とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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今回で面倒な部分は終了
次回からはまた別視点です



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 △月○日

 

 夜の十時くらいに、駒王学園のオカ研部室に呼び出された。

 ……正直、俺って本当に部外者だよね? 帰ってもいいんじゃないか、とも思うが言い出せない。

 この辺り、どうしようもないヘタレだと自分でも思う。

 レイナーレさんもついてきてくれるとの事で、ちょっとした夜のデート? ――やめよう、書いてて悲しくなる。

 とにかく、レイナーレさんと二人で部室に行くと、グレモリー達が制服姿でスタンバイしてた。

 勝負って零時からだよな? なんで二時間前からスタンバってるの、お前ら。

 まぁ、呼び出された時点で薄々そんな気はしてたけどさ。

 悪魔に囲まれてレイナーレさんが緊張してた。そんな姿も綺麗だ。美人は絵になる。

 大丈夫? と声を掛けると、少し笑ってくれた。良かった良かった。

 しかし、呼び出した張本人の銀髪メイドが居ないわけだ。

 聞くと、グレイフィアさんは会場の準備中との事。ああ、ゲームで戦う場所か。当日に作るなんて、凝ってるなぁ。

 つか、二時間も待たされる俺って、本当に不幸。

 寝るには早い時間だし、オカ研に遊び道具とかないし。

 とりあえず、塔城さんとアーシアさんに修行の内容を聞いて時間を潰す事にする。

 や、この二人ならレイナーレさんが堕天使でも気にしないで接してくれそうだから。

 木場君は集中してるみたいで目を閉じてる。イケメンは絵になる。……寝てないよな?

 姫島? ……すでに戦闘態勢っぽい。怖い。話しかけるのに勇気が要るとはコレ如何に。

 グレモリーと兵藤は見たくも無い。なんで膝枕してんのお前ら? 空気読めよ。もっと緊張しろよ。

 姫島なんて待ちきれないみたいに、ソファの肘置きを指で叩いててマジで怖いんだぞ。

 ……姫島は極端だけど、とりあえずイチャイチャすんな。イライラする。アーシアさんが泣きそうなんだが?

 そりゃ、彼氏のあのだらしない顔を見れば泣きたくもなるわな。

 塔城さんも気を付けなよ、というと、はい、と即答された。ま、この子なら大丈夫だよな。しっかりしてるし。

 ちなみに、修行の内容は木場君と兵藤の剣。塔城さんと兵藤の格闘。姫島と兵藤の魔法。アーシアさんとの勉強。

 そして、グレモリーとの修業では背中に岩を背負って山を駆けまわったらしい。

 最後がおかしい。いや、塔城さんとアーシアさん以外全部おかしいけど、最後が頭一つ抜けておかしい。

 剣と魔法は、まぁ、百歩譲るが、何故岩を背負って山を駆けまわった?

 もっと他にあるだろ……絶対あるって。諦めんなよ。そして見事に兵藤押しだな。何気にアイツ凄いの?

 塔城さん曰く、兵藤が一番経験が無くて弱いかららしい。なるほど、判りやすい。

 レイナーレさんは複雑そうだった。そう言えば、教会で殴られてたね、兵藤のあのゴツイ篭手に。

 話を聞き終わっても、まだ一時間ほど時間があった。

 とりあえず、次はフェニックスさんの所にでも行くかね。暇だし。

 駒王学園で『レーティングゲーム』をするんなら、フェニックスさんも来てるだろうし。

 場所はどこ? と聞くと知らないとの事。

 そう言えば、陣取りゲームみたいな所もあったっけ? ルールはいまいち把握してない。

 取り敢えず探すか、と夜の校舎をレイナーレさんと二人で歩く。正直、すげぇ怖い。

 レイナーレさんは普通に歩いてるけど。流石堕天使、夜の校舎くらい大丈夫なのか。

 その後、迷子になった的な勢いで校舎を歩いていると、グレイフィアさんに保護された。

 ……情けないにも程がある。

 

 

 

 

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 グレイフィアさんに案内されて、フェニックスさんが居る部屋へ行くと、笑顔で歓迎された。

 しかも、紅茶とお菓子付である。

 ……なんだ、この扱いの差。ちょっと感動しそうなんだが。

 しかし、この部屋も女性比率高いな。つか、こっちが高ぇ。

 どんだけだよ。ハーレムじゃねぇか。羨ましい。

 ちなみに、出してもらったお菓子も大変美味しかった。

 でも、やっぱりレイナーレさんは居心地が悪そうだった。それに、フェニックスさん達も。

 そんなに悪魔と堕天使って仲が悪いのか。グレイフィアさんは気にしてなさそうなんだけど。

 あまり居ると迷惑だろうから、早々に退室した。

 んで、そのまま監視席へ移動する事になった。

 魔法陣って便利すぎるだろ。

 

