とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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たぶん、16巻あたりから一気に進む。
猫又モード白音ちゃんはやく!


136(エピローグ 白猫日記)

 

 B月F日

 

 徹先輩が帰ってきてくれた。

 その事は嬉しい。多分……凄く、嬉しいのだと思う。

 発情期だからとか、お姉様がどうとか関係無く――嬉しい、という気持ちは本当だ。

 ただ……家に、オーフィスが住むようになった。

 徹先輩がそう決めたのなら、私が何かを言えるわけではないし、姉様もレイナーレも、ロスヴァイセも受け入れている。

 それに、私も彼女の事を特別嫌いという訳ではない。

 彼女は一度徹先輩を殺しているけど、徹先輩は生きているし、徹先輩自身もその事を全然気にしていない。

 ……もう少し、自分の命を大事にしてほしいとは思うけど。

 それよりも――。

 徹先輩が、オーフィスの事ばかりを気にしてる。気に掛けて、お世話をしてる。

 それが、嫌。

 自分でも、心が狭いと思う。嫉妬深いと思う。

 オーフィスは世間知らずで、徹先輩が気に掛けている。きっと、それだけだ。

 判ってる。判ってるけど……やっぱり、嫌だ。

 徹先輩が悪い訳ではない。オーフィスが悪い訳ではない。

 ……でも、オーフィスの事を気に掛けてる徹先輩を見るのは嫌だ。

 

 溜息しか出ない。

 私も、姉様みたいにもっと素直に出来たら、と思う。

 抱き付いたり、甘えたり、愛を囁いたり。

 ――羨ましい。でも、恥ずかしい。

 

 

 

 B月G日

 

 お昼休みに、オーフィスが学園に来た。レイナーレと一緒に。

 部長や生徒会長たちと一緒に向かったが、遊びに来ただけだった。

 ……徹先輩に会いに来ただけ、だった。

 オーフィスは何を考えているか判らない。

 でも……素直に自分の事を言えるのは、羨ましいと思う。

 徹先輩に会いに、徹先輩と一緒に遊ぶために……私も、一緒に遊びたい。

 ――そう言えない自分が、嫌い。

 姉様から笑われたけど。

 ……姉様も、自分の気持ちに正直だから羨ましい。

 レイナーレみたいに徹先輩の為にじゃない、自分の欲求に素直な所が羨ましい。

 それで少し徹先輩は困ってるみたいだけど、喜んでる所もあるのは少し恨めしい。

 私も姉様の妹だから、将来には期待が……出来ると思う。

 

 それに、徹先輩は小さいのも嫌いではないのだと思う。

 オーフィスや支取会長とも仲が良いし。うん。

 まぁ、だからといって、私が素直にならない限り距離は縮まらないのだが。

 ……それが一番難しい。

 

 

 

 B月H日

 

 徹先輩がアザゼル先生から放送で呼び出されていた。

 オーディン…北欧の件で、アザゼル先生に頼ってたらしい。

 ロスヴァイセさんの為に――羨ましい。

 私も姉様も、徹先輩に救われた。

 きっと、ロスヴァイセさんもそうなんだと思う。判る。理解している。

 でも、羨ましい。

 ――徹先輩に気に掛けてもらっているロスヴァイセさんが、羨ましい。

 私も……一度救われたけど、もう一度気に掛けてほしいと思うのは、駄目だろうか?

 ……我儘だと判っているし、きっと誰が困っていても徹先輩は手を差し伸べて――助けてくれると思う。

 でも、その手を私に伸ばしてほしいと思う。

 嫉妬――だと、思う。よく判らないけど、多分嫉妬してる。

 オーフィスやロスヴァイセさんに。

 ――嫉妬するくらいなら、素直になって甘えればいいのに。姉様みたいに。

 自分が嫌になる。

 

 

 

 B月I日

 

 ロスヴァイセさんとグリゼルダさんに悩みを聞いてもらった。

 というか、恋というか、片思いというか、なんというか……何を書いているのか。恥ずかしい。

 徹先輩が好きだ。きっと大好きで、姉様と同じくらい――大切に想ってる。

 でも、その徹先輩は誰にでも優しくて、誰にでも変わらず接して、誰からも好かれている。

 ……私みたいなただの後輩は、どう思ってるだろう?

 姉様の妹? 学校の後輩? 年下の女の子?

