……主人公だった。
Ｈ月Ｍ日
ゼノヴィアも、色々と考えてるんだな。
普段はエロゲーやらに興味を示してるけど、今日はそう思った。
初めて通った学校、友達、部活動、行事。
そういうのを全部ひっくるめて駒王学園が大好きで、だから生徒会長になりたいってさ。
俺はそれくらい、駒王学園が好きなんだろうか。
よく分からない。
考えた事が無かった。
けど、レイナーレから殺されたけど、リアスと逢えた、アーシアと逢えた、皆と逢えた。
あの学校はかけがえのない場所だと思ってる。
そして、俺の目標を改めて気づかせてくれた。
『王』になる。
絶対だ。
だから、クーデターなんかに負けていられるか。つまづいてる暇もねえっての。
一緒に戦いたい人は、遥か先。目標だってずっと先だ。
Ｈ月Ｎ日
なんだろうな。
皆色々と考えて、最善の未来を選んでるのか。
クーデター派の人達は、皆が救われるような道を選んでいたのかな。
ゼノヴィアとか、アーシアとか、ギャスパーとか。
戦いの中でゼノヴィアに助言したり、
戦いが終わった後にアーシアに……アーシアが今まで救ってきた人達への手紙を渡したり、
ギャスパーの姉ちゃんを助けるために……それだけじゃないかもしれないけど、聖杯の欠片を用意していたり。
ヴァスコ・ストラーダ。教会の、戦士たちの父。
自分と教会の狭間で苦悩した人達が報われる道を用意して戦いに望んだ老騎士。
力が強いだけじゃない。
きっとああいう人が、人の上に立てる人なんだと思った。
クリフォトの魔女が横槍を入れてきたけど、そんなの忘れるくらいテンション上がってる！
Ｈ月Ｏ日
いやいやいや。
昨日の戦い、上代先輩も見てたのかよ！？……って話。
しかも、サーゼクス様と一緒に観戦してたんだってさ。
アザゼル先生は驚いてなかったから、気付いてたみたいだ。
聞いたけど、それとなくはぐらかされた。
上代先輩、俺達の事を心配してくれてたのかな？
取り敢えず――ヴァスコ・ストラーダみたいな強さはまだ見つかってないけど、
あの人を戦わせずに済んだって事で、今回の戦いの収穫は十分だと思った。
ただ、パイリンガルとかはもう使うなと言われた。
……見られてなかったと思ったのに。
Ｈ月Ｐ日
最近、家でしかリアスと会わない日が増えてきたように思う。
まあ、今まで毎日会ってたのに、週に一日二日くらい会わなくなったくらいだけど。
家で会えるからってリアスは言っていたけど、俺は寂しい。
……こんな事、他の誰にも相談できないけどさ。
アーシアは俺を好いてくれてるし、ゼノヴィアやレイヴェルもだ。
そんな女の子に別の女の子の事を相談なんかできるはずもねえ。
だいたい、強くなりたいってこの前想ったばっかりなのに、どうして俺の頭の中はまた女の子の事ばっかりなんだよ！？
自分の事だけど、ちょっと情けないぜ。
明日から、もっと頑張らないとな。
Ｈ月Ｑ日
今日はオーフィスがオカ研に来てたけど、上代先輩は来なかった。
おかげでオーフィスの機嫌が悪い悪い。
すまないな、ファーブニル。オーフィスのストレス発散を任せちまって。
……だって、俺達だと吹き飛んじまうし。というか、文字通り消し飛ぶし。
上代先輩のドラゴン好きはみんな知ってるし、オーフィスも知ってる。
だから、ちゃんと手加減してくれたじゃねえか。
アーシアの部屋に引き籠ってるけど、明日は出てきてくれるかな。出てきてくれるといいな。
あと、ドライグ。
お前と俺は一心同体なんだ。オーフィスと正面から戦うなんて、絶対嫌だからな！？
どんだけ上代先輩が好きなんだよ、お前。
俺より上代先輩を選んでんじゃねえ！？
オーフィスのストレス発散の相手をしたって、先輩が優しくしてくれる確証なんてないんだぞ……。
Ｈ月Ｒ日
セラフォルー様がオカ研に来た。
年が明けてから、オカ研の部室も賑やかだ。
まあ、上代先輩を探してるって言っていたけど。
あの後会えたのかな？
今日もゼノヴィアの生徒会長選挙を手伝って、その後ウチの地下で訓練してって具合だった。
取り敢えず、ファーブニルは今日もアーシアの部屋から出てこなかった。