 

 

 

 △月◎日

 

 監視席は、学園の放送室だった。結構身近なのね、監視室。

 グレイフィアさんから、どっちが勝つと予想しているか聞かれる。

 レイナーレさんの予想通り、フェニックスさんと答えておいた。実際、人数も多いし。

 でも、グレモリー達にも頑張ってほしいけど。

 知り合いが負けるのは、やっぱり嫌だし。でも、フェニックスさんも嫌いじゃないんだよね。

 ちなみに、グレイフィアさんに聞くと答えてくれなかった。

 メイドですので、との事。それ、答えない理由になるの?

 レイナーレさんに視線を向けると、微妙な顔で苦笑された。

 そんな事を話していると、放送室の壁前面に半透明の画面が何枚も現れる。

 ……魔法って、便利。

 体育館やグラウンド、オカ研の部室も映っている。こうやって監視するのか。

 木場君が剣で戦ったり、塔城さんと兵藤が殴り合ったり、姫島が魔法を使ったり。

 ――悪魔って派手すぎる。俺は置いてきぼりですよ?

 レイナーレさんもこれくらい戦えるのだろうか? 堕天使だし、戦えるんだろうなぁ。

 そんな事を考えていると、グレイフィアさんが戦況を説明してくれる。

 最初の方はグレモリー達が押していたが、塔城さんが負けてからは、押される一方だった。

 もとから、15対6である。一人脱落しただけで、負担が桁違いに増えるのは道理だ。

 それでもめまぐるしく変わる戦況を見て、レイナーレさんとグレイフィアさんに説明を受けながら、一つだけ思う事があった。

 姫島、お前ホントにヤバいんだな。体育館を雷で吹き飛ばしたぞアイツ。

 洒落にならん姫島の行動に、内心震えるばかりである。

 ちなみに、兵藤のヤツもテニスコートを消し飛ばしていた。

 木場君もグラウンド全体に剣を生やすし……お前ら、パワーインフレ激しすぎだろ。自重しろ。

 そのうち、片手間で地球を破壊するんじゃないだろうな?

 レイナーレさんに同じ事が出来るか聞くと、出来ないとの事。良かった……レイナーレさんは普通だ。

 しっかし、兵藤のヤツ。女性の服を吹き飛ばすなんて……けしからん。まったくもってけしからん。

 こっちも少し自重しろ。せめて下着は残せ。

 しかし、次に落ちたのは体育館を吹き飛ばした姫島、次いで木場君である。

 ありゃ、こりゃヤバい? 残るは兵藤とグレモリー、アーシアさんの三人。

 しかも息も絶え絶えだ。純粋に、15対6ではグレモリー達の運動量はフェニックスさん達の倍だし。

 そりゃ疲れるだろう。

 結局そのまま、グレモリー達は負けてしまった。

 兵藤が最後まで粘っていたが、グレモリーが『投了』したのだ。

 そこまで見届けると、放送室一面にあった半透明の画面が全部消えてしまう。

 ……そして、どうしてかグレイフィアさんから視線を感じる。

 なんで? 俺が何かした?

 しかし、何を言うでもなく、グレイフィアさんは退室していった。

 残ったのは、俺とレイナーレさんだけである。

 また放置だよ、あの銀髪メイド。……実は俺のこと嫌いだろ?

 

 

 

 

 △月□日

 

 昨日の今日で、いや、日付も変わってたし今日の今日か?

 まぁいいや。今日、グレモリーの婚約パーティがあるらしい。

 だから、どうして、姫島といい、グレイフィアさんといい、グレモリーの関係者は俺を拉致る?

