とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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※猫なんだよ?


33(黒猫日記 エピローグ)

 □月S日

 

 勝手知ったる他人の家。トオルの家に窓から侵入すると、案の定倒れてた。

 そりゃそうだ。コカビエル程の堕天使を老衰させるほどの力を人間が使ったのだ。反動が何も無いのがおかしい。多分、『神器』の強さに身体がついて行かないのだろう。

 足らないのは、魔力じゃなくて生命力。あのままだと、多分衰弱死しちゃうだろうなー……。

 寂しくなるにゃー……。死んじゃったら嫌だにゃー……。

 だがしかし、仕事で冥界に来たから、思いつく限りの薬草を集めた私が居る。

 ……この薬草、どうするかにゃー……。

 まぁ、美容にもいいから私が食べても良いんだけどねぃ?

 嗚呼、美猴の視線が痛かった……そりゃ、目に付く限り、片っ端から薬草を引き千切ってたら、変な目で見られるにゃー。私だって、美猴がそんな奇行をしたら「ついにおかしくなったか」とか思うにゃん。

 あー……今夜は徹夜で、お薬作りかにゃー…。睡眠不足は美容の大敵にゃー…。

 

 

 

 □月T日

 

 トオルはどうしてるかにゃー? 元気にしてるー? 一日経ってケロっとしてたら、おねーさん噛むからね?

 まぁ、無事ならいいんだけどにゃー。

 

 

 

 □月U日

 

 トオルに薬を渡しに行くと、トオルの家の気が澱んでたにゃー。やっぱり、家主が臥せってると、家も臥せっちゃうもんなんだねぇ。

 この前行った時は居心地が良かったのに、今日は違和感を感じるほどだった。

 メイドも、心なしかやつれてた。心配してたんだにゃー、トオルの事。駄目だぞ? あんな美人を心配させちゃ。それと私も。ちょっとだけ心配したし、睡眠時間を削って薬を作ってあげたんだから、今度何かしてもらおう。

 まぁ、体調は悪くなってたけど死んでなかったから、それくらいで許してあげる。私って優しいにゃー。

 ちなみに、薬はメイドが口移しで飲ませてた。顔がちょっと赤くなってた。初々しいにゃあ。

 数時間もすると、呼吸は随分と落ち着いていた。身体の気の乱れはまだ酷かったけど、やっぱり直ぐには治らなかった。

 夕食時には、意識が少しだけ戻るまで回復していた。食事を食べた後は、また気絶するように寝ちゃったけど。折角私が人の姿を見せたのに、アレは絶対覚えてないにゃー……ショックにゃん。

 そのあとしばらく様子を見てたけど、これは結構掛かりそうだにゃー…。トオルの身体がもてばいいけど。

 あんまり、おねーさんを心配させないでね? 死んだらヤだよ? 

 薬のお代に、別れ際にキスさせてもらった。トオルはあったかいにゃー。

 

 

 死なないでね? 猫は、寂しいのに弱いんだからね?

 

 

 

 □月α日

 

 ここ数日で、ようやくトオルの体調が落ち着いた。

 よかったにゃー、ちょっとだけ心配したんだからね? おねーさんを心配させるだなんて、悪い子だにゃー。今度お仕置きしないといけないにゃん。

 『禍の団』の仕事も落ち着いたし、もう暫くは、この町に居られるかにゃー。お薬も沢山作ったしね。

 白音ちゃんも心配してたにゃー。ほんと、トオルは罪づくりな男にゃん。

 

 

 

 □月V日

 

 トオルが居ない間に、トオルの家に遊びに行った。メイドが掃除をしてた。……当たり前か。

 薬のお礼って言ってたけど、気にしなくていいにゃん。白音を助けてくれたお礼にゃん。まぁ、トオルはその事に気付いてないだろうけど。というか、白音の正体も知らないだろうし。

 でもいいにゃん。それでも、白音を助けてくれた事には変わりはないのだ。

 まぁ、心配させられたから、今度お仕置きしないといけないけどにゃー。

 一応念のため、数日分の薬を渡しておいた。まぁ、もう大丈夫だろうけど。

 メイドも安心してたし、良い事すると気分が良いにゃん。

 そのメイドから、どうしてここまでしてくれるのか、と聞かれた。

 ……どうしてだろうね? 私が聞きたいよ。こんなの私のキャラじゃないんだにゃー。トオルの心配はしても、寝る間も惜しんで薬作りなんて絶対しなかった。私は、そういう猫だにゃー。

 あのメイドに言ったように、トオルが心配だから? それだけ? よく判らないにゃー。

 

 

 

 □月W日

 

 いやー……今日はもう、本当。どうしよう? やっばいにゃー。困ったにゃー。

 学園が終わる時間に、トオルを待ちながらぼんやりしてたわけですよ? ほら、猫って自由に行動するものだし?

