とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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主人公=ケモナー(勘違い?)


34(堕天使日記 エピローグ)

 

 □月♪日

 

 徹様はいつも通りの様だった。

 体調も、大分回復されたようで落ち着かれている。良かった。

 なにか精が付く物を、と思うが、私のレパートリーではそれも難しい。

 アーシアと連絡を取ったら、明日の放課後、家に寄ってくれるとの事。

 ……あの子には助けてもらってばかりだ。

 今度、何か御礼をしようと思う。何が良いだろうか?

 

 

 

 □月♯日

 

 アーシアに料理を教わるのは、今日で何度目だろうか?

 この子のレパートリーは多い。私では、本当に一生追いつけないのでは、と思えるほどだ。羨ましい。子供のころから親の家事を手伝っていたのだとか。たかだか数か月の家事経験では、そもそも地力が違うのか。それに、私にはあまり料理の才能が無いようだし。そういうと、アーシアは笑っていた。料理は愛情なのだとか。それで上手になるのだろうか?

 ……そんなので上手になれば、苦労はしないと思う。

 アーシアは、兵藤君を想って料理をしていると言っていた。それが上達への近道だと。羨ましい。そう想える相手が居る事を、素直にそう思う。私にとっては徹様だろうか? 料理は難しい。

 それと、今日はケーキの作り方を教えてもらった。というよりも、一緒に作った。……ほとんどアーシアが、だが。

 しかし、思った以上に簡単だった。今度また作ろうと思う。店で買うよりも安上がりだし。

 料理もケーキも、徹様に好評だった。嬉しそうに笑っておられた。……私一人で作ったら、こんな風に笑ってもらえただろうか?

 少し複雑だ。

 アーシアが羨ましい。料理が出来て、器量も性格も良い。そう言うと、照れたように笑っていた。そんな笑顔も可愛かった。兵藤君は幸せだと思う。こんな子に想われているのだから。

 今日もアーシアは泊まっていくようで、さっきまで話していた。

 内容は、徹様の事と、兵藤君への愚痴ばかりだったが。でも、笑顔で話していた。幸せなんだな、と思う。

 ……あの時、この子が死ななくて良かったと思う。

 本当に良かった。

 

 

 

 □月√日

 

 アーシアと一緒に朝食を作った。以前も一度一緒に作ったが、今日はまた違う献立だった。

 この子のレパートリーはどれくらいあるのだろう?

 少なくとも、私の数倍はありそうだ。もしくは十数倍。……書いてきて情けなくなるな、コレは。やめよう。大丈夫。続けていけば、私のレパートリーも必ず増える……と思いたい。

 アーシアと徹様が学園へ行った後、アーシアへのお礼の品を探しに行った。

 小物とかの方が良いだろうか? それとも、お菓子とかの方が喜ぶだろうか? 贈り物などしたことが無いので、何が良いのか判らなかった。手持ちのお金もそう多くないし。

 バイトのような物をしたいが、身分を証明できるものが無いので難しい。面倒な世の中になったものだ。

 

 

 

 □月Π日

 

 夕食の後、黒歌が遊びに来ていた。

 そういえば、黒歌という名前をどこかで聞いた気がするが思い出せない。昔の日記にも書いていないので、会った事は無い、と思う。向こうも私を知らなかったし。

 しかし、徹様は黒歌をどう思っておられるのだろうか? 今日もマタタビを嗅がせて、撫でられていた。

 私は猫ではないが、アレはお酒か、媚薬のような物だったはずだ。

 ……まぁ、私が何か言うのは筋違いだと思う。それに、徹様は私の主なのだし。

 それよりも、アーシアへのお礼をどうするか、だ。

 リビングから離れたのは、決して逃げた訳ではない。

 ……この猫魈は徹様の事をどう思っているのだろう? 倒れられた時は助けてくれたが、知り合ったのは最近のはずだ。私が知らなかっただけ、という可能性もあるが。気になった。…それだけだ。

 

 

 

 □月Ω日

 

