とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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(´;ω;`)ブワッ


129(総督日記→苦労人日記)

 B月!日

 

 針の筵っていうのは、きっと今の俺の事を言うんだろうな。

 どいつもこいつも、オーフィスと上代徹の事で俺を責めやがる。

 判ってるさ。俺がやった事はどうしようもなく重い事だってのは。

 チクショウ。ヴァーリの口車に乗ったばっかしに、胃が痛い毎日だね。

 というか、明日は胃薬を買いにいかねぇと…備蓄が尽きやがった。

 つか、明日も意味の無い会議か。

 シェムハザに買いに行かせよう。

 

 ……それにしても、サーゼクスのヤツの対応が一番辛い。

 俺を一言も責めずに、上代徹とオーフィスの関係の良好さに喜ぶ始末だ。

 どうかしてやがる。そこまであの男が好きか。

 グレイフィアより好きなんじゃねぇだろうな、と疑いたくなる。

 疑ったら、サーゼクスより先にアイツの奥さんから殺されそうだが。比喩抜きで。

 グレイフィアの奴も、上代徹関係で色々と我慢してるみたいだしなぁ。

 難儀なもんだ。うん。

 『王』は『王』同士、『女王』は『女王』同士仲が良いのが笑えるが。

 

 それにしても、すぐに英雄派は行動を起こすと思ってたが、案外動かないもんだ。

 何を考えてやがるんだか、曹操は。

 それとも、動けないのか――。

 上代徹が残した傷跡は、思ったより深いのかもしれない。

 

 

 

 B月”日

 

 オーディンのクソ爺、言ってる事と考えてる事が真逆すぎて気持ち悪ぃ。

 上代徹の危険性を訴えながら、中身はあの男が封印された事でどんな行動を起こすか知りたいだけじゃねぇか。

 知りたがりも、あそこまで行くと病気だな。最初から判ってたが。

 それに、ロスヴァイセ以外にもスパイを仕込んでやがったようだし。

 ……本当に、あのクソ爺は一回地獄に――百回くらい地獄に落ちやがれ。

 というか、俺の胃を苛める前に、あのクソ爺に地獄を見せろよ、上代徹。

 上代徹の情報を曹操と帝釈天に売ったの、あの爺じゃないだろうな?

 疑われても仕方ないぞ、あの対応だと。

 戦乙女とフェンリル二匹を渡しておきながら、今更上代徹の危険性を説く?

 蝙蝠外交じゃ、誰からも信頼を得られないって判ってるだろうに。

 北欧という神話体系よりも、上代徹への知識欲か……アレがトップだってのが、北欧最大の不幸だな。

 というか、人をカラス呼ばわりする癖に、お前は蝙蝠じゃねぇかクソ爺。

 

 『禍の団』もようやく動き始めたが、英雄派は姿を見せていない。

 冥界を混乱させる旧魔王派と、『魔獣創造』で作られたであろう、上代徹が召喚したバケモノの劣化版。

 それでも十分に驚異的な戦力なのだが。

 まさかレーティングゲーム最上位の『エンペラー』ベリアルが為す術も無く負けるなんざ、想像もしてなかった。

 なんだよあのバケモノ。

 あれで劣化版なんだから笑えない。

 本物なら、あの時召喚した一体だけで冥界をどうにかできるんじゃないだろうな?

 ……考えるのはよそう。胃が痛くなる。

 つか、あの男が大人しく封印されている事が恐ろしい。

 いつか、ひょっこり帰ってきそうなんだが……やめよう。

 まずは上代徹の今後と、冥界のこれからだ。

 サーゼクスも『魔王』という立場上、簡単には動けない。

 あいつの『滅びの力』なら、恐らくあの程度のバケモノは対処できるだろう。

 だがそれと判っていても、トップが簡単に戦場に行くようでは他勢力から舐められる。

 ――ままならんもんだ。

 

 

 

 B月#日

 

