とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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十七巻が……十七巻が見つからないんです。
近所の本屋に無かったんです……どうしよう?
まぁ、まだ十六巻が終わってないから大丈夫だけど。



148(白龍日記 エピローグ)

 !月/日

 

 徹に感謝しなければならないな。

 正直、マトモにあの『邪龍』達と戦っていたら、勝てたかどうかわからない。

 それも、相手はまだ本気ではなかったのだから。

 俺の新しい能力は、まだ徹には遠く及ばない。

 まだまだ改良の余地がある。それが判っただけ、判り、生き延びれただけマシだ。

 ――アジ・ダハーカ。

 千の魔法を操り、ゾロアスターの善神の軍勢に牙を剥いた『邪龍』。

 ――グレンデル。

 かつて暴虐の果てに初代ベオウルフに滅ぼされた『邪龍』。

 そして、徹とオーフィスに何度か殺されたと言っていた。相変わらずデタラメだな、あいつは。

 その二匹の『邪龍』はすでに滅んだはずだが、どうしてか存在していた。

 存在して、俺達の前に現れた。

 ……これからまた、争いが起こるのだろうな。

 徹。お前は相変わらず、平穏からほど遠い場所にいるようだ。

 お前らしいが、少し心配だ。

 

 

 

 !月!日

 

 傷は大分治ったが、どう動くべきか。

 俺達は大丈夫だが、あれだけのバケモノ相手だと、ルフェイだけは安全な場所へ連れて行きたい。

 だが、俺達は元『禍の団』だ。俺達を受け入れてくれる場所などあるだろうか?

 冥界、天界、『神の子を見張る者』。

 北欧のような海外の神話体系にも、よくは思われないだろう。

 ルフェイも、俺達と行動を共にしたいと言ってくれている。

 ……甘いな、俺は。

 

 

 

 !月”日

 

 オーフィスはどうしているだろうか? 元気――というのもアレだが、少しは感情豊かになっただろうか?

 一つ、これからの目的地…俺達を受け入れてくれる場所の候補がある。

 上代徹。

 どの勢力にも属さない人間。

 『神の器』を持つ徹を、人間と称して良いのかは判断に迷うが。

 本人が人間であり続けようとしているのだから、俺達は人間として接しようと思う。

 友人がそう願うなら、その願いを叶えたいと思うのが友人というものだろう。

 しかし、本当に頼って良いものか……。

 

 

 

 !月#日

 

 冥界の方でも、動きがあったようだ。

 ルキフグス。現魔王ルシファーの『女王』の家系。『番外の悪魔』の家系でもある。

 そのルキフグスの弟が、『禍の団』に所属しているらしい。

 『禍の団』の全貌を理解している訳ではないが、それほどの相手なら気付いていたはずだ。

 一体、何が起こっているのか。

 戦う事は得意だが、策謀は面白くない。

 さて――今度は、裏で誰が動いているのか。

 

 

 

 !月AA日

 

 黒歌と連絡を取ったが、今は徹達の方でも面倒が起きているようだ。

 黒歌の妹が攫われ、徹が問題を解決した。

 その際に、黒歌の妹を攫った一員であるグレンデルを何度も殺し、ルキフグスの弟が為す術も無く逃げ帰ったのだそうだ。

 相変わらずのデタラメさに、笑うしかないな。

 俺や赤龍帝が苦戦する『邪龍』を何度も殺せる人間など、そうは居ない。

 たとえ、オーフィスの援護があっても、だ。

 そもそも、殺せるのは一度だけだ。何度も殺している時点で、まずおかしい。

 

 

 

 !月AB日

 

 『はぐれ魔法使い』どもの動きが活発になってきている。

 それに、どうも狙いは世界中の『邪龍』の伝説のようだ。

 すでに滅んだはずのそれらを探している。

 先日の事といい、あいつ等の狙いは『邪龍』の復活なのかもしれない。

 それなら、魔獣騒動の時以上の混乱を世界にもたらせるだろう。

 だが――『邪龍』を御せるだけの力があるのか、と思うと疑問しか残らない。

 いくらテロリストとはいえ、その程度の事には頭が回るはずだ。

 なら、思いつく事は一つ。『邪龍』を御せる方法を手に入れた。

 『邪龍』の復活といい――厄介な事になりそうだ。

 

 

 

 !月AC日

 

 アザゼルから連絡が来た。

 今はルーマニアの方で仕事をしているそうだが、そちらにも『禍の団』が関わっているそうだ。

 元『禍の団』として、情報が欲しいと言ってきた。

 そう言われても、俺達が持っている情報など、そう多くない。

 黒幕の予想は出来るが、確信できるだけの情報は無い。

 面倒だな。

 搦め手も悪くは無いが、力で捻じ伏せる方が俺達には合っている。

 

 

 

 !月AD日

 

 徹の家に向かう事にする。

 次のアザゼルからの連絡まで、少し時間が出来た。

 黒歌と連絡を取ろうとしたが、どうにも間に合いそうにない。

 何かあったのだろうか?

 美猴も心配していた。

 何だかんだで仲が良いからな、あの二人は。

 

 オーフィスはどうしているだろうか?

