とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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フラグ? 乱立してるけど、君が言うフラグはどれかな?

投稿しなおしました。
自分でだと読めていたので、何が悪かったのか判らないです
これで読めてるといいですけど・・・


153(苦労人日記)

 @月A日

 

 カーミラ派の領土の一角に、転移魔法陣を敷く事を許された。

 これで、後からイッセー達を呼ぶ時に時間を短縮できる。

 しかし、予想以上にカーミラ派は追い詰められてるみたいだな。

 ただの傲慢な吸血鬼どもなら、こんな要求なんて、絶対に呑まなかっただろう。

 こんな対応一つでも随分と情報が手に入るのは、交渉慣れしてないからだな。

 今まで身内同士ばかりで争っていたのが仇になってるな。

 まぁ、俺らにとっては簡単につけ入れるので、喜ばしい事だが。

 この調子なら、向こうにもつけ入る隙があるかもしれないな。

 

 

 

 @月B日

 

 ヴァーリ達と合流出来た。

 リアスはあまり良い顔をしなかったが、使える戦力は多い方がいい。

 ツェペシュ派の町に潜って、情報を集めてもらっている。

 俺達だと顔が知られてるからな。

 まぁ、ヴァーリ達の方も元『禍の団』、有名ではあるが……俺達よりは動きやすいだろう。

 情報だと『禍の団』の連中はツェペシュ派の城から出てこないみたいだし。

 絶対とは言えないが……。

 

 

 

 @月C日

 

 エルメンヒルデに、上代徹の事を聞かれた。

 ……アイツはまた、妙な相手に興味を持たれやがって。

 あの人形女に、あいつは何を言ったんだ? ……女誑しめ。

 女なら堕天使でも悪魔でも天使でも魔王でも吸血鬼でもオッケーか。

 やっぱり、力を持ってる奴は、色んな所から注目されるんかね。

 難儀なもんだ。

 とりあえず、思ってる事を教えてやった。

 アイツはどうしようもないお人好しで、馬鹿な、人間だと。

 だから惚れるなよ?

 これ以上俺の負担を増やしてくれるな。頼むから。

 それに――アイツに惚れたら不幸になる。多分な。

 

 鼻で笑われた。

 そりゃそうだ。

 吸血鬼が人間に惚れるなんて、ありえねぇっての。

 人間にとって吸血鬼は恐怖の対象であり、吸血鬼にとって人間は餌なのだから。

 俺がおかしいんだろうな。疲れてるんだ。うん。

 

 あー、ウォッカ美味いな。

 ビールは安いし、良い国だ。

 

 

 

 @月D日

 

 進展が無い。

 戦線は膠着状態だし、めぼしい情報も特に手に入らない。

 変わった事と言えば、戦線に『強化吸血鬼』が出始めた事か。

 おそらく、ヴァレリーとやらが『幽世の聖杯』を使う事に慣れてきたのだろう。

 完全に使いこなす前に、頭を潰したいところだ。

 リアスもピリピリしている。

 吸血鬼側の要求は、相変わらずギャスパーを『吸血鬼として差し出す事』だ。

 そして見返りに、吸血鬼は和平に応じる。

 俺達が吸血鬼の派閥争いに関わる事は、拒否している。

 ――まず、絶対にカーミラ派が勝てると思ってる時点でおかしいだろ。

 勝負に絶対はない。

 ギャスパーがそれほどまでの切り札だと?

 確かに希少な時間制御系の『神器』使いだが、戦況を制圧できるほどデタラメという訳ではない。

 魔獣騒動や先日の誘拐騒動の時に暴走していたが、それも短時間だ。

 ギャスパーは強力ではあるが、切り札としては少し弱い。

 まだ何か隠してるんだろうな、絶対。

 

 

 

 @月E日

 

 ヴァーリから情報が来た。

 最悪だと思える情報だ。

 ――リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

 似たような顔を見た、と言った程度だが……ヴァーリがあの男を見間違えるだろうか?