 白音ちゃんはグレモリー家の配下悪魔達と部活だし、見てても退屈だったのだ。という訳で、久しぶりにトオルに撫でてもらおうと思った訳にゃん? うん、別に変な所は無いね。

 ふふん、黒歌さんはトオルの帰り道はすでに熟知してるのさ。なので、トオルに会うのは簡単なのだ。

 久しぶりに見た元気なトオルは、今日も私に猫缶をくれた。常備してるの? もしかして私の為? トオルからは、白音以外の猫の匂いはしないから、素直に嬉しいにゃん。

 猫缶を食べながら撫でられると、初めて会った頃を思い出したにゃー。

 トオル? レディを撫でていいのは、レディが許した人だけだからね? 忘れちゃだめだよー? まぁ、気付かないだろうけどねぇ。

 そんな事を考えながら撫でられてたの。もう、トオルって私を撫でるの上手になったよねぇ。

 おねーさん、ちょっとクセになっちゃいそう。

 でもね、今日のはちょっといただけないにゃー。

 まず最初に、焦らすように優しく撫でるのはいつもの事だけど、私が腰砕けになったころに、いきなり抱きかかえられちゃったにゃん。

 しかも、そのままトオルの家にお持ち帰りされちゃった。大胆だにゃー。おねーさん、ちょっとドキドキしちゃったよ? にゃふん。

 トオルの家に、トオルと一緒に来るのは初めてだったにゃー。しかも、抱きかかえられて。ロマンチックだ。女の子の憧れかも?

 ……メイドの視線が微妙だったけど。

 黒歌さんだってか弱い女の子なんだから、男の子に抱かれたら身動き取れないにゃー。まぁ、乱暴されそうになったら必死に抵抗するけどにゃー。でも、それもちょっといいかも。

 しかし、だ。しかしだ。

 その後がいただけない。駄目だよトオル? 断りもなしに、いきなりマタタビなんて嗅がされちゃった。

 あー……まだ、頭がポワポワしてる。トオルにどれだけ撫でてもらったか、優しくしてもらったか、記憶に霞が掛かっちゃってる。

 しかも今日は、背中とお尻……私の弱い所を重点的に責められちゃったんだと思う。トオルと別れた今も疼いて仕方がない。この責任、どうとってくれるのかにゃー。シャワーを浴びても、全然納まらないんですけど? トオルー、切ないよー。私の指じゃ、全然物足りないよ? トオルの指が欲しいよ? うー……あー……。

 そんな風に、頭の中をピンク一色にしながら日記書いてる私を見たら、トオルはどうするかにゃー?

 多分、今求められたら、黒歌おねーちゃん、トオルに――うにゃー……。

 ……トオルが死ななくて良かったにゃー。本当に、死ななくて良かったにゃー。だって、今日みたいに優しくしてくれると、寂しくないしね。温かくなれるしね。だから、あー…どうしよう? やっばいにゃー。困ったにゃー。

 

 

 ……もしかしたらおねーさん、トオルに溺れちゃってるかも。

 困ったなぁ。どうしよっかなぁ…そんなの、私のキャラじゃないにゃー。

 黒猫さんは、独りでも大丈夫、生きていける、孤高の存在のはずだったのににゃー。

 

 

 

 □月♪日

 

 トオルから、マタタビの匂いがした。

 ……もうあの子は…私で味を占めちゃったな?

 だめだぞー。それは二人っきり…じゃなくてもいいけど、人が少ない所が良いにゃー。

 まぁ、それは置いておいて。

 そのまま学園に行っちゃったよ、トオル。白音、大丈夫かにゃー?

 あの子もマタタビには滅法弱いんだにゃー。

 でも、今はトオルの顔を見たくないにゃー。だって、恥ずかしいし。あー……こんなの私じゃないにゃー。

 

 

 

 □月♯日

 

 トオルの家で、トオルの快復祝いをしてた。

 それを、窓の外から眺めてた。……なんて寂しい猫だ、私。

 でも、いいなぁ。トオルの周りには、沢山の人が居る。羨ましいくらい。きっと、トオルは寂しくなんてないんだろうにゃー。トオルは温かいから、きっとみんな集まっちゃうんだろうね。

 私は寂しいよ? だって独りだもん。寂しい野良猫は、温もりを求めちゃう。しかも! 私はトオルの温かさを知っちゃった。これは駄目にゃー。野良猫は、温かい所に本能的に寄っていっちゃうのだ。今日も、ちょっと寂しくなっちゃっただけで、トオルの家まで行っちゃったし。駄目だなー、私。

 寂しいのは哀しいよ、トオル?

