とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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結局書いてしまった自分が憎い(ぇ
彼はちゃんと存在していたんだよ!
一巻、二巻部分も書いた方が盛り上がるんだろうか?
一応、シリアルなんで気を付けて


27(騎士日記)

 □月A日

 

 イッセー君の家のアルバムに、忌々しいモノが映っていた。

 聖剣。僕の『神器』の対極にある、忌むべき剣。魔剣よりも呪われるべき聖剣。

 エクスカリバー。

 もう何年も昔の写真だったが――最近薄れていた物を思い出した。

 忘れてはならない。覚えていなければならない。

 いずれ、僕はこの剣を一本残らず破壊する。

 その為に生きているという事を、忘れてはならない。

 

 

 

 □月B日

 

 聖剣の写真を見てから、どうにも今までの日常が詰まらない物に思える。

 そんな事は無いし、イッセー君や小猫ちゃんは僕を心配してくれている。

 それは正直嬉しいし、今のこの状態――僕が悪いんだと判っている。

 でも、どうしようもない。

 胸の奥に燻り続ける熱が、今すぐに聖剣を壊せと叫んでいる。

 授業や部活なんかよりも、よっぽど重要な事だ。

 僕は、この熱――この家族に生かされているのだから。だから、僕はこの叫びを無視する事が出来ない。いや、この声のままに行動しなければならないのだ。

 聖剣を壊す。エクスカリバーを……僕の家族を奪った忌むべき聖剣を。壊したい。

 何の情報も無いのだけれど、だ。

 

 

 

 □月C日

 

 今日も、イッセー君が心配して声を掛けてくれた。

 その彼に、聖剣を持っていた人の事を聞いてみたが、あまり覚えていないらしい。

 判ったのは名前だけ。しかも持っていた人ではなく、その人の娘――紫藤イリナ。

 聖剣使いの娘……もしかしたら、僕はその子を殺す事になるかもしれない。

 そうすると、イッセー君は怒るだろうか? 怒るだろうな。

 でもきっと、その子が聖剣を持っていたら、僕はそれでもその子を殺すだろう。

 僕達のこの感情は、それくらいに深く激しいのだ。

 忘れるな。聖剣を壊す。それだけが、僕が生きる理由なのだと。

 

 

 

 

 □月F日

 

 放送で、上代先輩が生徒会に呼ばれていた。

 ソーナ・シトリー様の配下で構成された生徒会。そこに呼ばれた人間。

 アーシアさんの話では、神の御業を使う先輩――上代徹。

 部長どころか、魔王様達さえ一目置く『神器』使い。

 イッセー君を傷付けた堕天使を助け、手元に置く先輩。

 ……あの人なら、聖剣の場所を知っているだろうか?

 だが、下手に関わりたくない、とも思う。

 あの先輩は未知だ。何を考えているのか、どうして悪魔である僕達に近づいてくるのか判らない。

 何か目的があるのか、ただの気紛れか、あるいは……人を止めようとしているのか。

 結論を書くなら、よく判らない人だ。

 関わらないで済むなら、僕は関わりたくない。

 神の御業――光は、大嫌いだからだ。光は、憎むべきものだからだ。

 神の御業を使う彼は……憎むべき光そのもののように感じるからだ。

 逆恨みのような物だと理解しているが、こればかりはどうしようもない。

 

 

 

 □月H日

 

 今日は、ソーナ先輩と一緒に、上代先輩が部室に来た。それと、匙君も。彼もドラゴン系の『神器』を持っている転生悪魔だ。

 そんな三人は、球技大会のあいさつに来たようだった。

 しかも、上代先輩を生徒会側に置くという暴挙に出て。

 魔王と並び立つ人間を味方に引き込んだ、と部長に知らせに。

 しかし、人間なのによくよく悪魔に関わる先輩だ。そんなに悪魔と関わっていたいのだろうか?