 あれからどう変わったか――楽しみだ。

 

 

 

 !月AE日

 

 徹には悪いが、頼らせてもらう事になった。

 やはり、安心できる家というのは、悪くない。

 黒歌には驚かれたが、今回の件は本当に申し訳なく思う。

 この家ならば『禍の団』の襲撃は無いだろう。

 ルフェイは、戦いに身を置くには、少し幼い。

 しばらくはこの家で、ゆっくりと休ませてもらおう。

 

 徹は相変わらず、美猴の話を楽しそうに聞く。

 本当に、心底からだ。

 美猴はそれに気を良くして、色んな事を話す。

 徹は聞き上手なのだと思う。

 俺は聞く事が下手だし、話すのも得意ではない。

 戦いには不要なんだろうが、ああいうのは少し羨ましい。

 俺には、無いものだから。

 

 

 

 !月AF日

 

 アルビオンは、随分と徹に心を開いている。

 「おっぱいドラゴン」の所為で心を患っている時に、その対策を立てて、自ら実践してくれたのだから、心を許して当然か。

 徹と一緒に居ると、今まで判らなかったアルビオンの真意や言葉を聞く事が出来る。

 俺は話し上手でも、聞き上手でもないと思い知らされる気分だ。

 だが、悪くない。

 ――俺が出来ない事を、徹がしてくれる。

 話し上手な美猴、聞き上手な徹、料理上手なルフェイ、戦上手なアーサー。

 この家にも、俺には無い物を沢山持っている奴ばかりだ。

 誰かと居る。

 それも存外、悪いものではないのかもしれない。

 

 それと、驚いた事にオーフィスが随分と自分以外に興味を持っていた。

 黒歌や徹に興味を持っていたのは判っていたが、それ以外にも――世界に興味を持っていた。

 驚いたが――喜ぶべき事だろう。

 世界と敵対できる存在が世界に興味を持つ。

 それはきっと、良い事だ。

 

 

 

 !月AG日

 

 レイナーレと、黒歌の妹から『強さ』とは何か、と聞かれた。

 あの時は『戦う力』、どんな時でも『折れない力』だと答えたが、果たしてそうだろうか?

 強さというのに形は無い。

 俺が目指す強さと、美猴が求める強さは違う。

 徹が持つ強さも、レイナーレが手に入れた強さも、黒歌が望む強さも違う。

 黒歌の妹が願う強さもまた違う。

 ――難しい問題だ。

 ただ、思うのだ。

 俺達のようなテロリストを友と呼んでくれる。平穏を願い、望み、それでも身内の為に争いの渦中へ向かう。

 徹のその優しさは強さだ。

 そして、その強さを俺は…好ましく思っている。

 

 

 

 !月AH日

 

 今日は、兵藤一誠の家に泊まる事にした。

 相当に敵視されているが、まぁ、些細な事だ。

 兵藤一誠の家は、改めてみると随分と大きい。

 人間界では、だが。

 レイナーレの気分転換の為に兵藤一誠の家に行った。

 美猴は相変わらず心底から楽しんでいた。

 そして、オーフィスも。

 なんだろうな――こうも平和だと、どうにも気が緩んでしまう。

 ドライグとアルビオンも、兵藤一誠の問題を優先して、和解しているし。

 そんなに嫌なのか、「おっぱいドラゴン」というのは。

 まぁ、『ケツ龍皇』という名は、確かに嫌ではあるが。

 

 レイナーレ。

 神槍を手に入れ、オーフィスの血の加護を受け、三大勢力のどこにも縛られない翼を持つ『女王』。

 俺は口が回る訳でもないし、感情を出すのも苦手だ。

 だから判り辛いだろうが……俺はお前を応援している。

 徹がお前を受け入れ、信頼し、応援しているから。

 お前の探す強さが、いつか見付かればいい、と思う。

 それまで、徹に守ってもらえ。

 それが見つかったら――俺の友人を守ってくれ。

 

 

 

 !月AI日

 

 兵藤一誠の恋人のアーシアから『エロゲ』という物はどういう物かと聞かれたが……。

 ああいう物が、今代赤龍帝の力の源か。

 あんなものに頼るより、実物が良いと思うのは俺だけだろうか?

 美猴が言うには、アレはアレで味あるんだろ、という事だ。よく判らないな。

 

 

 

 !月AJ日

 

 ここ数日で、随分と舌が肥えたと思う。

 旅慣れて、色々な国の料理を口にしたが、レイナーレの料理が一番俺達に合っていると思う。

 そう言うと、美猴から笑われたが。

 確かに、俺らしい言葉ではなかったと思う。

 だが、本心だ。

 レイナーレの料理は暖かい。

 そう思う。

 ――家庭の料理というのは、ああいうのを言うのだろう。

 オーフィスが懐いている理由が、なんとなく判った気がする。

 ルフェイが偶に料理を習っていたので、少し期待している。

 

 ……アザゼルから連絡が来た。

 ルーマニアの方で、手を貸してほしいとの事だった。

 どうやら俺達の平穏は、一端の終わりのようだ。

 その事を、少しばかり残念に思っている自分が居る。

 不思議なものだ。

 美猴、お前はどうだ? 平穏は馴染まなかったか? それとも、平穏に浸ってしまったか?

 

 

 

 !月AK日

 

 約束する、徹。

 俺達はまた、必ずお前に会いに行く。

 ああ、その時は――。

 オーフィスは、もっと感情豊かになっているだろうか?

 レイナーレは、悩みを解消できているだろうか。

 そして徹。お前の周りは、今と変わらず平穏だろうか。

 その時を、楽しみにしている。

 

 




そういえば、徹君のルーマニア行はどうしよう?
行かせたいけど、行かせる理由がないや。
流石に海外だしなぁ

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