とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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久しぶりの曹操。
相変わらず、槍は優遇されてるなぁ……


剣? 知らない子ですね。
おっと、誰か来た(ry


172(英雄日記)

 @月D日

 

 『地獄の最下層』に堕されて、随分と日が経った気がする。

 時間の流れが曖昧なので、日記の意味も無い。

 ジャンヌやヘラクレスにも、諦めの色が最近目立つ。

 一生を『地獄の最下層』で過ごす気なのだろうか。

 俺は御免だ。いつか必ずここから這い出る。

 ――勝負したい相手が居るのだ。

 

 

 

 @月L日

 

 地獄の住人の相手も飽きてきた。

 得る物が無い訳ではないが、少ないのも問題だ。

 このままでは、ここで腐ってしまいそうだ。

 

 

 

 @月!日

 

 上代徹たちはどうしているだろうか。

 冥界で戦った時が懐かしい。

 ――赤い龍と黒い少女。そして、三対六枚の翼を持つ槍使い。

 ああ、最近はあの時の事ばかりを考えている。

 地獄の鬼どもなど塵芥にも劣る、鮮麗な記憶。俺が俺でいられる記憶だ。

 ジャンヌたちと話すと呆れられるが。

 英雄が龍を畏れてどうするというのか。

 

 

 

 @月$日

 

 吸血鬼の世界で騒動が起きたようだ。

 新しく地獄に堕ちてきた吸血鬼が教えてくれた。

 それに――レイナーレが関わっていた、とも。

 名前は知らなかったが、三対六枚の翼を持つ女など、世界に一人だけだろう。

 お前もちゃんと研鑽を積んでいるようだな。嬉しく思う。

 聞いた話でしかないが、『邪龍』を相手に対等に渡り合ったのだとか。

 お前が強くなっていると思うと、俺も嬉しい。

 ――俺も、もっと強くならねばな。

 

 

 

 P月B日

 

 ゲオルクと久しぶりに話した。

 『地獄の最下層』に堕ちてからずっと、魔術の研究ばかりで研究所に籠っているからだ。

 研究所を作るのは難儀したが、今では一つの拠点となっている。

 だが、まだ『地獄の最下層』を抜け出す術には至っていないそうだ。

 残念だ。

 そろそろ本気で、地獄の住人の相手も飽きた。

 新しい相手が欲しい。

 ――想像の中の勝負だけでは、限界がある。

 レイナーレ。

 せめて、アレに準ずる実力者が堕ちてこないものか……。

 ジャンヌとヘラクレスの相手も、最近は物足りない。

 

 

 

 P月F日

 

 帝釈天からの使いが来た。

 手足となって働くなら、ここから出してやる、と。

 さて、どうしたものか。

 ジャンヌとヘラクレスは、地獄から出る気は無いらしい。

 住めば都とはよく言ったものだ。慣れれば、それなりに過ごしやすい場所でもある。

 実力があれば、安全も確保できる。

 ……つまらない考えだ。

 取り敢えず、解放条件の『地獄の最下層から這い上がる』は以前も試しているので大丈夫だろう。

 以前とは違い、特別な門番でも用意してくれていると楽しめるのだが。

 

 

 

 P月H日

 

 ゲオルクとレオナルドも、今のところは地獄から出る気は無いらしい。

 誰にも知られず、安心して研究に没頭できるから、という理由だったが。

 この地獄には、著名な魔術師たちの魂も多い。地獄に堕とされてからずっと、魂と夢中になって魔法理論を組み立てるのに没頭している。

 それに、死神が使う魔術も触れるのは初めてのようで、楽しいそうだ。

 俺としては、せめてゲオルクだけでも連れて行きたかったが、そういう理由なら仕方がない。

 レオナルドも、精神が落ち着いたとはいえ、上代徹に会ったらどうなるか判らない。

 まぁ、『魔獣創造』は没収されているから、大丈夫だとは思うが。

 それに、レオナルドは上代徹に苦手意識を持っている。

 一度精神が完全に破壊されたのだからしょうがないのだろうが。

 ……俺一人、か。

 

 

 

 P月I日

 

 さて、明日から地獄を登る事にする。

 その表現で正しいかは判らないが。

 ゲオルク、レオナルド、ジャンヌ、ヘラクレス。

 この地獄も、お前たちが居たから楽しかった。

 感謝している。

 今度は地上で会おう。

 

 

 

 P月M日

 

 二度ほど死に掛けたが、明日には地獄を抜け出せそうだ。

 おそらくは、特別な門番が用意されているだろうが。

 『黄昏の聖槍』無しで、帝釈天が用意した関門を突破できるだろうか?