 ……ないな。

 サーゼクスやアジュカと並ぶ、冥界の超越者。

 なるほど、と思う。

 確かに、『ルシファー』の名前には、カリスマがある。

 人を纏めるカリスマが。

 戦力を失った『禍の団』が纏まりを見せているのも、納得できる。

 ――あのクソ野郎が、今の『禍の団』の首領なのだろう。

 本当に、最悪だ。

 

 しかし、よくヴァーリの奴は俺に情報を寄越したもんだ。

 昔のアイツなら、リゼヴィムの顔を見た瞬間、殺しに行くくらいには憎んでただろうに。

 上代徹の影響かね。

 ――憎しみより、大切な物を見つけたか。

 何とも複雑な気分だ。喜ぶべき事なんだろうがね。

 親にとって子供の成長ってのは、こんな感じなのかね。

 嬉しいが、喜べない。

 

 

 

 @月F日

 

 あー……ったく。

 どうするかね。

 リアスが血の気が多いってのは、知ってたはずなんだが。

 戦線が動かない事に、油断したんだろうな。

 だからって、内戦状態の他国領で勝手に動くなよ。

 しかも、狙ったようにクーデターが起きてるしな。

 絶対に狙ってやがっただろ、リゼヴィム。

 ツェペシュ派の王は重傷を負って逃走、新しいツェペシュ派のトップには――ヴァレリー・ツェペシュ。

 『神滅具』を持つ、ギャスパーの友人。

 誘ってるな、絶対。

 

 どうするかね。

 選択肢はいくつかあるが、どれも碌な結果にならないだろうな。

 ……くそ。

 

 

 

 @月G日

 

 イッセー達だけだと心許ないのは事実だ。

 ヴァーリのチームが居るし、イッセー達もちゃんと強くなってきてるのは判る。

 だが、今回は相手が悪い。むしろ、最悪だと言える。

 オーフィスにとってサマエルがそうであるように、イッセー達『神器使い』にとって、あの男は最悪なのだ。

 ソーナ達のチームもそうだ。

 アイツ等も、『神器使い』と俺の作った『人工神器』の使い手で構成されている。

 動かせる手札の殆どが、あの男と相性が悪いってのは、どういう事だ。

 ……それだけ『神器』が強力すぎる、ってのがあるのか。

 どうするかね。

 塔城小猫が動いたおかげで、レイナーレと黒歌も動いた。

 眷属が動いたのだ、その身内が動くのは当然だ。

 むしろ『王』が動かなかった事が、奇跡に近い。

 正直、動いてほしくなかったが。

 上代徹とその眷属達には、前線に出てほしくない。

 アイツ等は明らかに過剰戦力だ。戦況どころか、世界に影響が出る。

 上代徹が動かなかったのは良かったのかもしれんが、最悪、状況はもっと悪くなるだろう。

 最悪だよ、リゼヴィム。

 

 ツェペシュ派の一部が援助を求めてきて、カーミラ派は応じるようだ。

 恩を売り、事態が沈静化したら上に立つつもりなんだろう。

 正直、今のこの状況では悪手だ。

 強大な敵を前にして、邪魔な荷物を増やしてどうする。

 一通り話を聞いたが、碌な情報を持ってなかった。

 だから生きてカーミラ派の領地へ来れたんだろうがな。

 それもあのクソ野郎の考えかと思うと、吐き気すらしてきやがる。

 

 後手後手に回っている。

 それが判っているだけに、自分が嫌になる。

 

 

 

 @月H日

 

 どうするか……カーミラは俺達が介入する事に賛成した。

 だが、問題は深刻過ぎる。

 リアスは拘束され、ツェペシュ派はクーデターで『禍の団』に乗っ取られた。

 ヴァーリ達は……無事だと信じよう。

 アイツ等は実力もあるし、悪運も強い。

 それに、本当にリゼヴィムが『禍の団』のトップなら、そう簡単にヴァーリを消したりしないはずだ。

 今日はツェペシュ派の城下町に宿を取る。

 ――さっさと問題を解決して、日本に戻りてぇ。

 来た時は、もう二度と戻りたくないとか思ってたのにな。

 ゲンキンなもんだ。

 でも、上代徹に振り回されるのは勘弁だな。

 

 レイナーレも、色々と考えてるみたいだな。

 『女王』が『王』の傍を離れるという事。

 あまり喜べることではないが、上代徹の平穏の為に動いている。

 まぁ、とりあえずは良いだろう。

 『女王』は自己を殺して『王』を支える。

 小猫が誘拐された時みたいに、感情に流されるなど最低も良い所だ。

 

 

 

 @月I日

 

