とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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戦乙女、白猫、無限日記。



175(十八巻 エピローグ2)

戦乙女日記_____________________________________

 

 

 

 

 G月S日

 

 徹君が目を覚ました。

 今回は本当に、私達は役に立てなかった。

 レイナーレさんと黒歌さんのデートだったから。

 流石に着いて行くのは無粋だと思ったから――でもその所為で、私達は戦場に辿り着く事すらできなかった。

 悔やんでも悔やみきれない。

 でも――無事で良かった、と思う。

 それだけは、本当に……。

 あのあと、天界から戻ってきた後のレイナーレさんは、酷い有様だった。

 あまり信用してはいけないのかもしれないが……曹操さんには感謝だ。

 徹君と黒歌さんの看病で追い詰められていたレイナーレさんを家から連れ出してくれた。

 少し粗っぽかったけど、元気付けてくれた。

 ……本当は、その役目は私の仕事なのに。

 溜息しか出ない。

 

 今夜は、白音さんとスコル、ハティを連れて兵藤君の家に泊まりに来ている。

 グレモリー眷属の皆主催のクリスマス会が行われているから。

 言い訳には十分な理由だろう。

 まぁせめて、今夜くらいは――。

 クリスマスのデートを潰されたのだから、と思う。

 ――多分、好きなんだろうなぁ。本気で。

 お婆ちゃんに徹君の事を話す時、楽しかった。

 不思議と、彼氏になってほしいと素直に言えた。

 そしてその関係は、有耶無耶のまま……まだ続いている。

 

 ……少しは、自惚れてもいいのだろうか。

 クリスマス会は楽しかった。

 沢山笑った。

 でも……ああ――それでも私は、徹君が好きなんだなぁ。

 

 

 

 G月T日

 

 なるほどなぁ、と。

 アレだ。雰囲気が変わった。三人の。

 徹君とレイナーレさん、黒歌さんの三人。

 距離感が違う。仕草が、視線の動きが――違う。

 ……判ってたはずなのに。

 判ってて、昨日は兵藤君の家に泊まったはずなのに。

 そう判ってて――私も白音さんも、この家に帰ってきた。

 でもやっぱり、あの二人が徹君にとって一番大切な“特別”なんだ、と。

 その事が嬉しくて、そして少しだけ妬ましい。

 ――お似合いだと思う。

 でも……徹君の隣に立ちたいと思う自分も居る。

 複雑だなぁ。

 この想いが失恋なのか、それとも諦めきれない未練なのか。

 はたまた違う感情なのか。

 ただ、判っている事もある。

 

 ……お赤飯を炊いて、照れた徹君と黒歌さん。

 最初は意味が判らなくて、判った後は二人と同じように顔を赤くしたレイナーレさん。

 私もお赤飯の意味は、白音さんから教えてもらった。

 あの三人は幸せなんだ、と。

 そろって顔を赤くして、恥ずかしそうに照れて、でも嬉しそうに笑ってた。

 そう判って、気付いて……喜んでいる自分が居た。

 三人が幸せだと判って、その事をおめでとうと祝福している自分が居た。

 ――いまは、それでいいや、と思う事にする。

 今は、だ。

 

 

 

 G月U日

 

 徹君が、クリスマスプレゼントに何か欲しいか、と聞いてきた。

 ……相変わらず鈍いなぁ。

 私まだ、貴方の事が好きなんですけど? そんな相手に、優しい言葉をかけないで下さい。

 甘えちゃいますよ……?

 これは、レイナーレさんも黒歌さんも苦労するだろうなぁ、とも思った。

 でも、お似合いなのかもなぁ、とも。

 二人とも幸せなんだから、少しは鈍感な彼氏に振り回されればいい。

 私はそれを見て笑おう。

 ――そしていつか、私も振り回してほしい。

 それくらいの甲斐性は持ってますよね、徹君?

 

 クリスマスプレゼント、か。

 グレモリー家のクリスマス会では、オーフィスさんの一人勝ちだった。

 煽ったアザゼル先生の所為だ。

 まったく……おかげで、文字通り瀕死の状態まで追い詰められていたし。

 だから――少し期待しよう。

 徹君。

 ……私はまた、貴方を好きになりたい。

 今度はフリではなく、本当の彼氏彼女になりたい。

 この想いを叶えたいと心から思える――そんなプレゼントを期待して良いですか?

 

 

 

 

 

白猫日記_____________________________________

 

 

 

 

 

 G月S日

 

 今頃姉様とレイナーレは……。

 それが判らないほど、子供じゃない。

 その事を、確かに喜んでいる。

 でも、少しだけ胸が痛い。

 ほんの――少しだけ。

 私は、姉様よりも、レイナーレよりも……あの家で一番早く、徹先輩に会っている。

 ただその事が……少しだけ、辛い。

 もし初めて会った時から徹先輩を意識していたら。

 もっと早くに、自分の感情に――想いに正直になっていたら。

 徹先輩の隣。徹先輩の一番は変わっていたのか、と。

 そんな下らない事ばかりを考えている。

 本当に、下らない事だと思う。

 多分……部長たちにも気付かれてるんだろうな。

 そして、姉様達にも。

 こんな、子供みたいな嫉妬。言い訳。

 ――今頃姉様達は、徹先輩と……。

 

 聖夜は特別だ。

 クリスマスはもう終わってしまったけど、徹先輩達にとっては――。

 イッセー先輩と部長もそう。

 ……彼氏が欲しいな。

 素敵な彼氏。

 格好良くなくていい。

 優しくて、温かくて、凄く強いけど、いつも心配させられる。少し抜けてる人。

 誰からも好かれて、愛されて――私もお姉様も大切にしてくれる人。

 ――私、そんな人……一人しか知らない。

 