 ――出来る出来ないではない。突破する。

 その程度が出来なくては、格上に挑むなど夢のまた夢か。

 さて……では、まずは夢の第一歩を踏み出すとしようか。

 

 

 

 P月O日

 

 帝釈天から『黄昏の聖槍』を返してもらった。

 久しぶりの愛槍の感触は、やはり悪くない。

 『地獄の最下層』では、地獄の住人から奪った獲物を使っていたから、物足りなかった。

 やはり『神の意志』は感じられないが、悪くない。

 これからまたよろしく頼む、相棒。

 

 

 

 P月P日

 

 兵藤一誠たちは『D×D』という組織を作ったそうだ。

 対テロリストの集団。

 二天龍に天界のジョーカー、『神の子を見張る者』の『刃狗』。

 他にも、冥界の若手有望株を纏めた集団のようだ。

 面白いが――上代徹達は所属していないのか。

 残念だ。

 まぁ、これから俺はこの『D×D』の裏方として動くのだから、所属されているのも問題だが…。

 戦いたい……勝ちたい相手が仲間だというのも、問題だろう。

 俺が『地獄の最下層』でどれだけ強くなったか、

 俺が『地獄の最下層』に居る間にお前がどれだけ強くなったか――楽しみだ、レイナーレ。

 

 帝釈天からの依頼は、とりあえず受けることにした。

 受けなければ俺の居場所など無いのだから、しょうがないのだが。

 まずは最近起きている魔法使い達の誘拐事件。

 相手は『クリフォト』とかいう集団らしい。

 そこまで判っているなら、帝釈天子飼いの連中を使えばいいだろうに。

 ……どうして俺を『地獄の最下層』から連れ出したのか。

 

 

 

 P月R日

 

 『禍の団』の生き残りが集まった『クリフォト』とかいう集団の隠れ家をいくつか潰したが、目立った成果は無い。

 そもそも、得られる情報が古いのが問題か。

 攫われた魔法使い達も、実験に使われたようだ。

 死体しか残っていなかった。

 だが、数が少ない。――面倒な事だ。

 下っ端が持っているアジトの情報など、使い古されたものばかりだ。

 つまらない。

 件の『邪龍』とやらと戦いたいのだが。

 レイナーレの槍は、グレンデルとかいう『邪龍』の鱗を貫いたと聞いている。

 なら俺の槍は?

 試したい。――ああ、『邪龍』に会いたいものだ。

 

 

 

 P月U日

 

 ユーグリッド・ルキフグス。

 『番外の悪魔』が『赤龍帝の篭手』のレプリカを纏っていた。

 ――拍子抜けだったが。

 強力ではあったが、それだけだ。意外性の欠片も無い。

 アレなら、戦いの中で進化し続ける兵藤一誠の方が面白い。

 逃げられたが、あんな雑魚なら問題ないだろう。

 まぁ、帝釈天から小言を言われるだろうが。

 

 あんな男に手古摺ったのか、兵藤一誠。

 帝釈天からあの男に兵藤一誠が辛酸を舐めさせられたと聞いた時は、耳を疑った。

 随分と腑抜けているようだ。

 だが、よく考えると兵藤一誠も力押しの戦法を得意としていた。

 力と力なら、より強い方が勝つのが道理か。

 ――この程度で終わらないでくれよ、赤龍帝。

 

 

 

 P月X日

 

 量産型と呼ばれていた『邪龍』と戦った。

 強力だな。

 単体なら人間である俺でも戦えるが、数が多い。

 あれが『クリフォト』の主戦力だという話だ。

 ――厄介だが、ある程度の実力があれば取り敢えず戦える相手か。

 『D×D』に参加している連中なら、問題無いだろう。

 とりあえず、帝釈天からは量産型『邪龍』の数を減らせるだけ減らせと言われている。

 見つけ出して狩るとしよう。

 良い訓練の相手が見つかった。

 楽しめそうだ。

 

 

 

 P月X日

 

 爪が掠れば、ブレスを浴びれば、尾の一撃で――。

 同僚から心配された。俺は、簡単に死ぬのだと。

 そうだな。

 俺は人間だ。弱っちい人間だから、『邪龍』どころかただの悪魔の一撃でも簡単に死ぬだろう。

 ……心配されるのは、嬉しいものだな。

 弱いから、心配される。

 人間だから。――才能が無いから。

 お前もこんな気分だったのか、レイナーレ?

