とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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原作は二十巻くらいでラストだろうか?
この作品の最後は、多分レイナーレさん&ヴァーリ君VSリゼヴィムさん。
……あれ? 主人公が影も形もないな


164(メイド日記)

 

 P月P日

 

 ロスヴァイセ様に護衛が付く事になった。

 私と黒歌も警戒しているが、『D×D』の方でも護衛してくれるとの事だ。

 それほどまで、ロスヴァイセ様が研究していた『616』は重要なのだろう。

 それに、その『616』の研究をしていた他の研究者たちも、誘拐されいてるのだそうだ。

 黒歌もその情報は掴んでいたが、ソレにロスヴァイセ様が関係しているとは予想していなかったそうだ。

 驚いていた。……黙ってないで、教えてくれればいいのに。

 まぁ、ロスヴァイセ様本人も、黒歌も、その事で狙われるとは予想していなかったそうだが。

 なんだか、私だけ知らなかったみたいで寂しいというか、悔しいというか。

 ……配下の管理は『女王』の仕事だと言われたが、どこまで踏み込んでいいモノなのか。

 難しい。本当に。

 

 

 

 P月Q日

 

 ロスヴァイセ様から、研究の内容を説明してもらったが、あまりよく判らなかった。

 黒歌ですら、半分も理解できなかったと言っていた。

 だがそれが今回の件では重要な事なのだ。

 理解できなかったが、判った事はある。

 ――ロスヴァイセ様を守りたい。この気持ちは、本物だ。

 彼女はもう、この家の一員。家族なのだから。

 

 ……少し、私も勉強しようかな。

 でも、家事に訓練。時間を作る暇がない。

 

 

 

 P月R日

 

 次の休みに、ソーナ様の学校へと行く事になった。

 ロスヴァイセ様の件で皆がピリピリしているから、息抜きに、との事だ。

 徹様は、こういう所は本当によく気が回る。

 優しいというか、優しすぎるというか。

 その優しさを向けられたロスヴァイセ様が羨ましい。

 ――私や黒歌もそうだったが、そういうのに、本当に弱いのだ。

 優しくされるのに慣れていないのに、優しくされるのは。

 

 

 

 P月S日

 

 久し振りに、アーシアが遊びに来た。

 学校帰りだったので少しの時間だったが。

 以前は、ああやって偶に寄ってくれては、料理やお菓子作りを教えてくれた。

 もう随分と昔のように感じるし、アーシアとの友人関係も、随分と長く続いているように思える。

 私の一番最初は、アーシアだ。

 料理を教えてくれた。……私の一番最初の師。

 『D×D』の訓練では会っていたが、今日みたいにゆっくりと話したのは久しぶりだ。

 いつか、このゆっくりとした時間が当たり前になれば、と思う。

 

 

 

 P月T日

 

 ロスヴァイセ様も、徹様の事を随分と良く想われているようだ。

 ゲンドゥル様にああもまぁ、ストレートな告白を……。

 主がああも高評価なのは嬉しいし、正直、照れているロスヴァイセ様を見ているのも楽しかった。

 それにしても、ゲンドゥル様。

 ロスヴァイセ様の恋を応援するにしても、もう少し控えめなのが良いのではないだろうか。

 徹様は、押してくる女性より、落ち着いた女性の方が好みのようだし。

 現に黒歌は、ああまで好意をぶつけているのに……。

 まぁ、女性として見てもらえるようになったから、間違いではないのかもしれないが。

 白音みたいに控えめ過ぎるのも問題だけど。

 

 それにしても、徹様に威厳、か。

 悪くは無かった――というか、正直嬉しくも感じた。

 けど、やっぱり徹様はいつも通りの徹様が良い。

 ――厳しく、格好良い徹様もいいが……私は、優しい徹様がいい。

 

 

 

 P月U日

 

 威厳のある徹様、か。

 そう難しく考えるような事でもないと思うが。

 黒歌や白音、ロスヴァイセ様。

 普段とのギャップに魅力を感じているのかもしれない。

 でも、徹様は徹様だ。

 