 イッセー達に現状を説明したが、驚いていた。

 特にギャスパーは、自分の友人が敵対組織のトップになった事に狼狽していた。

 ったく……これから戦わなきゃならんかもしれんのに、幸先不安な事だ。

 まぁ、判らなくもないが。そりゃそうだよな。

 『王』は拘束されて、助けたいと思う友人は敵対組織のトップ。

 それでも前向きに進もうとする姿勢は、何とも言えんね。

 若手が荒事に慣れてる現状に、大人としては、な。

 敵は強大だ。

 正直、ここまで厄介な事になるとは俺も予想してなかった。

 『神滅具』使いを無力化して、吸血鬼に恩を売る。

 その程度の考えだった。甘いと言える。

 ――平和ボケしたかね。

 

 戦いだ、気を引き締めよう。

 これからは、僅かな失敗も命取りになる。

 今こちらには、上代徹は居ない。

 死ねば、そこで終わりだ。

 

 

 

 @月J日

 

 リアスと合流出来た。まずはその事を喜ぼう。

 ヴァーリ達は無事だろうか? ま、無事だろうな。

 そう簡単にくたばるような奴じゃない。そう信じよう。

 クーデターによる混乱は無いが、下手に動いて警戒されたくない。

 

 それにしても、マリウス・ツェペシュ。

 現ツェペシュ派の宰相。『幽世の聖杯』を研究するためにツェペシュ派を裏切り、妹を犠牲にした吸血鬼。

 よく口の回る、クソ野郎。それで十分だ。

 研究に犠牲は付物なんだろうが、どうにもな。アレは気に入らん。

 『神器』の研究は俺も楽しんでいるが、あの男の『研究成果』は全く面白くない。

 『幽世の聖杯』に完全に飲まれ、決して見てはいけないモノに囚われた妹。

 それを見てなにも思わないなんて、終わってる。

 ――俺も、イッセー達に感化されたかね。溜息しか出ねぇ。

 

 そして、その自信を支える『三日月の暗黒龍』クロウ・クルワッハ。

 どうするかな。

 アレは、規格外すぎる。『最強の邪龍』というのも頷ける。

 紅を纏ったイッセーでも、現状では相手をするのも難しいだろう。

 ヴァーリと合流出来たら……それでも、どうなるか。

 ツェペシュの城に滞在する事になったが、あんなのが傍に居ると思うと寝る気も起きねぇ。

 

 

 

 @月K日

 

 クソが。

 やっぱり、ヴァーリが言ってた通りか。

 リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。リリン。

 ――あのくそったれな喋り方も変わってなかった。そして、性格も。

 悪魔側の旧政府と反政府が内戦してた時に、突然姿を消した魔王の血族。

 あの性格だ、旧魔王派のように現魔王政府への怨恨の為に『禍の団』を動かしている訳ではないだろう。

 そんな奴じゃない。

 アレは、怨恨なんて抱かない。悦楽の身を求める狂人だ。

 一応の目的は、マリウスの研究の後押し。くだらない。絶対嘘だ。

 表に出てきたのはやりたい事が出来たと言っていたが、それが本命だろう。

 おそらく、『聖杯』。

 生命の理を操る聖杯を使って、何かを起こす気だろう。

 その何かは判らないが――それを食い止める事が出来れば、最悪は回避できるか?

 ああ――ヴァーリがあの男を殺したい気持ちがよく判る。本当に。

 

 だが殺すには、オーフィスの力で創られたリリスが邪魔だ。

 完全ではないとはいえ、八割でも十分すぎる。

 対抗できるとすれば、本物のオーフィスから『血』を受けたレイナーレだけだろう。

 イッセーやヴァーリでも、純粋な力ではオーフィスには及ばない。

 『無限の龍神』に対抗できるのは『無限の龍神』だけ。

 昔は『神の子を見張る者』でも下っ端だったってのになぁ。

 

 

 

 @月L日

 

 なるほどな。

 ギャスパーの状態の事が、少しだけ判った。

 しかし、中々に重い身の上だな。

 形を持たずに生まれ、それを見て母親は発狂。そのまま死んだ、か。

 しかも、周囲に呪いを撒き散らし、産婆たちを皆殺し。

 そりゃたしかに、異端として扱われる。

 ……生まれた時は、黒く蠢く何か、か。

 親にそうまで言われるなんてな。

 少し、ヴァーリを思い出してしまった。

 アイツも、親から、身内から迫害された奴だ。

 ――親から傷付けられるってのは、キツイんだろうな。

 

 それにしても、ヴァレリーは不安定すぎる。

 あれで本当に『幽世の聖杯』を十全使いこなせているのだろうか?