 考えれば考えるほど、気分が滅入ってしまう。

 ロスヴァイセさんとグリゼルダさんは悩むより、徹先輩自身に聞いてみたら、と言っていたが…こんな事、聞けるわけがない。

 私の事をどう思ってますか? ……想像しただけで、心臓がどうにかなってしまいそうだ。

 でも――聞きたいと思ってるし、今のままだと駄目だとも判っている。

 今日は、レイナーレや姉様と一緒にオーフィスの服を買いに行った。

 レイナーレも姉様も、徹先輩が好きだ。きっと、私よりも好きだと思う。誰よりも好きだと……。

 多分、オーフィスも。よく判らないけど、そう悪く思ってない。好きか嫌いなら、絶対好きに傾いてる。

 見てれば判る。誰よりも、徹先輩に心を開いてる。徹先輩にだけ笑顔を見せているし。

 ……素直じゃないのは、私だけ。

 素直になれないのは、私だけだ。

 

 

 

 B月J日

 

 徹先輩は、オーフィスを笑わせる――笑顔を浮かべさせようとしている。

 それがどれだけ凄い事か判っているのか、判っていないのか……。

 ただ――私は、そんなオーフィスが羨ましいと思っている。

 徹先輩の隣に座って、一緒にマンガを読んで、テレビを見て、気にしてもらって、ずっと一緒に居て……そんなオーフィスが、羨ましい。

 素直に、そう思う。……思うだけで、行動に出る事が出来なかったけど。

 オーフィスが徹先輩の右側に座るなら、左側に座ればいい。

 ……私は、臆病だ。

 隣に座るのが、恥ずかしい。勇気が要る。そして、その勇気がない。

 座りたいのに、座る勇気がない。

 一緒に居たいのに、一緒に居る勇気がない。

 ――姉様のニヤニヤ笑顔だけは、どうにかしてほしい。見世物ではないのですけど、私は。

 

 

 

 B月K日

 

 ……私は、そんなに判りやすいのだろうか?

 これでも、感情を表情に出さないのは得意だ。得意だと、思っている。

 でも、今日は部長たちに背中を押してもらった。

 買い出し。

 今まで必要な物は部長達がイッセー先輩とのデートついでに買い揃えていた。

 今日は、私一人に任された。結構な量を。

 『戦車』の私なら問題ない量だけど……何分量が多い。数が多い。種類が多い。

 ……言い訳、は完璧だったと思う。変に思われなかったと……思いたい。

 校門で偶然徹先輩と会って、買い出しの量が多いので手伝ってもらって、優しい先輩は笑顔で頷いてくれて、『戦車』の私を気遣って荷物を少し多く持ってくれて、放課後の時間を並んで歩いて部室へと戻った。

 ちょっと……というより、凄く良い時間だった。

 でも――話したのは在り来たりな事で、全然特別な事じゃなくて…でも楽しくて、嬉しかった。

 気付いたら買い物は終わっていて、部室に荷物を置いて、私は徹先輩と一緒に家に帰ってきて……話した内容は、やっぱり普通の事ばっかりだったと思う。

 ……もっとこう、色々と話したい事、伝えたい事があったのに、だ。

 落ち込んでいたら、徹先輩から心配された。

 心配されたのは嬉しいけど……私と二人の時くらい、姉様やレイナーレの名前を出してほしくなかった。

 そう思うのは、私の我儘だろうか? ……我儘だろうな。

 

 

 

 B月L日

 

 ヴァーリさん達が遊びに来た。

 ここ最近、随分と仲良くなれたと思う。

 冥界で英雄派と戦った時は助けてもらったので、ちゃんとお礼を言っておいた。

 白龍皇――赤龍帝、イッセー先輩の宿敵で、ライバル。

 徹先輩の能力を真似して、『時間』に干渉する力に至ったドラゴン。

 オーフィスも感心していた、らしい。私は彼女の表情や感情の変化はよく判らない。

 レイナーレは、その辺りはなんとなく判ると言っていた。

 ……流石は徹先輩の『女王』というべきなんだろうか? ヴァーリさん達も驚いていた。

 

 

 

 B月M日

 

 ルフェイさんは、イッセー先輩…乳龍帝が好きらしい。

 どうかと思うが――ライバルじゃなくて良かったと思う。

 彼女とは、友達になれそうに感じた。

 小猫、と呼んでもらう事になった。私はルフェイさん、と。

 白音の名は、姉様と……特別な人に呼んでもらいたい。

 塔城さん――ではなく、名前で呼んでもらいたい。

 ……何を書いているのか。

 