 心配され、仲間に支えられる。

 ――俺は、ゲオルク達を心配し、支えていただろうか?

 まだまだ俺も足らないモノが多い、という事か。

 

 

 

 P月#日

 

 明日から冥界に行く事になった。

 『クリフォト』が動くという情報を得たそうだ。

 ……はてさて、一体どこからそんな情報を得たのか。

 だがまぁ、逆らうつもりは無い。

 今冥界には、上代徹――レイナーレ達も居る。兵藤一誠たちも。

 狙いはおそらく、連中だろう。

 楽しみだ。

 ようやく、願の一つが叶う。

 ――俺はどれだけ強くなった。お前にどれだけ近づけた。

 それを確かめさせてもらおう。

 

 

 

 P月~日

 

 リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

 『神器無効化能力』か――厄介な能力を持った相手だ。

 それに、リゼヴィム自身の戦闘能力も高い。

 純粋に、強い。

 『神器』を使う俺達の天敵と言えるだろう。

 出来れば今日仕留めておきたかったが、それは流石に難しかった。

 相手も、逃走手段は用意していたし、馬鹿でもない。

 帝釈天も、まだアイツには動いてほしいようだし、な。

 そのくらいの空気は読めるさ。

 取り敢えず、最低限の仕事として、上代徹の救出の手助けはしておいた。

 たぶんまだ、俺の存在には気付かれていないだろう。

 結界の破壊――レイナーレ、お前の力は強すぎる。

 あれでは上代徹ごと破壊していたぞ。

 

 先日仕留め損ねた偽物の『赤龍帝』も、いい計りになってくれた。

 上代徹の眷属に手を出し、友人を傷付け、怒らせた。レイナーレを。

 しかし――あの攻撃力は、純粋に驚異だな。

 攻撃を受ければ死ぬ、というレベルではなかった。撃たれれば終わる。

 まぁ、本人も完全に制御できていない攻撃だったようだが。

 撃った後に死に掛けていた。あれでは、上代徹が傍に居なければ使えない。

 そんなモノは、攻撃とは言えない。ただの命を捨てた特攻だ。

 まだまだだ――が、強くなっていた。

 あの時よりも、ずっと。

 沢山の仲間から支えられていると言っていたが、本当に良き師に巡り逢ったのだろう。

 今の俺で勝てるだろうか?

 さて、どうだろうな。

 

 今日は楽しかった。

 あの黒い――オーフィスの槍。

 禍々しさは無い、純粋に『全てを飲み込む闇』の槍。

 その中にあった、『神の意志』という名の光の一欠片。

 また一つ、強くなったか。レイナーレ。

 それでいい。もっと強くなれ。

 それでこそ――倒す価値がある。戦いたいと願う意味がある。

 目指すべき目標が高いほど、俺はもっと強くなれる。

 

 

 

 P月2日

 

 休日と報酬を貰ってもな……。

 使い道が無い。

 精々が、美味い飯を食うくらいか。後は、適当に服を買う。

 住む場所も与えられているし、監視が付いているので自由もあまりない。

 結局今日は、いつもと変わらず槍を振る事しかしていない。

 『禍の団』に居た頃は、色々と世界を見て回ったのだが。

 ……いつか自由になったら、改めて世界を見て見聞を広めるとするか。

 悪くないな。

 

 

 

 G月A日

 

 本格的に、『クリフォト』の動きが激しくなってきている。

 特に、天界や各地の教会の被害が目立つ。

 いくつか資料を回してもらったが――『邪龍』か。

 相手の姿も目的も判らないが、手際が雑で荒い。

 だが、強い。

 面白そうな相手だ。

 上手く会えないものか。

 

 

 

 G月C日

 

