とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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メイドさんは全体的にシリアスだよなぁ、と思ったり。
主人公との差が……。


163(メイド日記)

 

 P月A日

 

 期末テストも今日で終わり。

 手応えはあったそうなので、冬休みはゆっくり出来ればと思う。

 私がこの家に厄介になるようになってから、ずっと何かとゴタゴタしていたし。

 年末くらい、静かに暮らしてほしい。

 ロスヴァイセ様は今日からはテストの採点で忙しいそうだ。

 教師も大変だな。それで、訓練も欠かせないのだから。

 夜食でも用意してから、今日は休むとしよう。

 

 黒歌とオーフィス様は兵藤君の家に遊びに行っている。

 また変な事を覚えてこなければいいけど……妙な所で黒歌は悪乗りするから。

 いつもちゃんとした姉でいてほしいものだ。

 ……そんな所も黒歌らしいのだが。

 

 

 

 P月B日

 

 オーフィス様の行動範囲も、少しは広がった……のだろう。

 よく散歩したり兵藤君の家に遊びに行ったりしているようだが。

 徹様や黒歌も良く言っているが、オーフィス様は世間知らずだ。

 知っている世界が狭いとも言える。

 もっといろんなことを知り、学び、世界が広い事を判ってほしい。

 毎日を楽しんでほしい。

 

 黒歌が言うには、兵藤君の家では、女性陣は何時も兵藤君と一緒にお風呂に入っているのだそうだ。

 だが、オーフィス様は兵藤君とは一緒にお風呂に入らなかった。

 そして今日、徹様と一緒にお風呂に入りたいと言っていた。

 ……その変化に、オーフィス様自身は気付いているのだろうか?

 普通は、意中の人に好意を寄せる女性が増えたら嫌な気持ちになるのだろうな……。

 でも、私はその事を喜んでいる。

 ――もっと、徹様を好きな人が増えてくれれば、と思う。

 

 

 

 P月C日

 

 オーフィス様が徹様と一緒に入浴しようとしていた。

 まだ早いのだろうか?

 助けを求められたので、今日はオーフィス様に遠慮してもらう事になった。

 徹様も照れ屋な所があるので、何とも言えない。

 でも、嫌ってはいないはずだ。徹様とオーフィス様を見ていると、まるで兄妹のようだし。

 今度は、事前に説得してから入ってもらおう。

 何だかんだで、押しに弱いし。

 黒歌は……せめて猫の姿なら大丈夫ではないだろうか?

 まぁ、偶に一緒に入っているようだし、良い薬だ。

 今日は、白音とロスヴァイセ様に絞られるといい。

 

 それにしても、ここ最近のロスヴァイセ様は考え事をしている事が多い。

 声を掛けても上の空な時もある。

 疲れているだけだろうか?

 

 

 

 P月D日

 

 将来の事、か。

 ここ最近のロスヴァイセ様は元気がないと思っていたが、将来の事を考えていたそうだ。

 ソーナ・シトリー様の学校に、教師として誘われていると以前聞いていたが、その事に悩んでいたそうだ。

 徹様の眷属でもあるのだし、簡単に決められないと言っていた。

 ……私は、どうなるのだろう。

 偶に考えるが、いつまでお傍に置いてもらえるか。

 眷属とはいえ、ずっと家に住まわせてもらえる、という訳でもないだろうし。

 信頼してもらっている。好いて下さっている。

 その感情は感じられるが、言葉にしてもらった訳ではない。

 不安、何だろう。

 徹様にずっと着いて行くと言い切れる黒歌は、本当に強い。

 ――将来、か。

 

 

 

 P月E日

 

 ロスヴァイセ様の恋人役。良いのでは、と思う。

 申し訳ないが、少し楽しみだ。

 徹様にそういうお相手が居るという話は聞かないし。

 ソーナ・シトリー様と噂があるようだが、広めているのはレヴィアタン様だし。

 多分、ソーナ様もそう悪くは思っていないのだろうけど。

 なんとなく判る。

 そう言うものだ。女というのは。

 そして、ロスヴァイセ様も。

 ――きっと、今回の事も、口ではああ言っていたが、楽しみにされているのだろうな。

 

 

 

 P月F日

 

 今朝、ロスヴァイセ様が珍しく早起きをしてお弁当を作っていた。二つ。

 案の定、学校で渡したそうだ。

 目立っただろうな……悪いとは思うが、笑ってしまった。

 徹様もロスヴァイセ様も、最初はもっと控えめにしないと目立つだろうに。

 

 その事があったからか、徹様から相談を受けた。

 頼られるのは嬉しいが、貴方を好きな人に他人との恋愛相談をしないで下さい。

 楽しんではいますが、色々と複雑なんですからね?

 恋人同士でする事……無難に、デートでも、とお教えした。

 初々しいな、本当に。羨ましい。

 徹様の相手がロスヴァイセ様ではなく私なら、と想像してしまった。

 今度、お買い物にでもお誘いしようか。デートではなく、お買い物に。

 恋人ではないから、そのくらいが妥当だろう。

 いつか徹様の隣に、誰かが立つのだろうな。

 その誰かは私でありたいし、もし他の誰かなら、その誰かを祝福しよう。

 

 

 

 P月H日

 

 まぁ確かに、黒歌の言いたい事も判る。

 判るが、恋愛をした事が無い相手にいきなり進展する事を望むのもどうか、とも思う。

 長い目で見て、楽しめばいいのに。

 からかうことで発破をかけた、と思っておこう。

 それに、恥ずかしがっているロスヴァイセ様も、可愛かったし。

 もっと身嗜みに気を付けて、ちゃんとしてるだけでも随分と印象が変わると思うのだが。

 実用性重視と言えば聞こえはいいが、女の子なのだからもっと可愛い服とか着ればいいのに。

 素材は良いのだから。

 ――それに、徹様も、ロスヴァイセ様を意識しているのだし。

 