 なるほど、旧魔王派の狙いは失った戦力の増強か。

 悪魔達によって無理矢理『悪魔の駒』を使われた『神器使い』たちを扇動しているようだ。

 冥界の戦力を削れて、自分たちの戦力を増強できる。良い策だ。

 それに、『神器使い』は相性によってはかなり厄介になりやがる。

 今の『禍の団』には強制的に『禁手』へ至らせる方法もある……下手をすると、厄介では済まなくなるかもしれんな。

 上級、最上級悪魔の疲労がヤバそうだ。

 判らなくもない。

 旧魔王派の残党は上級悪魔が揃っているし、下級、中級ではまず『神器使い』達の相手すら辛い。

 上級悪魔と最上級悪魔は旧魔王派を相手にしながら、『豪獣鬼』『超獣鬼』と仮称されたバケモノの相手もしなければならない。

 負担は増える一方で、減る事は無い。

 悪循環……だが、サーゼクスにはまだ余裕があるように見える。

 何か策があるのか、強がりか…。

 心強いね、まったく。

 こちとら、今日もオーフィスの件で苛められてるってのに。

 というか、退屈だから俺で遊んでるだけじゃないだろうな、あのクソ爺。

 ……さっさと帰ってきてくれよ、上代徹。

 それか、どうにかして迎えに行くか……溜息しか出ない。

 

 

 

 B月$日

 

 明日から、サーゼクスと一緒に冥府へと行く事になった。

 ハーデスのクソ野郎を抑えるためだ。

 アイツは、英雄派に死神を貸していた。

 証拠としては十分だ。

 おそらく、同じ考えなのだろう。ヴァーリ達も行動を起こしている。

 あいつらも上代徹やオーフィスとは結構な付き合いだったようだし、ヤル気は十分か。

 テロリストのクセに仲間意識が高いんだな……良い事かは判らんが。

 ちなみに、俺は冥府行きに志願した側だ。

 サーゼクスが居なくなっては、上代徹とオーフィスを合わせた罪。そして、上代徹の救出派としてサーゼクスの分まで小言を言われる羽目になる。勘弁してほしい。どれだけ俺のストレスを増やす気だ。禿げたら呪うぞ、末代まで。

 それにしても、シェムハザの野郎……俺一人で行けなんて、偉くなったもんだ。

 まぁ、副総督の立場なんだから偉いんだが。

 ……悪かったよ、俺の独断で『神の子を見張る者』の立場は微妙になっちまったよ。

 小遣いも減らされたし、周りからは小言ばかりだし…踏んだり蹴ったりだ。

 やはり、あの男――上代徹は疫病神だ。

 

 天界からは、デュリオの奴が俺達の護衛として参加するらしい。

 上代徹の眷属を紹介しろとせがまれたんで、レイナーレ達に会わせてやった。どうして俺が、天界のジョーカーの世話までせにゃならんのか。

 ……上代徹と会ってから、俺の運気は下がり続けてる気がする。

 デュリオより、俺の方が偉いんだがなぁ……。

 しかも、会っていきなり勝負を始めやがった。

 アイツってあんなにバトルジャンキーだっただろうか?

 それとも、上代徹の『女王』に興味があったのか。

 まぁ、普通に考えれば後者だろうな。

 次元違いの強さを持つ上代徹。あの男が世界から注目されるのは当然だろう。

 そして、その『女王』であるレイナーレ。

 ただの下っ端堕天使であり、特別な能力も才能も、何も無い。

 しかしそのレイナーレは、北欧の主神が持つ神槍を模した実績がある。

 ……色々と感慨深いな。あの下っ端が、まさか天界から目を付けられる日が来るなんてな…。

 これが、雛鳥が手元を離れる時の親鳥の気分なのかねぇ。

 今日は美味い酒が飲めそうだ。

 

 

 

 B月%日

 

 俺とサーゼクスとデュリオの三人で冥府入りしている。

 ……少数精鋭ってレベルじゃねぇだろ。

 まぁ、美猴達が死神の殆どを片付けてくれているから楽なんだが。

 それに、デュリオの『神滅具』は対多数戦向きなのも大きい。

 『煌天雷獄』――天候を操り、いかなる属性をも支配できる『上位神滅具』。

 雷を降らせたり、雹を降らせたり、氷の槍を降らせたり。

 しかも、それらにはすべて死神が苦手な聖属性が付加されていた。

 流石は『上位神滅具』としか言いようがない。強力過ぎるだろ。

 サーゼクスはサーゼクスで、何気にキレてやがるし。

 いつもの営業スマイルで死神を滅ぼすな。普通に怖いわ。

 

