とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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 凸月K日

 

 なんか、あの呪いのチラシで兵藤を召還してほしいと姫島から脅迫された。別名お願いである。

 まぁ、別に問題も無いし召喚したら、喋るダンボールも一緒に召喚された。……なんぞ、あれ。

 中身はギャスパー君だったけど。そういえば、対人恐怖症とか説明されてたね。今思い出した。

 なんでも、対人恐怖症を治す為に、こうやって兵藤と一緒に仕事をしてるらしい。

 ……その選択肢に、どうして俺が加えられてるのか甚だ疑問だが。

 どうやら、俺の事はそんなに怖くないとの事。……複雑だ。この子男の子だし。

 レイナーレさんに男の子だと説明すると、驚いていた。そりゃ、女装してたし。

 その日は結局、少し話して帰っていったけど。

 今度は歩いて遊びに来いよー、というと喜んでいた。面白い子だなぁ。なんか、不幸属性的な意味で波長も合うし。なんでも、部屋に引きこもっていたいのに、無理矢理拉致されたらしい。引き篭もりはどうかと思うが、拉致される気持ちは判る。俺もそうだし。何時も姫島に拉致されてる。あいつらはもう少し、言葉で伝える努力をするべきだ。暴力反対。

 

 

 

 凸月L日

 

 今日も、兵藤と一緒にギャスパー君が遊びに来た。二人的には仕事に来たようだけど、してもらう事無いし。レイナーレさんが淹れてくれたお茶を飲んで喋ってただけだし。そんなの仕事とは言わないと思う。

 まぁさておき。どうやらギャスパー君。吸血鬼らしい。

 ……まぁ、女装してる時点で普通じゃないとは思っていたさ。

 でも、半分は人間の血が混じってるんだとか。お母さんが人間らしい。混血っていうの? そういうの大変なんだろうと思う。俺は真っ当な人間だから判らないけど。

 しかも、持ってる『神器』も相当強力らしく、それで友達も出来なかったんだと。

 そりゃねぇ。時間停める『神器』とかチート過ぎるよな。止められてる時に何かされても気付けないし。泥棒とかし放題じゃん。

 便利なのか難儀なのか判断に悩む『神器』だな。取り敢えずチートなのは確かだが。

 まぁ、前向きに生きると良いと思うよ? 愚痴くらいなら聞くから。

 

 

 

 凸月M日

 

 今日も今日とて、兵藤とギャスパー君が遊びに来た。

 今日は俺の『神器』が怖くないですか、との事。

 ……どうだろう? 普通に悩む質問だ。だって、俺の『神器』って壊れた時計だし。まぁ、怖いと言えば怖い。偶に見る悪夢の元凶かもしれないし、ふとした時に動き出すし。夜中に勝手に現れて動き出した時には、普通に怖いと思う。

 まぁ、壊れた時計という所は伏せて、少し怖いと答えておいた。『神器』が壊れた時計とか…他人に言える事じゃないし。恥ずかしすぎて死ねるレベルだ。

 ギャスパー君も自分の『神器』が怖いらしい。まぁ、俺とは怖さのベクトルもレベルも段違いだろうけど。

 時間を停めるとか、周りは全部停まって自分だけ動くんだろ? そのまま動かなくなったりとか考えると、恐ろしいよなぁ。

 ほんと、可哀相だよな、ギャスパー君。

 いつでも遊びに来ていいからね、というと笑顔で帰っていった。……男と女の違いってなんだろうと、さっきまで考えるレベルの良い笑顔だった。

 

 

 

 凸月N日

 

 兵藤が家に遊びに来た。というか、俺を呼びに来た。その時点でなんかおかしいと思ってたけど、まぁ、休日で暇だったのでホイホイ付いて行ったわけだ。神社に。人気のない神社に。でも、兵藤ってスケベで有名で、しかもアーシアさんとグレモリー、そしてゼノヴィアさんという彼女が居るから、安心してたわけだ。リア充は地獄に堕ちればいい。

 ……姫島が居た。神社に巫女さんの格好をした姫島が居た。あの野郎、俺を売ったわけだ。俺が視線を向けると、下手な口笛を吹いて視線を逸らしやがったから間違いない。いつか泣かす。絶対泣かす。

 ちなみに、姫島さんは普通だった。この前みたいに怒っては無いようだった。表面上は。内面は判らん。そもそも、こいつの考えがよく判らん。

 なんでも、昼間行った神社は姫島が管理しているらしい。結構大きな神社だった。

 掃除とか大変だなぁ、と思った。というか、悪魔が神社とかいいのだろうか? まぁ、魔王様もこの前神社でお参りしてたけど。……神聖な場所ってなんだろうね。多分、吸血鬼も木の杭とか銀の武器じゃ倒せないんだろうな。

