なんか短かったので、赤龍日記の反省を踏まえ、一話にまとめてみた。
○月Q日
退屈です。退屈で死にそうです。
リアス部長の『僧侶』になったのはいいけど、部長が僕を制御できないからと旧校舎の一室に封印されてもう何日経っただろう? 僕が吸血鬼じゃなかったら死んでます。まぁ、半分だけだけど。
それはともかく、退屈です。パソコンもあるけど、ネットにも繋がってるけど、四六時中触ってると飽きてしまうのです。
……ここ最近、日記に退屈としか書いてない。
でも、外に出るのも怖いし、退屈くらい別に良いか、とも思い始めている。
しかし、どうして狭い場所ってこんなに落ち着くんだろう。
段ボールに入って、部屋の隅の床にノートを置いて日記を書くのが最近のマイブーム。
△月L日
今度、学園で部長がレーティングゲームをするらしい。
小猫ちゃんが、そう教えてくれた。そして、これから修行の為に山籠もりするんだと。
僕を拉致しに来たのかな、と思ったけど違ったようだ。良かった。
まだ油断はできないけど。小猫ちゃんって意地悪だし。
取り敢えず、今回はそのレーティングゲームには不参加なのだとの事。
良かった良かった。僕に外の世界なんて無理過ぎる。さっきも、小猫ちゃんが冗談で僕の手を掴んだ時に、無意識に時間を停めてしまった。
相変わらず制御できない『神器』が、怖くて堪らない。
僕はいつか、世界の全部を停めてしまうんだ、という思いが冗談に思えないのだ。
なら、一生この封印された教室で独りで生きていく方が良い。
△月@日
明日が、部長の初めてのレーティングゲームの勝負の日らしい。副部長が教えてくれた。
僕には関係ないけど。参加できないし、部屋から出る気も無いし。
見学の為に無理矢理部屋から出されようとしたら、また時間を停めてしまった。
僕以外の全部が停まった世界。僕だけが動く世界。
……誰も、この怖さを判ってくれない。僕は、恐ろしくて堪らない。いつか、僕以外の全部を停めてしまうだろう、この『神器』が怖くて堪らない。
もう、『神器』を使いたくない。
△月○日
外で凄い音がしてた。多分、レーティングゲームをしてたんだと思う。
部長、勝ったのかな? 勝ってると良いな。
そういえば、ゲームが始まる少し前に部屋の前を人間が歩いてたけど、アレは誰だろう? 堕天使もいたし。窓から覗いてたからバレてない、と思うけど。
これからレーティングゲームが始まるのに…巻き込まれちゃったかな?
化けて出ないでほしい。お化け怖い。
□月B日
部長たちが、旧校舎の裏手で野球の練習をしていた。楽しそうだった。
でも、外に出る事が出来ないので眺めているだけだった。それでも楽しかった。
□月N日
あの副部長が、男の人と腕を組んで歩いていた。
……恋人? 相手の方は人間のはずだけど……まぁ、顔は普通だった。そうかー、ついに副部長にも春が来たのかー。この部屋には娯楽が少ないので、しばらくこれで退屈しないで済みそうだ。
本当、この部屋って段ボールとパソコンと、魔術書くらいしか娯楽が無い。
でも、ネットって便利だよね。僕でも生きていけるもん。
□月R日
今日、凄い戦いがあったみたい。僕は知らないけど、魔力の流れが乱れに乱れて激しかった。
光の気配も感じたから、天使か堕天使が何かしたんだと思うけど。
それと、不思議な感じもした。
僕が『神器』を暴走させた時の感じに、何か似てた。僕以外に世界を停める『神器』を持ってる人が居るのだろうか?
……凄いな、と思う。
そんな『神器』を持っていながら、外を歩けるなんて。羨ましい。
僕は怖くて堪らないのに、その人はどうして外で生きていけるんだろう?
