とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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白猫日記とどっちを書くか迷った。


134(エピローグ 苦労人日記)

 B月G日

 

 ……どうなってやがる?

 なんでオーフィスが学校に来てるんだ?

 しかも、どうして俺が面倒を見る事になってるんだ?

 というか、名指しで俺を呼ぶなと言いたい。どうして上代徹と俺の二択なんだ?

 せめてイッセーも呼べ。同じ龍種だろうが。

 退屈だからってオーフィスを連れてくるなっての。ここは三大勢力の中立の場であって、無闇矢鱈と混乱させていい場所じゃないはずだ。……そのはずだ。

 だってのに、どうしてオーフィスが来て、付添いでレイナーレなんだ?

 混乱するわ。リアスとソーナの眷属達なんて滅茶苦茶警戒してたっての。

 そりゃそうだ。いきなり学校の結界に『無限の龍神』なんかが入り込んできたら、警戒しない方がおかしい。

 しかも正面から。

 ……上代徹と同類に見るな。アイツは普通じゃない。というかおかしい。警戒どころか、放課後まで授業を普通に受けてやがるし。お前の家の住人だろうが、お前が面倒を見ろと言いたい。

 アイツがどれだけ普通を演じようが、アイツの行動は普通とは掛け離れてしまっている。

 レイナーレは健気に庇っていたが、とてもそうは思えない。

 

 放課後になったら、普通にオカ研に迎えに来やがるし。

 自由すぎるだろ、アイツ。

 どんだけ俺を追い詰めたいんだよ。

 クソ爺の件も俺に丸投げだしよ……。

 せめて、事前に連絡をくれと言いたい。

 事後承諾にしようとするな。俺はもう堕天使の総督ではなく、ただの一堕天使でしかないのだ。

 そんな俺がオーフィスやら上代徹やらと繋がってるとみられると、周囲からどんな目で見られるか…。

 気にするような性格ではないが、しばらくは大人しくしていたいのだ。

 総督を辞めたばかりで“何か考えている”と思われる事ほど、面倒は無いのだから。

 

 

 

 B月H日

 

 クソ爺。

 アイツ、ロスヴァイセの家族に何しやがったんだ?

 いや、まだ何もしてないんだろが……まだ、だが。

 本当に、神様というのは性格が悪いな。

 俺なんかをイジメてないで、あのジジイに天罰の一つでも落とせよ、上代徹。

 絶対そのほうがお前の為になると思うんだが。

 つか、胃がムカムカする。

 晩飯代わりに酒しか胃に入れてない所為だろう。

 北欧の主神と異世界の神の秘密裏の世間話。こう書けば平和なんだがな。

 どんだけ腹の探り合いが好きなんだよ、あのクソ爺。

 知的好奇心、欲求を満たすのは判らんでもないが、周りを巻き込むな。あの爺が変に上代徹を挑発したせいで北欧神話が歴史から消えても知らね―からな。

 というか上代徹も上代徹だ。簡単に北欧へ行こうとするなと言いたい。

 お前が動いたら、それだけで世界が注目する。

 今のあの男の立ち位置は、世界の中心で確定してしまっている。以前のように曖昧で不確かな情報ではない。世界中が『上代徹』を知ってしまっているのだ。

 アイツが北欧――しかも主神クラスと会談したとなれば、他の神話体系は警戒する。

 というか、下手をしたらそれを口実に戦争が起きる可能性もある。

 神話は、他の神話を認めない。

 滅ぼす為なら、どんなモノでも利用する。それが規格外の存在でもだ。

 『神々の黄昏』など起きたら、今の世界は簡単に滅ぶだろう。

 ……アイツなら、世界すら傷一つない状態へ治せそうだが。

 傍にオーフィスを置いた事といい……まったく、本当に悩みの種だなあの男は。

 

 というか、シェムハザの野郎はまだ『神の子を見張る者』の幹部連中の再編は終わらないのだろうか?