 そのあと、空からミカエルさんが下りてきた。日本の神社に天使とはコレ如何に。色々おかしすぎると思う。

 ちなみに、兵藤の事を赤龍帝と呼んでいた。なんでも、左手の篭手にドラゴンが宿ってて、そのドラゴンが赤龍帝というらしい。普通に格好良いな、お前。

 本気で俺の『神器』と交換したい。

 そのミカエルさん。俺の事も知っているようで、挨拶してきた。なんで? なんで俺の事知ってるの? 普通に怖いんだけど…プライバシーはあると信じたい。

 なんでも、サーゼクスさんから聞いたらしい。またあの人か…今度、一言いうべきだろうか? ……でも、魔王だから機嫌を損ねるとどうなるか…。権力に屈するっていうのは、こういう事を言うのかもなぁ。

 それと、最初はミカエル様と呼ぼうとしたんだけど、拒否された。フランクな天使様である。なんか、サーゼクスさんと同じ匂いがした。まぁ、もう二度と関わる事は無いだろうから別に良いけど。

 少し話した後、兵藤に剣を渡していた。なんか、凄い格好良い剣だ。聖剣というヤツなのかもしれない。さすが、本物は違うな。ゼノヴィアさんのは聖剣(笑)だったし。

 俺には何もなかった。当たり前だけど。あっても困る。初対面の他人だし。他天使になるのかな?

 兵藤に剣を渡すと、ミカエルさんは用事があるからと帰っていった。三大勢力の会議の場で会おう、と言っていた。何それ? なんか会議があるの? どうやら、天使も意志疎通は苦手のようだ。なんなの? 偉い人たちって皆そうなの? もしかして俺の理解力が不足してるのだろうか? ……なんか、そんな気がしてきた。違うと思いたい。

 

 

 そのあと、姫島にお茶を御馳走になった。茶道で飲むような、緑色の。苦かった。

 それと、姫島って堕天使なんだそうだ。レイナーレさんと同じだな。

 悪魔と堕天使の翼を持ってるんだと。

 そうなのか、としか言いようがない。悪魔と堕天使の翼を持つ、という事の意味がまず判らないし。まぁ、悪魔と堕天使って敵対してるみたいだから、色々と面倒があるんだろうなぁ、程度しか判らない。

 それより問題は兵藤の奴である。あの野郎。ミカエルさんが帰った後、どさくさに紛れて帰りやがった。今度会ったら、文句言ってやる。喧嘩? 勝てる気がしない。

 そんな事を考えてると、姫島が軽く鬱になってた。そんなに翼が二種類あるのが嫌なのか…。

 取り敢えず、俺は気にしないからそんなにヘコむな的な事を言って慰める事にした。あいつ、ドSのクセに精神面は俺と同じ豆腐か? というか、せっかくの休日に何をしてるんだ、俺は。改めて考えると、泣けてくる。

 その後姫島が落ち着いたので帰った。疲れたのでそのまま家で寝た。

 ……なんつー休日だ。

 そういえば、最近黒歌が帰って来ない。まぁ、猫だし、縄張りとか広げてるのかもなぁ。

 怪我とか事故とかしてなければいいけど。

 

 

 

 凸月O日

 

 朝、グレイフィアさんが迎えに来た。それと、龍みたいな顔をした馬も。

 名前は炎駒さん。レイナーレさんの話では、麒麟という種族の、とても縁起の良い動物らしい。

 これで俺の運も少しは良くなってくれれば、と思う。切実に。神様に願う勢いだ。

 なんでも、今日は会議があるらしく、俺を呼びに来たんだと。

 それだけ説明されると、レイナーレさんと一緒に学園へ行くことになった。

 ……すでに俺が置いてきぼりだよ。説明を求めたい。

 そう言ったら、サーゼクスさんの友達だから、との事。あと、セラフォルーさんとミカエルさん、アザゼルって人も俺の名前を出したらしい。

 誰だよアザゼルさんって。会った事無いんだけど? それとサーゼクスさんって、俺のこと友達だと思ってるの? もしかして、友達少ない? ……なんか、ちょっと可哀相になってきた。

 薄々そんな気がしてたんだよ。だって、初対面の俺に妙に優しかったし。この前なんて二回会っただけで肩なんか組んできたし。

 炎駒さんに魔王も大変なんだね、的な事を話したら、少しでも良いので支えてあげて下さいと言われた。その時初めて、この馬が喋れることに気付いた。

 悪魔になると、馬って喋れるようだ。スゲェ。

 

 