凸月J日
今日、部長たちが僕を部屋から連れ出す為に来た。
無理なのに。僕にはこの狭い部屋が丁度良いのに。しかも、知らない顔が沢山だった。新しい『兵士』と『僧侶』と『騎士』も居た。僕ってもう必要ないと思う。
無理やり連れ出そうとされて、また『神器』を暴走させて……初めて、僕が停めた世界の中で動ける人を見つけた。そう、人だ。人間だ。魔王様の様な圧倒的な格上の存在ではない。普通の人間の男の人が僕の停止世界の中で動いていたのだ。
名前は上代徹さん。僕の二つ上の先輩。
そういえば、今思い出したけど副部長の彼氏さんだ。人間なのに、実は凄い人なのかもしれない。
どんな人なんだろう? 昼間は、気付いたらいなくなっていた。上代先輩は時間操作系の『神器』を持っていて、それで僕の『停止世界の邪眼』の効果中も時間を『再生』し続けているから動けるんだ、と説明された。
何処からか現れた堕天使の総督、アザゼルに。良く知ってるな、と思った。でも、アザゼルさんも全部は判ってないらしく、半分以上は『神器』の能力を予想してるだけらしい。
ちなみに、居なくなったのも僕達の時間を停めたかららしい。アザゼルさんも停められたのかな? 教えてくれなかった。でも、悔しがってたから、停められたのかもしれない。
結局、僕はあの居心地の良い部屋から出されてしまった。
……これからどうなるんだろう?
それと、アザゼルさんが、僕の『神器』の練習をするなら、傍に上代徹先輩が居る時が良いと言っていた。
あの人なら、僕が暴走しても止めてくれるから、と。
堕天使の総督からそんな風に言われる人間なんて、きっと居ないんじゃないだろうか?
どういう人なんだろう、上代徹先輩って。
凸月K日
徹先輩に召喚してもらった。イッセー先輩と一緒にだったけど。
イッセー先輩を含め、他の皆は怖いけど、徹先輩はそんなに怖くない。
徹先輩は、僕が暴走しても停まらない。僕なんかよりももっと凶悪な『神器』を持ってるのに普通に生きようとしている、とても強いヒトだ。
なんでも、魔王様とも友達らしい。凄すぎる。
それと、徹先輩と一緒に暮らしている堕天使、レイナーレさんの事も紹介してもらった。綺麗な女性だった。
副部長といい、この堕天使さんといい、やっぱりすごい人はモテるんだなぁ、と思った。
帰り道にイッセー先輩に話したら、「上代先輩だからなぁ」と言ってた。うん、なんとなくだけど判る。
今日は、改めて自己紹介と、少しだけ世間話をした。僕が無理矢理部屋から連れ出された事をと話すと、我が事のように慰めてくれた。本当に良い人だ。凄い良い人だと思う。
そして、自分もそうだ、と言っていた。上代先輩は普通に生きようとしている、と部長は言っていた。でも、強大な『神器』を持ってるから荒事に巻き込まれるんだ、と。……少し、この人の凄さが判った気がした。
また今度、次は歩いて遊びに来いよー、と言ってくれた。
……遊びに行っていいのだろうか?
凸月L日
イッセー先輩は卑猥だと思う。僕の『神器』を使って時間を停めて、その間に女性のおっぱいを揉みたい、と言われた。
僕も木場先輩も苦笑するしかなかった。
でも、僕の『神器』を怖がってくれなかった。良い先輩だな、と思う。
……『神器』をそんな風には使いたくないけど。
結局、今日の『神器』を使う練習も、あまりうまくいかなかった。
夜には、言われた通りに歩いて徹先輩の家にお邪魔した。疲れたけど、レイナーレさんが淹れてくれたお茶が凄く美味しかった。
それと今日は、僕の出生の事や、『神器』の事を改めて説明した。
吸血鬼と人間のハーフである事。時間を停める『神器』で、今まで沢山の友達を停めてきた事。
その事を話すと、前向きに生きよう、と言われた。
前向きに、と言われても……僕にはよく判らない。だって僕は、『停止世界の邪眼』から逃げたいから。
だからきっと、僕は後ろ向きなんだ。段ボールの中が好きだし。
悩んでるのが顔に出たんだと思う。
愚痴なら聞くよ、と少しだけ笑って言ってくれた。
……徹先輩も、『神器』の事で悩んだりしたんだろうか? 僕の『神器』と同格、もしくは格上の『神器』と一緒に生きていて、怖かったりしないんだろうか?