 

 

 B月N日

 

 ロスヴァイセさんが、徹先輩の眷属にしてほしいと言っていた。

 『悪魔の駒』ではなく、『御使い』のカードで転生天使としての眷属だが。

 戦乙女のロスヴァイセさんには、白い翼が似合うと思う。

 まだ正式に転生していないけど、きっとロスヴァイセさんは北欧よりも徹先輩を選ぶと思う。

 ……選んでほしい。

 私は転生悪魔なのに、転生天使になったロスヴァイセさんの事を喜ぶのは変だろうか?

 姉様もレイナーレも喜んでいたし。

 うん、やっぱり変ではない。

 というか、ヴァーリさん達も喜んで…祝福してくれていた。

 ヴァーリさん達は徹先輩の眷属ではないけれど、仲間なんだ、と思った。

 姉様にそういうと、嬉しそうに笑ってもらえた。

 ……姉様の笑顔は、素敵だと思う。その笑顔をいつも向けてもらってる徹先輩が、少し羨ましい。

 

 それと、オーディンが家に来た。

 徹先輩にロスヴァイセさんの事で釘を刺されてたけど。

 ロスヴァイセさんの家族の事――徹先輩なりに、守ろうとしてくれていた。

 家族に手を出さないという約束を信頼している、と。

 手を出したなら――北欧へ向かう、と。

 オーフィスにスコルとハティ。

 きっと…本気で北欧神話と勝負が出来ると思う。

 姉様に言われなくても、きっと誰もが理解してる。

 最初は嫌な顔をしていたのに、見送りの時には満面の笑顔だったのも印象的だ。

 本当に姉様は、オーディンが嫌いなんだと判った。

 私も嫌いだが。

 だって、あの主神は徹先輩の敵だから。

 スコルとハティからも唸られていた。少し笑ってしまった。

 

 

 

 B月O日

 

 今日は、徹先輩が釣りに行ってお魚を釣ってきてくれた。

 私の為、という訳でもないだろうけど、徹先輩が釣ってきてくれたお魚は、私が食べる事が出来た。

 レイナーレが気を使ってくれた。

 ……お礼を言うと、撫でられたけど。あまり子ども扱いしないでほしい。

 でも嬉しかったのは本当だ。

 姉様が悔しがっていたけど。

 少しくらいは、私にも良い思いをさせてほしい。

 姉様は徹先輩に素直になれるから、良いじゃないかと思う。

 私は素直になれなくて、隣に座る事も、膝の上で寝る事も、抱きつく事も――ベッドを一緒にする事も、出来ないのだから。

 

 

 

 B月P日

 

 今日も、駒王学園へオーフィスが来た。

 アザゼル先生が疲れていたのが印象的だった。

 総督を辞めたばかりなのに、オーフィスの相手をするのは疲れる事なのだろう。私にはよく判らないが。

 ロスヴァイセさんが気にしていた。

 今度飲みに誘うと言っていた。生徒…未成年にそんな事を言われても困る。

 仲が良いんですね、と聞いたらお世話になっているお礼だそうだ。

 それ以上の感情は無いのだろうか、と邪推してしまった。

 無いらしい。恩人には恩を返すものです、と笑顔で言われた。

 ……ちょっと複雑。

 でも、ロスヴァイセさんならまぁいいか…と思うあたり、私も相当徹先輩の毒されていると思う。

 私一人を見て欲しい。

 けど、姉様やレイナーレ、ロスヴァイセさんも一緒に――と思ってしまう。

 ……好きって、難しい。

 

 

 

 B月Q日

 

 徹先輩が、イッセー先輩がデートに誘われている場面で不貞腐れていた。

 とても――とても、面白かった。

 そして、少しだけ複雑だった。

 ……私が誘えば、徹先輩はデートに応じてくれるだろうか?