 アザゼルが須弥山に来た。

 『D×D』との連携の相談に来たようだ。他にも北欧やオリュンポス――神話の勢力にも声を掛けているそうだ。

 良く動き回っている――もう『神の子を見張る者』総督の座からは退いたはずだが。

 帝釈天が言うには、今は上代徹の後見人のような立場らしい。

 というよりも、上代徹に厄介事が行かないようにしているのだとか。

 どうしてか、アザゼルは上代徹を戦わせない為に動いているそうだ。

 理解できないな――あの男なら、単体で『クリフォト』と戦えるだろうに。

 先日封印されていたが、アレも油断からだ。油断しなければ、戦えるはずだ。

 だが戦わせない……戦わせては駄目な理由がある。

 ――上代徹の正体、か。

 興味はあるが、いずれ判る事だ。

 アザゼルが何の為に、どうして上代徹を守るのかは判らないが、今は興味が無い。

 時間を操り、世界に干渉する。

 俺が持っている情報などその程度で、それが真実とも限らない。

 帝釈天としては、面白くないようだが。

 ……どうでもいいさ。

 俺が興味を持っているのは、戦いたいのは――美しい翼を持つ女だけだ。

 

 

 

 G月E日

 

 面白い相手と会った。

 名前は判らないが、相当な剣の使い手だ。

 持っていた得物も、恐らく名のある剣だろう。

 あの禍々しさ――魔剣の類だろうな。

 それに気配も、随分と人間離れしていた。

 初見で攻めきれなかった相手は久しぶりだ。

 最近天界や各地の教会を襲っている相手、だという事だ。

 情報が欲しいな……あの男となら、満足するまで戦えそうだ。

 

 

 

 G月H日

 

 あれから、あの男に会っていない。

 それに、『クリフォト』の動きが読めなくなった。

 おそらく近い内に何か行動を起こすのだろう。

 帝釈天が、いつでも動けるようにしておけ、と言っていた。

 さて――大きな戦でも起こるだろうか?

 退屈はしなくて済みそうだ。

 

 

 

 G月J日

 

 上代徹の元に、熾天使と悪魔の大王が接触したそうだ。

 このタイミングで――なにかあったか。

 先日の魔剣使いが捕まったとも聞いていない、何か関係があるのだろうか?

 出来れば、俺と戦う前に捕まらないでほしいものだ。

 

 ゲオルク達は元気にしているだろうか?

 ……『地獄の最下層』で元気も何も無いか。

 無事にいてくれれば、と思う。

 

 

 

 G月M日

 

 あの魔剣使い――八重垣という名前らしい。

 八重垣正臣、神剣『天叢雲剣』を奪い、『邪龍・八岐大蛇』を宿らせたのだとか。

 あの禍々しさは、『邪龍』の邪気だったのか。納得だ。

 それに、神剣をあそこまで歪めたのだ、本人の狂気も相当のものだろう。

 強い、な。戦いたい。

 どうにかして動向を掴めないものか。

 帝釈天に聞いてみたが、判らないと言っていた。

 ――本当かどうかは怪しいが。

 

 

 

 G月O日

 

 八重垣正臣の動向が掴めたそうだ。

 明日、天界に攻撃を仕掛けるという事だった。

 ――タイミングが良いな、帝釈天。ハーデスからとの情報だが、アレはどっちつかずの蝙蝠だ。

 十全信用するのも馬鹿らしいだろう。

 だが、悪くない。

 俺の顔見せも済ませて来い、との事だ。

 楽しみだ、本当に。

 今は一応仲間だから……肩を並べて戦うのは初めてか。

 

 

 

 G月P日

 

 さすがに、オーフィスは分断させてきたか。

 それに、上代徹が居たのも予想外だったようだ。

 何の策も無しに、『クリフォト』は上代徹を殺しに掛かった。

 いや、俺が知らないだけで、何か考えがあったのかもしれないが。

 裏切りそうになった八重垣正臣を粛清しようとして失敗し、上代徹は能力を使って倒れ、その眷属である黒猫を仕留めた。

 どう考えても、何か策があったとは思えない。

 ……今回の天界への襲撃は、本当に天界にであって、上代徹は予想外だったのか。

 ま、確かな情報が揃わないうちから考えても意味の無い事か。

 取り敢えず、『宝樹の護封龍』ラードゥン討伐と『D×D』への助勢、上代徹の守護。

 幾つかの情報も得た。

 『生命の樹・セフィロト』になる生命の実と知恵の実。

 それを煉獄の奥地で、『聖杯』を使って蘇らせる。

 さて――それにどんな意味があるのかは俺には判りかねるが。

 帝釈天への土産としては、十分すぎる成果だろう。

 それに、クロウ・クルワッハ。『クリフォト』から離反した最強の『邪龍』。

 ドラゴンの行く末を見届けるのを宿願とする、か。

 『邪龍』ラードゥンは滅び、『邪龍』八岐大蛇は生かされた。

 その天秤を傾けるのは、今は眠っている上代徹だ。

 それを、あの最強の『邪龍』も判っているはずだ。

 ……ドラゴンは力の象徴と言われるが、そのドラゴンから良くも悪くも注目されるあの男は、本当に人間なのか。

 ますます判らなくなるな。

 