 私は――私達は、徹様を守りたい。

 平穏を望み、普通に生きる。

 そんな当たり前の日常を、当たり前に過ごしてほしい。

 その為に私達は居る。

 私達眷属は、徹様の幸せの為に居る。

 その幸せには、黒歌も、ロスヴァイセ様も、白音も、オーフィス様も、スコルも、ハティも。

 その誰もが欠けてもダメなのだと思う。

 

 

 

 P月V日

 

 徹様とオーフィス様は、本当に兄妹のようだな、と。

 徹様が落ち込んだ時は、オーフィス様が慰めて。

 オーフィス様が困った時は、徹様が助けて。

 持ちつ持たれつ。

 支え合う、とは少し違うようだが。

 それにしても、威厳の事をそんなに気にされていたのか、と。

 いつも通りの徹様でいいのに。

 私達は、それで十分。肩肘を張って接せられても、徹様が疲れては意味が無い。

 自然体で接してほしい。

 ……そう思うのは、欲張りなのだろうか?

 

 

 

 P月W日

 

 明日から、ソーナ様の学校へ行く事になっている。

 お弁当でも用意しようと思ったが、向こうで食事は準備されているそうだ。

 まぁ、折角みんなでの外出だ。

 私の料理などより、外食の方が良いだろう。

 黒歌やオーフィス様は、私のお弁当を食べたいと言ってくれたが。

 お世辞でも嬉しいものだ。

 スコルとハティの夕食は、少し豪勢にしてしまった。

 しばらく食事の用意はしてあげられないから。

 グリゼルダ様の料理はとても美味しいから、帰ってきた時に料理を食べてくれなかったらどうしよう。

 ……少し不安だ。

 

 

 

 P月X日

 

 今日からしばらく、アガレス領で過ごす事になっている。

 ヴァーリ様達も同行して下さっている。ロスヴァイセ様――徹様を心配されているのだろう。

 どこで『クリフォト』が関わってくるか判らないから。

 今日からしばらく泊まることになる場所は、ソーナ様が建てられたレーティングゲームの学校。

 将来ロスヴァイセ様が務めるかもしれない場所。

 教師として、必要とされる。

 ――羨ましいな。

 同室の黒歌は、私でも必要とされると言ってくれたが。

 あまり自信が無い。

 魔術も、魔法も、仙術も妖術も。

 私には才能が無い。

 努力する事しかできない私は、努力する事でしか認めてもらう事が出来ない。

 何時も、ずっと不安だ。

 ……私は、本当に弱いな。

 

 

 

 P月Y日

 

 今まで気にしていなかったが、どうやら私達はかなり有名なようだ。

 徹様は冥界、天界、『神の子を見張る者』。

 三大勢力だけではなく、北欧にも繋がりがある。

 ルーマニアにも恩を売っている。私達が介入し、派閥争いを終結させた。

 内容と結末は置いておいて。

 そんな徹様の眷属である私達は、冥界ではそこそこ価値があるようだ。

 『レーティングゲーム』の駒として。

 ……今まで、本当に気にしていなかった。

 どれだけグレイフィア様に守られていたか、なんて。

 あんな勧誘の話が私達にが来ないように、事前に潰してくれていたのだと。

 そう、ヴァーリ様に教えていただいた。

 ああいう有象無象から『王』を守るのも、『女王』の役目なのだと。

 難しいな――本当に。沢山の事を学んだのに、まだまだ学ぶ事が多い。

 次は絶対、ユーグリットを捕まえよう。――絶対だ。

 そしてまた、グレイフィア様に……。

 

 

 

 P月Z日

 

 オーフィス様から、徹様にサタンシルバーの衣装を着せたい、と相談を受けた。

 ……徹様は恥ずかしがり屋だからな、と。

 私も黒歌も、そう言うしかなかった。

 嫌がられる、ともとれるし、恥ずかしがっている、ともとれる。

 どちらにせよ、少し難しい。

 まぁ、オーフィス様が口を聞かなかったり、拗ねたりしたらいう事を聞いてくれそうだが。

 何だかんだで、甘いし、優しいし。徹様は。

 オーフィス様も、もっと徹様と話したいそうなのでその案は却下になったが。

 ――凄く、オーフィス様が可愛いと思えた。

 失礼だが……娘とか居たら、あんな感じなのかな、とも。

 