……明日出てこなかったら、レイナーレに相談してみようかと思う。
アイツも、もう二度とグングニルで突かれたくはないだろ。それが無理だったら、オーフィスに頼もう。
アーシアに聞く限り、部屋の中でパンツに埋まりながら現実逃避してるらしいから、大丈夫だろうけど。
……どうしようもないレベルで手遅れって気もするが。
アーシアがパンツの事をレイナーレに相談→上代先輩の耳に入るとか地獄過ぎる。
Ｈ月Ｓ日
上代先輩とオーフィスの名前を出したら、ファーブニルが飛び出してきた。
あと、アーシアのパンツは全部取り上げておいた。これで大丈夫だろう。
いくつか涎が付いていたので捨てる事になったが。
でもな、アーシア。
俺、アーシアにはまだ黒は早いと思いますっ。
Ｈ月Ｔ日
ゼノヴィアが生徒会長になった！
オカ研だけじゃない、手伝ってくれたみんなに感謝だぜ。
なんだろう、すっげえ嬉しい！
夕食も豪勢にして、ちょっとしたお祝いみたいになってた。
ゼノヴィアも泣くしさ。俺までちょっと泣きそうになったのは秘密だ。
それにしても、上代先輩は放課後どうしたんだろうな。
シスター・グリゼルダと一緒に帰ってたみたいだし。
やっぱり、そういう関係なのかな？ 家も、お隣さんだし。
ゼノヴィアにその事を聞くと、自分の事みたいに喜んでいた。
Ｈ月Ｕ日
アザゼル先生が悩んでいた。
オカ研でずっと唸ってて、偶に溜息を吐いて、アーシアのお茶を一気飲みする。
ずっとそんな感じ。
聞くと、聖杯の欠片をどう使うかを悩んでるってさ。
よく分からないけど、上代先輩が関わってるみたいだった。
いっつも上代先輩の事で悩んでるな、アザゼル先生。
何か力になれたらって思うけど、相手が上代先輩じゃあなあ……。
リアスに相談したら、今度サーゼクス様に言ってみるそうだ。
仲良いもんな、二人とも。
Ｈ月Ｖ日
今日は、アザゼル先生の研究ラボに行ってきた。
集中治療室みたいな個室で、沢山のコードに繋がれたヴァレリー・ツェペシュの姿は、今思い出しても凄く悲しい。
身内があんな姿になったギャスパーも、辛そうだった。
けど、それも今日までだ。
行動出来る範囲は限られてるけど、聖杯の欠片を嵌め込んだペンダントの力でヴァレリーは目を覚ました。
欠片っていっても、中身は本物の聖杯とほとんど変わらないってさ。
アザゼル先生が上代先輩に頼んだおかげだ。
ただ、やっぱり本物の聖杯じゃないから体の中に入れられなくて、ペンダントを外せないって言ってた。
絶対にペンダントを外さないように――俺達は、絶対にヴァレリーを守ってみせる。
アザゼル先生は言っていた。
欠片があれば、ヴァレリーは大丈夫。
そして、もしクリフォトが……リゼヴィムが本物の聖杯を盾にしても、俺達が躊躇う必要が無いって。
なにせ、身体には入れられないけど本物の聖杯と変わらない欠片だ。
欠片の力を元に戻してくれた先輩の為にも、今度こそ上代先輩に頼らずにクリフォトをぶっ飛ばしてやる。
Ｈ月Ｗ日
ヴァレリーが目を覚ました事を上代先輩に教えたら、俺は別に何もしていない、ってさ。
あの人からしたらそうなんだろうけど、だからこそ、そう言える先輩が格好良い。
俺はまだ、リアスとか、手に届く範囲に居る人だって守るのが難しいから。
先輩がどれだけ凄い事をしているのか、ちょっとだけわかるようになった気がする。
Ｈ月Ｘ日
上代先輩がヴァレリーのお見舞いに来た。
なんでも、昨日はお見舞いに行くと言って黒歌達から怒られたそうだ。
そりゃあ、ヴァレリーも女だもんな。黒歌達は、気が気じゃないんだろう。
それに、美人だし。
吸血鬼だから長生きで、ずっと上代先輩と一緒に居られるし。
ギャスパーは複雑そうな顔をしていたけど、
アレって姉ちゃんを取られるからなのか、姉ちゃんに先輩を取られるからなのか、どっちなんだろうな。
ファーブニル最大の不幸は、アザゼル先生に関わったからだと思う。
アザゼル先生に関わらなかったら？
たぶん、スコルやハティと一緒に庭に繋がれてたんじゃない？