 今日も黒歌が遊びに来た。丁度良かったので、徹様との関係を聞いてみた。黒歌は何か不満そうだったが。断じて嫉妬などではない。私の知的好奇心の為だ。失礼な猫だ。

 黒歌が徹様と会ったのは最近の事らしい。

 なんでも、お腹が空いている時に猫缶を貰ったのだとか。流石猫。

 ……少しだが、黒歌が羨ましい。

 あの子は徹様を好きだと明言した。はっきりと。自信を持って好きだと言った。

 それが、少しだけ羨ましい。

 好きだから傍に居る。そうはっきりと言った彼女は、とても幸せそうだった。実際、幸せなのだろう。野良猫は寂しいと言っていた。だから、優しい徹様の傍に居ると寂しくないのだと。

 私は徹様に救われ、お役に立ちたいから傍に居る。慕っている。好意も抱いているのだと思う。でも、黒歌のように真っ直ぐにそう言う事が出来ない気がする。……黒歌と話していると、そう思えた。

 私達は似ているのかもしれない。

 徹様は罪な人だ。

 私よりもずっと年下のはずなのに、こうも惑わせる。

 

 

 

 □月ω日

 

 アーシアへのお礼、良い案が浮かばない。どうするべきだろうか? この家へ招いて、食事を御馳走する、というのも私の料理の腕では無理がある。何かを贈ろうにも、お金も無ければ、特別器用な訳ではない。

 ……困った。八方塞がりというのは、この事か。

 何か使える物は無いかと、以前住処にしていた教会へと足を運んだが、碌なものは無かった。というよりも、あそこに有ったのは盗品や曰く付きの物ばかりなので、贈り物には向かない。

 こういう事を相談できる相手が居ない、というのも問題だ。徹様は男性だし。できれば女性が良い。

 私の友好関係の狭さも問題だ。無駄にプライドを気にする自分の性格が恨めしい。

 

 

 

 □月/日

 

 徹様は、黒歌を飼うつもりらしい。今日、黒歌にそう話されていた。

 私は、特に反対するつもりは無い。むしろ、喜んで受け入れる。

 黒歌には徹様を助けてもらった恩があるし、私自身、あの黒猫の事はそんなに嫌いじゃない。できれば、もう少し徹様から離れてほしいが。リビングが汚れるのだ。それに、服に毛が付くし。掃除と洗濯が大変なのだ。それを除けば不満は無い。徹様も、黒歌と居る時は楽しそうにされているし。

 黒歌も、満更でもなさそうだった。というか、かなり嬉しそうだった。私も女だ。そのくらいの機微は判る。黒歌は、喜んでいた。野良猫は、人に飼われる事を喜んでいた。私でも、嬉しくなりそうなくらいに。

 ……私も、徹様の好意で家に置いてもらっているから判る。徹様が居るから、この家は居心地が良いのだと。

 黒歌は、徹様が温かいと言っていた。そして、私を似た者同士だと。今は、少しだけその意味が判る気がする。

 黒歌がこの家に来てくれると嬉しい。何より、相談相手が増える。

 

 

 

 □月+日

 

 学園の帰りに、徹様が猫用のベルト式の首輪を買ってこられていた。黒歌が人型の時でも調整して首に嵌められるからだろう。

 黒歌も、いつものように夕食後にふらりとやってきた。この時間になるのを待っていたのは明白で、ソワソワしていた。……正直に言うと、凄く可愛かった。徹様ではないが、私も撫でたくなるくらい可愛かった。

 迷わず徹様の足元に擦り寄ったり、頭を徹様へ擦りつけてマーキングしたり、首輪を付けやすいように首を伸ばしたり、徹様に名前を呼ばれると目を細めて悶えたり……。羨ましいくらいに可愛かった。しばらくリビングで転がりながら、徹様に可愛がられていた。これが、あの美人な黒歌だとは到底思えないくらい、愛らしかった。

 ……私も、あれくらい素直になりたいものだ。

 ともあれ、ようこそ、だ。

 これからよろしく、黒歌。

 

 

 

 □月‘日

 

 徹様におかえりと言われ、黒歌が戸惑っていた。もしかしたら、あれが黒歌の本当の顔なのかもしれない。

 戸惑いながらただいまと言い、徹様に撫でられると幸せそうに笑っていた。

 私もおかえりと言うと、恥ずかしそうにただいまと言ってくれた。

 野良猫ではなくなった黒歌は、とても幸せそうに笑うようになったと思う。

 