 それを口実に上代徹を俺に丸投げする気なら、少々オシオキが必要だろう。調教でもいい。

 あと、上代徹から心配された。

 黒歌の薬を用意しようか、と心配された。

 ……俺のストレスの元凶に心配された。

 不思議だな…それだけで、酒がクソ美味い。

 

 

 

 B月I日

 

 休日は最高だ。

 上代徹とも、オーフィスとも関わらないで済む。

 ソーナ達用の『人工神器』の調整やら、データ編集やら、やる事は多いが充実した一日だった。

 素晴らしい。

 これだ。これだよ。

 俺が総督の座を退いてでも得たかったのは、こういう一日だ。

 決して上代徹やオーフィスの相手をする事ではない。絶対だ。

 

 

 

 B月J日

 

 オーフィスを笑わせる方法を上代徹から聞かれた。

 むしろ、俺が聞きたい。

 というか、アイツは笑うのか、と本気で思ってしまった。

 それくらいオーフィスというのは俺達からしたら未知の存在なのだからしょうがない。

 笑ったらしいが。

 オーフィスを笑わせる事が出来る奴なんてお前だけだよ、上代徹。

 俺じゃ無理だ。むしろ、本当に笑ったのか疑う側だ。

 それくらいオーフィスの笑顔は想像もつかない。

 とりあえず、笑える漫画やらテレビやら見せてみたらどうだ、と言っておいた。

 ……早く一週間が過ぎないだろうか。

 

 

 

 B月K日

 

 ソーナ達に、調整し直した『人工神器』を渡しておいた。

 来週には実働データを渡してもらう事になっている。

 あと、レイナーレからも『人工神器』のデータを渡してもらった。

 ……正直、完全に解析出来ている訳ではないが、アイツの『人工神器』は俺の想像以上の進化を遂げている可能性がある。

 完全にデータの解析が出来る時が楽しみだ。

 三種の翼に『無限』の血。上代徹の眷属という事実。それが『人工神器』にどのような影響を与えたのだろうか?

 楽しみだ。

 やはり、『神器』弄りはたまらない。

 日頃のストレスが吹っ飛ぶというものだ。

 上手くいけば、誰でも手軽に『禁手』へ至る事が可能かもしれない。英雄派がそうしたように。

 

 

 

 B月L日

 

 ……ヴァーリの奴らが、上代徹の家に滞在する事になった。

 どれだけ俺の胃を追い詰めれば気が済むのだろうか、アイツ等は。

 というか、どうして俺に報告した。

 俺はもう堕天使の総督なんて肩書きは持ってないんだが……。

 サーゼクスとミカエルの方には俺が報告しておいた。ここで報告しなかったら、何かあった時また俺が責められるだろうし。

 というか、シェムハザの野郎は何をしてるのだろうか?

 仕事してないんじゃないか、アイツ。

 

 

 

 B月M日

 

 リアス達も強くなってる筈なんだがなぁ。

 どうにも今一つ…いや、十分上級悪魔でも上位に位置する実力はある。

 イッセーや祐斗達なんて、中級悪魔どころか上級悪魔でも通じる実力だ。

 いや、攻撃力だけならそれ以上とも言えるかもしれん。

 鍛え甲斐がある奴らだ。

 それに、目標もある。

 上代徹。そしてその眷属達。

 身近に手の届かない、はるか上を行く連中は良い刺激になるようだ。

 特に、伸び悩んでいるリアスやゼノヴィアには。

 ほとんど完成してしまっているアーシアはどうしようもないのかもしれないが。

 『聖母の微笑』にも、確かに『禁手』は存在するが、恐らくアーシアは至れないだろう。

 才能などではなく、純粋にアーシアには合わない。

 それに、上代徹の傍に居る限りアーシアの『神器』は用を成さない。

 不憫な奴だと、心から思う。

 戦いは嫌いだろうに、それでもイッセーの傍に居る為に更なる力を求める。

 だが、アーシアには越えられない壁が存在している。

 上代徹という、どうしようもない存在が。

 ……良い事なんだけどな。

 戦いたくない奴が無理矢理戦う必要なんてない。

 ――なんとも、ままならないものだ。

 

 

 

 B月N日

 

 あのクソ爺は何を考えているのだろうか?