 

 

 B月A日

 

 ……ハーデス、スマン。

 いや、『禍の団』と裏で繋がっていたお前も悪いんだとは判っている。

 そして、今回のテロ行為で各勢力の主要人物が減る事は世界の混乱を招くから、下手にハーデスに手を出せなかったのもある。

 きっとそれが無かったら、アイツはサーゼクスに消滅させられていただろう。

 サーゼクスの『滅びの力』の解放。

 ありとあらゆるものを消滅させてしまう、自身でも抑える事が出来ない力。

 自身の親から、突然変異とまで言われた、規格外の魔王の力。

 ……ハーデス神殿が無くなった。半分くらいだが。

 悪いと思う。恐らくこれから、冥府の勢力は一気に縮小する事になるだろう。

 最上級死神のほとんども、サーゼクスとデュリオによって殺されてしまったのだから。

 ――そのあと、上代徹とオーフィスの件で、もう一度サーゼクスに謝っておいた。

 アイツを本気で怒らせるのはよそう。

 せめて、グレイフィアが傍に居ない時は……命が危ない。冗談抜きで。

 

 それと、上代徹。アイツ、やっぱりひょっこりと帰ってきやがった。

 いや、ひょっこりなんて生易しい表現じゃなかったが。

 どこをどうすれば、オーフィスとグレートレッドを引き連れて帰ってくることになるんだ?

 しかも、オーフィスはサマエルに奪われたはずの魔力が元に戻ってやがるし。

 『次元の狭間』で何かしたのか? したんだろうな……。

 それに、冥界の勢力が手を焼いていた『豪獣鬼』と『超獣鬼』を一瞬で殲滅してしまうし。

 今まで次元違いに強いってのは判っていたが……。

 上代徹、オーフィス、グレートレッド。

 ……敵ではない、味方だったとしても、あの光景には唖然とするしかなかった。

 そのうちの一人だけでも勝負にすらならないというのに、三人だ。

 曹操……お前は、なんという事をしたんだ、と思った。きっと、今回の件に関わった全員がだ。

 その曹操に至っては、上代徹やイッセーに挑むまでもなく、レイナーレに負ける始末だ。

 冥府から戻ったら、頭が痛くなる事ばかりだ。

 グレートレッドが一暴れした後、素直に帰ってくれた事が唯一の救いだ。

 アレまで上代徹の家に行きたいなんて言い出したら、俺の首どころの問題じゃなくなる。

 結局…今回の件は、俺の独断が招いた事でもあるのだから。

 

 そんな光景を見て、サーゼクスは喜んでいたが。

 俺は面倒で堪らない。あと、少し怖くなった。

 アイツ、どれだけ自分の勢力を広げるつもりだ?

 

 

 

 B月B日

 

 サーゼクスから、上代徹の情報をどうにか隠す事が出来ないか、と相談を受けた。

 無理だろう。

 今回の件、あの男は目立ち過ぎた。

 戦場の中心、世界の中心、情報の中心で、無限と夢幻――最強の二匹と並んで暴れたのだから。

 どうしようもない。

 どうにかしたいなら、世界中の存在全ての記憶を消すしかないだろう。

 上代徹ならどうにかできるかもしれないが、俺達には無理だ。

 それに、そんな事を出来そうなやつも知らない。

 グレイフィアにも相談していたが、まぁ、無理だろうな。

 