 ……トオルに撫でてほしいにゃー。

 

 

 

 □月√日

 

 これって何って言うんだろうね? 依存? 禁断症状? トオルに会いたいにゃー。寂しいにゃー。『禍の団』の仕事が手につかないくらい、トオルの事を考えちゃってる。…ほんと、どうしちゃったんだろ、私。美猴が心配するレベルだったよ。これは異常だよ? 

 ……そんな事、私が一番よく判ってる。

 私は、私が思ってる以上に寂しかったのかにゃん? よく判らない。寂しいのは自覚していた。温もりに飢えていたのも判ってた。でも、ちょっと優しくされただけでこうなるなんてねぇ。私って、実はちょろい? ちょろかったりするのかな? やだにゃー。

 でも、これはトオルに向けてだけだし、むしろ一途と言えるのではないだろうか? ……何を書いてるのか、私は。

 一途だなんて、それこそ私じゃないにゃー。

 あー……明日はトオルに会いに行こう。このままじゃ、寂しくて死んじゃいそう。猫なのに。兎じゃなくても、寂しくて死ぬのかもしれないにゃー。

 

 

 

 □月Π日 

 

 トオルに会いに行くと、トオルは私を優しく迎え入れてくれた。やっぱり優しいにゃー。

 でも、その後はいきなりマタタビを嗅がされた。もう…いきなりなんて、ムードも何も無いにゃー…。

 ……うぅ…トオルがマタタビの味を占めちゃった。私の所為? 私の所為なの?

 しかも今日は、思いっきり強くされちゃった。あーうー……お尻がまだムズムズしてる。尻尾なんて、掴まれた感触が思いっきり残ってるにゃー…。どうしよぅ。

 強くしてほしい時は優しくするくせに、優しくしてほしい時は強くするなんて…これじゃ、おねーさんはますますトオル君に溺れちゃうよ? おねーさん、自分でいうのもなんだけど…面倒臭いよ? 『禍の団』の一員だし。賞金首だし。主人殺しで悪魔からも狙われてるし。……それでも、トオルは私を傍に置いてくれる?

 どうしよう。こまったにゃー。黒歌さん、トオルの事ばかり考えちゃってるよ? ……トオルの所為で、身体がムズムズするよー。眠れないよー。睡眠不足は、美容の大敵なのににゃー…。

 

 

 

 □月Ω日

 

 トオルに優しく…まぁ、強くしても良いけど? もう、トオルの好きにしてくれていいよ? そんな感じで取り敢えず、トオルに会いに行ったら…堕天使に捕まった。

 堕天使レイナーレ。トオルのメイドだ。

 嫉妬か? 嫉妬だにゃ? 可愛い所があるじゃないか、あのメイド。きっと、夜の方は尽くすタイプだにゃ。

 でも、私と違っていつも一緒に居るんだから少しくらい譲ってほしいにゃー。

 今日はトオルも無し、マタタビも無しだったにゃー。うにゃー……。

 でも安心して良いにゃん。黒歌さん、トオルを盗る気は無いから。私は泥棒猫じゃないにゃー。……この前、この家に忍び込んだけど。

 ただ、寂しい時に、ちょっと傍に居てくれるだけで満足にゃん。

 私がトオルを好きな理由? 優しくしてほしい時に優しくしてくれた。それだけだにゃー。野良猫は、寂しがり屋なんだにゃー。

 ちなみにレイナーレは、死にそうになった所を救われたから、らしい。好き、とは明言しなかったけど。慕っていると言ってたけど。苦しい言い訳にゃー。女を舐めちゃダメだにゃん。そういうのには敏感なんだから。

 私達は似た者同士なんだにゃー。

 トオルは罪な男にゃん。

 

 

 

 □月*日

 

 最近、『禍の団』の仕事が無い時は、ずっとトオルが居る街に来てるにゃー。白音を見にだけど。

 どうしようもない猫だにゃぁ、私は。

 でも、困ったにゃー……。

 トオルから、白音の匂いがした。それは、まぁ、普通だ。うん。同じ学園に通ってるし?

 ……私って、トオルの匂いと白音の匂い。どっちが好きなのかにゃー? 判んなくなりそう。いや、白音が好きだよ? そう断言できるけど、私もオンナな訳です。雌な訳です。女の友情よりも男が大事。じゃあ、妹なら? うーん、困った。色ボケてるにゃん。それもこれも、トオルの所為だにゃん。トオルのばーか。

 

 

 

 □月/日

 

 どうしよう? 困ったね? あー、困った。困り過ぎて、日記にも困ったしか書いてないくらい困った。

 ……トオルに、首輪を付けるか、って聞かれちゃったにゃん。それは良い。別に、それはまぁ、別に? うん、別に、いい……のかなぁ?