 

 

 □月」日

 

 黒歌が家に来て、少し落ち着いた。というよりも、生活に慣れてきた。

 偶に数日家を空ける時があるが、それは『仕事』らしい。内容は教えてくれないが。徹様も何も言われない。黒歌の実力は先日見せてもらったのだが、やはり心配だ。……私などよりは、数倍強いが。

 私にも紹介してくれないか、と言ったが断られた。実力的にも、仕事の内容的にも紹介できないのだとか。……それならしょうがないか、と諦めるしかない。

 まぁ、無事に帰ってきてくれるならそれでいい。そう言うと、嬉しそうに笑っていた。

 それと、私には仙術や妖術の才能は無いらしい。

 つくづく、私には何の才能も無いのだと思い知らされる。戦闘だけでもお役に立ちたい。せめて、足を引っ張らない程度には、強くなりたい。

 そちらの面でも、相談できる相手が居ない。リアス・グレモリー? 難しいだろう。私は彼女の配下を傷付けた前科があるのだから。

 それはともかく、黒歌にアーシアへのお礼の件を相談した。

 そういうのは気持ちが大事との事。

 ……その気持ちというのが難しいのだが。やはり、相談相手が少ないのが悔やまれる。

 

 

 

 ☆月A日

 

 自分の気持ちがよく判らない。

 黒歌が、徹様と一緒にお風呂に入った。猫のままだったが。

 その間も、その後も問題だったが……徹様とお風呂に入った黒歌は、とても幸せそうな顔で出てきた。

 徹様に身体を拭いてもらい、可愛がってもらい、愛してもらっていた。

 羨ましいと、素直に思った。

 直視できなくて、リビングから出てしまうほどに。

 ……以前、グレイフィア様に教えてもらった事を書き残したメモ帳に、こんな時の為の事があったはずだ。

 後で読み直そうと思う。

 

 

 

 ☆月B日

 

 今日、徹様のお背中を流した。徹様も恥ずかしがっていて、それが限界だった。決して、私が恥ずかしかったわけではない。相手は私よりも年下なのだ。このくらい、なんて事は無い。その際、ちゃんとグレイフィア様に教えてもらった通り、バスタオル一枚で洗った。ああいう時は、それが一番らしい。……グレイフィア様もしたことがあるのだろうか? 今度会う機会があったら、聞いてみようと思う。もしした事があるのなら…私はきっと、あの悪魔を生涯尊敬する事が出来るだろう。

 ……身体を使って相手を洗うなど、レベルが高すぎると思う。流石は悪魔。背徳的なモノが一番得意なだけの事はある。偏見かもしれないが。まぁ、堕天使も悪魔も天使も、女はみんな似たようなものだと思うが。私はちゃんと手を使って徹様を洗った。身体で洗う? 堕天使の私ですら、メモ帳を読み直した時は目を疑った。実行など無理だ。

 とにかく。あんなの、もうこりごりだ。疲れた。家中を掃除するより、数倍疲れた。

 

 

 

 ☆月B日

 

 黒歌が言うには、お風呂場で体を洗う時は、徹様だけでなく、私も洗ってもらうのが良いらしい。

 なるほど。

 今度する時は試そうと思う。あと、堕天使の翼の毛繕いをしてもらうのも良いのだとか。

 ……迷惑ではないだろうか? 言ってはなんだが、私が自分でするのすら面倒だと思う時があるのだが。

 男の人の嗜好というのは、よく判らない。身体で気持ち良くなる以外にも、色々あるんだな、と勉強になった。

 私も、別に経験が無いわけではない。だが、どうやら私の知っている知識は、随分と狭いようだ。

 そういう意味では、黒歌は良い相談相手なのかもしれない。

 ……私が活用するかどうかは別にして、だ。

 

 

 




ハイスクールD×D本編のように、このSSがピンクに浸食されつつある気がする。
まぁ、本編は直球過ぎる気がしないでもないけどねw

とりあえず、グレイフィアさんが好きすぎる。
レイナーレさんの師匠はグレイフィアとアーシアと黒歌。異論は認める。


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