 それと、今回の件――オーフィスが敵対しないことを明言した事もあり、俺への罰は無いらしい。

 あれだけ俺の事を叩いてやがったくせに、すぐに手のひらを返しやがって。

 これだから政治は嫌いだ。気持ち悪くなる。

 なので、けじめという事で、俺は『神の子を見張る者』の総督の座から降りる事にした。

 『神の子を見張る者』の幹部と話し合った結果だ。

 これ以上堕天使の勢力を拡大させる訳にもいかない。

 これからは三大勢力は和平の道を行く。

 冥界が『悪魔の駒』、天界が『御使い』システムで勢力を拡大するなら、堕天使は技術で立場を確立するという考えに至ったのだ。

 これで、趣味の『人工神器』に集中できる。

 ソーナ達からも、良いデータが取れそうだしレイナーレに至っては『禁手』に至りやがった。

 俺だってファブニールの助けが無ければ至れない『禁手』に、アイツはオーフィスの加護があるとはいえ、地力で至ったと言えるだろう。

 今までの『人工神器』なら『禁手』へ至ったら壊れていたのだが、レイナーレの『刹那の絶園』は壊れなかった。

 上代徹が何かしたのか、それともレイナーレの進化が何かしらの変化をもたらしたのか、

 今までにない、面白い結果だ。興味深い。

 俺も現金なものだが――アイツは最高の俺の元部下だ。

 

 それにしても、オーフィスと上代徹が一緒に暮らす事を、誰も否定しなかったのは笑えた。

 そりゃそうだ。

 オーフィスだけでも手に余るってのに、同格の上代徹とグレートレッドがセットなのだ。

 誰だって逆らえない。従うしかない。

 俺が招いた結果だが、総督の座を退く俺にはあまり関係ない。

 これからは、貴様らが上代徹に振り回されればいい。

 俺は降りる。

 胃が痛くなるような政争から遠ざかり、自由に趣味を楽しませてもらうとしよう。

 これからは、若い連中の時代だ。

 俺みたいな年寄りは、身体を張るんじゃなくて、頭を使うに限る。

 

 

 

 B月C日

 

 シェムハザに総督業の引き継ぎを行う為に、しばらく駒王学園を休むことになった。

 というか、総督の座は退いても、イッセー達の教育は続けることになっている。

 まぁ、アイツ等の事は気に入っているし、断る理由も無い。

 頭を使うことは好きだが、偶には体を動かしたい時もあるのだ。

 なので、俺はこれからもオカルト研究部の顧問として駒王学園に努める事になっている。

 それくらいなら、上代徹と関わるのも良いだろう。

 教師と生徒。堕天使と規格外のバケモノではない。健全なお付き合いをしようじゃないか。

 

 

 

 B月D日

 

 シェムハザに泣き付かれた。

 大丈夫、お前ならやれると励ましてやった。

 総督は良いぞ、自由な時間は少し減るだろうが、給料は良い。

 アイツはこれから子供も生まれるだろうから、頑張って働け。奥さんの為にも。

 肩の荷が下りるっていうのは、こういう事を言うんだろうな。

 酒が美味ぇ。

 

 

 

 B月E日

 

 これからは、上代徹と関わる事になるシェムハザに幾つかアドバイスをしてやった。

 俺はもう総督ではないのだから、これからは一研究者として生きていく事になる。

 後悔は無い。

 俺は頑張った。

 俺は良くやったと思う。

 明日からはまた、駒王学園の教師で、オカルト研究部の顧問だ。

 今日は早く寝よう。

 良い夢が見れそうだ――。

 

 

 

 B月F日

 

 ……どうして上代徹は、俺に相談事を持ってくるのだろうか?

 俺はもう『神の子を見張る者』の総督ではないということは伝えたのだが、普通にまた俺に頼みごとをしてきやがった。

 しかも、オーディンのクソ爺と話して、ロスヴァイセを家族に会わせてやりたいんだと。

 配下想いなのは結構だが、俺を巻き込むな。

 シェムハザに伝えたら、『神の子を見張る者』の幹部を再編成するらしく、そこまで手が回らないそうだ。

 ……俺が相手にするのか。オーディンのクソ爺を。上代徹を。

 アイツ等の間に立って入らなければならないのか?

 ――どうしてこうなった。

 胃薬、捨てちまったってのに……。

 

 




レイナーレさんに続き、タイトル(?)変更。
堕天使が優遇されてるなぁ、と思ったり思わなかったり。
そう、優遇ですよ優遇。
アザゼル先生は優遇されてるんですよ!
なんか、ロスヴァイセさんとフラグ立ててもいい気がしてきた。飲み友達だし。

(・3・)アルェ

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