 

 

 P月!日

 

 懐かしい。

 ロスヴァイセ様から最初の頃に習った事を、今日また聞くことになった。

 魔術を習い始めたばかりの頃は、あまり理解できなかった事。

 それが今日は、簡単に理解できた。理解、出来ていた。

 私は――少しは、成長できているのだろうか。

 ……魔力が高くなって、戦う力が強くなったのかもしれない、

 でも、成長できているのか、と聞かれると判らない。

 こんな事、黒歌にも聞き辛いし……。

 

 あと、サイラオーグ様とも久しぶりにお会いした。

 あの方は、随分と子供たちに人気だった。

 あの体躯と力強さは、子供には随分と格好良く見えるのだろうな。

 徹様も、格好良いと言っていたし。

 そんな事は無いと思うが。

 でも、徹様は身体が細いから、ああいう筋肉というのに憧れがあるのかもしれないな。

 まぁ、黒歌も私も、徹様がいきなり筋骨隆々になられても困るが。

 

 

 

 P月#日

 

 兵藤君の訓練を一緒にしたが、随分と難しい。

 でも、そこまで苦労するようなものとは感じなかった。

 まぁ、私は兵藤君のように爆発力が無いから、力の調整が簡単なのだと。

 言い換えると、非力という事だ。

 ……溜息しか出ない。

 その非力を補うには、アザゼル様が危険だと言っていたオーフィス様の『血』に頼るしかない。

 難しい。

 もっと安定して、オーフィス様の魔力を使いこなしたい。

 ――使いこなすには、私が強くなるしかないとオーフィス様に言われたが。

 強く、か。

 強いとは、何だろう。

 

 お風呂が壊れたそうなので、男子寮のお風呂を借りることになった。

 しかし、兵藤君は何をやったのだろうか?

 魔術で吹き飛ばされて、今夜は医務室で過ごすそうだ。

 ……ノゾキ、か。

 リアス・グレモリーやアーシアが居るのに、懲りない人だ。

 

 

 

 P月$日

 

 人にものを教えるのは、とても難しい。

 でも、勉強になった。

 他人に教える事で、自分の考えが深く理解できたというか。

 教えた相手は子供たちだが。

 まさか私が、教師の真似事をする日が来るなんて……世の中、本当にどうなるか判らないものだ。

 ロスヴァイセ様のように、上手に教える事が出来ただろうか?

 私は、私の考えを言葉にしただけ。

 その言葉を上手に伝える――それが、難しい。

 教師に向いていないのだろう、私は。

 

 ヴァーリ様や美猴様、ルフェイも上手に教えていた。

 ……教えてもらった事を、教えてもらった通りに教える。

 それだけでは伝わらない。

 ならどうすれば、伝わるのだろう。

 私が教わった事。私が伝えたい事。

 黒歌は思いのままに伝えればいいと言っていたが……。

 

 

 

 P月=日

 

 兵藤君…というか、「おっぱいドラゴン」の事を気にし過ぎです、と。

 ドライグ様やアルビオン様が不憫なのは判りますが。

 サタンシルバー、か。

 オーフィス様は凄く喜んでいたが。

 子供たちに混じって、徹様に抱きつくくらいには。

 抱きつく、というよりもくっつくと言った風だったが。

 

 それにしても、あのセリフはどうにかならないのか。

 格好良くもあるし、ギャップを感じて少しドキリとさせられた。

 ――威厳も感じた。

 でも、徹様らしくない、とも思った。

 私はやっぱり、いつもの徹様が良い。

 格好良くなくても、優しくて、温かい。

 私達の居場所。居たい場所。

 そんな徹様が良い。

 そんな徹様が――好きだから。

 

 

 

 P月¥日

 

