。無断だったが、何かあったのだろうか?

 

 

 

 □月P日

 

 ここ数日、匙が生徒会を休んでいる。今までこんな事が無かっただけに心配した。心配したのだ。

 最近何かと縁がある上代君に聞いたら……あの子は。

 町中で、卑猥な事を叫んでいたらしい。恥ずかしい。そんな事を聞いた私が恥ずかしい。

 そんな事を聞いた、そして言わせてしまった恥ずかしさで平謝りするしかなかった。

 上代君は頑張れよ、と。生徒会の事、悪魔の事も応援してると言ってくれたけど。

 ……匙を怒らなければならない。

 

 

 

 □月Q日

 

 聖剣の破壊、それが匙が最近休んでいる理由だった。何を考えているのか、と。

 聖剣は悪魔の弱点だ。最悪、死に至る。

 匙のような若い転生悪魔には手に余る相手だというのに…。

 心配ばかり掛ける悪い子にお仕置きをした。お尻千叩きだ。妥当な所だと思う。

 ……途中で上代君に見られたけど。恥ずかしい。

 いつもあんな事をしてるわけじゃない、と説明したけど……はぁ

 

 

 

 □月R日

 

 上代君って、結局、不思議な人間だな、というのが結論だ。

 この前の球技大会の時は手を抜いてたのだろうか? それとも、身体能力は人間のソレしかない、という事か? 本当に、よく判らない人だ。

 堕天使コカビエル。神話にすら語られる堕天使の幹部。リアスや赤龍帝の兵藤君、『禁手』に至った『騎士』とデュランダル使い。それだけの戦力が揃った状態でも、遠く及ばなかった前戦争の生き残り。

 その堕天使を、たった一人で、難なく撃破した。

 撃破、というのは少し違うかもしれないが。どちらかというと、無力化した、というべきか。

 あれが魔王に認められた人間か、と思うと納得するしかない。

 時間を操る『神器』の使い手。配下の堕天使を傷付けられて怒る優しさもあった。

 それが上代徹。

 死ななくて良かった、と思う。

 彼とはこれから、競い合わなければならないのだから。

 彼となら、良い勝負、そしてお互いに高め合えるかもしれない。

 リアスとはまた違った意味で、いい同期が出来たと思う。

 

 

 

 □月S日

 

 上代君が体調不良で休んでいた。

 多分、コカビエルと戦った際に無茶をしたのだろう。

 人間の身では、やはり堕天使と戦うというのは無理があったのかもしれない。

 心配だ。早く良くなってほしいと思う。

 

 

 

 □月T日

 

 リアス達も、上代君の事を心配していた。

 命の恩人が倒れたのだから、当然だろう。私も心配だ。

 リアスの話では『僧侶』の『聖母の微笑』でも、治せなかったらしい。まぁ、アレは傷を治す『神器』だから、判らなくもない。

 大丈夫だろうか?

 心配する私が珍しかったのか、リアスが茶化してきた。失礼な。私だって人並みに心配するのに。

 

 

 

 □月U日

 

 上代君が登校してきた。

 体調は元通りのようで、一安心だ。これからは、あまり無茶をさせないようにしないといけない。

 『神器』は強力だが、彼は人間なのだから。

 配下の皆が、何かお礼を、と言っていた。

 何かした方がいいのだろうか?

 同じ男の子として、匙に意見を聞いてみたら「何もしなくていいですよ」と言っていた。

 どうしたら良いだろうか?

 リアスに聞くのも何か違う気がするし……。

 

 

 

 □月Π日

 

 結局、今回はお礼を言うだけにしておいた。

 あまり親しくも無いのに物を送るというのも不自然だろう。

 これから親しくなれたら、その時に改めてなにかすれば良いと思う。

 これで良かったのだろうか? 男の人になにかするのが初めてなので、正しいのか判らない。

 匙にそう聞くと、複雑そうな顔をしていた。

 ……物を送った方が良かっただろうか?

 今度は、そうしようと思う。まぁ、同じ学園に居るのだ、お礼をする機会はたくさんあるだろう。

 

 

 

 

 




フラグ? 立つのかなぁ。
次回は4巻分になります。一話で終わるだろうか? まぁいいや。
匙君が不憫すぎる……

前書きでも書きましたが、先に総督日記を書くべきだったと後悔中。
まぁ、結局書くから変わらないだろうけどね

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