 光を使う人間なのに、闇の悪魔と関わるか……妙な先輩だ。

 

 

 

 □月I日

 

 部長たちに怒られた。

 どうやら僕は、自分で思っているよりもずっと腑抜けているらしい。

 聖剣の事ばかりを考え、周りを見ていないからだろう。

 だが、どうしようもない。頭の中が聖剣の事しか考えないのだ。 

 僕の魂が、聖剣を壊す事だけを考えるのだ。

 日記を書いている今も、聖剣の事ばかりを考えている。

 どうやって壊すか。どうやって殺すか。どうやって――。

 気が狂ったのだと思う。それほどまでに、聖剣への憎悪しか僕の中にはない。

 球技大会で僕を庇ったイッセー君。

 腑抜ける僕を本気で怒ってくれた部長。

 心配してくれる、部活の皆。

 ……それでも僕は、部活の皆よりも聖剣を選んでいる。

 愚かだと思う。馬鹿だと思う。きっと、救いようがないのだろう。

 救われたいとも思わないが。

 

 

 

 □月J日

 

 部長と喧嘩してしまった。

 僕を救ってくれた部長。心優しい部長。その部長を、僕はきっと、言葉で傷つけてしまった。

 その罰なのだろう。帰り道の途中で、雨が降り始めた。

 その雨の中を傘も持たずに歩く僕の姿は、さぞかし滑稽だった事だろう。

 そんな僕に、上代先輩が声を掛けてきた。心配か、それともただ僕の奇行が興味を惹いたのか。

 でも、何かを話す前に、嗅ぎ慣れた匂いを感じた。

 土砂降りの雨の中、それでも嗅ぎ慣れた匂いの先には、忌むべき聖剣があった。

 エクソシストを殺していたフリード・セルゼン。その手の中に、忌むべき光があった。

 一瞬で煮だった頭。だが、魔剣を造るよりも早く、神父が動いた。

 先日戦った時には無い速さ。殺されると確信した直後、誰かに押された。

 上代先輩。先輩は、僕を庇って聖剣に貫かれ、光となって散った。また、僕の前で聖剣に命が奪われた。

 僕の魔剣を軽々と砕く聖剣。上代先輩を奪った聖剣。

 だが――フリード・セルゼンは、聖剣でも殺せない化け物だと、上代先輩だった光を見ながら言った。

 結局、その後は数合斬り合って逃げられてしまった。

 部長が以前話していたのを思い出した。

 先輩は、死なない。

 死ねないのだと。

 

 

 

 □月K日

 

 上代先輩は、学園に登校してきていた。ちゃんとこの目で確認した。

 聖剣エクスカリバーで殺されても死なない人間。それは本当に、人間なのだろうか?

 魔王様達が上代先輩に興味を持つ理由が、少し判ったような気がした。

 そして、部長たちが先輩に興味を持つ理由も。

 グレモリーという悪魔は、悪魔というには身内に甘すぎる一族だ。

 上代先輩は、リアス部長に良く似ている。

 死んでも蘇るからと、命を投げ捨てる事が出来る人間など、きっといない。

 判っていても、死んで蘇るという確証は無い。何かの事故、妨害で蘇る事が出来なくなることだってある。

 さらに、今回先輩を殺したのは最上位の聖剣だ。不測の事態は十分にあり得た。

 だというのに、僕を庇って先輩は死んだ。命を投げ捨てた。

 ……誰にも出来る事ではない。きっと、僕は出来ない。

 だから、素直に凄いと思う。

 上代先輩……聖剣の件が片付いたら、必ずお礼を言おう。

 

 

 

 □月L日

 

 聖剣を持つあの神父を探したが、見つからなかった。

 血の匂いの先にはエクソシストの死体があったから、まだこの街に居るはずなのは確かだが。

 早く見つけて片付けないといけない。

 あの神父は危険だ。実力も、その狂気も。

 

 

 

 □月M日

 

 見つからない聖剣に、苛々する。

 覚えていないが、クラスのみんなにも酷い事を言ったと思う。

 ……だがそれでも、止まれない。

 聖剣を壊す。

 それだけが、僕の生きる理由。それだけが、僕の使命。

 ――聖剣を壊さない限り、それ以外は僕には無いのだから。

 