 いやね? どうしようね? はい、ってなにさ、はいって。もっと言い様があるんじゃないかにゃぁ、私。

 首輪でも付けるか? はい。

 ……飼い猫になるのはマズイ。いけない。良くない。

 だって私は賞金首で、主人殺しで、『禍の団』の一員なのだ。しかもトオルは、白音の傍に居る人間だ。

 リアス・グレモリーが近くに居るのも良くないし、ソーナ・シトリーも同様だ。

 ……そんなトオルの傍に今までいた私が何を言っているのか、という気分になるが。

 けど、よくない。飼い猫は、首輪を付けられるのは。よくない。

 だって、トオルは普通の人間なんだもん。巻き込んだら駄目だよね……。

 まぁ、リアス・グレモリーとかが巻き込んでるから、今更かもしれないけど。

 ……いいのかにゃー…。

 

 

 

 □月+日

 

 トオルに名前を呼ばれたら駄目だった。アレはダメだ。ズルい。ズルすぎるにも程がある。

 初めて、人に名前を呼ばれて鳥肌みたいなのが立った。頭の先から尻尾の先まで痺れちゃいそうだった。

 トオルの声って優しいにゃー……私、虜になりそう。付けてもらった首輪は安物だったけどにゃー。

 まぁ、給料三か月分なんてまだ無理だろうけどにゃー。

 でも嬉しいにゃー。にゃー、にゃー、にゃー。うにゃー。

 大きな首輪だから、人型になっても首に巻けるし。

 ……あー。トオルの飼い猫になっちゃったなぁ。どうしよう。

 

 

 

 □月‘日

 

 トオルの家に行くと、おかえりと言われた。

 ああ、ここは、私の家でもあるんだなぁ、と。

 ……ただいま、というと撫でてくれた。

 私にも、帰る家が出来た。……嬉しい。

 

 

 

 ☆月A日

 

 『禍の団』の呼び出しがあった時以外は、私は家に居るようにしてる。

 帰る家があるというのは、思いのほか精神に余裕を作るようで、最近は仕事の調子も良いんだにゃぁ。でも、修行の時間が減っちゃってる。由々しき事態にゃ。

 家に帰ると、トオルとレイナーレがおかえりと言ってくれる。うにゃぁ。うにゃん。

 今日はトオルと一緒にお風呂に入った。にゃん。トオルは大胆だにゃー。

 ローションというか、ソーププレイ? あのヌルヌルはクセになる……はふぅ、って感じ。後トオル? 私も女の子だから、前は隠してほしいにゃー。

 しかもその後、マタタビを嗅がされてから身体を拭かれた。あれはもう、何プレイになるんだろう?

 指と違ってちょっと柔らかい感触がもどかしくて堪らなかった。物足りないにも程がある。なんて焦らしだろう。トオルは鬼畜にゃー。

 うにゃー…でも、お風呂上りにも可愛がってもらえたにゃー。

 最近、トオルに撫でてもらったり優しくされると――気持ち良いより先に、幸せを感じてしまってる。だめだにゃー……。

 まだ私は、白音とも仲直りしてないのに。男は女をダメにするにゃー。でも、黒歌は今はそれでもいいにゃー。今は、この幸せに浸っていたいんだよ。トオルと一緒に居ると、寂しくないから。

 いつかは『禍の団』の事も気付かれちゃうだろうから、それまでの短い幸せにゃん。もっともっと楽しみたいにゃー。

 ……ここに帰ってくることが出来なくなった時、私は確かに幸せだったって思い返せるくらい、たくさんの思い出が欲しいにゃん。

 

 

 

 ☆月B日

 

 レイナーレが、トオルの後を追ってお風呂場に入っていった。

 大胆だにゃー。可愛いにゃー。昨日私が一緒にお風呂に入ったから、気にしてるのかにゃん? うにゃー、私が食べちゃいたいかも。

 でも、私はトオルを盗ったりしないから大丈夫なのにゃー。トオルは皆のものだにゃん。

 だから、明日は私に分けてね、レイナーレ?

 

 




《にゃーん》な事は、紳士の皆さんの脳裏に刻まれています。
そうでしょう? だって皆さんは《紳士》なんですから(ゲス顔


今日ACVと英雄伝説の新作が発売だったから、もしかしたら投稿スピード落ちるかもしれません

あと、前回誤字とかいろいろ間違いが多くてすみませんでした。
ヴァーリすまぬ…いちおう修正しました。変な所があったら、また教えてください。

あ、それと前回の感想の時、
もし、少しでも嘘を吐いている、と…良心の呵責に囚われた方……焼き土下座13分ね

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