 

 

 G月T日

 

 匂いが変わっていた。

 徹先輩の匂い。

 ――多分、私が好きだった匂い。

 姉様は偶に、経験した人と、していない人の匂いは違うと言っていた。

 イッセー先輩が、そうなのだと。今日判った。

 そして徹先輩は、匂いが変わってしまった。

 ……今日は一日、溜息ばかりだったと思う。

 ただ、あの幸せを振り撒いてる三人には気付かれなかったと思う。

 幸せで、幸せで、本当に幸せだから――。

 私の溜息なんかで、三人の幸せを壊したくなかった。

 

 姉様なんて、今日一日、ずっと徹先輩にべったりだった。

 レイナーレも、いつもはしっかりしてるのに、今日はだらしなかった。

 ……それでいいと思う。

 こんな時くらい、私達に頼ってくれて。何時も頑張ってるから。頑張っているの、知っているから。

 でも、好きな人の一番は取られたのだから――少しの嫌がらせくらいは大目に見て欲しい。

 お赤飯。

 その意味をロスヴァイセさんに教え、晩御飯に用意してもらった。

 徹先輩と姉様はすぐに気付いて、顔を赤くしていた。

 レイナーレも――レイナーレさんも、後で気付いて、顔を赤くしていた。

 それくらいは許してほしい。

 ――でも、三人揃って幸せそうにされると、私の方が苛められてるような気がした。

 

 

 見せつけないでほしい。まったく。

 末永くお幸せに――。

 私もいつか――姉様達のように、大好きな人の為に頑張って、努力して……隣に立ちたい。

 

 

 

 G月U日

 

 徹先輩は、本当に意地悪だ。

 レイナーレさんと姉様を選んだのに。

 クリスマスプレゼント……期待して良いんですか?

 私が欲しいもの――重いと思います。

 それでも“いい”と言ってくれますか?

 ――気付いてないんだろうなぁ。徹先輩、鈍いから。

 でも……優しくすると、どうなっても知りませんから。

 猫は気紛れです。

 ……白猫は、優しくされると、すぐに心を許してしまうんです。

 そして、姉である黒猫にすら嫉妬してしまうくらい、嫉妬深いと思います。

 

 

 諦めたくないです。

 私も、選んでほしいです。

 ――そう、望んでも良いですか?

 

 

 

 

無限日記_____________________________________

 

 

 

 

 G月S日

 

 カミシロトオルが目を覚ました。

 あの時、我、間に合わなかった。

 天界の門が閉じられて、邪魔が多くて――その全部を壊して進んだけど、間に合わなかった。

 でも、カミシロトオルは目を覚ました。

 戦いの記憶は無かったけど、我の事は忘れていなかった。

 いまは、それだけでいい。

 ――でも、カミシロトオルの傍に居たかったのに、ロスヴァイセ達に連れ出された。

 ドライグの家。

 大きいけど、物足りない。

 この家に、カミシロトオルは居ない。

 早く帰りたい。家に。

 

 今日は、アザゼルにお菓子を沢山貰った。

 サンタクロースの格好をしたアザゼル。

 お菓子が欲しければ力ずくで奪えと言った。

 楽しそうだった。 

 ドライグ達、凄く楽しそうだった。

 多分――我も楽しかった。

 沢山お菓子を貰った。

 逃げるアザゼルを、何回も捕まえた。

 ……クリスマス。サンタクロース。

 また来年も、楽しみたい。

 

 

 

 G月T日

 

 ご飯、美味しかった。

 レイナーレは今日はのんびりしてた。珍しい。

 いつもはお菓子はあんまり食べたらダメだというけど、今日は何も言わなかった。

 黒歌と一緒に、昨日の事を聞いて、喜んでくれた。

 嬉しい? 多分、我は嬉しかった。

 アザゼルに感謝。

 お菓子、少し分けてあげればよかった。これが後悔?

 カミシロトオルも楽しそうだった。

 でも、赤いご飯を食べると、顔を赤くしていた。

 不思議。

 黒歌も、レイナーレも。

 ……でも、嬉しそうに笑っていた。

 ロスヴァイセと白音も、笑っていた。

 我は多分、嬉しい。と思う。

 ――判らない。

 ただ……明日も今日みたいに皆が笑ってくれたら。

 そう考えると、身体の奥が暖かくなった。

 不思議――だけど、悪くない。

 だから、明日も笑ってほしい。

 我は、皆が笑ってくれると、悪くない気持ちになれる。

 

 

 

 G月U日

 

 『八岐大蛇』が家に来た。

 黒歌と契約した。

 珍しい。『八岐大蛇』は気性が荒い。

 相性が良くても、契約しようとした相手を呪うくらい、気性が荒い。

 でも、黒歌との契約に何もしなかった。

 それどころか、黒歌に有利な契約を結んでいた。

 ……あと、カミシロトオルに甘えていた。

 ファーブニルの時もそうだった。

 カミシロトオルは、ドラゴンに優しい。

 大きなドラゴンが好き。

 ……羨ましい。

 我も、カミシロトオルと遊びたい。撫でてほしい。

 撫でてもらうと――判らない感情で、胸が一杯になる。

 頭を撫でてもらって、髪を梳いてもらうの――悪くない。

 

 

 




十九巻は年末くらいに出てくれるといいなぁ。
そう思う今日この頃。
あれですね。
なんか、毎日SSを投稿しないと落ち着かない。
……病気かorz

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