 その三大勢力の会議? 天使と悪魔と堕天使の会議は、駒王学園の会議室でやっていた。……身近すぎるだろうと思った。

 入っていきなり、サーゼクスさんとセラフォルーさんの友人だと紹介された。違うと言いたかったけど、そう言える雰囲気じゃなかった。だって、みんなこっち見てるし。知らない人ばかりだし。絶対この中で俺が一番弱い。喧嘩的な意味で。

 グレモリー達も居た。それに支取も。取り敢えず、支取が居て安心できた。何かあったら助けてもらおうと勝手に思ってた。

 それと、まず最初に、『神が不在』という事を説明された。

 神様は、少し前に起きた戦争で死んだらしい。……世も末だな、本当に。夢も希望もねぇとはこの事か。驚く気力も無くて、案内された席で、出された飲み物を飲みながら聞いていた。酒だった。……いいのか、こんな昼間から。

 あと、なんか、イケメンのおじさんがこっちを見てた。後から知ったが、この人がアザゼルさんらしい。みんながそう呼んでた。やっぱり知らない人だった。

 レイナーレさん、退屈じゃなかっただろうか? すごく緊張してたようだし。

 そう思ってたけど、どうやらそれなりに退屈ではなかったらしい。良かった。

 その後、グレモリーと兵藤が会議の場だというのにイチャイチャしてた。気付いたら、指を絡ませて手を握ってた。爆発すればいいのに。

 その時丁度、姫島もこっちに視線を向けてきた。はい、見なかった事にします。主人想いの『女王』様だな、姫島。

 それと、神様が居ない事で、天使の方は結構大変らしい。まぁ、そりゃそうだ。悪魔には魔王。堕天使には幹部。大変だね、ミカエルさん。

 

 

 ――神が居なくても世界は回る。

 そう、アザゼルさんが言っていた。

 

 

 世紀末な世界にならなければいいなぁ、と切に願う。

 でも、平和になった=子作りはどうかと思う。そんなだから友達が出来ないんだよ、サーゼクスさん。もう少しマトモなこと言おうよ……。なんか、この人が不憫に思えてきた。グレイフィアさんも大変だなぁ。

 そして、兵藤が調子に乗ってトチ狂った事を宣言しようとしたら、なんかテロリストが襲撃してきたらしい。俺には全く分からなかったけど、全員が慌てていたから嘘という訳ではないんだと思う。

 なんでも、ギャスパー君の『神器』を悪用しようとしたけど、失敗したらしい。ざまぁ。

 『禍の団』ってテロリスト集団が来たらしい。その後攻めて来た人たちを全員で返り討ちにしてた。流石天使と悪魔と堕天使。マジで怖い。俺は後ろの方に隠れてたよ。

 気付いたら、戦いは終わっていた。赤い全身鎧が白い全身鎧と戦って、追い返してた。アレには見覚えがあった、兵藤だ。……あいつ、普通に強いな。羨ましい。

 その後、中国の歴史に出てきそうな鎧を着た人が白鎧の人――兜が壊れてから判ったけどヴァーリ君を連れて帰っていった。

 つか、あの痛い人、テロリストだったのか。なんとなく判るわー。

 なんでもヴァーリ君を連れて帰ったのは孫悟空らしい。……『禍の団』って、実は有名人の集まりなんだろうか? 神様も死んでるし、有名人はテロリストだし。嫌な世の中だ。

 しかも、そのテロリストのトップはウロボロスとかいうドラゴンらしい。本当に、有名なのが揃ってるなぁ。

 ウロボロスくらいなら俺でも知ってる。自分の尾を噛んだ蛇だ。

 こわいね。まぁ、巻き込まれてなんだけど、もう俺が関わる事は無いだろう。

 だって俺、普通の人間だし。そんな人外魔境の戦いは無理だよ。

 

 

 

 凸月S日

 

 結構間が空いたけど、日記を再開する。

 いや、あのあと熱出して寝込んだのだ。ストレスだろうと思う。だって、あんな人外魔境な戦いを経験したんだし。何もしてないけど。

 レイナーレさんが心配していた。申し訳ない事をしたと思う。

 あと、久しぶりに黒歌が帰ってきた。部屋の窓からだけど。身軽だなぁ。流石猫。

 甘えてくるので、レイナーレさんに気付かれないように一緒に寝ようと思う。

 

 

 

 凸月T日

 

 朝起きると、黒歌が居なかった。またどこかへ出かけたようだ。

 気ままな猫だ。でもそんな所が可愛い。

 レイナーレさんは会っていないらしく、悲しそうにしていた。

 黒歌には、早く帰ってきてほしいと思う。

 

 

 




主人公視点は、本当に書くことが無いなぁ。
次回から、また別視点です。

今回は、他視点の日記が増えそうだ……

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