 

 

 □月N日

 

 部室から、忌々しい光の気配を感じた。

 聖剣だ。

 だが、持ち主はおそらくフリード・セルゼンではない事はすぐに判った。

 気配も、雰囲気も、光の波動の質も違った。

 部室に行くと、イッセー君と……珍しく、上代先輩が見知らぬ女性を睨んでいた。

 二人の女性も、上代先輩を睨んでいる――後から聞いた話だと、二人の女性がアーシアさんを悪く言い、上代先輩が怒ったのだ、と。

 悪魔の為に怒る人間なんて珍しい、と今なら思う。

 その時は、二人が持つ聖剣を壊す事しか頭になかった。

 上代先輩が「偽物」と言った、確かな聖なる気を放つ聖剣――エクスカリバー。『破壊』と『擬態』の名を持つ聖剣。それを壊す事だけが頭にあり、気付いたら僕も喧嘩を売っていた。

 イッセー君と僕。紫藤イリナとゼノヴィア。

 グレモリー配下の悪魔とか関係なく、ただただ――聖剣を壊せる事が出来る喜びだけを感じていた。 

 結局、殺し合いに発展する前に、上代先輩が戦いを止めたけど。

 時間を巻き戻す『神器』。イッセー君が間違えて消した小猫ちゃんとアーシアさんの服を瞬く間に直したのだ。

 『神滅具』――イッセー君のソレと同等。もしくはそれ以上とも言える『神器』。

 多分、もう一人の『僧侶』。彼の『神器』と同質なのだろう。

 デタラメな神器の効果に、誰もが動きを止めてしまった。本能的に、精神が冷えた。

 この場の誰よりも彼が『強者』であると、それだけで気付かされた。世界に生きる者なら誰も逆らう事すら許されない概念『時間』。以前、イッセー君が言っていたことを思い出した。上代徹先輩は、『時間』を支配する事に特化しているのだと。

 それは、この世界に生きる誰もがこの先輩に逆らう事も許されない、という事なのだと、本能が理解した。

 呪文の詠唱も、『神器』発動のタイムラグも、感情の揺らぎも無い。無動作からの能力発動。しかも時間操作系。彼が本気で怒れば、この場の全員が瞬きをするよりも短い時間で全滅させられるという事実。彼なら出来る。彼にしか出来ない。その確信が、胸に在り、その確信が聖剣の事で煮だった思考を冷めさせた。

 先輩は、この下らない決闘まがいの喧嘩に怒ったのだろう。そのまま帰っていった。

 ……最初に安堵の息を吐いたのは、僕か、イッセー君か。

 というか、イッセー君のドレスブレイクを、あまり良い目で見てなかったような気がする。

 イッセー君を見ると、蒼い顔をして小刻みに震えていた。それだけで、聖剣への憎悪が、少しだけ薄らいだ気がした。

 その後、部長がドレスブレイク禁止と言っていたが、二つ返事で頷いていた。……そんなに怖かったんだね。

 まぁ、上代先輩の怒りが自分に向くとなると、僕も体が震えてしまいそうだけど。

 結局、その後はなし崩し的にお開きになった。

 こんな状態では、決闘だの喧嘩だの言うのも馬鹿げている。

 まずはフリード・セルゼンのエクスカリバー。この二人の聖剣はその後だ。

 そのまま、僕はその場を後にした。

 部長に引き留められたが、今は一人で行動したかった。

 僕は、同志たちのおかげであそこから逃げ出せた。だからこそ、彼らの恨みを魔剣に込めないといけない――。

 

 

 




多分、こっちも次で終わると思う。一応、予定ね
黒猫が出ないし、木場くんだから感想が貰えそうにないなー(チラッチラッ
しかし前回、すごい量の感想をもらいました、ありがとうございます。
さすが、黒猫は格が違うな。

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