気になる。僕は、徹先輩が気になっている。
僕の世界の中で停まらない人間。僕なんかよりもずっとずっと強いヒト。
あの人の事を知ったら、僕は少しだけ前向きに生きれるだろうか?
凸月M日
今日、思い切って『神器』が怖くないですか、と聞いてみた。
少し悩んだ後、少しだけ怖い、と言っていた。徹先輩でも、怖い事があるんだ。イッセー先輩も驚いていた。
それが顔に出たのか、少し恥ずかしそうにしてた。
徹先輩みたいにすごい人でも、怖い事があるんだ。でも、それでも前向きに生きようとしてるんだ。
時間を停める。世界を停める。もしかしたら、停めたまま動かなくなるかもしれない。いつか、自分以外の全部が停まってしまうんじゃないか、という恐怖。僕はそれが怖くて、『神器』を否定して、狭い部屋に引き篭もった。
でも、徹先輩は違う。その恐怖を判った上で、前向きに生きようとしてる。普通に生活を送ろうとしてる。その力で、部長たちを助けてくれた。
正義の味方。ふと、そんな事を考えた。きっと、あながち間違いじゃないと思う。
悪魔が、吸血鬼がそんな事を言うのはどうかと思うけど。でも、徹先輩は、どうしようもなく正義の味方に思えた。
自分の『神器』を受け入れ、恐怖を受け入れ、それでも生きようとするその姿を、凄い、としか思えなかった。
きっとこれは、僕にしかわからない事だ。
世界を停める事が出来る、僕にしか。
不謹慎かもしれないけど……それが、少し嬉しい。
凸月N日
今日は、生徒会の人に手伝ってもらって『神器』の練習をした。
僕の『神器』の危うさは、僕と徹先輩が一番よく判っている。
僕と徹先輩以外の全部を停めてしまう――だから、そうならないように練習をした。
今まで向き合っていなかったからか、思うように使えない。
途中から、イッセー先輩も合流した。
徹先輩は、今日は副部長とデートらしい。やっぱり付き合ってるんだ、副部長と徹先輩。
ちょっと複雑だ。副部長は美人だし、良い事だと思うけど、そうすると僕は徹先輩と居れないわけで……。
まぁ、徹先輩が居ない所で練習して、『神器』を使えるようになって、驚かせたいと思う。
なんでも、徹先輩は堕天使コカビエルを一人で、あっさりと倒したらしい。いつか、徹先輩と同じくらい強くなれたら、と思う。
今夜は、徹先輩に召喚されなかった。
副部長とデートらしいし、疲れたんだろうなぁ。
凸月O日
今日は三大勢力の会議が駒王学園で行われた。事前に聞かされてなかったし、部室に待機だったから僕にはあまり関係の無い事だったけど。
一人で待機だったけど、色々遊び道具があったので、それなりに退屈はしなかった。
後から小猫ちゃんに聞いた話だと、徹先輩は会議に参加してたそうだ。凄いなぁ。人間なのに、三大勢力の会議に参加するなんて。この場合、悪魔、天使、堕天使、人間の勢力図になるんだろうか?
なんでも、魔王ルシファー様やレヴィアタン様。それに堕天使アザゼルさんと天使のミカエルさんも徹先輩を推したんだとか。
やっぱり、徹先輩は凄いんだと、改めて思わされた。
……というか、凄い面子だ。普通に生きていたら、人間どころか上級悪魔でもそれだけの知り合いを得る事なんて難しいと思う。
凄い人だなぁ。憧れちゃうなぁ。僕も『神器』を使いこなせるようになったら、徹先輩みたいになれるだろうか?