 いきなり日本に来るな。

 こっちはこの前の冥界へのテロで警戒してるってのに。まぁ、俺には関係ないんだが。

 それでも俺に苦情が来る辺り、そろそろシェムハザを殴りに行くべきだろうか?

 ソレか蹴るか。どっちにしても、近いうちに『神の子を見張る者』へ行く必要がるだろう。

 あの馬鹿、仕事をしてなかったらタダじゃ済まさない。絶対だ。

 

 それにしても、どうして俺の所にヴァーリ達まで来るようになってるんだ?

 俺には子守りの趣味は無いんだがな……。

 ここ最近、酒と薬以外を胃に入れてない気がする。

 今日も帰ってきてから酒しか飲んでない。

 明日は何かマトモな物を食うかなぁ。

 

 

 

 B月O日

 

 ロスヴァイセを誘って、居酒屋で飯を食った。酒有りで。

 どうも昨日は、オーディンのクソ爺は上代徹に釘を刺されたらしい。ざまぁみろ。

 多分、爺が上代徹に交渉しに行って、返り討ちに遭ったんだろうと予想している。笑える。

 上から目線だからそうなるのだ。

 知識がどうこうよりも、まずは身の安全を優先しやがれクソ爺。

 あんまりちょっかい掛けてると、北欧神話ごと喰われるぞ。アレはそれが出来る存在だ。

 劣化した模造品ですら冥界の半分近くを破壊し尽くしたのだから。

 まぁだが、ロスヴァイセの身内が無事なのは良かったと思う。

 今日のように酒を飲みながら愚痴を言い合える仲間だ。大切にしたい。

 しかし、ロスヴァイセのヤツも苦労するね。笑っちまう。

 レイナーレに黒歌、黒歌の妹にソーナ。それにロスヴァイセ。

 ハーレムじゃねぇか。羨ましい。ああ、本当に羨ましい。

 俺にも分けやがれ。一人で良いから。

 ……こんな生活をしていると、偶に人肌が恋しくなるのだ。

 笑ってしまう。

 さて、これからまた飲みなおそう。

 あのクソ爺がヘコまされた祝いだ。

 

 

 

 B月P日

 

 だから、なんであいつらは俺を巻き込む? 勝手にしやがれよ。俺はもう関係ないってのに。

 今日もオーフィスの相手をさせられた。

 オーフィスだぞ、オーフィス。

 『無限の龍神』『無限の体現者』最高の一角であるオーフィス。

 そんな存在が何で俺を頼って学校に来る?

 退屈なら家で遊んでやがれと言いたい。言えないが。

 機嫌を損ねたらその瞬間、下手したら日本が地図から消えるからな……笑えない。

 今日半日、オーフィスに潰された。

 俺の子供かと言われたので、上代徹の妹だと言っておいた。

 それくらいは許されるだろう。許されるはずだ。

 放課後は、オーフィスを上代徹に任せて、今日はさっさと帰宅した。

 疲れた……ああ、疲れた。

 総督やってた頃より仕事は減ったが、精神的疲労は増えている気がする。気のせいのはずだが。

 

 

 

 B月Q日

 

 もうあいつら、爆発すればいいんじゃないだろうか? イッセーも上代徹も。

 きっと世界が幸せになる。そう確信できる。モテる奴は爆死するべきだ。そうすべきだ。

 決して大富豪で負けたから悔しい訳じゃない。絶対だ。

 というか、オーフィスと大富豪だなんて今でも信じられねぇ。

 サーゼクスに話したら驚かれた。安心しろ、俺もまだあまり現実味がない。

 しかも、滅茶苦茶強かったし。

 無表情だしルール覚えたての素人だから、戦略が滅茶苦茶で読めなかった。

 ……これでも、各勢力と腹の探り合いをしたから勝負事は得意だと思ってたんだがなぁ。

 

 

 

 B月R日

 