 数日、眠っていた。

 いや――死にかけていた、と書くべきか。

 『クリフォト』の襲撃があって、ロスヴァイセ様がユーグリットに囚われて、徹様は封印されて。

 『邪龍』の大群が襲ってきた時、その中にはリゼヴィムとユーグリッドの姿もあった。

 悪魔の『超越者』とまで言われた男と、『赤龍帝』を模した『番外の悪魔』。

 ロスヴァイセ様が囚われた時、ゲンドゥル様からロスヴァイセ様を救ってほしいと頼まれた時、殺そうと思った。

 許せなかった。

 争いを望んでいないのに、争いを持ち込む『クリフォト』が。

 子供たちを、戦えない人達を、ソーナ様の夢を壊そうとする『クリフォト』が。

 オーフィス様の『血』を限界以上に引き出し、消し飛ばそうとした。

 アガレス領……冥界の地形は一瞬だが確かに変わり、偽物とはいえ『赤龍帝の篭手』は完全に破壊された。

 その結果が、オーフィス様の魔力に染まった『龍の槍』であり、闇色の槍。

 『赤龍帝の鎧』を一突きで砕き、『邪龍』の群れを一薙ぎで一掃した槍。

 そして、私の消滅という形だったらしい。

 ……また、徹様に救われた。また、徹様は冥界を救った。また、徹様が倒れられた。

 私が弱いから。守られたから。守れなかったから。

 

 

 

 P月*日

 

 徹様が、また記憶を失くされていた。

 以前にもあった。

 ……初めてでは、ない。

 だが、何度目だろうと――辛い。とても、だ。

 記憶。

 これから先、徹様は『神器』の力を使えば使うだけ、記憶を失くしていくのだろうか?

 だが敵は……『クリフォト』は、きっと徹様にもっと力を使わせようとする。

 曹操がそうだったように。

 徹様は力を使えば使うだけ、無防備になるから。

 守りたいと思う。

 私達に守れるのか、と思う。

 

 そしてなにより――徹様の中から、消えたくない。

 忘れられたら、きっと私達は……。

 

 

 

 P月1日

 

 ゲンドゥル様も御無事で良かった。

 心配され、礼を言われた。

 でも助けたのは徹様だから――徹様が居なかったら、きっともっと大変な事になっていた。

 ソーナ様の学校も壊れていたし、ロスヴァイセ様は囚われていたし、私も――きっと死んでいた。

 それでも、そう伝えても、礼を言われた。

 私は、ロスヴァイセ様を守りたかった。

 家族だから……もう、この家の一員だから。

 

 

 

 P月2日

 

 徹様とロスヴァイセ様の子供か……まだ、と言っていたし、いつか見てみたいものだ。

 黒歌もうかうかしていられないようだ。

 これから楽しくなりそうだ。

 徹様は何時ものんびりされているし、あの二人には頑張ってほしい。

 私は――徹様が幸せなら、と。そう思う。

 あの方が幸せになれる未来を、一番近くで見ていたい。

 ゲンドゥル様からお叱りを受けた。

 ……もっと自分を出せ、か。

 それでも私は――。

 

 

 

 P月3日

 

 ――――――――。

 徹様の中から、あの日の事は完全に失われたのか。

 徹様が記憶を失くされた。

 それを、判っていたはずなのに。

 判っていても、確かめず、目を逸らしていた。

 その結果が、今日だ。

 ユーグリッドが捕まった事を、どうして教えてくれなかったのか、と言われた。

 笑顔で……嬉しそうに。

 ソーナ様の学校が壊れなかった事、ユーグリッドが捕まった事。

 ……まるで他人事のように、私達が頑張ったからだ、と。

 一番頑張ったのは、徹様なのに。

 私を救い、ソーナ様の夢を守り、記憶を失ったのは徹様なのに。

 

 

 ――あの日の誓いを、私は忘れない。

 必ず果たそう。

 ……私はただの、一本の槍だ。

 徹様を守りたい。

 平穏を、平和を、過ごしてほしい。

 それは私の意志で、想いだ。

 その意志を、想いを、貫き徹す。

 貫き徹す事だけは、誰にも譲らない。

 徹様は平穏に至れない。平和に過ごせない。

 誰が、何度そう言おうが――私は意志を、想いを貫こう。

 

 




槍最高。剣なんて飾りなんです。偉い人には(ry

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