 

 

 P月I日

 

 ロスヴァイセ様は、もっと身嗜みにお金を掛けなさい。

 ……どこから教えればいいのか。

 今まで教わる立場だったのに――なんとも不思議な気分だ。

 しかも教えるのは、戦い方ではなく、服の選び方とか、お店での買い物の仕方とかだ。

 百均とかセール品とか……本当にもったいない。

 今度から、折を見て買い物に連れ出そうと思う。

 

 黒歌は着物ばかりだし、白音も自分の好みで選ぶから、今日みたいに自分の好みで人に服を選ぶのは楽しかった。

 ロスヴァイセ様、流行の服とか知らないし。

 雑誌とかもあまり読まないそうだ。

 いいのだろうか。十代の女性があんなで。

 少し心配になった。

 ああ――平和だな。

 

 

 

 P月J日

 

 徹様から、ロスヴァイセ様が元気が無いので様子を見て欲しいと言われた。

 相変わらず、よく見ているな、と。

 そのロスヴァイセ様は、おばあ様が来られるので落ち込んでいたようだ。

 なんでも、おばあ様に徹様の事を凄く美化して伝えたのだとか。

 ……なにをやっているんだか。

 まぁ、その辺りは徹様に頑張ってもらおう。

 彼女の悩みを解決するのは、彼氏の役目だ。

 

 

 

 P月K日

 

 訓練の後、ルフェイさんに料理を教えた。

 彼女は呑み込みが早い。

 魔術も、料理も。

 羨ましいな。才能がある人は。

 ――そう腐っている暇も無いのだが。

 追いつかれないように、努力しないと。

 

 

 

 P月L日

 

 ロスヴァイセ様のおばあ様は、北欧でも有名な魔法使いなのだそうだ。

 ゲンドゥル様。

 随分と落ち着いた方だった。

 それと、とても凄い人だ。

 私の魔術を一目見て、足らない事を沢山教えていただいた。

 魔力の量は私の方が多いと言われたけど、とてもそうは感じられなかった。

 経験の差だけで、ああまで――。

 ……凄いな。また、教えを乞いたい。

 

 それとゲンドゥル様は、結構恋話がお好きなようだ。 

 それとも、ロスヴァイセ様の恋だから、か。

 多分、心配されているのだろうな。

 おばあ様なら、ロスヴァイセ様の服装の好みとか判っているだろうし。

 きっと北欧でも、苦労したのだろうな。

 

 

 

 P月M日

 

 アザゼル様に、身体の調子を聞かれた。

 オーフィス様の『血』を貰い、この身に余る魔力を手に入れた。

 使えているのはほんの僅かだが、それでも体の負担は相当なのだそうだ。

 自覚がないのは、徹様の『神器』のおかげだと……。

 気付いていなかっただけで、私はずっと徹様に助けられていたのだと。

 『無限の龍神』の魔力だ、いくらか鍛えたとはいえ、一介の元堕天使では猛毒の部分が大きいのだそうだ。

 これからは、あまり使わないで済むように――か。

 心配された。

 アザゼル様は私に徹様の管理をさせたいから、と言っていたが。

 ……心配して下さったのだろう。

 私は本当に、沢山の人に支えられてここに居る。

 その事を忘れないようにしよう。

 私は、一人じゃない。一人では何もできない事を知っている。

 だからいつか、支えてくれている人達を支える事が出来る『女王』になりたい。

 それが、私が目指す『女王』であると信じたい。

 

 

 

 P月N月

 

 ユーグリッド・ルキフグス。

 グレイフィア様の弟であり、『クリフォト』に与するテロリスト。

 黒歌が徹様達のデートを覗きに行こうとしていたのを、止めなければ良かった。

 捕まえる事が出来たかもしれないのに。

 ……過ぎた事か。次に会った時に、捕まえよう。

 ロスヴァイセ様の前に現れた理由も判った――きっと、また現れるだろうから。

 しばらくは、私か黒歌のどちらかが傍に居る事になっている。

 グレイフィア様、もう少し待っていて下さい。

 

 それにしても、ロスヴァイセ様から聞いた限りだが、随分と女性の扱いがなっていないようだ。

 髪、か。

 ――いきなり触られるのは、やっぱり気持ち悪いだろうな。想像するのも嫌だ。

 姉弟でも、随分と違うんだな。

 

 

 

 P月O月

 

 羽を繕ってもらった事はあったが、髪を梳いてもらったのは初めてだ。

 ――気持ち良かったな。また、してほしいな……。

 徹様は、女性の髪に触れるという事を、どう考えているのだろう?

 普通は、傍に居るからというだけで、気になっているようだからという理由だけで触らせたりはしない。

 ……触らせても良いと、信頼し、信用し、心を開いているから、触らせるという事を。

 気付いていないのだろうな。

 鈍いから――そんな所は。

 

 

 

 P月Q日

 

 『666』の封印。

 その異説である『616』の事をロスヴァイセ様が研究していたそうだ。

 そして、『616』を研究していた他の研究者の人達も、ここ最近は誘拐されているそうだ。

 もっと早くに教えてくれればよかったのに。

 心配させたくなかったから、と言われても……知ったら、私達は心配する。

 もう、ロスヴァイセ様を仲間と、家族だと思っているから。

 

 黒歌も、もう貴女を認めているんですよ? ロスヴァイセ様。

 




アザゼル先生はツンデレM。もしくはドMツンデレ。
きっとそのうち報われます。






多分。

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