 グレイフィアがレイナーレに寄ってきた貴族どもからの手紙やらを読みもせずに捨てていた。いや、見てはいたが。凄い勢いで。

 なんでも、レイナーレと正式に悪魔として契約したいとか、眷属にしたいとか言ってきているらしい。

 まぁ、判らなくもないが。

 ルシファーの『女王』の弟子であり、北欧の主神の槍を模した存在であり、『無限』の血の祝福を受けた唯一の存在であり、上代徹の『女王』でもある。

 今までは上代徹の影に隠れていたが、最強の『神滅具』使いである曹操を正面から打倒した今、レイナーレもまた世界の表舞台に出てきてしまったのだろう。

 強くなるという事はそういう事だ。

 嫌でも目立ってしまう。だからこそ、上代徹は普通を演じ、人間であろうとしているのだろう。

 そのレイナーレも、グレイフィアからすればまだ半人前だそうだが。

 俺もそう思う。

 世界の表舞台に立つには、まだまだ学ぶことが多い。多すぎる。

 だからこそ、グレイフィアはレイナーレに知らせる事無く、契約の話を一方的に断っているのだと思う。

 良い師匠な事だ。

 サーゼクスが嫉妬するほどに、良い師匠だ。

 まぁ、サーゼクスは上代徹に構い過ぎてると思うが。

 どっちもどっちだな、あの夫婦は。

 

 

 

 B月S日

 

 イッセー達に魔法使いと悪魔の契約というのを教えてやった。ついでに上代徹にも。

 上代徹の眷属にも悪魔は居るので、知っておくべきだろうと教えておいた。

 レイナーレにはグレイフィアが教育しているはずだが、黒歌や小猫……黒歌はともかく、小猫には必要な知識だろうしな。

 ああ、なんてイイヤツなんだろうな、俺は。

 ……溜息しか出ない。

 というか、よく考えるとレイナーレの奴は悪魔でもあるが天使でもある。

 何とも複雑な存在だ。

 悪魔との契約を得て、天使としての信仰もそのうち得るのだろうか?

 ――龍の血といい、アイツは何処を目指しているのか……。

 元部下でしかないのだが、少し心配になってくる。

 まぁ、そのお蔭で面白いデータが取れるのだが。

 

 

 

 B月T日

 

 セラフォルーから妹自慢をされた。知るか。

 というか、どんだけ上代徹が好きなんだよ。妹と取り合う気か?

 本人はそのつもりは無いんだろうが、今まで男に必要以上の興味を持ってなかったアイツが上代徹の事ばかり話していると邪推してしまう。

 俺も恋話というのは嫌いじゃない。特に、魔王のような上に立つ者の恋愛というのは良い酒の肴になる。

 しかし……セラフォルーと上代徹ねぇ。

 本人は否定していた……というか、妹を推していたが。

 多分、満更でもないんだろうなぁ。

 ああ――爆発すればいいのに。

 絶対世界の半分は幸せになるだろう。絶対だ。

 

 

 

 B月U日

 

 ロスヴァイセも、本格的に北欧から寝返ったな。

 悪いとは言わないし、家族の方も上代徹が釘を刺しているようでクソ爺も手を出していないようだ。

 しかし、天使に転生するとはね。

 そのうち、どうにかして堕天させたいもんだ。

 ま、その辺りは上代徹と黒歌次第かね。

 誘惑するなり堕落させるなり……期待していよう。

 堕天使総督の座は捨てたが、ロスヴァイセが身内になるのも悪くない。

 それに、個人的な感情を抜きにしても、ロスヴァイセは優秀だ。

 アイツなら『神の子を見張る者』の幹部にもなれるだろう。

 

 

 

 B月V日

 

 上代徹がオーフィスを連れて、フェンリルとフェンリルの子供たちの散歩をしていた。

 ……散歩ついでに、世界でも滅ぼしに行く気なのだろうか?

 本気でそう思った俺を、きっと誰も責めないはずだ。

 もうこれ以上、俺の近くで面倒を起こさないでほしい。

 俺は面倒が嫌いなのだ。楽がしたい。

 




シェムハザ「アザゼル元総督には助けられてばかりです」(キリッ

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