 俺って部外者だから。場違いにも程があるから。服装から違うから。制服のまま拉致るな。今日は登校日だから。昨日寝るのが遅かったから眠いんだよ。

 ……なんという辱め。

 そのあと、黒服の連中に着替えさせられた。……泣きたい。

 拉致されてからタキシードを着せられたのは、きっと俺だけだろう。

 首元が苦しくてネクタイを緩めていると、レイナーレさんも着替えていた。

 こっちは黒のドレスである。俺とは違ってヤバいくらいに似合ってた。凄く綺麗だ…それ以外に言葉が無い。

 俺は馬子にも衣装。きっと誰だってそう言うだろう。

 レイナーレさんは笑顔で似合ってると言ってくれたけど。お世辞でも嬉しい。

 遅れてしまったが、レイナーレさんのドレス姿も褒めておく。うん、本当に似合ってる。

 そしてまた、黒服に連れられて移動である。もうこのまま誘拐されても文句は言えないレベルである。むしろ、今現在誘拐されている最中か。

 どうしよう? つか、ここ何処? 日本なの? 魔法陣便利過ぎだろ。

 逃げたら帰れるかな? とか考えていると、目的の部屋に着いたようで、黒服の人達が俺とレイナーレさんを置いて退室していく。

 部屋の中に居たのは、赤い髪が映える美丈夫、同じく赤い髪の壮年の男性と亜麻色の髪を持つ美しい女性。

 それに金髪の男性と……縦ロール。フェニックスさんの妹さんだ。

 あと、場違いにも程がある魔女っ娘もいた。

 …………どういう状況さ。

 レイナーレさんも困惑しているのか、微動だにしない。俺もだ。むしろ、ここまで来ると怖くすら感じる。

 何事よ? とりあえず、悪魔は皆、意志の疎通を図れ。特にグレモリーの家。コミュ障じゃない事を祈る。

 ちなみに、目の前の赤い髪の二人と亜麻色の髪の女性がグレモリーの家族さん。

 金髪の方はフェニックスさんのお父さんらしい。ちなみに魔女っ娘はセラフォルーという名前らしい。知らん。

 自己紹介されても、困るものは困る。つか、サーゼクス様って魔王様だよね? 俺を拉致してなにする気?

 ビビって指一本動かせない俺を、誰が責める事が出来るだろうか?

 いくら堕天使のレイナーレさんでも、魔王には勝てないよなぁ、とか軽く現実逃避。

 勧められるままに柔らかくて高級そうな椅子に座り、勧められるままに渡されたものを飲む。酒だった。

 流石魔王様。未成年にも平気で酒を勧めてきやがる。

 ちなみにセラフォルーさんは、その見た目同様に性格も魔女っ娘らしい。俺は苦手だ。

 しかも、隣に座られているので凄く困る。

 魔王と魔女のサンドイッチってどんな状況さ。フロアの方からも、アレ誰? 的な視線を向けられるし。

 でも、お酒なんて初めて飲んだけど……凄く美味いな。これなら何杯でも飲めそう。

 魔王様と魔女っ娘の問い掛けに適当に答えながら、注がれた酒を飲んでは、新しく注がれていく。

 話題は、昨晩の『レーティングゲーム』の事ばかりだ。偶にレイナーレさんの事も聞かれた。

 聞かれるままに答えていると、どうして俺が手助けしなかったという話題になった。

 いや、俺にどう手助けしろと? 俺ってただの人間なんですけど?

 そもそも、あれってグレモリー――リアスさんの勝負だし。

 そう答えると、それはそうだ、と笑うサーゼクスさん。ちなみに様付で呼んだらやんわりと拒否された。

 中々フランクな魔王様だ。ちなみに、御両親も笑ってた。なんで? 魔女っ娘の方はつまんないと言ってたが。

 つか、どうして俺にばかり話を振るのだろう? 本当に、意図が読めない。

 不安になってレイナーレさんに視線を何度も向けるが、レイナーレさんは沈黙。

 まぁ、この面子じゃ、堕天使のレイナーレさんは喋れないよなぁ。

 俺の、流され続ける性格が憎いと思ったのは――これで何度目だろう?

 取り敢えず、こんな性格に産んだ両親を恨もう。

 そんなこんなで、サーゼクスさん達と話していると、フロアの方から聞き慣れた声が聞こえた。

 兵藤だ。

 悪魔貴族達のど真ん中で名乗りを上げる馬鹿なんて、そうは居ない。

 あいつもグレモリーの婚約を祝いに来たのだろうか? 知り合いに会えてホッとした。

 だって、知った顔なんてレイナーレさんとフェニックスさんの妹さんだけだし。

 しかも、片方とは殆ど喋った事も無い。

 そうこうしていると、サーゼクスさんが兵藤の方へ歩いていく。まるでモーゼが歩くが如く人波が割れるのなんて、初めて見た。マジで映画だな。兵藤は、グレモリーを攫いに来たようなもんだし。