そんな事を考えてた時、部室の中に、ローブを纏った魔術師が数人入ってきた。
知らない顔だったし、殺気を放っていて、身が竦んで一瞬動きが止まってしまった。
その瞬間、魔術師たちから魔力を無理矢理送り込まされた。『神器』を暴走させられる。そう理解はしたが、抑え込む事なんか無理だった。
世界を停める、あの独特の感覚。どうしてそんな事をしたのかわかないけど、僕の『神器』を悪用しようとしてることはすぐに理解できた。理解できたけど、止める事なんてできなかった。世界が停まった。けど、それは一瞬にも満たない、ほんの少しの間だけだった。
僕の暴走。それを止める事が出来るのは、世界できっと一人だけ。徹先輩。僕と同じ、時間を操る『神器』使いの先輩。
その直後、部長たちが助けに来てくれた。多分、余ってた『悪魔の駒』を使ったキャスリングだったんだと思う。
その後は、部室に来た魔術師たちをイッセー先輩達が倒してしまった。けど、相手にも、イッセー先輩達にも傷一つなかった。部長やイッセー先輩がどれだけ強くても、魔術師の攻撃を無効化できるほど力らの差がある訳じゃない。
そして、イッセー先輩の攻撃で気絶してる魔術師たちも、無傷だった。部長の『滅びの力』、イッセー先輩の赤龍帝の攻撃を受けて、だ。
理由は簡単だ。すぐに気付いた。傷を負った傍から、傷を負っていない状態へ身体が巻き戻されていた。
僕も、戦いの際に傷を負ったけど、すぐに回復した。吸血鬼の回復力以上の回復速度。時間の巻き戻し。時間の支配。それが徹先輩の本質。僕以上の存在。……僕を、止めて、助けてくれる存在。
――僕の『神器』の暴走を止めただけじゃない。これも、徹先輩の能力の一部。『神器』を使いこなすという事は、ここまで可能性を広げる事なのか、と教えられた。
その後は、圧倒的な攻撃力を持つイッセー先輩の独壇場だった。
生死を考えず、ひたすらに全力で攻撃し続ける。
傷も魔力も、使った傍から万全の状態に巻き戻されるのだ。それは、死なない、消滅しないという事。圧倒的な攻撃で気絶させる。相手の事なんか考えなくていい。それだけで良かった。出鱈目にも程があると思う。僕の『停止世界の邪眼』と同格? そんなレベルじゃない。遥かに格上だ。下手をしたら『神滅具』級。いや、それ以上かもしれない――。
数も、地力も、質も上回る三大勢力は、すぐに戦場を制圧した。
イッセー先輩の赤龍帝の対となる白龍皇も、怪我も負わせられない状況では勝負も出来なかった。途中で乱入してきた新手と一緒に撤退していった。
全てを半分にする能力も、半分にした直後に元の状態に巻き戻されていた。これが新校舎一帯だというから、もう笑うしかない。
今回襲撃してきたのは『禍の団』というテロ組織らしい。
その『禍の団』のほとんどは、無傷で捕まった。魔王や堕天使総督、熾天使の攻撃を受けて気絶させられたのだろう。耐えれる気がしない。相手は死なないから、手加減無しだったろうし。
今回の襲撃で、一番功績を上げたのは、やっぱり徹先輩だった。
それはそうだ。徹先輩が居なかったら、僕の暴走で皆は停まってしまっただろうし、スムーズにいかなかっただろう。それに、死者、重傷者ゼロというのも凄い。
魔王様も、堕天使総督も、熾天使も褒めていた。当の本人は、その後すぐに帰ったらしいけど。挨拶したかったなぁ。
やっぱり、徹先輩はすごい。
上代徹先輩。僕の、目標だ。
いつか追いつきたい。僕の、尊敬すべき目標だ。
……でも、やっぱり知らない顔と、外は怖いけど。
凸月P日
徹先輩が倒れた。『神器』を酷使しすぎたかららしい。
以前、堕天使コカビエルと戦った後も、熱を出して倒れたらしい。
……そんなになるまで能力を使って、僕達を助けてくれたんだと思うと、胸が締め付けられる。
部長も、副部長も、小猫ちゃんも、オカルト研究部の皆が心配していた。
今日も、アーシア先輩とレイナーレさんが徹先輩のお世話をしているらしい。
……早く元気になってほしいと思う。
主人公の(神器の)チートっぷりが酷い。
これってもう、寄生虫レベルだよね。悪い方の。
勝手に使って倒れるって。
ギャー助は素敵な後輩……かもしれない(ぇ
次はだれを書こうかねぇ。
一応予定では、会長日記、総督日記、巫女日記を予定。予定は未定。
堕天使日記と黒猫日記は絶対書く。
白龍日記が悩み中。多分、書いてもすごい短いと思う。
一番の問題は巫女日記と会長日記。どうしよう? 内容が普通に被りそうだぜ…朱乃ェ…支取ェ