 誘えなかったけど。

 オーフィスに先を越されたけど。

 溜息しか出ない。しかもその後、徹先輩とオーフィスの三人で一緒に帰る事になったし。

 何か違うと思う。デートじゃない。今日のはデートじゃないはずだ。

 ……デート。

 誘いたい。

 

 

 

 B月S日

 

 魔法使いとの契約の事を、アザゼル先生から説明された。

 でも、私にはまだ早いと思う。実力的に。

 仙術には自信があるが、私の周りを見ていると、私が一段劣っているのが嫌でも判る。

 赤龍帝、聖魔剣、聖剣、雷光――神槍。

 アザゼル先生が言うには、レイナーレは特別らしいが。

 それもそうか。彼女の翼は三種三対六翼。純粋な転生悪魔ではない。

 魔法使いとの契約も特別なのかもしれない。

 

 それと、ロスヴァイセさんのお婆さんがとても凄い魔法使いなのだそうだ。

 ロスヴァイセさんもかなりの魔術の使い手だし、彼女の魔術の師でもあるらしいお婆さんはどれほどの使い手なのだろう? 想像もつかない。

 レイナーレが興味を示していた。一度師事を乞いたいと言っていた。

 ……どれだけ強くなる気なのだろう、私達の『女王』は。

 凄いと思う。純粋に……凄くて、羨ましい。

 レイナーレは、本当に徹先輩一筋だ。

 徹先輩の為に、強くなろうとしている。徹先輩の為だけに、真っ直ぐに前を向いている。

 それが判るだけに……

 

 

 羨ましい。

 

 

 

 B月T日

 

 徹先輩から、女の人の匂いがした。

 姉様も感じたようで、少しムッとしていた。多分、私も。

 学校で誰か女の人と触れ合ったのだろうか? 今まではそこまで気にしなかったけど、強い魔力を感じた。悪魔――支取会長や部長や副部長の匂いとは違う、甘くて力強い匂い。

 何処かで嗅いだことがある匂いだったけど……思い出せないから、接した回数が多くない人だと思う。

 徹先輩が誰か女の人と――学校でなら、クラスメイトかもしれない。

 でも、やっぱり嫌だ。

 皆と一緒に幸せに……でも、私を一番に見て欲しい。私を特別にしてほしい。

 オーフィスが徹先輩の隣に座るのが羨ましい。

 ロスヴァイセさんが徹先輩に優しくするのが羨ましい。

 姉様が徹先輩に甘えるのが羨ましい。

 徹先輩に頼られるレイナーレが羨ましい。

 ……羨ましいばっかりだ。

 

 

 

 B月U日

 

 ロスヴァイセさんが、天使へと転生した。

 戦乙女から、転生天使へ。

 グリゼルダさんとデュリオさんも祝福してくれていた。

 姉様もレイナーレも、喜んでいた。

 私も――嬉しい。

 それに、スコルとハティからも受け入れられていた。

 

 徹先輩はロスヴァイセさんの事を、何もしていないと言っていた。

 アザゼル先生や、レイナーレ――周りの人たちが助けてくれたのだと。

 徹先輩らしいなぁ、と。

 皆で笑ってしまった。

 裏切り者と判っていても、ロスヴァイセさんを受け入れたのは徹先輩だ。

 姉様やレイナーレが警戒している時、ロスヴァイセさんに優しくしたのは徹先輩だ。

 ロスヴァイセさんが本当に困っている時に、一番最初に手を差し伸べたのは徹先輩だ。

 ……私達の『王』様は、とても優しくて、素敵で、最高の『王』様だ。

 

 

 

 B月W日

 

 徹先輩の御両親から手紙が来ていた。

 そう言えば、まだ徹先輩の御両親に会った事がない。

 というよりも、徹先輩の御両親ならきっととても凄い人なのだろうと思う。

 徹先輩は普通のサラリーマンと言っていたけど。

 以前聞いただけだけど、魔王様や堕天使総督、熾天使が接触できない普通のサラリーマンとは何者だろう?

 少なくとも普通ではないと思う。

 徹先輩には言わないけど。悪気はないけど、悪く思われるのは嫌だ。嫌われたくない。

 でも、ご両親には会ってみたい。姉様たちも同じ意見だった。

 一緒に住んでいるのだし……。

 ……それに、好きな人の親というのは、女の子としては気になる。

 

 

 




オ「(カミシロトオルの隣り…落ち着く)」
ト「(オーフィスちゃんっていつもくっついてくるなぁ)」

黒「トオルに甘えるのは私だけだったのに…」
白「姉さま煩いです」
黒「え?」
白「うるさいです(オーフィス…羨ましい)」
黒「」

大体こんな感じ(ぇ



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