 人波が割れたおかげで、グレモリーの姿を確認できた。姫島も居たんだな。こっちは和服だった。

 向こうも驚いたようにこっちを見ていた。安心しろ、俺が一番驚いてる。絶対だ。どうしてこんな場所に居るのか、未だに理解してないしな。

 グレモリーさん家の御両親とフェニックスさん家の親父さんと妹さんも移動したので、俺達も移動する。

 その後は、あれよあれよという間にもう一度兵藤とフェニックスさんの勝負が決まっていた。

 悪魔って、催し物好きなのね。御祭り事が好きそうなイメージあるよ。うん。

 ふと、タキシードのポケットが熱い事に気付いて手を突っ込むと、どこかで見た懐中時計があった。

 ああ、俺の『神器』だ。この前見て以来現れなかったから、もうほとんど忘れてた。

 その懐中時計の秒針が、ノロノロと動いていた。体感だが、一秒が半分くらいの速さだ。

 相変わらず壊れてやがるな、この時計。

 結局その後は、30秒くらい兵藤がフェニックスさんをボコってた。鬼だろお前。ああ、悪魔か。

 赤い鎧が凄ぇ格好良かった。羨ましい。

 俺の『神器』も変形とかしないのかな?

 揺らしてみたが、そんな気配はない。そもそも時計が変形してもどうせ格好悪いだろう。

 秒針も止まってるし……また壊れやがった。

 

 

 

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 フェニックスさんの親父さんが凄いヘコんでた。

 まぁ、こんな大勢の前で息子の婚約者を攫われたらそうもなるよな。

 真っ白な灰になりそうな勢いである。でも、不死鳥って灰からも蘇るんだっけ?

 グレモリーの御両親も落ち込んでいたが――こっちは、フェニックスさんよりはマシなようだ。

 サーゼクスさんとセラフォルーさんは笑っていたが。

 良かったな、兵藤。取り敢えずお兄さんの方は、お前の事をそう悪くは思って無さそうだぞ。

 今度伝えてやろうと思う。

 で、だ。

 兵藤達はもう帰ったんだけど、俺達は何時までここに居ればいいんだろう?

 ……一緒に帰ればよかったと、切実に後悔した。

 それと、いつの間にか銀髪メイドのグレイフィアさんも来ていた。今はドレス姿だけど。

 ドレス姿のメイドってメイドと言って良いのだろうか? ふと、そんな考えが浮かんだ。関係ないよね、今の状況と。

 それと、サーゼクスさんとセラフォルーさんからベタ褒めされた。よく判らん。

 意味が判らないから、困惑より恐怖しかない。俺ってこれからどうなるんだろう?

 そう考えていると、御近付きの印にと、サーゼクスさんからチェスの駒を渡された。

 なんで?

 なんでもこれは『悪魔の駒』といって、『レーティングゲーム』で使う物らしい。

 ……そんなの渡されても。そもそも俺、人間なんだけど?

 返そうとしたけど、魔王の面子もあるからと、強く渡されたら返せなかった。

 しかし、人間が悪魔のゲームをしていいのだろうか?

 そこは魔王様の権限らしい。職権乱用も甚だしい。

 『兵士』『戦車』『僧侶』『騎士』『女王』の駒だ。俺、こんな物騒なゲームに誘える友達、居ないんだけど。

 だって、体育館を吹き飛ばしたり、テニスコートを消し飛ばしたり、剣を生やしたりするんだぞ?

 人間には過酷過ぎるゲームだ。まぁ、負けても死なないらしいけど。

 というか、まずチェスを知らない。

 『女王』が飛車と角を足したみたいな動きをしたんだったっけ?

 一番信頼できる人に渡すように言われたので、その場でレイナーレさんに『女王』の駒を渡した。

 いやだって、一番信頼できるのってこの人だし。

 今度、塔城さんとアーシアさんにも渡そうかな? でも、二人ってグレモリーの配下なんだっけ。

 その後は、グレイフィアさんに連れられて帰宅した。

 服は返してもらったが、タキシードとドレスは貰ってしまった。……金持ちってすげぇ。お土産にお酒も貰った。

 しかも、もう夜だし。無断欠席だよ……成績に響くなぁ。

 シャワーを浴びると、いくらか酔いも醒めた。

 初めての酒にフラフラになりながらリビングに行くと、レイナーレさんが『女王』の駒を指で摘まんで眺めていた。

 今はまだ使う勇気が無いとの事だったが、表情を見る限り嫌がられてはいない……と思う。

 今になって思うと、結構大胆な事じゃないのだろうか?

 酔いって怖いなぁ。

 そのままレイナーレさんを眺めていると、気付かれた。

 恥ずかしそうに駒を隠すその姿が、普段の凛とした姿と違って、とても可愛かった。

 是非とも、写真にでも収めておきたかったくらいだ。

 

 

 

 




このSSのヒロインってレイナーレさんなのだろうか?
書いてる自分もよく判ってません

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