 

 

 G月P日

 

 天界の傷跡は少ない。

 それは、上代徹が時間を巻き戻したからだ。

 その所為で本人は倒れたが――その事が、レイナーレは気に入らないようだ。

 あの黒猫も一度殺された。

 守れなかったことを悔やんでいるのだろうが……気に入らない。

 守れなかったが、失った訳ではない。

 なら次は守れるようにすればいい。

 確かに極端な考えだろうが、後悔して、腐って――あの姿は、俺が見たい姿ではない。

 昨日の戦いの時――三対六枚の翼を広げ、オーフィスの槍を振るい、自身よりもはるかに巨大で

強大な『敵』に挑む。

 あの姿こそ、俺が冥界で……冥界で俺に向けた、一つの『英雄』の形のはずなのだ。

 俺の生きる意味だ。地獄で抱き続けた、この世の未練だ。

 サマエルの力を借り、『邪眼』の魔力を使い、人外の力に縋った紛い物ではない。

 支えられ、信頼され、託された力を振るう――人間と堕天使の違いは在れど、あの姿は紛れも無く一つの『英雄』の形だった。

 だというのに。

 今のあの姿は――

 

 

 

 G月Q日

 

 苛立っている?

 ああ、そうだろうな。

 赤龍帝に白龍皇、獅子王。守れなかった事を悔やむお前達にも苛々している。

 今回守れなかったなら、次に守れる努力を何故しない。

 腐り、落ち込み、諦める。

 そんな姿、俺が認めない。

 俺が目指したものは、俺が戦いたかったのは、俺が眩しいと思ったのは――。

 そもそも、俺にすら勝てないようで、何かを守りたいと思う事こそがおこがましい。

 初代孫悟空の言うとおりだ。

 今のお前たちに大事な者を守れるものか。

 守ると息巻くだけで、努力を怠り、後悔に沈むお前たちに。

 

 

 

 G月R日

 

 世話が焼ける。本当に。

 少し強くなったかと思えば、簡単に折れそうになる。

 それで上代徹の槍だなどと、驕りも甚だしい。

 部屋から連れ出し、訓練場で叩き伏せてやった。

 八つ当たりでも、苛立ちでも、怒りでもいい。

 お前には、それをぶつける相手が居る。受け止めてくれる師が居る。悲しみを判ってくれる仲間が居る。

 一人で悲しんで、悲劇のヒロインでも気取っているつもりか?

 強くなれ、レイナーレ。強くなってくれ。

 お前は俺に勝ったのだ。

 俺に勝ち、『神の意志』に選ばれたのだ。

 それがどんな意味かは俺にも判らない。だが、きっといつかお前だけの道標になるはずだ。

 ただ――俺に勝ったお前が、弱いのは認めない。折れるだなんて許さない。

 上代徹も、あの黒猫も生きている。

 なら、次こそ守れるように強くなれ。

 誰よりも、何者よりも、どんな不条理を貫き通す槍と成れ。

 

 ――その時こそ、俺はお前に、戦いを挑もう。

 俺が戦い、勝ちたいと思える者であってくれ。

 勝負を挑む価値がある女であってくれ。

 レイナーレ。俺に勝った女。

 お前に勝つのは俺だ――初めて心の底から『勝ちたい』と思った相手はお前だ。

 「勝てる」でも「勝てるだろうか」でも「勝って当たり前」でもない。

 『勝ちたい』と思ったのだ。お前に勝てば、俺は――。

 だから、俺以外に負けるな。折れるな。……最強の槍と成れ。

 上代徹の『女王』である事を誇りたいなら、理不尽な運命すら貫いてみせろ。

 

 ――まったく、世話が焼ける。

 




龍槍と聖槍が合わさり最強に見える(ぇ
曹操はツンデレ。なんでだろう……しっくり思えるんですが。


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