 生命の理に触れ、命とは、魂とは、どんなものなのか強制的に知らされる。

 『聖杯』とは、そういうものだ。

 そして、『聖杯』を使うたびに生きる者、死んだ者、それらの精神、概念――そういった物を無意識に取り込んでしまう。

 自身の器――魂の器を、他者で満たしてしまう。

 その結果が、アレだ。

 ……もっと大事に扱えよ、マリウス。妹なんだろうが。

 家族から傷付けられるってのは、本気で辛いんだよ。

 ヴァーリがそうだった。

 あの心身共に強くあろうとする男が、本当に心が折れるくらい、辛いのだ。

 

 

 

 @月M日

 

 ヴァーリはどうしてるだろうか。

 おそらく、リゼヴィムを打倒するために、どこかに潜伏してるだろうな。

 なんだかな。

 リゼヴィムは、ヴァーリの父親を唆して、ヴァーリを迫害するように仕向けた。

 ヴァーリも、最初は父親を信じていたはずだ。

 過去も本心も知らないが、あいつが優しい男だというのは知っている。

 仲間をアイツなりにだが、大切にしている事も。

 だから――。

 だから、リゼヴィム。俺はやっぱり、お前を許せそうにねぇ。

 元から許す気は無かったが、どうにかしてヴァーリに決着をつけさせてやりたい。

 レイナーレ達がヴァレリーに共感したように、俺はヴァーリに共感してるんだろう。

 ギャスパーの身の上話を聞いたからかね。

 ……親らしいことなんて、何もしてないんだがなぁ。

 

 

 

 @月N日

 

 明日が、決戦になるだろうな。

 エルメンヒルデから、明日、マリウスがヴァレリーの『聖杯』を抜き取る儀式を行うという情報を得た。

 イッセー達には覚えがあるはずだ。アーシアは一度、『聖母の微笑』を抜き取られている。

 その結果も、知っているはずだ。

 行ったのはレイナーレだしな。思う所は皆あるだろう。

 ……面白くねぇ。

 マリウス。まったく、全然、どうしようもないほどに面白くねぇぞ。

 きっとお前は道化だ。

 クロウ・クルワッハにリリス、リゼヴィム。

 アイツ等は、お前を見ちゃいない。

 目的はまだ判らないが、利用されてるだけだろう。

 それが判らないなら――ヴァレリーより先に死ぬのはお前だ。

 

 

 

 @月O日

 

 くそ――アレは無い。絶対無い。

 チクショウ。本気で騙された。

 上代徹の親? あほか。親なんて柄か、あいつが。いや、間違ってないのか?

 まぁ、今はどうでもいい。それよりも、だ。

 どうなってやがる――こんなに世界を混乱させやがって。

 ああ、確かに。直接の原因じゃないだろうが、あいつの所為で世界が混乱したのは事実だ。

 それが、上代徹を育てる為?

 『異世界』に至る扉の鍵を守る為?

 ――大体、なんでこのタイミングで俺の前に出てきやがる。

 出てくるなら、他の連中の前にも出やがれ。

 どんだけお前ら親子は俺を苦しめる。

 こんな事、誰にも言える訳ねぇだろうが。くそったれ。

 言われなくても言わねぇよ。気が狂ったと思われるのがオチだ。

 チクショウ。天界の連中が上代徹に関わらない理由が判った。

 そりゃそうだ。

 ――アイツ、絶対俺より先にミカエルに接触してるだろ。

 タイミング的には、上代徹がレーティングゲームに参加した後くらいか?

 あの後から、天界が妙に上代徹に関わらなくなったからな。

 くそったれ。

 

 そりゃ、リゼヴィムも上代徹を狙う訳だ。

 オーフィスが懐くわけだ。

 当たり前だ。

 アレは鍵。

 扉を開く鍵。

 『名前を与えられなかった神』ってそういう事かよ。

 名前が無いんじゃない。与えられなかった。

 『無限の可能性』の神。

 それを人間の身に宿すかよ……。

 

 誰も欠ける事無く、問題が片付きはしたがよ。

 素直に喜べないのは、何でかね?

 ……くそったれ。

 リゼヴィム達は逃がしたが――アレが『666』を狙うなら、必ず上代徹とぶつかる。

 その時が、『クリフォト』の連中との決戦の時だろうな。

 

 




明言はしない。
皆の勘違いを煽っていくのが自分のスタイルだと信じてる(キリッ

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